White and white(PSYCHO-PASS) 作:鈴夢
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犯罪係数 上昇なし
色相はWhite
メモリースクープ中、本人の体に
反応はあったものの精神状況は一切揺れ動かなかった
「…無事、犯人の面が割れたようでよかったよ
宜野座監視官」
満足そうに資料を目にする局長の禾生壌宗
宜野座はどのとなく不安気だったが言動には出さない
「はい
…対象の槙島聖護ですが今までの事件の余罪が複数あります
報道して一気に捜査を…」
「その必要はない」
手にしていた資料を机に置けば両肘をつき宜野座に目を向ける
「しかし、せめて今回の花橋一家の件は報道しなければ…
失踪のまま世間に公表するおつもりですか?」
「2度は言わないよ、宜野座監視官
…前回の事件を含め世間に公表する気はない」
禾生の妙に冷めた、鋭い声色に言葉を詰まらせる
「あぁ、あの娘、狡噛舞白に関してだが
メモリースクープにも動じなかった強靭の精神の持ち主だったとか」
禾生がスクリーンに舞白のIDを映し出す
ありとあらゆる情報が映し出され宜野座も目を移す
「………この娘…」
禾生が一瞬目を細める
しかしすぐにスクリーンから目を離し
かすかに笑ったような気がした
「……狡噛舞白がなにか?」
不思議に思った宜野座が禾生に声をかけるも
"いいや、なんでもない"と呟く
「宜野座監視官、一刻も早く
槙島聖護の逮捕、期待しているよ」
宜野座はいつも通り返事をすれば
命令に従う
しかし舞白の事を話した禾生の表情が
やけに笑みを浮かべていたように見えたと感じ
不信感を抱いていた
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メモリースクープ実施から2日後
元の体調をすっかり取り戻し自宅に戻る許可画下りた舞白は
嬉しそうに最後の検査を部屋で受けていた
「オーケー、バッチリね」
血液検査や傷などの諸々の検査をクリアし
唐之杜が嬉しそうに微笑む
しかし、肩や腹部に残った傷痕は痛々しいものだった
「よかった〜、明日から学校にも戻るつもりですし
…あ!さすがに部活は禁止ですよね〜」
舞白はへへへっと笑いながら着衣していく
"絶対安静ね"と念押しされれば頬をふくらませて残念そうにする
「無理はダメですよ舞白さん
それ以上お兄さんを心配させたら、
狡噛さん、きっとここから脱走して家まで行っちゃいますよ」
常守もそんな舞白に注意をし
誰よりも兄が気が気でないことを伝える
「本当に、いつまでも過保護すぎて
…家の警備ドローン、めちゃくちゃ増やしたり
前より監視されそうで怖いんです、もう…」
引越しまで勧められたが断固拒否した舞白
兄としてはもっと警備が固く、人が多いところに住んで欲しいと言われたが
海沿いの静かな場所、何より昔から兄と一緒に暮らしていた家から離れたくなかった
「お兄ちゃんが今日たまたま仕事で来れなくて良かったです
…なんだかんだこの期間、すごく楽しかったので」
兄と頻繁に会うことも出来て、
なかなか会えなかった一係の執行官のメンバーも
代わる代わる様子を見に来てくれたり楽しかったと
心の底から思っていた
「秀星が昨日、髪の毛染めてくれたんです!
