取材旅行。なんと心躍るフレーズであろう。
今回の行き先は長野県上田市。東京駅から北陸新幹線で片道90分、日帰り旅行すら可能な距離である。ちなみに1997年の北陸(長野)新幹線開通前は特急で片道3時間半と倍以上かかったというから、新幹線恐るべし。
なおコミックス3巻の平湯温泉は、新幹線ではなく中央高速道をバスで行って松本経由のルートです。同じ長野県でも全然違います。
朝は(作家業基準で)早めに起きて東京駅へ移動。朝食を駅弁にするか、自宅で用意した簡単なものにするか迷いどころだが、今回は手軽に済ませるためコンビニでお握りとお茶を買い込んで新幹線に乗り込む。
東京駅を出てから次の上野駅までは忙しないのでまだ我慢し、上野駅を出たら朝食タイム。朝から駅弁&ビールという贅沢も捨てがたいのだが、今回はお昼ご飯に贅沢する方を選んだのだ。
お握りをもそもそ齧っているうちに新幹線は大宮駅を通過、ここからはペットボトルのお茶をちびちび飲みながら、車窓のザ・関東平野を堪能する。
高崎駅を過ぎたら車窓の景色は一変して山になる。北側の赤城山・榛名山・谷川岳も良いが、南側の妙義山は迫力があるのでお勧め。座席に余裕があるなら車内を移動しても良いし、行きと帰りで南北を変えるのも良いだろう。
碓氷峠のトンネルを越えて軽井沢駅に到着し、ここでローカル線のしなの鉄道に乗り換えるために下車。駅の隣にある巨大ショッピングモールに入ってスタバで珈琲を補充しても良いのだが、ペットボトルのお茶はまだ残っているので、素直にしなの鉄道の軽井沢駅舎へ。
さすがは避暑地としての有名処、東京駅から僅か1時間なのに関東と空気が違う*1。大きく深呼吸して、碓氷峠の山並みを眺めながら「あづまはや」なんて日本武尊*2よろしく呟いてみる。
ここから目的地である上田駅まで、新幹線なら20分、ローカル鉄道なら1時間。40分の追加コストで風情を楽しめるなら悪くない。
そして車窓から千曲川が見えたから、春河童渾身の一句。
信濃なる 千曲の川の さざれ石も 君し踏みては 玉と拾わむ(万葉集東歌)
全然渾身ではない? まぁそう言わずに。
先ほど日本武尊の言葉を引用したように、今の気分は古代中世なのだ。
なぜかというと、ローカル線しなの鉄道の上田駅の1つ手前、信濃国分寺駅で降りるから。
奈良時代、聖武天皇の詔(741年)により信濃の国は上田市に国分寺と国分尼寺が建立された。
寺伝によると、平将門の乱(938年)により国分寺は焼失し、200mほど北に移転して再建。国分寺と国分尼寺の跡は史跡公園になっているが、この史跡公園の敷地内を鉄道が通過している撮り鉄スポットでもある。
現存する国分寺を参拝し、史跡公園と資料館を見て回り、中世気分を堪能してもまだ午前中。新幹線による時短の恩恵を体感できる。
信濃なる 須我の荒野に ほととぎす 鳴く声聞けば 時過ぎにけり(万葉集東歌)*3
さて、国分寺の次は上田城である。上田市と言えば戦国武将真田家、真田幸村。
国分寺駅から電車またはバスで上田駅に移動しても良いし、天候次第だが3kmのウォーキングでも良い。なおレンタサイクルは国分寺駅前に存在しない。*4
今日はウォーキングを選択して旧北国街道沿いに歩く。このウォーキングがお昼ご飯をより美味しくさせてくれる。
地図に従って旧北国街道を早々に逸れ、大門町の草笛という蕎麦屋へ向かう*5。なお上田城前にも草笛は分店が存在するが、観光客向けのそちらより地元民向けなのだとか。クチコミにどこまで信用が置けるかはともかく、地元民向けの美味い蕎麦というのは心惹かれるワードである。
ちなみに大門町の草笛と、同じく上田市内の刀屋という蕎麦屋は、大盛りを頼むと大食い選手権レベルのものが出てくるので注意。お城前の草笛は大盛りでも常識レベルで、それが観光客向けという意味なんだとか。
後、地図を見ると上田市の地名に鷹匠町とか馬場町とか紺屋町とか、歴史を感じさせる名前がぽろぽろ見つかるのは地味に嬉しい。
信州そばを堪能したところで、上田城(上田城址公園)を観光。天守閣はないが城門と櫓は復元されており、石垣や堀を含め見ごたえあり。
更に更に! お城の近くには昭和の文豪、池波正太郎の記念館があります!
