White and white(PSYCHO-PASS) 作:鈴夢
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「……離して!」
咲良の髪の毛を容赦なく引きながら
槙島は歩みを進める
予想以上に狡噛が早く現れたこと、
あの兄妹の結託力が槙島の予想を上回り
尚且つ、公安局の介入も時間の問題
そして咲良は最初は混乱しきっていたが
友を前にして家族との命の選択を投げ出した
槙島はある人物のサイコパス色相を片手間に見ていた
興味深そうに笑みを浮かべ咲良の髪の毛を掴む力を強めた
「君には期待していたんだが、残念だったよ
花橋咲良」
地下奥深くへとさらに進む
そして暫くすると何も無い、ただただ錆びきったやけに広い空間にたどり着く
障害物も何も無く、音が声がかなり響く
まるで音楽ホールのような空間だった
「さて、君は僕との約束を果たせなかった
…よく目を見開いて見るんだ」
しゃがみこむ咲良の顎を乱暴につかみ
目の前にスクリーンを出す
既に死んでいる父親
そして隣にはまだ生きている母親と弟の姿が
しかし、弟は先程体を傷つけられ口元を覆っていたテープも外され
泣き喚いていた
「……命が失くなる瞬間を」
槙島が部屋の隅にいたチェ・グソンに合図を送る
そしてデバイスを操作した瞬間
母親の首が吹っ飛び、血飛沫が辺り一面に散る
首に取り付けられた爆弾、よく見ると同じようなものが
弟にも取り付けられていた
首、そして脚に
咲良は取り乱し悲鳴を上げる
容赦なく槙島は顔を逸らす咲良の頭を掴み
スクリーンに向ける
「あとは君が溺愛していた弟……」
槙島は笑みを浮かべ咲良の耳元で囁く
「……君のその弱さが
家族の命を奪うんだよ」
刹那、吹き飛ぶ肉片
咲良は声を出すことすらできない
声にならない狂ったような唸り声を上げ
床に頭を擦り付けた
「ゥァアアア……あぁあ……はァァァ……あ……」
その姿を目にして嘲笑う槙島
そっと懐から一冊の本を取り出し
項垂れる咲良の目の前にしゃがみ込めば
咲良に問いかけた
「君は司馬遷の『史記列伝』を読んだことがあるかな?」
咲良は息を荒くするだけで項垂れたままだった
「中国前漢時代の史書、宰相や武将、老子や孫子
韓非子、哲学や思想系の人物を取り上げた伝記なんだが
その中に面白い文節があってね」
ペラペラと紙をめくり
咲良の耳元で読み上げる
「一人が死に、一人がいきのこっているときにこそ
友情がどんなものであったかが知られる。」
ゆっくりと顔を上げる咲良
槙島の言葉に表情を引き攣らせる
「司馬遷の有名な言葉でね
貧富の差や貴賤の差が生まれたときの態度、
その時に本当の友情が分かると文は続くんだが、
逆にそう言った似たような出来事を経た後でも
君たちは真の友情だったと、言いきれるかな?」
槙島は咲良の心臓部分に起動している爆弾を
指でコツンと触れる
No.1はキーが見つかっていない爆弾だった
「狡噛舞白、本当に惜しい
残念ながら最後のキーを見つけられていないんだ
…きっと兄なら気づけていたはずた」
咲良は自分の置かれている状況を理解すれば
恐怖で体が震え始める
「ありがとう、お礼を言うよ
僕の目的の手段になってくれた君を
僕はきっと忘れないよ」
「あ……ぁあ……」
「さあ、君の親友のお出ましだ
真の友情とやら、見させてもらおう」
耳元に響く槙島の声
妙に甘く、余裕のあるような声
そう、この声に操られ続け騙された咲良
背後から足音聞こえる
槙島は咲良の腕を強引に引くと
そのまま自分の体に背後から引き寄せ
首筋にナイフをあてがった
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「……ッ……まだオフラインか……」
ノンストップで駆け抜ける宜野座
途中で犬型の妙なロボットが破壊された跡を目にし
ただならぬ雰囲気にさらに焦りを見せていた
未だドミネーターを始め
あらゆるデバイスは利用できない
悔しそうに顔を歪め無我夢中で走り続けると
明らかに誰かが入ったであろうドアの痕跡をみつけ中に入る
暗闇が続く長い廊下を抜けると
生暖かく湿ったやけに広い空間にたどり着く
ところどころ灯りが見える、
それは舞白が拾得し利用していたケミカルライト
間違いなくここで何かがあったと察知すれば
宜野座は痕跡を辿り迷路を駆け抜ける
そして暫くすると人影が見えた
それは狡噛だった
力なく地面に仰向け倒れており
なんとか息をしている状況だった
「おい!狡噛!!一体何が……」
応急処置を施しながら声をかけるも
反応が無い、
地面にころがっている猟銃、そして姿が見当たらない舞白
「……ギ、ノ……」
突如、狡噛はなんとか意識を取り戻したのか
宜野座に呼びかける
「…………ッ……
……しろ……、ま、しろ……
この……さき……」
フラフラと腕を上げ
舞白が消えた方向を指さす
宜野座は指を指す方向に目をやると
広がっていたのは暗闇
「……舞白がこの先に?」
こくりと頷く狡噛
「……マキシマ……」
マキシマ、そう呟くと力無くだらりと再び意識を失う
なんとか呼吸はしているがかなり危険だった
「クソっ……どうしたら……」
その瞬間、宜野座の手首のデバイスに通信が入る
常守朱、callの文字
どうやら妨害電波を破ったのかオンラインに戻っていた
「「宜野座さん!オンラインに戻りました!
既に位置情報も掴んでます、応援を……」」
「ありったけのドローンを投入しろ!
狡噛が負傷、かなり危険だ
舞白と花橋咲良の安否も不明、どうやらデバイスが壊されてる
……俺は直ぐに後を追う!とにかく直ぐに応援を!!」
戻った回線に安堵する宜野座
これで安心して先へと進める
「…狡噛、あとは俺が……」
宜野座はその場から駆け出し
奥深くへと進んでいく
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