White and white(PSYCHO-PASS)   作:鈴夢

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不可思議な命令

 

 

 

「僕と君は同じなんだよ」

 

槙島の神妙な顔が舞白に近づく

舞白と同じ白髪の毛先がゆらゆらと目の前で揺れ動く

 

 

「私は人を殺したりしない、あなたとは違う!」

 

その言葉に笑みを浮かべれば、パッと顔を離す

 

「どうだろうか?

…君は少なくとも躊躇することなく人を殺すことは出来る

やることは…お兄さんとそっくりだね」

 

2ヶ月前、躊躇する事無く

槙島に発砲した舞白、もう少し軌道が合っていれば

確実に槙島は死の淵をさまよっていたに違いない

 

「……ゆっくり、君とまだまだおしゃべりを続けたいが

時間もなくてね、

続きは後だ、君は僕と一緒に来てもらうよ」

 

槙島の体が離れると舞白はゆっくりと体を起こす

すっかりと部屋が冷えきっていれば身震いする

 

 

「僕は君を殺したりしない、むしろ助けに来たと言っても過言ではないね」

 

槙島は着ていたロングジャケットを舞白に投げる

そして暴動事件の動画で見た全く同じ形のヘルメット

浜辺で起きた事件の時とは少し形状が変わっていた

 

 

「シビュラシステム

…残念ながら僕達はシステムに追われてる身でね、

最近、奇妙なことが君の身に起こってないかい?」

 

「……奇妙……」

 

ふとテーブルの上の紙に目を向ける

空白しかない職能適性の結果

 

 

 

「目的地に行くまでに教えてあげるよ

シビュラシステムの本当の姿

……そして、僕たちの行く末をね」

 

ヘルメットを渡されると被るように促される

どっちみちここで逆らえば自分は殺されるか、

そして槙島の言葉に妙に共感してしまった自分、目の前に友人を殺した張本人がやっと現れたのに、不思議とこれ以上手が出なかった

 

そして同時に、この男の隙を見つけ、

殺すチャンスがあるかもしれないとヘルメットを被る

 

 

「さあ、行こうか」

 

槙島は舞白の肩を抱き、外へと出る

ヘルメットのせいなのか、槙島が何かしら手を打っているのか不明だが警備ドローンは2人を無視し通り過ぎて行く

 

そして2人乗りのバイクに促されると舞白は跨り

槙島と共に姿を消す

 

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・

 

 

 

2人が立ち去った5分後、公安局の車両が舞白の住むマンションの前へと辿り着く

 

オートロックの門を解除し、急いで舞白の住む部屋へと駆け抜ける

 

 

宜野座、常守、狡噛、征陸、六合塚

縢は昨夜の事件から行方不明、二係が調査している最中だった

 

 

5人は部屋の前に辿り着くとドミネーターを構える

ドアノブに手をかけると施錠はされておらずすんなり入ることができた

 

 

「舞白!」

 

狡噛が先陣を切って部屋に入るも

中はもぬけの殻

広いリビングは荒れた痕跡があり、鑑識ドローンをすぐさま起動させ手がかりを探る

 

 

「……酷い荒れ様だな」

 

征陸が割れた花瓶や倒れた家具などに目を向けると眉を顰める

 

「かなり揉みあった形跡が

……でも、血痕などは見つからないし

怪我をしていなければいいんだけど……」

 

鑑識ドローンの鑑識結果をデバイスで見ながら

呟けば机の上に不自然に紙が置かれているのに気がつく

 

それを察した常守がその紙の内容を見ると

驚いた表情をしていた

 

「常守監視官、何かあったのか?」

 

「…職能適性、舞白さんって全省庁A判定でしたよね」

 

いきなりなんだ?と顔向け

宜野座と狡噛がその紙の内容を見れば目を見開く

 

「なんだ、この職能適性結果は……

全部空白……」

 

狡噛が前見たデータとは全く違い意味不明だった

 

結果が開示された日は今日の日付

こんな結果内容は目にしたことがなく、空白なんて有り得なかった

 

「舞白ちゃんのデバイスも御丁寧に取り外しされてる

……防犯カメラは全て破損、街頭スキャナーには何も反応無し、こんなことが出来るのは槙島聖護だけってか」

 

征陸が各データを確認するも全て潰されていた

今までの事件を踏まえてこんなことが出来るのはただ1人だと

 

「部屋に残ってる足跡は2人分、真新しそうな足跡

……抵抗してるような跡は無いし、無理やり連れ去られたりしてるならこんな日はっきり足跡は残らないはず……」

 

ありとあらゆる箇所を鑑識ドローンで調べるも

やはり何処にも手がかりになるような痕跡は見つからなかった

 

宜野座は倒れ割れている写真立てを拾い上げる

舞白が小学生の時、宜野座が家に遊びに来た時の舞白とのツーショット写真だった

 

ニコニコと無邪気に笑っている舞白、親指でその写真をそっと撫でる

 

「……一体、何があったんだ、舞白」

 

宜野座がそう呟いた瞬間、

部屋に突如現れた禾生壌宗局長

 

突然の状況に5人は驚きを隠せない

 

「……宜野座監視官、君に話がある

ちょっといいかな」

 

「…はい」

 

名指しで呼び出され心配する3人

それを背に、宜野座は部屋の外へ出るとマンションの下に停められていた車へと乗り込んだ

 

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・

 

 

 

「…槙島聖護が逃亡に至った経緯をご説明願います」

 

車内にて、口を開いた宜野座

それに続き局長も口を開く

 

「厚生省内部から、何らかの手引きがあった可能性が極めて高い、そうでも無ければ逃亡等不可能だからね」

 

局長の視線が宜野座へと向く

 

「真相は槙島自身の口から直に聞き出すしか他にない、よって再度槙島の身柄確保を確保するにあたっては、その命を脅かさないことを最優先の配慮をしてもらう、あらためて君たち一係に任せよう」

 

淡々と口にすれば

最後、思いもよらない言葉を続けた

 

 

「…そして、共に行方を眩ませた

狡噛舞白についてだが、

確保した際、即厚生省の機密機関に引き渡してもらおう」

 

「!?

……それは何故ですか?

説明をしてください!」

 

宜野座の返答に大きな溜め息を零す局長

呆れたように額に手を添えて言葉を続ける

 

「……宜野座監視官、

縢執行官の逃亡を許したのみならず、

その捜査すら行き詰まっている状況だ

…そこに槙島再逮捕、及び狡噛舞白の保護という優先事項が割り込んだことで、君は自らの失態をうやむやにする絶好のチャンスを得たはずだ」

 

局長の言葉に眉を顰める宜野座

しかし言い返すことは出来ない

 

「これは一係への私なりの評価と助け舟…

その辺の親心を察してもらいたいものだね」

 

「しかし…なぜ狡噛舞白、」

 

「それと執行官の狡噛慎也、

あの男は今回の任務から外し、厳重な監視下に置くように」

 

ただでさえ縢も行方不明、人不足は深刻

狡噛も外されれば捜査などさらに困難を極めることに

 

「どういうことです?」

 

「……言ったはずだよ

槙島聖護の身の安全、狡噛舞白の保護の最優先の配慮をしろと

……私情を挟まれると厄介だと思わないかね?」

 

確かに、狡噛なら何をするかだいたい予想が着く

槙島を殺し、妹の舞白を訳も分からず引き渡すわけが無かった

 

ギリッと歯を食いしばる宜野座

しかし逆らうことはできない

局長命令には――

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

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