真田太平記・剣客商売*6・鬼平犯科帳などの時代小説も面白いですが、料理エッセイも面白い。作家・春河童としては目標とする先達の一人ですね。
上田城の観光が終わったら、早めに宿に行きましょう。
上田駅からローカル線上田電鉄(別所線)に乗り、上田市別所温泉へ。
ここの共同浴場「石湯」は真田幸村の隠れ湯とも呼ばれ、前述した真田太平記では真田幸村とヒロインくの一・お江の出会いが描かれた場所です。NHK大河ドラマ・真田太平記(1985)放映前は武田信玄の隠し湯と言われていたそうですが。
共同浴場は他にも大師湯、大湯があり、ホテルの温泉も含め色々楽しめます。
翌日は別所温泉駅でレンタサイクルを借りて、別所温泉界隈を散策するのが手堅いです。
別所温泉は伝説によると日本武尊が東征の折に発見し、信州最古の温泉とも言われます。また清少納言の随筆「枕草子(能因本)」に記載されている「ななくりの湯」は、鎌倉時代の歌学書「八雲御抄」によれば別所温泉を指すとされています。
また別所温泉が存在する塩田地区は、鎌倉幕府2代執権北条義時の孫、北条義政が信濃国塩田荘に居住したことで「信州の鎌倉」とも呼ばれており、北向観音、国宝・安楽寺八角三重塔、前山寺、生島足島神社など中世の古刹が多数あります。
信濃道は 今の墾道 刈株に 足踏ましむな 沓はけわが背(万葉集東歌)
ちなみに隠れ観光スポットは、別所温泉から峠1つ先の上田市浦野地区だそうです。
古代の東山道・浦野駅が設置されていた所で、見返りの塔とも呼ばれる国宝・大法寺三重塔を筆頭に、東昌寺の鐘はとても高く澄んだ音で一聴の価値がある(毎日11:30ころに昼の鐘をならす)とか、国道143号線沿いの車屋という蕎麦屋が美味い(店主が女に入れ込んだらしく一時は味が落ちたが、借金を返し終えたのが最近味が戻った)とか、岡城址公園は武田信玄初期の平城で(二の丸の土塁や三日月掘の地形が今も残る)城郭マニア向けとか、ガチ地元民情報です。
ただし別所温泉駅からレンタサイクル(可能なら電動アシスト付きが望ましい)を借りること前提。徒歩は無理です。あるいはレンタカー、ただし別所温泉駅前にはレンタカー営業所がないので別所線で上田原駅/寺下駅まで移動する必要があります。
かの子ろと 寝ずやなりなむ はだ薄 浦野の山に 月片寄るも(万葉集東歌)*7
塩田平を満喫したら、別所線で上田駅に戻ります。
帰りは上田駅から新幹線に乗り、駅弁と缶ビールで優勝していれば90分後に東京駅へ着きます。
一泊二日で古代中世に思いをはせる旅、これにて完了。
上田駅でお土産を物色するなら、以下のものが手堅いです。
・善光寺七味唐辛子や野沢菜漬けなど 長野市の特産ですが上田でも売っています。個人的には野沢菜フリカケが好き。
・みすず飴(飯島商店) 果汁を寒天で固めた和風ゼリー菓子。和紙包装型は1箱60粒入り1500円(税抜き)、職場などで数を配りたいならお勧め。
・くるみそば(信濃路うさぎ屋) 蕎麦粉とクルミと餡を使った焼き菓子。お茶や珈琲と一緒に頂くのがベスト。
・軽井沢高原ビール 軽井沢の地ビールだが上田でも売っています。帰りの車内で飲んで荷物を軽くするのが旅行のコツ。
お終い。
GWの旅行体験を書きなぐっただけで、二次創作の体をなしていないと言われたら、そうですねとしか答えられません。
今回は野生の春河童の中の人(地元民)が旅程を組んだので、一泊二日でスムーズに終わっています。旅上手と評価される理由です。
春河童(本家)がトリップアドバイザーなしなら、こうは行かないでしょう。しかし、旅行中の小さなトラブルも楽しみに変えられる春河童さんであれば、それはそれで良いと思います。