White and white(PSYCHO-PASS)   作:鈴夢

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エリート少女

 

 

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私立麻布高校、高等教育過程。

偏差値は70超えが当たり前。俗に言うエリートでなければ入学は許されない。また、武道が盛んな学校でもあり正に文武両道という校訓が1番当てはまるエリート校だった。

 

とくに勉強しろとも言われず、伸び伸びと自由に育った舞白。

 

生まれ持った才能なのか、勉強も武術も学年トップ。職能適性も周りから羨まれる結果に――

 

 

 

 

「……あー暑い……」

 

朝から過酷な空手部の稽古。ロッカーでパタパタと道着を扇いでは汗を乾かす。

 

この後はHRからの数学Ⅲの授業。朝から体も頭も使うなんて………"アオハル"なんていう輝かしい言葉とは縁が無いようだ。

 

はぁ〜〜と深いため息を吐く舞白。すると背後からとんとんと肩を叩かれる。

 

 

 

 

 

 

「――なーにため息なんて吐いてるのよ〜?朝から武術に勤しみ、額を滴る汗…美しいわあ〜」

 

「うるさい咲良。それに何度言ったら……ここは空手部以外立ち入り禁止!」

 

 

花橋 咲良

長い付き合いの親友でなんでも話せる仲だった。舞白とは正反対の可愛らしい見た目で小柄で華奢。手入れが行き届いた長い栗色の髪の毛をふわふわと揺らし、いつもいい匂いがするような女の子。

 

麻布高で唯一の文化部である茶道部の副部長でもあり、生粋のお嬢様で有名だった。

 

 

「ねぇねえ、舞白。髪染めたでしょー?」

「なんで分かったの!?」

「ホロで誤魔化してるつもりだろうけど私には分かる。」

 

サラサラとした黒髪に触れれば、ニヤッと笑みを浮かべる咲良。

 

 

「定期の頭髪検査。多分バレるわよ?」

 

「頭髪検査はこの前あったばっかりだし、夏休み始まっちゃえば

関係ないからいーの」

 

道着から制服にホログラムを変え、荷物を手にすれば咲良と共にロッカールームを出る。クルクルと髪の毛を指で掻き回すと、ふと咲良の栗色の髪の毛に視線を向けた。

 

「咲良はいいよね〜?もともと地毛が綺麗な栗色で。私なんて真っ黒よ、真っ黒!しかも直毛!」

 

「でも髪染めてる〜とか疑われて大変だったよ?麻布高はやけに校則厳しいし……でも黒髪似合ってるからいいじゃない?あれよあれ、ブルベ?ってやつ?」

 

まさに女の子、って感じの咲良を横目で見て羨ましいと思うふわふわと揺れる細くて柔らかい髪の毛に守ってあげたくなるような小動物みたいな雰囲気。それに比べて舞白は――

 

 

 

「舞白は背も高いし肌も白くて細いし、頭いいし強いし。私からしたら本当に憧れだよ?」

「せめて身長だけでも小柄だったらなあ。お兄ちゃんも身長高いから間違いなく遺伝なんだよね。」

「え〜いいじゃん?背の高い兄妹なんて素敵。」

 

対象的な彼女は彼女でコンプレックスはあるみたい

無い物ねだりとはこういうことか、と小さく笑う。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………」

「ほーら、予感的中でしょ?」

 

 

教室で朝イチに行われたのは……まさかの頭髪検査。

 

 

 

 

「言わんこっちゃない。夏休み前の頭髪検査だって」

 

後ろの席の咲良が身を乗り出してコソッと話す。舞白はしまった、と机に頭を伏せ絶望していた。

 

担任の教師が特殊な機械を一人一人の生徒の頭部に当てるとホログラムが解除され、地毛が分かるという便利な機械。

 

夏休み前だからと舞白と同じ考えを持っていた生徒がすでに何名か判明し、即黒染めという事で別室に連れられていた。

 

 

「…で?どうするの、優等生?」

「考えマス。」

 

咲良が耳打ちをすると舞白が後ろを向き咲良に訴える。今の今まで何も問題も起こさず優等生であった舞白。兄に学校から問題行動の報告なんて連絡されたら……それは舞白にとって大問題だった。本当に仕送りは止められるだろうし、下手をすればお兄ちゃんの"親友"でもある彼が家に押しかけてくるに違いないのだ……

