White and white(PSYCHO-PASS)   作:鈴夢

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傷痕、本当の姿

 

 

 

「かっこいいでしょ?刺青みたいで」

 

宜野座に触れた傷をグイッと見せつけるように

腕を持ち上げる

 

しかしその顔はどことなく無理をしているように感じていた

 

 

「無茶をしすぎだ、お前は

…ただでさえ、あんな…」

 

"悲惨な経験をしているのに"と言おうとするが口を閉じる宜野座

普通の人間なら即セラピーを受けないと精神をたもてられないような状況に、この娘は何事も無かったように日常を送っている

 

 

「私、濁らないから、色相」

 

へへへっと笑みを浮かべ視線を広がる水平線へと向ける

穏やかな波の音、綺麗な青空、

9月中旬をすぎれば気持ちのいい風を窓の外から感じていた

 

「そこは兄妹で不思議だよね?

何でなんだろ、本当に不思議…」

 

読み取れない舞白の本当の色相、サイコパス

誰もが彼女の本音を読み取ることは出来なかった

 

幼少期からやけに濁りにくいと宜野座も感じてはいたがやはり異常だと、今回の事件を通して実感していた

いい事のように思えるが、逆に数値化されたこの世界では彼女の真の姿は見据えにくくなっていた

 

「……相手のあらゆる精神状態を数値化できるこの世界は統制も取れやすく便利だと思っていたが、違うな、

……俺は一生、お前の本当の姿を、気持ちを汲み取ることはできないんだろうか」

 

いつもの宜野座との様子が違い

海に向けていた視線を宜野座へと移す

 

「お前は何を考えてるんだ」

 

宜野座の言葉にちいさく笑みを浮かべる舞白

相手の手がゆっくりと自分の頬を包む

 

「…復讐、だよ」

 

舞白がそう呟くといつもの天真爛漫さを伺えない宜野座

その表情を見てゾクッと背すじが震え、なんとも言えない感情が芽生える

 

 

「でもね、ノブ兄

私は誰にももう迷惑はかけないから、大丈夫」

 

宜野座の手を優しく握り頬から下ろす

 

「私、お兄ちゃんの妹だから

…いつもはこんな感じだけどノブ兄が見ていた私とは本当は違うと思う」

 

冷徹、厳格、ぶっきらぼう

正義感と良識も持ち合わせ、野性的な兄

 

大切な友人の命を残虐に奪われ

悲惨な経験をしてきた本人にも正直どれが本当の自分が混乱していた

 

 

「ねぇ、もし私が

シビュラに反する行動をもし起こしたら

その時はノブ兄が私を殺してね」

 

宜野座が掴んでいた手を掴み返し

自分の首元へと持っていき

白く細い首を掴ませるような仕草をする

 

 

「……舞白?どうしたんだ…いきなり…」

 

光に照らされる白髪

やけにその姿が槙島聖護と重なってしまう

 

「私はただただ、もう大切な人を失いたくない」

 

パッと手を離すと宜野座は突然変貌した舞白に動揺していたのか

呼吸が荒くなっていた

そんな様子の相手を見ると舞白はクスクスと笑う

 

 

「なーんて、びっくりした?

…ノブ兄動揺しすぎだよ?」

 

打って変わってケラケラといつものように笑い出す舞白

刹那、宜野座の腕が舞白に伸び、抱き寄せる

 

 

「頼むから、お前は…お前のままでいてくれ

…ただ白いだけだ、それがどうした?それがお前だろう」

 

「………私、何色に見えてる?

本当に白い?」

 

ぎゅうっとさらに力を入れる宜野座

しかしその問いにハッキリと何も言えなかった

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

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