根元が黒くなってて、気にしてたらわざわざ本物の染め粉持ってきてくれて…」
つんつんと白髪を指さす
綺麗に光を帯びた艶のある髪の毛は
昨日縢が染め直してくれた
「あとは…六合塚さんが綺麗なピンクのマニキュア塗ってくれたり、征陸さんも私が暇しないようにって好きな本持ってきてくれたり…」
常守や唐之杜も毎日のように顔を出してくれて
家に1人でいる時より断然楽しかったと伝えた
「お兄ちゃんとも、前一緒に住んでた頃みたいに
たくさん話すことも出来て、嬉しかった」
少し恥ずかしそうに微笑む舞白
「…あとノブ……宜野座、さんも…」
いつもノブ兄と呼んでいたのに急に
真面目に苗字を口にし違和感を感じる2人
おそらく、誰よりも顔を出してくれて
兄と同等に心配してくれた宜野座
…部屋に来たことは言うなと口止めされていたのを思い出し
言葉を詰まらせる
唐之杜は何かを察したようにケラケラと笑い出すと、不思議そうに常守が首を傾げる
「へ〜、なるほどね〜
みんな、舞白ちゃんが可愛くて仕方ないのよ」
恥ずかしそうに目をそらす舞白
そしてゆっくりとベッド際の椅子から立ち上がれば
ぐーーっと伸びをする
「じゃあ、長くここにいるのも申し訳ないですし
家に帰ります
……本当にお世話になりました」
深々とお辞儀をする舞白
久しぶりに袖を通した私服が少し恥ずかしく感じていた
3人は部屋から出ると廊下に立っていた
予想外の人物に目を見開いた
「ぎ、…宜野座さん?今日非番ですよね?」
廊下の壁にもたれていたのは宜野座
完全にオフの姿で現れれば
常守が驚いた様子で声を上げた
「病み上がりの奴を1人で帰らせる訳にはいかないだろう、局長命令だ」
((そんな局長命令有り得ないでしょう))
と、常守も唐之杜が心の中でぼやく
唐之杜はクスクスと笑えば舞白の背中を押す
「まあ、今日残念ながら慎也君は仕事で来れなかったし
局長命令に従っときなさいな、舞白ちゃん」
「たしかにまだ9月といえど暑いですし、送ってもらった方がいいですね」
「…あ、朱ちゃん
そういえば急を要する案件があったの思い出したわ
分析室に来てくれない?」
唐之杜がありもしない話を口にするとそそくさと2人は
舞白達から離れていく
「じゃあ、またね舞白ちゃん」
「狡噛さんには家に着いたら連絡してあげてくださいね!」
そして2人は姿を消す
そしてなんとなく気まずい2人
「…私ひとりで帰れるよ?」
「大怪我した奴を放っておけるか」
「……お兄ちゃんじゃあるまいし…」
「お前の兄と一緒にするな」
ほら、送るから来い
とぶっきらぼうに言われると
ツンとしていたが大人しくついていく舞白
地下駐車場までなんとなく無言で歩く2人
そして宜野座の自家用車に乗り込んだ
「お前、その髪の毛、縢だな」
ぴかぴかとほぼ銀色に輝く髪の毛を指さす
明日から学校行くんだろう?呟けば呆れた様子だった
「ホロで隠すからいいもん」
「それにまたそんな短い…」
「お兄ちゃんみたいなこと言わないでよ本当に…
わたし華の女子高生なんですけど?」
兄と変わらない口うるささにムーーっと口を尖らせる
文句を垂れながらも車を動かせば
舞白の自宅へと車を走らせる
「引越し、断ったんだってな」
しばらくすると宜野座が口を開く
舞白は窓を開けて外の景色を見ていた
「あの場所は立地は悪くないが警備は都心に比べると薄い、
できるだけ警備が手厚いマンションなりアパートなり引っ越すべきだ」
淡々といつも通り話す宜野座
そんな相手に少し不満そうな表情を浮かべていた
「あの家はお兄ちゃんと過ごした家だから離れたくない
それに、警備ドローンも増やしたし、
学校もできるだけ公共交通機関使うつもり」
今までほとんど自転車移動だったが
さすがに事件のこともあり危ないと思えば当たり前の考えだった
「……もう何も隠し事はないか?舞白」
僅かに動揺する舞白
頭の中には槙島の言葉が過ぎる
「何も無いよ?どうしたの?急に」
僅かな反応に気づかないわけが無い宜野座
程なくして車から見える景観が海や自然の見える場所に
宜野座は車を海沿いの道の傍らに止めると
ハンドルを握ったまま俯く
ずっと沈黙だった宜野座を心配そうに見ながら
肩をとんとんとんと叩く
刹那、宜野座の左手が
舞白の肩に伸びる
大怪我を負い、袖から伸びる白い腕に
痛々しい痕が見えていた
その傷を隠すように手を乗せる