White and white(PSYCHO-PASS)   作:鈴夢

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やるせない気持ち

 

 

・・・・・・・・・

 

公安局 刑事課一係

 

1度全員が戻り、局長から課せられた今後の捜査方針、そして誰が何を行うのか宜野座が仕切っていた

 

「縢の追跡操作は今後も二係に委譲したまま、われわれ一係は槙島聖護、狡噛舞白の追跡を担当する」

 

そして宜野座は狡噛に向けて言葉を発する

 

「…狡噛執行官は公安局内に残れ

唐之杜分析官と共にわれわれのバックアップを担当してもらう」

 

常守が驚いた表情をすれば狡噛の様子を伺う

狡噛は何故だと言わんばかりに表情に表していた

 

「これは、局長命令だ」

 

その瞬間、狡噛が宜野座に掴みかかる

 

「局長命令で俺を外せなんて、妙な話だと思わないか!?

…それにどういう事だ、なんで舞白を保護したとして厚生省の機密機関に引き渡す必要がある?」

 

「狡噛さん!落ち着いて……」

 

ここにいる誰しもが思っていた

槙島はともかく、なぜ舞白を機密機関に引き渡す必要があるのか?

誰しもが納得するはずがなかった

 

「何より重要なのは槙島の安全でやつの再犯を阻止するのは二の次、逮捕ではなく身柄の保護……おかしいだろう……」

 

掴んでいた宜野座の襟を離せばやるせない気持ちを吐き出す狡噛

 

「上の連中は槙島を裁くつもりがない、もし仮に俺たちがまたやつを捕まえてきても局長はなにか別の目的に利用しようとしている

……そして、舞白に対してもだ、違うか?ギノ」

 

「何を根拠に……」

 

狡噛はポケットからタバコを取り出せば荒ぶった感情を抑えようと吸い始める

白い煙を吐き出し天井を見上げる

 

「やつが俺にかけてきた電話は聞いただろう?

"シビュラシステムの正体""妹に対しての興味、勘が当たっていた"

あいつは間違いなくそう言っていた

…槙島は俺たちさえ知らない内幕までたどり着いていたんだ」

 

狡噛は視線を宜野座へと移す

 

「ただのブラフだ!犯罪者の言葉を真に受けてどうする?」

 

再びタバコの煙を吐き出す

 

「誰か、シビュラシステムさえ意のままに操ってる何者かと

槙島は交渉したんだ

いつは結局槙島に出し抜かれ、

それで怒るどころかますます槙島に執着するようになった

……そして、舞白も何かに関わってる、巻き込まれてる」

 

宜野座が反論するように声を荒あげる

 

「シビュラはあらゆる機関から独立不干渉を保証されたシステムだ、そんな権限は誰も与えられてない!」

 

「……それが事実なのかどうか、おそらく槙島は知っている

身柄の拘束に護送車でなく航空機、しかも同乗していたのはドローンのみだ、何もかもが異常だ」

 

2人を宥めるように征陸が落ち着いた口調で声を上げた

 

「誰だって納得しちゃいないよ、コウ

機密区分だ、監視官だって答えは知るまい

お前は問いただす相手を間違えてる」

 

「……それもそうか……」

 

狡噛はやるせない気持ちをぶつけることも出来ず

部屋から立ち去る

それを追いかける常守

 

 

「私はもう少し現場の痕跡を洗います

…舞白さんの身辺で最近変わったことがなかったか…」

 

六合塚は自分のデスクに戻ると舞白の身辺を調べ始める

 

「……あぁ、頼む」

 

宜野座も自分のデスクに戻ると憤る気持ちをなんとか隠しながら槙島や舞白の捜索を始める

その様子をそっと征陸は見守っていた

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「狡噛さん!」

 

狡噛の背中を追いかける常守

落ち着いているように見えるが感じる憤りを隠せない後ろ姿

 

「すべてがおかしい

…あらゆるスキャナーにも引っかからない、おそらくドミネーターをも弾き返す強靭の色相を持つ槙島、

現にヘルメットの暴徒達は全員槙島のサイコパスをそのままコピーしていた、お陰でドミネーターはただの鉄クズだ」

 

「…あの暴動の時、槙島を運良く私はねじ伏せました、

その後ドミネーターを向けてみたんです…

……槙島は裁けませんでした、犯罪係数は0、色相も真っ白で…」

 

槙島の隙を見てヘルメットで強打した常守

ドミネーターで裁こうとしたがその結果は驚くべきものだった

 

「シビュラで裁けない人間がいる、という事実そのものを上層部は潰しにかかってる

……でも何故、そこに舞白も巻き込まれる?」

 

2人は長い廊下を歩きながら会話を続ける

 

「舞白さんの件はたしかに不可思議な点が多すぎます

……そして改めて思い知りました」

 

エレベーター前に辿り着くと2人は立ち止まり、向き直る

 

「正義の執行も秩序の維持も、私はどっちも大切だと思います」

 

狡噛はエレベーターのボタンを押し常守に問いかける

 

「…法の外側にいる人間に何をどうすれば収まりがつくと思う?」

 

「今回ばかりは特例措置で、

もう一度昔の制度に立ち戻るしかないと思います

…起訴して法廷を開いて弁護もさせて、その上で量刑をするしかないのでは……」

 

「気の遠くなる話だ

お膳立てにどれだけ時間がかかることやら」

 

「でもほかに方法なんて…」

 

吃る常守に狡噛は答えを発す

 

「あるだろう?もっと手っ取り早く誰の迷惑にもならない方法が

……あの時槙島を殺しておけばよかった

あんたが手を下すのではなく、俺が最後のとどめを刺せば

監視官のあんたに人殺しはさせられない

……俺は舞白さえ、あいつさえ普通に生きてくれれば

他に失うものなんて何も無いからな」

 

エレベーターが到着すれば狡噛はゆっくりとした足取りで乗り込む

それを追うように常守はボタンを押したまま狡噛に言葉を続けた

 

「それは法の執行ではありません、ただ殺人犯が2人になるだけです

……そうなった時、舞白さんはどう思うのでしょうか

舞白さんはそんな事、絶対望んでません

それに、狡噛さん言ってましたよね

犬ではなく刑事として働きたいって」

 

「…舞白がどう思おうが、俺はあいつの兄だ

妹の人生が幸せであればそれでいい、俺がどうなろうと

……あんた、どうでもいい事を覚えてんだな」

 

狡噛は微かに口角を緩める

 

「どうでもよくありません!大切なことです…

……あの言葉のおかげで私はこの仕事を辞めずに済みました

それに、舞白さんにお願いされてるんです

お兄さんを、狡噛さんをよろしくお願いしますって……」

 

常守は以前、舞白とカフェで話をした時の光景を思い出す

狡噛と同じように妹も兄の無事を、幸せを祈っていた

その時の表情は忘れられるわけがなかった

 

 

「ねぇ狡噛さん…舞白さんの良き兄として

そしてこれからもずっと刑事でいてくれますか?

…そう私に約束してくれますか?」

 

狡噛は押し負けたようにため息を吐けば

"あぁ"と呟く

 

そしてエレベーターの扉は閉められた

 

お互いやるせない気持ちに肩を落としていた

 

 

・・・・・・・・・・・・・

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