White and white(PSYCHO-PASS) 作:鈴夢
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舞白がマンションを訪れる2時間前
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「…咲良さん、咲良さん」
肩をトントントンと叩かれ目を覚ます咲良
肩を叩き起こしてくれたのは家政婦の遥さん
「あ…私いつの間に寝てて…」
時計を見ると2時間ほど机に突っ伏したまま
寝ていたらしい
「朝食も摂らず、反応がなかったものですから
部屋に入らせてもらいましたよ?」
「遥さん、むしろごめんね…
…軽くなにか食べようかな…」
遥はなにか食べようかなと発した咲良に対して嬉しく感じ
肩を支えながら部屋から連れ出す
「食欲、少しは戻ってきましたか?
…じゃあ私が腕によりをかけて美味しいフレンチトーストでも
作りましょう♪」
フレンチトーストと聞いて目を輝かせる咲良
「オートサーバーのじゃなくて?
遥さんの手作りの?」
私大好き!と言えば遥はさらに笑顔を浮かべる
山崎 遥 年齢は45歳 花橋家の家政婦歴15年目
ロボットなどを使うのが主流だが
咲良の両親はそれを嫌って居たため
きちんと人を雇っていた
それが遥だった
咲良が3歳の時に初めて出会い、そこから如何なる時も
そばに居続けてくれた、もはや家族の一員だった
「直ぐに作ってきますから、咲良さんはリビングに
居てくださいね?」
コクっとうなずくと咲良は言われるがまま
リビングへと向かい椅子に腰掛けた
両親と裕翔は今頃サッカーの試合に向かっているだろう
一緒に行って応援したかったと思うも
指示には逆らえない
「…はぁ……」
ため息を吐きそのまま天井を見上げぼーっとしていた
刹那
遥の悲鳴が玄関の方から聞こえてきた
「キャアアアアアアアアァァァァァアアアアッ!!!」
慌てて椅子から立ち上がり玄関へと向かう
そこに居たのは血まみれの遥と白髪の男だった
「…ッ…は、はるか、さん…っ」
男の手にはナイフが握られており、
遥の上にのしかかっているような状況
男の白いシャツに返り血が散っていた
まだ息のある遥は咲良に目を向ける
「…逃げてくださ、い……さくら……」
グチャァッと鈍い音ともに首に突き立てられるナイフ
咲良は恐怖のあまりその場に座り込んでしまう
男はゆっくり立ち上がると咲良に優しく笑みを向けた
「やぁ、やっと逢えたね」
電話の声と同じ声の持ち主
間違いない、この男が、私に指示を送り続けている男
そして男は1歩1歩、咲良に近づく
咲良は腰が抜けてしまい立てず、なんとか後退する
「やめて…来ないで!…ッ…来ないでぇ!!」
大混乱し涙を溢れさせる咲良
構うことなく男は咲良の着ていたTシャツの襟を掴めば思いっ切り引っ張る
「…約束を破ったからね、
前から言ってた通り、君の家族を、君を
奪いに来たんだよ」
「…何のこと……」
ガクガクと身体を震わせる咲良
その瞬間、笑顔だった男の顔が恐ろしく冷たい表情へ豹変する
「公安局に話したね」
咲良の目をじっと睨みつける男
その冷たい瞳に恐怖しか感じない咲良
震えた声で咲良は言い返す
「は、…話してなんてない…
確かに公安局の人が来たけど…私は…」
すると男は空いている片手を咲良の顔の前に翳し
人差し指で額を突く
トン、トトトン、トントン……
不規則なリズムで何度か突く
ウ、ソ、ツ、キ
ゾッと背筋が凍りつき体が震え、パクパクと唇を動かす
「…まさか、モールス信号を使うなんて
君がそこまで賢かったとは恐れ入った」
「ぁ……ちが…あ…」
「人間は嘘をつくとね、幾らかサインがあるんだが
…呼吸が変わったり、目がキョロキョロ忙しなかったり」
男はまた表情を笑顔に戻すと
咲良から手を離す
「あぁ、約束と言った事なんだが
君のご両親と弟、見るかい?」
男が目の前にスクリーンを映し出せば
咲良は更に呼吸を荒らげる
映像に映るのは両親と弟
しかし3人とも目と口を包帯のようなもので巻かれ
椅子に括り付けられていた
父親に関しては怪我を覆っているのか
スーツが血に染まっている
「なんて、こと……」
背後から男は咲良の肩を掴み耳元で囁く
「……君のせいで、家族は命を落とす」
「はぁっ…はぁ…はぁ…はぁ…」
弟も口を塞がれているが唸り声を上げているのが分かる
朝、自慢げに見せてきたユニフォーム姿そのままだった
「ゆうと……っ…おとさん、…っ…おかあさん、…」
そしてスクリーンが消えれば咲良は背後の男に土下座をする形で
床に頭をつける
「なんでも…なんでもしますっ…から……
…お願い……家族を…ッ…お願い…」
そして立ち上がる男の足を掴む
「……約束を破ったものはそれ相応の罰が与えられる」
「お願いッ…お願いします!!
…私はどうなってもいいから……家族は!!」
ググッと男は咲良の髪を掴みしゃがみ込む
弄ぶかのように笑みを浮かべれば次のように応えた
「じゃあ、チャンスを与えよう
……従えるかな?」
咲良はコクコクコクと頷く
それを見た男は気味悪く笑みを浮かべれば
咲良を連れ、ある場所に向かった
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