 

 

 

「――咲良、協力して」

 

「は…?」

 

ガタン!と大きな音と同時に舞白が椅子から倒れ落ちる。

 

そして苦しそうに声を挙げる舞白。

"ちょ、嘘でしょ"と焦ったように咲良が口から漏らす。

 

 

「狡噛?どうした!?」

 

教師が機械を慌てて教卓に置き、舞白に向かって走り出す。咲良はすかさず舞白にしゃがみこみ、今にでも泣きそうなほどの演技を見せた。

 

「…先生!狡噛さん、お腹が痛いみたいで……保健室連れて行ってきます!!」

 

「すまん花橋、頼む…」

 

他のクラスメイトが心配する中、咲良はなんとか舞白を連れ出し、保健室へと向かう。

 

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

 

 

 

「――ナイス、咲良」

 

教室から距離が離れると、肩を組んでいた咲良にニッと笑いかける。策士というか無茶苦茶というか……

 

「本当にビックリさせないでよ。まさかここまでやるなんて…心臓に悪い…」

 

コテコテの芝居すぎてよくバレなかったと関心する2人。2人は顔を合わせるとケラケラと笑い出した。

 

「さーてと、私はこのまま1限サボって寝てようっと」

 

「ズルい!」

 

「お礼するから!今日部活終わったらさ、ご飯食べに行こうよ〜」

 

「…仕方ないな〜、もう…」

 

 

咲良の頭をポンポンと叩いては、頬を緩ませる咲良。そんな何の変哲もない平和な日常を、舞白は過ごしていた。

 

 

そしてその平和な日常は、いとも簡単に崩れるとも知らず。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一昨日の不正ホログラムを使った猟奇的殺人。二係が犯人を突き止めたそうだ。」

 

 

公安局高層階。屋外のテラスに2つの影が立っていた。

 

 

「…最近、やけに気味の悪い殺人が増えたな、ギノ」

 

「ああ。それに犯人は見つかったとしても皆死んでいるか、はたまた行方不明か…」

 

狡噛と同期でもある監視官の宜野座伸元。2人は肩を並べ都心の景色に視線を落としながら言葉を交わす。

 

「この前の八王子のドローン工場の事件もだが、俺は背後に誰かがいると踏んでる。」

 

煙草をふかしながら街を見下ろす狡噛。その言葉を聞いた宜野座はため息を吐く。

 

「のめり込みすぎるなよ、狡噛。それ以上色相悪化させれば、舞白が悲しむ。」

 

今度面会があるだろ?と宜野座か零すと狡噛は口角を緩ませる。

 

「舞白はそんな事で悲しまない。……なあ?ギノ。舞白が公安局に入局するのは賛成か?」

 

「…何だ急に…」

 

「言っただろ。常守監視官と同じであいつも公安局の判定がAだった。唐之杜曰く、常守朱以来の逸材らしい。」

 

狡噛が唐之杜から入手した舞白の職能適性のデータを宜野座に転送する。

 

そして宜野座は即座にそのデータを開いて一通り目を通す。狡噛の言う通りの結果にどこか心配そうな色を浮かべていた。

 

「噂には聞いてたが、本当だったんだな。それに舞白本人も頑なに俺に結果を言わなかった理由もコレか。」

 

「……どう思う」

 

新しい煙草を取り出しては再びそれを口に咥える。悩む様子の友の姿に宜野座はデータを見ながら口を開いた。

 

「俺は反対だ。」

 

「お前ならそう言うと思ったよ。」

 

「舞白はお前を執行官に落したあの事件を根に持ってる。……お前もわかってるだろう、危険だ。この仕事をアイツにさせようなんて俺も考えない。」

 

 

するとその瞬間、宜野座のデバイスに通話を知らせる通知が現れる。唐之杜か、と呟くと狡噛に背を向けて宜野座は歩き出した。

 

 

「…とにかく、舞白は公安局に絶対入れるな。お前のようになり兼ねん。

環境省か化学技術庁を進めておけ。」

 

 

そう言うと通話ボタンを押し、狡噛の前から立ち去った。

 

 

 

「――"俺のように"か…」

 

 

気だるそうに煙を吐き出す。空に薄く消えていく煙を虚ろな瞳で追い続け、闇夜に浮かぶ都心の姿に目を眩ませた。

 

 

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