野生の春河童   作:れべっか

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はるかリセット、コミックス11巻発売おめでとうございます。
※発売は8/18なのでフライング


真夏の定番

八月、猛暑を越える酷暑。ちなみに気象庁は2007年から最高気温35度以上を猛暑日と呼ぶようになったが、酷暑については用語を定義していない。

ちなみに芥川龍之介が自殺した1927年7月は真夏日(最高気温30度以上)が19日もあり、彼が自殺する前日と前々日は2日連続の猛暑日となった。

泉鏡花は弔辞で溽暑蒸濁(じょくしょじょうだく)の夏と表現し、内田百閒は彼はあまりに暑いので死んでしまったと書き残している。内田百閒のはブラックジョークが効いているので話半分くらいに受け止めるとしても、1927年(昭和2年)はまだエアコンどころか扇風機すらまともに普及していない時代である。団扇と行水だけで猛暑日を凌げと言われたら、流石の河童も頭の皿から水を失って干からびてしまいそうである。

 

*

 

「いやー、令和の時代はエアコンが存在するのが嬉しいねぇ」

 

穴埋め原稿として急ぎで頼まれたエッセイに目途が立ったので、いったん畳に寝転がって背を伸ばす。

エアコンの冷風と、部屋の空気を搔きまわすための扇風機の二段構え。あー涼しい。更に台所まで行けば冷蔵庫にはキンキンに冷えたドリンクとアイスクリームまで常備してしてあるのだから、芥川龍之介なにするものぞ、という気持ちになる。

あ、芥川龍之介が負けた暑さに私は勝ったという意味での優越感であり、文筆家として彼に勝ったという意味ではない。

いや、暑さに勝ったのも文明の利器に手助けされてのもの、下駄を履かされての勝利でしかないのだけどね。仕事場としている借家は大家さんが隠居のために整えた和風建築であるため、エアコン扇風機を止めれば彼の感じた酷暑を追体験することも可能ではあるが、例え飯の種になるとしてもそんな身体を壊しそうなことはやりたくない。

ちなみに1927年7月を最低気温で見ると、熱帯夜(夜間の最低気温が25度以上)が一度もないので夜はそれなりに涼しかったのだろう。いやまぁ現代日本の暑さを知っている身だからこそそう思えるのであって、当時の人としては夜も未曽有の暑さだったのかな。気象庁のデータを見ると、7/23,24の最低気温は24.7度と熱帯夜寸前だったし。

 

「暑さネタは一区切りして、次のネタも練らないとね」

 

不肖、わたくし春河童のお仕事としては、文庫本一冊丸ごと書下ろしなんて大掛かりなものはなく、1000~5000文字程度の小粒のものを数撃ちゃ当たる方式でジャンルの節操なく書くことが多い*1です。

単価がそんなに高くないので数をこなす必要があるとなれば、必然的に複数の締め切りを同時に抱えることになりますが、私は完全に並列で複数の執筆をこなすマルチタスクはできません。あっちをキリが良い所まで進めたらそれをいったん脇に置いてこっちもちょっと摘まんでという、シングルコアCPUでも実行タスクを短い時間で切り替えれば見かけ上はマルチタスクになる*2やり方で頑張っています。

 

「夏と言えば、ホラー…… いや、和風に怪談話か」

 

怪談といえば、三遊亭圓朝。真景累ヶ淵や牡丹灯籠は全集を当らずとも岩波文庫から単品で出ているはずだ。明日、図書館に寄ってみようか。

さっきのエッセイで河童に触れたから、河童の怪談話はどうだろう。ちょっと捻って現代もので。

……悪戯をして捕らえられた河童が村人に命乞いし、朱塗りの膳一式を差し出すことで許されたという民話があったはずだ。人ならぬ存在から朱塗りの膳一式を借りていたが、不心得者が返さなかったので以降は借りられなくなったという民話もあったはずだ。それを合わせて…… 小道具屋で見かけた朱塗りの椀に心惹かれた男は、実は先祖の借りパクという縁を背負っていて、一族の宝を探しに人界へ出た異形の存在(河童)と出会う。

最終的には朱塗りの椀を河童伝説のある淵に放り込んでエンドかな、指輪物語でフロドが指輪を火山に捨てる感じで。

 

「うーん、いまいち」

 

アイデアはメモに残しておいて、エッセイ執筆に戻りますか。

 

 

 

お終い

*1
ちなみに新聞連載小説の一話当たりの文字数は1000字程度、文庫本は200ページで12万字といわれている

*2
Windows95のころはこの方式が主流




SF大会でお聞きした春河童先生像を取り入れてみた。
ちなみに本話の文字数は1700字ほどです。
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