「マリコぉ~、私、堕落しちゃった~」
台所で一人寂しいお昼ご飯を済ませ、テーブルに突っ伏してだらだらしているところで、マリコが様子見にやって来た。
マリコが手土産として持ってきた蜜柑5~6個入りの小袋に早速手を突っ込んで、食後のデザートを確保する。マリコも隣の椅子に座ったので、もう一つ蜜柑を袋から取り出して彼女の前に置く。
「……それが、堕落の原因?」
テーブルの上にある、土鍋を模した樹脂製の一人用鍋。私が横着して食べてすぐに片づけなかったそれを、マリコが興味深そうに見つめている。
「そうなの、電子レンジ専用の一人鍋! 水と具材と濃縮麺ツユとうどん玉を入れて、電子レンジで7~8分待つだけ! 締め切り間近で自炊する気力がないときは便利よね~」
マリコはちらりと流しの方に視線を向け、これまた私が横着してほっぽり出したままのジップロック(冷凍保存用ビニール袋)を目ざとく見つけると、深く頷いた。
「カット野菜やキノコ、豚コマなどの一食分セットを作って冷凍保存しておくと、レンチンだけでできるものね」
「そう、そうなの! そしてこれの一番すごい所は、洗い物が箸と樹脂鍋だけってことなの!」
「分かる、わかるわ」
マリコの同意が取れたことで、急に早口になったオタクのようにまくしたてる。
「味付けも麺ツユだけじゃなくて、ペットボトルタイプの液体味噌や、レトルトパウチされた鍋用スープ、あるいは固定の鍋キューブとかバリエーションあるし。うどんでなく袋麺の煮込みラーメンも美味しいし、肉も豚コマだけじゃなく鶏団子とか餃子とか放り込んでもいいし。あっ、油揚げを入れたときは全然味が染みなくて失敗した」
「それ、もしかして油抜きすら面倒くさがったとか?」
「すごーい、エスパー! なんで分かるの?!」
「
「流石マリコ、私に思いつかないことを軽々と! そこに痺れる憧れるぅ*2」
おだてに気を良くしたマリコが、ネットミームを使う春河童を生暖かい目で見守る。
「それはそうとして、この前*3、丁寧な暮らしとか言ってたのに。いつの間に時短簡単派に鞍替えしたの?」
「ええっと、それは…… まあ、余裕があるときの趣味ってことで」
お終い。