White and white(PSYCHO-PASS) 作:鈴夢
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お兄ちゃんが合図を出した瞬間
私は無我夢中で駆け出し、咲良の腕を強引に掴みかかり
その場に押し倒す
左腕全体を使って首を押さえ込み
右手で咲良の握っていた銃を奪い、
パンツの後ろポケットに銃をそのまま差し込む
一瞬の出来事に驚きを隠せない様子の咲良
力は弱い、体格も圧倒的に華奢な咲良に比べて
舞白は長身でしっかりしていた
((このまま爆弾を……))
右手をリュックに添えた瞬間、
右脇腹に激痛が走る
「っ……グッ……」
脇腹に刺さるナイフ
咲良の手はブルブルと震えている様子だった
そして咲良は舞白を突き飛ばし、もう一本の折りたたみナイフ
ベストの胸ポケットから取り出す
なんとか舞白は立ち上がるも
あまりの痛みにうろたえていた
「……咲良……なんで……」
ナイフを抜けば出血が更に増える
なんとか冷静に判断すれば、フゥーと深呼吸を続ける
「…………殺らなきゃ……
……家族も、……私も……」
咲良の姿をよく見ると
片耳にイヤホンがつけられていた
きっと誰かにずっと耳打ちされてるに違いない
そして目線を前身頃に取り付けられている爆弾に移す
狡噛にチェックしろと言われた事を思い出し
激痛に耐えながらもなんとか各所チェックしていく
((…ベストを脱がすことは不可能……
ワイヤーか何かで首に脱がせられないように固定されてる
あれは銅線?もし無理して切り取れば爆発するかも……
…………やっぱり爆弾そのものを解除……))
目を凝らして数メートル先の爆弾物を観察する
確かに兄の言う通り、なにか差し込めるような窪みを見つけた
予めポケットに入れて置いた5つのプラスチックの札を
1枚取り出せば集中力を高めようと深く深く息を吐く
きっと、今の咲良に私が何を言おうと
通じるはずもなかった
「咲良、ごめん!」
遠慮すれば、気を抜けば
殺されるのは自分だと言い聞かせ
咲良に容赦なく仕掛ける
ナイフを振り上げる咲良
腕を思いっきり蹴り飛ばし、咲良は顔を歪め
簡単に手からナイフを離す
また振り出しに戻り仰向けで転がる咲良を
上から抑え込む
そして数字の2が振られた札を
1番右上の爆弾の窪みに差し込む
しかし反応しなかった為、抜き取れば左側上から2つ目の爆弾に差し込む
すると点灯していた赤いランプが消えた
((左上から1……右側は上から4.5.6って事かな))
今のうちにとまたポケットから札を取り出し
3.4番を差し込む
順調にいきそうだと思ったのもつかの間、
咲良が急に狂ったように叫び声を上げ、舞白に刺さったままの
脇腹のナイフを更に送へと突き刺す
「ヤメテエエエエエエエエエエエエエ!!イヤアアアアアァァァァァアアアッ!!」
頭を抱え込み訳分からず叫び続ける咲良
舞白は痛みに必死に耐える
「……ましろ……
……わかんないよ、もう……」
ナイフを拾い上げる咲良
また人が変わったように落ち着きを取り戻したのか
涙を流しながらナイフをふるえる両手で握り締める
「…咲良……、落ち着いて……
……私は……あんたを……」
刹那、再び咲良の顔色が変化していく
耳元で弟の叫び声が響いていた
「ウァアアアアアアアァァァァァァアアアアアアアアッ!!!!!!!」
また悲鳴に近い叫びを上げると
舞白に目掛けて走り出す
ナイフの先は咲良方へ向けられていた
舞白は動かずそっと目を閉じてそのまま咲良を受け止める
咲良は舞白の腹部にナイフを突き刺す
抵抗しない舞白を不思議そうに見上げる咲良
「……うぅっ……ぐ……」
口から血が溢れ出す
その血が咲良の頬にポタポタと垂れる
「さくら……大丈夫、だから
……落ち着いて、お願い……」
両手を咲良の両肩に乗せる
そのまま少し体を離して
なんとか笑みを浮かべる舞白
「……絶対に、死なせない……
……さく、ら……」
残りの5.6の爆弾も解除すれば
そのまま舞白は膝から崩れ落ち
腹部に刺さっていたナイフはカランカランと
咲良の手から滑り落ちる
((あと1つ……あとひとつなのに……))
「あぁ……舞白……舞白!!」
正気を取り戻したように
舞白の肩を揺らす咲良
片耳のイヤホンをその場に投げ捨て
泣き叫ぶ
((……今なら……一緒に
作戦通り……逃げれ……))
刹那、咲良の体が舞白から引き離される
咲良の髪の毛を背後から掴みかかる男
白髪の……
((あれは……))
狡噛の部屋にあったピンぼけしていた写真
やけに似ている気がしていた
「そろそろ時間切れでね、残念だが……」
舞白はなんとか上半身を起こし
連れていかれる咲良を目で追う
「舞白っ……舞白!
……助けて!!」
痛みも麻痺しているのか
残っている気力だけでなんとか立ち上がる
脇腹に刺さったままのナイフ、腹部も脇腹に較べ傷は浅いものの血が溢れていた
「……すぐに……行くから、咲良……」
後ろポケットに差し込んでいた銃を握りしめ
何とか壁をつたいながら咲良たちの後を追う
しかしその途中で、倒れ込む兄の姿を目にする
「「もし俺が倒れたとしても自分の身を、対象を追うことをかんがえろ」」
狡噛の言葉を思い出す
今はとにかくあの2人を追うんだと必死に言い聞かせる
先程まで開いていなかった怪しげな扉を見つければ中へと進んでいく
肩ひもだけになっているリュックのショルダーを
体にかけ直し、腕の紐をグッと縛り直す
((勝機は分からない、でも
…せめて咲良だけでもここから逃がして……
あの男のなにか手がかりを残せられれば……))
兄の仇、兄が追い続けている男
きっとあの白髪の男に違いないと考える
そして舞白はフゥーと息を吐くと
フラフラとしながらも小走りで走り出す
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