White and white(PSYCHO-PASS)   作:鈴夢

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忙しなく家を駆け回る足音。

嬉しそうに弾む声。

 

その足音が部屋に近づくと"トントントンッ"と力強いノックの音が部屋に響く。

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん!見て欲しいんだ!」

 

開けるよ!と元気な声が響くと部屋の扉が開く

咲良は椅子に座ったまま背後の方へ向くと

どやっと誇らしげに弟が立っていた

 

 

「じゃーん!今日の試合のユニフォーム!!」

 

サッカーが得意な弟の裕翔

初めてスタメンで試合に選ばれたと大喜びではしゃいでいた

 

「こらこら、裕翔

お姉ちゃんはお勉強中なんだから…

…ねぇ、咲良ちゃん

気晴らしに本当に来ない?裕翔の試合…」

 

母親が裕翔の背後から現れると残念そうに眉を下げる

部屋に閉じこもる娘を心配し、

午後から行われる裕翔のサッカーの試合を見に行こうと

昨日から誘うも咲良は首を振るのみ

 

「…行きたいんだけど、まだ体調があまり良くなくて...」

 

「今日はお父さんも来るよ!

お姉ちゃんにも来て欲しいな…」

 

裕翔も残念そうな様子を見せるも

咲良は申し訳なさそうにするばかり

ゆっくり部屋の入口に立つ裕翔に近づくと

肩をポンポンと叩く

 

「今日勝てば来週の試合に出るでしょ?

ね?…来週の試合は必ず行けるように…

お姉ちゃんも体調治すから…」

 

ごめんね、と呟く咲良

裕翔もそんな姉の様子を気遣いそれ以上何も言わなかった

 

 

「うん!来週、お姉ちゃんにも見てもらうためにも

今日の試合頑張るね!」

 

そして走って咲良の前から立ち去る裕翔

母親も心配そうに咲良を見ていた

 

「咲良ちゃん、本当に大丈夫なの?

お父さんの言うとおり、1度病院に…」

 

優しく咲良の肩を撫でる

しかし咲良は再び俯くと母親に背を向けた

 

「…大丈夫、

今日の試合、帰って来たら動画で見せてね

……私、勉強してるから…」

 

 

扉をパタンと閉めると再び椅子に座る

机に突っ伏し、ふとデバイスに目を向ける

 

「「指示を出すまで自宅から出るな」」

 

男からの指示だった

全てを監視され精神も参ってきている咲良

この前聴取に訪れたあのふたりは

きっと気づいてくれていると期待をしているも

なかなか変わらない状況に苦しんでいた

 

((…サイコパスは…まだ大丈夫…))

 

舞白からメールが来る度涙が溢れそうになっていた

会いたい、また前みたいに楽しく学校生活を送りたい

 

ふざけ合っていたあの頃を思い出しては

声を殺しながら涙を流す

気づけばそのまま寝入ってしまっていた

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・

 

 

 

「咲良、久しぶりに会えるね」

 

部活にも参加できない土曜日

昼頃に咲良からうちに遊びにおいでよ

とメールが入り思い咲良のマンションに来ていた

 

下からマンションを見上げ、会える喜びにワクワクしていた

 

 

「咲良の好きな物も無事買えたし、どんな顔するかな〜」

 

人気店のいちごのケーキ、可愛らしいピンクの花を集めた

ミニブーケと学校の課題など

一式を大事に歩みを進める

 

マンションのエントランスに着くと涼しい空気が漂い

体の汗が一気に浄化される

咲良の住む部屋の階のボタンを押し、呼び出しボタンを押す

 

 

「……………………」

 

何も反応がなく再度押してみる

 

((…留守?でも行くって伝えた時間は間違ってないし

…それに家政婦さんも居るはずだし…))

 

そう考えていた瞬間、突如マンションに繋がる大きな扉が開く

呼び出し用のマイクの故障?なんて思いつつ

何も疑わないまま扉の向こうへ歩みを進めれば

エレベーターに乗り込む舞白

 

だんだんと咲良の住む階に近づけば近づくほど

表情が綻ぶ

しかし、舞白はまだあの事件の事で咲良の身を案じ続けていた

もしかすると舞白の知らないところで解決できたのか?

状況は全く分からないが実際今日咲良から連絡もあり

少し安心はしていた

 

 

そして咲良の住む階へとたどり着く

エレベーターの扉が開くと直接家の玄関へと繋がっているのだが

いつもの家政婦さんが現れない

 

「すみませーん!狡噛ですけど…

お邪魔しま……ッ!!」

 

 

手に持っていたケーキや花が手からこぼれ落ちる

両手を口元に持って声を失う舞白

 

 

家政婦らしきエプロンを身につけた女性が

玄関で頭から血を流し仰向けの状態で倒れていた

 

慌ててその女性に何度も声をかけるも

反応はない、既に事切れていた

 

「咲良ッ!咲良!!!」

 

靴を履いたまま家の中へと駆け出す

血相変えて無我夢中で咲良の部屋へ向かう

扉を開けるも咲良の姿は無い

 

「…通報…」

 

デバイスを操作すると、また

 

"オフライン"の文字

あの時と全く同じだ

 

だったらエレベーターに乗り込んで外に、と

考えエレベーターに戻るもボタンを押しても反応無し

 

「……落ち着いて、私…

…とりあえず咲良を探そう…」

 

再び家の中へ入ると気味が悪いほど静まり返っていた

咲良以外にも、両親や弟は?

 

家の中には多数の部屋がある、

おまけに最上階ということもあり2階層になっていれば

広いバルコニーもこの家にはあった

 

 

「咲良?いるなら返事して!」

 

各所、探すも姿はなく

人の気配も感じない

 

1階には結局誰もいなければ何かに繋がりそうな手がかりすら無かった

 

リビングから伸びる長い階段を恐る恐る登り、

2階へと歩みを進める

 

2階は広い広間、バルコニー

広間の扉を開くと長テーブルに多数の椅子

会議室のようだった

 

 

そのテーブルの上に、不自然に

一冊の本が置かれていた

 

司馬遷の『史記列伝』

そしてその傍らに紙に書かれた手書きの地図のようなものが

そしてその下には

『他言無用』と綺麗な字で書かれていた

 

 

誰にも言うな、そしてこの場所に来いと

デバイスは変わらずオフラインのまま

 

おそらく誰かが咲良や家族を巻き込み

何故か私を誘い出している

他言すれば命はない、

家政婦の死がそれを物語っていた

 

 

「……咲良、すぐに行くから…」

 

本と地図を手に取りその場から走り出し

1階に戻るとエレベーターが動き出したのが分かる

 

舞白はエレベーターに乗り込むと地図の場所へと向かうのだった

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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