White and white(PSYCHO-PASS) 作:鈴夢
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叫び声、喚き声
向けられる銃口、恐ろしい犬型のロボット
倒れる兄、
友に向けられる刃、
友が目の前で無惨に飛び散る肉片
最初から持っていた鍵
「「一人が死に一人がいきのこっているときこそ
友情がどんなものであったかが知られる」」
槙島が舞白の首にナイフをあてがい
妖しく微笑む
「「さあ、次は君だ」」
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「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁ!!」
突然悲鳴を上げ両手で頭を抱え込む舞白
あの時の記憶が夢に鮮明に現れては
パニックを起こしていた
「舞白!しっかりしろ!おい!!」
必死に舞白の肩を揺らす狡噛
舞白はただ天井を見上げ放心しているようだった
「舞白さん!
…すぐに医務官を…」
「あぁ、頼む」
慌てて部屋を飛び出す常守
狡噛は舞白を優しく抱き締め落ち着かせようと
背中を摩る
事件から5日経過
狡噛は一昨日完全復活するも妹の舞白は
精神的ダメージと傷が深く、まだベッドから動けない状況だった
万全な管理下に置くため、厚生省ノナタワーの一部にある
専用の病室で舞白は管理されていた
そしてたった今、5日ぶりに意識を取り戻したと思えば
突如上げた悲鳴、犯罪係数、色相共にWhite
全く意味不明な精神状況に誰しもが不思議がっていた
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すぐに医務官と分析官の唐之杜が部屋に訪れれば
サイコパス色相などのより細かな検査が行われた
舞白はその間、何かを呟いていた
「…私が……私のせいで…
……殺した……」
「舞白ちゃん、落ち着いて、もう大丈夫だから
…ね?」
唐之杜が優しく背中を叩きながら宥める
そして安定剤が投入されれば少しずつ舞白の乱れた脈が落ち着いていく
その光景をガラス張りの病室の外から眺めていた
狡噛、常守、宜野座
「…ギノ、この様子を見て
まだメモリースクープをやるとお前は言うのか」
狡噛は舞白に視線を向けたまま
いつもよりトーンの低い声で宜野座に問いかける
「やらなければ、本当に死ぬぞ
次は舞白かもしれな…」
突如狡噛が宜野座の体を壁に押し付け
腕を首に押し込む
「ちょ、ちょっと!狡噛さん!落ち着いてください!!」
常守が止めに入ろうとするも
狡噛は言うことを聞かない
「舞白はここにずっと縛り付けておけば良いだろ?あぁ?
俺たちが守ればいい、犯人なんてその内捕まえて…」
「っ…そういう訳にもいかないだろ!
あいつにもあいつの生活がある、このままここに一生閉じ込める訳にも…それに相手はいとも簡単にあんな事を容易にできる相手だ、
……どんな奴か分からん以上このまま…っ」
更に力を入れる狡噛
すると背後でドミネーターを構える常守の姿があった
「狡噛さん、すぐに宜野座さんを離してください」
悔しそうに顔を歪め、
宜野座を押さえつけていた腕を離す
床にそのまま座り込み激しく咳き込む宜野座は
狡噛の背後を睨みつけた
「お前の気持ちは百も承知だ、でも冷静に考えろ
帝都ネットワークの会長をもいとも簡単に操り、この事件で死んだ人数は5人、それもたった数時間でだ
……その真犯人の姿を見たのは舞白だけなんだ
…槙島が本当なら、佐々山の事件の事も…」
狡噛は拳を強く握る
そして無言で舞白のいる部屋に入り
唐之杜達と話す様子を伺えた
「宜野座さん…」
常守が手を差し出すも宜野座は溜息を吐けば
そのまま俯く
「……俺だって、させたくないさ
分かるだろう、狡噛…」
悔しそうに声を絞り出せば
狡噛と同じく拳を強く握りしめていた
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舞白が目覚める2日前
厚生省 局長室
急遽呼び出された宜野座は
局長室へと脚を運ぶ
「で、あの娘の容態は?」
淡々と話す公安局局長 禾生壌宗
切れ長の瞳からはいつも読み取れない感情
いつも宜野座を呼び出しては
一係の状況を掴んでいた
「はい、緊急手術を計2回実施、サイコパスには異常なし
ですが、まだ目を覚ましません
医務官曰くまだダメージが残っているのか昏睡状態が続く可能性が高いと」
「そうか、なかなかまだ情報は引き出せそうにないな」
局長は椅子から立ち上がると
外の景色に目を移す
そしてしばらくすると宜野座へと向き直る
「意識が戻り次第、すぐにメモリースクープを実施するように。
フェイスレコグニションで相手の面を割れば
すぐに捕まえることなんて容易い」
「…ですが、本人の精神ダメージが大きいと判断されれば
かなり危険かと…」
局長の顔つきが険しくなる
「君の仕事はなんだね、宜野座監視官
可愛い妹を潜在犯にさせるのが怖いか?」
「………そういう訳では…」
「もう一度聞こう、君の仕事は?役目は?」
宜野座の体に力がぐっと入る
ギリッと唇をかみ締め、何とか落ち着かせようと
小さく深呼吸した
「厚生省公安局刑事課で執行官の監視、指揮を担い、
捜査活動の全責任を負う刑事…
国民の生活を…より健やかな…」
途中から言葉を詰まらせる宜野座
「君らしくないね、宜野座監視官
……まあいい、とにかくこれは局長命令だ
兄の狡噛慎也が暴れたら容赦なく捌け
娘は縛り付けてでもメモリースクープを行うように」
以上だ、と
いつものように素っ気なく言えば
また席へと戻る局長
宜野座は何も言い返せないまま
部屋から飛び出した
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