White and white(PSYCHO-PASS) 作:鈴夢
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バイクで走ること小一時間
都心からかなり離れ山奥へと進んでいくと
ホロに覆われていない本物の自然が目の前に次々と現れる
そして、バイクは草木に囲まれた隠れ家のような白壁の洋風の家の前に停る
「ここは?」
舞白は辺りををキョロキョロと見回す
まるで童話に出てくるような、穏やかで美しい場所だった
「僕の隠れ家みたいな物さ
…あぁ、ここまでくればヘルメットも必要ない」
舞白のヘルメットをそっと外せばにこやかに微笑む槙島
その顔がやけに気味悪く感じる
「さぁ、お茶でも飲みながら
先程の話の続きでも……」
槙島に促され家の中へと入る
月の光が部屋に差し込み、複数の本棚、グランドピアノ、暖炉
まさに童話の世界そのもののように感じた
槙島はテーブルへと促し、舞白は椅子に座る
「僕の好きなハーブティーがあってね、それを淹れようかな」
人殺しとは思えない佇まい
本当にこの人物が咲良の家族を惨殺し、爆弾を体に取り付け無惨に殺したのか?
そう疑うほど、信じられないほど、普通の人間に感じてしまう
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そして槙島はシビュラの本当の姿を語り始めた
表向きでは、大量のスーパーコンピューターによる並列分散処理が行われている事になっているシビュラシステム
しかし真の姿は"人間の脳"そのものだということ
そしてその脳は「免罪体質者」のもの
人間は誰しも間違いや勘違いがあるように、
必ず理解できない人間が存在する、それが免罪体質者
色相は常時ホワイトで犯罪係数0の存在
そして、シビュラシステムは
「理解できない存在である免罪体質者」を取り込み理解の幅を広げていた
「僕もその一員にならないかと勧められてね
……しかし、僕は生憎審判やレフェリーに向いていなくてね」
華奢なティーカップを手に取り
良い香りが漂うハーブティーに口をつける
「そして面白いデータを見つけたんだよ
……どうやら、君もその審判側に回らないかと
お誘いが来ているようだ」
デバイスを操作し、舞白の目の前にとあるデータを映し出す
過去のサイコパスの上昇傾向や色相のデータ
沢山の文字が羅列されており全ては見ることは出来ないが
槙島の言うことが本当であればこの前の職能適性の突然の空白も訳が分かる
「君に数々の悲惨な光景を見させてきたが、やはり犯罪係数も色相も、免罪体質者にあたるとシビュラシステムは君を判断した
…まあ確かに、傍から見ていて君は異常だとすぐに気づいた、だから君に近寄ったんだよ」
舞白もハーブティーに口をつけると小さくため息を吐いた
どうやら、選択の余地はないらしい
槙島との行動を選ばず、あのまま自宅に居たとしたら
恐らく何者かに拉致をされ、脳みそだけ抜き取られていたかもしれない
少なくとも今の自分の行動は自分自身を生かすための行動だと
舞白は考えていた
そしてティーカップをそっとテーブルに戻す槙島
視線を舞白に向けると穏やかに微笑む
「僕と、この世界を壊さないか?」
月明かりが槙島を照らす
薄暗い空間でキラキラと光を反射する白髪
その光景がやけに男を神格化させているような感覚に陥りそうになる
「……私は……」
「僕達は公安局に捕まれば体諸共消され、脳だけ取り除かれるだろう
……そしてつまらない審判員として一生を全うする
そんな世界、つまらないと思わないかい?」
舞白は今までの何の変哲もない日常を思い出す
学校生活、友人達、兄やその同僚達、宜野座の姿
「……まあ、どっちみち君は僕に着いてくるしかない
面白い計画を立てていてね、君はしばらくここに居ればいい
僕はその計画のために少し席を外すよ」
そう言うと席から立ち上がり外へと繋がる扉に手をかける
「この部屋を好きに使うといい
そして、君が通報しようがしまいが任せるよ
…ただ、君がそのデバイスで通報した時、それは君の全ての終わりを意味する
……小一時間後、また迎えに来るよ」
そう言い残すと、槙島は外へと姿を消した
槙島のデバイスに触れる、しかし
もし通報し保護されたとしても
彼の言う通り自分は自分で無くなる
……だったら……
舞白はある考えを脳裏に浮かべるとデバイスをテーブルに戻し
傍らのソファに身を預ける
肌寒い室内、槙島のシャツに身を包んでいるものの
薄くこの時期には適していない
体を丸ませ、ごろりと寝転ぶ
やけに甘い匂いが漂う白いシャツ、
どんどん自分が洗脳されていくのではないかという不安が込み上げてきてしまう
「……お兄ちゃん、私がしようとしてることを
許してね」
ハーブティーで落ち着いたせいか強烈な眠気に襲われる
舞白はそっと目を閉じた
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