White and white(PSYCHO-PASS) 作:鈴夢
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鼓膜が破れそうなくらい大きく鋭い音
生の銃声なんて初めて聞いた舞白は
恐怖を感じていた
しかも、それを握っているのは親友の咲良
懐中電灯の電源をオフにして暗闇を駆ける
((…なんとか…咲良に気づかれないように近づいて銃を奪う?
でもあの爆弾みたいなものをなんとかしないと…))
いつ、どのタイミングで爆発するか分からない
むしろ本当に爆弾なのかも正直分からない
下手に動けば咲良の命も自分の命も危険だった
「……どうする……考えろ、私」
ゆっくり深呼吸をし落ち着かせるも
手がガタガタと震えていた
視界も暗く無闇矢鱈に動けない
咲良の足音がだんだんと遠くになると若干落ち着きを取り戻す
((懐中電灯は自分の居場所も伝えてしまうから使えない……
……運悪くサンダルだし、脱ごう))
サンダルを脱ぎ捨てヒタヒタと詰めたいコンクリートの床を歩く
咲良の姿を見失うも耳を澄まし恐る恐る歩みを進める
その瞬間、背後から人の気配を感じ
サッと振り向く
「さてお嬢さん、私からも逃げれるかね?」
見知らぬ男
まるで狩人のような服装で猟銃を構える
引き金を引く瞬間、なんとか舞白は近くの物陰に隠れ
難を逃れ、向かいの道へと走り抜ける
((ちょっと待って……何あの男……))
明らかに不利な立場の舞白
不意に隠れていた物陰から辺りを見渡すと
ドラム缶の上に袋のようなものがあることに気づく
恐る恐る近寄りナイロン製の袋を手に取り
ジップを開け中を確認すると
ケミカルライト数本と本の栞のような形をした
長方形の薄いプラスチックのシートのようなもの
ボコボコと穴が一部に空いており用途は不明
しかし、そのシートには3という番号がふられており
ほかの番号の存在を疑った
((咲良を助けに来るだろうと相手は考えてたはず
…後ろからお兄ちゃん達が追っていたけどそれも分かりきったようにあの電車に乗せて距離を広げさせた?
……それにこのライトも……本当に私を殺したいなら
こんなもの置かないはず……))
少なくともこの空間を作り上げた相手は私にチャンスを与えてる
もしかしたら咲良を救う方法があるのかもしれない、と
冷静に考えをまとめながら再度歩み始める
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サビ臭い、暗い空間
あれから言われるがまま男に誘導され
恐らく地下深くにたどり着いた
マンションの地下駐車場のディスポーザーの処理室の
奥の隠し扉のようなところからかなり歩かされた
ここがどこの位置にあるのか、何もわからなかった
「本当に、あなたの言うことを聞いたら
家族を解放してくれる?」
白髪の男の背後に声をかける
男は振り向かず歩きながら
「もちろんだよ、
君が僕の言うことを成し遂げてくれたらね」
男の声を聞くと不思議と、何故か変な安心感が生まれてしまう
人を殺し、家族も危険な目に合っているのに
なぜだか分からない、この人を信じてしまいそうになる
ノースリーブを着ているせいか地下は肌寒い
脚は素足でパンプス、床は湿っていてとても歩きにくい
しばらく無言のまま怪しい空間を進んでいくと
分厚い扉を開く男
「さあ、家族との対面だ」
男は笑顔でそう言うと私の背中を撫でるように触れ
部屋の中へと促す
部屋の中に入ると先程見させられた動画の光景がそのまま
家族3人が椅子に縛られ、苦しそうにしていた
「お父さん!お母さん!!裕翔!!!!」
近づこうと駆け出すもすでにその部屋にいた長身の男に
止められる
「仕事が早くて助かったよ、チェ・グソン」
「いえいえ、この3人をここに連れてくることなんて
容易かったですよ、槙島さん」
槙島、チェ・グソン
2人はこの異様な光景をかも当たり前かのように話す
チェ・グソンはそのまま咲良の両腕を掴み
同じ目線になるように身を屈ませ不気味に笑う
「可愛らしい顔の娘さんですねぇ……
あの男たちが群がる理由も分かりますよ」
微かに覗かせる細い瞳
背筋がぞっと凍りつき体が震える
「あまり怖がらせないでほしいな、
これから君は大きな任務があるのだから」
槙島はガチャガチャと何かを手に取る
そして咲良にカーキの重厚なベストを着させる
チェ・グソンが咲良から手を離し
代わりに槙島が正面へ回り込むと笑顔を向けた
そして黒い鉄の塊を咲良の掌に乗せる
「君の任務は
狡噛舞白の抹殺、
その銃で撃ち殺すも良し、君のその手で
……そうだね、絞殺でも構わない、ナイフを使って刺殺でも」
咲良は掌に乗せられた銃を見て身を震わせる
そして残酷な言葉に首を振る
「そんなこと……できるわけない!
舞白は私の……」
その言葉を聞く槙島の顔が曇っていく
そして咲良から手を離せば縛り付けられている家族の元へと歩む
「……そうか、それは残念だ……」
槙島の握るナイフが光る
その刃を父親の首へと向ければ容赦なく振り下ろされた
グシャッと鈍い音と共に吹き出す血液
ダラりと父親は声を上げることも無く頭を垂らした
「やめてぇ!!いやああああああ!!!お父さん!!」
咲良の声に驚く母親と弟も状況を察せば体を揺らす
あふれ出る涙が床を濡らし、咲良は再度チェ・グソンに体を制止させられる
「……さて、次は……」
槙島の刃が母親の方へ向く
母親は唸り声を上げ抵抗していた
咲良はそれを見て叫ぶ
「わかった!!わかったから!!やめて!!
……わかったから……」
手を止める槙島は嬉しそうに微笑みナイフをしまう
そしてゆっくりと咲良に歩み寄れば頭を撫でる
「君がこの任務を果たせば
母親と弟の命の保証をしよう、
残念ながら父親は君が殺してしまった、
……あぁ、あと
もし君が裏切るような行動をすれば」
トントンと咲良の着ているベストを指で叩く
「君の体を吹き飛ばす」
まるで軍隊が着用するようなカーキのベストには
6つの爆弾が取り付けられていた
もし爆発すれば……
想像した咲良は口から胃液を吐き出し激しく咳き込む
槙島は満足気に笑みを浮かべる
「……さあ、もう会場の準備は出来てる
君たちの言う真の友情とやら、とても楽しみにしているよ」
槙島はまるで玩具で遊ぶ子供のように笑っていた