White and white(PSYCHO-PASS)   作:鈴夢

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お兄ちゃん

 

 

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狡噛舞白 16歳 私立新麻布学園高等教育課程1年

身長は168cm 体重は49kg

趣味は海辺を散歩すること

得意な事は格闘技、空手(3段所持)

 

 

両親はすでに他界、母方の祖母は生きているが

重い心臓の病の事もあり現在入院中。

 

そして兄、狡噛慎也。

公安局 元監視官 現執行官。

両親が他界してからというもの、親代わりとして沢山助けてくれた。祖母の援助もありながら、なんとか厚生省公安局に入局。

 

 

兄と最後に面会したのは3週間前。

残念ながら執行官に降格してからは一緒に住むこともできなくなり、日々電話で話をするか(ほぼ兄からの着信)、面会できる日に公安局まで訪れるか、そうすることしか兄に会える手段はなかった。

 

 

全て数値と色で管理される日本。

職業さえも選べない、結婚相手さえもシステムによって選ばれる。

 

そんな世界で、潜在犯として、執行官として……色に臆することなく戦う兄を正直羨ましく思っていた。

 

 

 

 

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「狡噛さんの妹さんって麻布学園の生徒なんですよね?エリートじゃないですか…」

 

監視官 常守朱

今年 公安局刑事課一係に入ったばかりの新人監視官。

 

休憩時、昼食を一緒に食べようと誘われお互いの話をしていると妹の話題になったのだ。

 

 

「まあ、アイツは元々勉強も得意だったし空手の名門校でもあったからな。シビュラの適性でその学校と名前が出た時、俺が勧めたんだ。」

 

「本当に狡噛さんの妹さんって感じですね?この前面会に来たって時、非番でお会い出来なくて残念でした」

 

オムライスを口に運ぶのを止めて残念そうにする常守。

 

 

「また近々面会があるからその時会ってみるか?――確かその日、監視官は非番じゃなかったはずだ」

 

「ぜひ!狡噛さんのいろんなお話も聞けそうで…」

 

「…何を聞き出そうとしてんだあんたは…」

 

アイスコーヒーを口に運び、はぁとため息を吐く。

舞白ならペラペラと話しかねないと不安視する。

 

「そういえばそろそろ職能適性の時期ですよね?妹さん麻布高ですし、選び放題じゃないですか?」

 

「…あんたと同じ、13省庁6公司全部A判定だ」

 

本来、喜ばしいことのはずなのに狡噛の表情は曇っていた。それを察知した常守は言葉を詰まらせる。

 

「職能適性の結果、頑なに俺に話さなかったから唐之杜に調べさせた。」

 

「職務乱用じゃないですか…」

 

呆れ顔で狡噛を見据える常守。

頑なに話さなかったという妹の話を聞いて首を傾げる。13省庁6公司全部A判定なんて誰しもが羨む結果。それを経験したことのある常守は余計に不思議に思っていた。

 

「なんだか嬉しそうじゃないですね?狡噛さん」

 

外に目線を移す狡噛。常守の言葉通り、その表情には喜びは全く見られない。

 

「あいつがもし公安局に入りたい……なんて言ったら俺は反対だ。だが何となく分かる、あいつは公安を選ぶって」

「……不安ですか?」

 

常守の言葉に小さく笑みを浮かべれば

外から常守に視線を移す。

 

「兄としては、環境庁にでも入って良い相手を見つけて結婚して、平凡に過ごして欲しいと願うばかりだ」

 

煙草、と呟けば席を立ち食堂から立ち去る。

 

常守はそんな狡噛を、兄としての狡噛の本音を

初めて聞けた気がした。

 

 

 

 

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約3年前、とある事件をきっかけにサイコパスが悪化。

事件後しばらく自宅で休んでいた狡噛は珍しく荒れていた。

 

 

まだ中学生だった舞白。

初めて冷静さを失い、荒れる兄の姿を見て恐怖を感じた。

 

 

兄の部屋から聞こえる何かが壊れる音。舞白は怯えながらも兄を心配し部屋をノックする。

 

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

物音が聞こえなくなり、静かになる。

舞白は両手を胸の前で握り、怖がりながらも再度声をかけた。

 

「……お兄ちゃん?開けるね…?」

 

微かに震える手をドアノブに伸ばし、ゆっくりとドアを開ける。

そして部屋の仲を目の当たりにし、舞白は息を飲む。

 

 

机は倒され、仕事の書類らしきものが床に散らばる。

そしてベッドの際に頭を抱えて座っていたのは

いつも優しい兄だった。

 

しかし声掛けにも反応はなく、ブツブツと何かを言っていた。

 

 

「…お、…おにい」

 

「近づくな!舞白!部屋から出るんだ……」

 

強く怒鳴られビクッと方を跳ねらせる舞白。

ハァハァと荒く息をし、鋭く恐ろしい目付きで舞白を睨みつける。

 

しかし、兄は兄。舞白は心配で仕方なく、狡噛の言葉を無視して近寄る。

 

 

「…お兄ちゃん…変だよ……色相…」

 

デバイスで狡噛のサイコパスを調べようとする。

しかしその瞬間、狡噛の手が舞白の細い首に伸びる。

そのまま床に力強く押し倒し、両手で舞白の首に手をかけた。

 

 

「ッ……ぐ……おに……ちゃ…」

 

「……俺が…俺のせいで……っ…クソ……」

 

首を掴む手を何度も叩くが離れる気配はない。

ぼんやりと遠のく意識の中、

兄の狂ったような表情が見え背筋が凍りつく。

 

体を捩らせても、抵抗をするも力が強すぎてどうにもできない。

 

「……ぁ………」

 

意識が失くなる感覚、その瞬間

パッと離された首を圧迫していたモノ。

 

 

体が自然に大量の酸素を取り込むと激しく咳をし、

胃液が逆流してくる感覚に襲われた

 

 

 

「ッゲホッゲホッ……う…、ゴホッゴホッ…」

 

口から胃液を吐き出し、床に力なくうつ伏せに倒れる。

 

「…舞白……俺…、俺は…、…何を……」

 

正気を取り戻した狡噛は舞白にすぐ駆け寄り

背中を摩る。

強く締めすぎたのか舞白の首には赤い痕が残っており、狡噛は

とてつもない恐怖に襲われた。

 

 

 

 

「……お兄ちゃん……ッ…大丈夫…?」

 

舞白は落ち着きを取り戻し、放心状態に陥る狡噛に向き直る。

狡噛の頬に触れれば、心配そうに見つめ、涙が零れる。

 

 

 

「…私は大丈夫だから、…お願い………壊れないで……」

 

ギュッと舞白の腕の中に包まれる狡噛。

何も理由も聞かず、ただ大丈夫だからと言う妹に、

手をかけてしまった妹に、酷い罪悪感と悲壮感が込み上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、サイコパス矯正医療センターへと移送されセラピーを受けることに。しかしサイコパスは良くなることはなくむしろ悪化。その後執行官として、再び刑事課に配属されることになった。

 

 

舞白は兄を潜在犯を持ち、酷く周りから疎外され悲しい思いをしたはずだった。

 

しかし兄には一切弱音も吐かない。あの日以降、涙を見せることはなくなった。

 

 

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