White and white(PSYCHO-PASS) 作:鈴夢
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一方槙島は
とある人物には会うべくアポイントをとっており
その人物の自宅へと向かっていた
「これ程驚異的な技術によって日々の食卓が賄われているというのに、そのことを認識している市民は少なすぎますね」
槙島の台詞に満足そうな表情をする小太りの男
男はソファに座りワインを片手に槙島にある事を語っていた
「まったく、昨今はどんな化学の恩恵も、さも当然のことであるかのように享受する連中ばかりでね、君のように関心を向けてくれる若者は本当に珍しいんだよ」
「嘆かわしいことです
現代の日本の食糧事情を成立させた立役者を
こんなふうに引退させたまま放置して1人にしておくなんて」
槙島はまるで勉強熱心な若者を振る舞い
男の発言にコクコクと頷く
男は管巻宣昭
元農林省管轄の研究所に勤務していた人物
引退後、ごく普通の年金受給者として暮らしていた
「僕が注目しているのはね
ウカノミタマ防御ウイルスの保安体制のずさんさですよ」
槙島は立ち上がると本棚へと歩みを進め
様々な本を手に取る
ハイパーオーツ、ウイルス拡散の脅威
ありとあらゆる文献がそこの本棚には詰まっていた
「ん?」
管巻は槙島の急な話の転換に疑問を浮かべた
「いくら善玉ウイルスとはいえ、シーケンサーへの入力しだいで攻撃対象を任意に変更できるなら……
害虫ではなく麦そのものを殺すように調整することも可能だ」
麦、即ちハイパーオーツ
極めて高い収穫効率を持つ遺伝子組み換えの麦で、
現在の日本において食卓にならぶ食品の99%は
このハイパーオーツから作られた合成加工食品となっていた
そして単一種に頼る食糧体制になっている
「ウカノミタマは収穫をもたらす豊穣の神から
死を運ぶ悪魔へと早変わりする」
「き、……君は……」
「おまけにウイルスの調整と配給を行う管理センターには
閉鎖された旧大学の研究所をそのまま転用しているという
まだ、サイマティックスキャンによるセキュリティが
実用化される前の施設だ」
槙島は男に背を向けたまま懐からナイフを取りだし言葉を続ける
「保安体制は暗証番号か生体認証が関の山、
これならかつての責任者であるあなたの手を借りて
簡単に突破できますよね?
…管巻教授?」
満面の笑みを浮かべ、槙島は男に襲いかかる
そう、生体認証に必要な
目玉を取り除く為に――
槙島はウカノミタマ防御ウイルスを使い
ハイパーオーツに組み替えたウイルスをばら撒くつもりだった
それは即ち、日本国民の虐殺を意味していた
日本の食料自給体制を崩壊、シビュラシステムの機能を停止
槙島は目玉をくり抜き、特殊なケースに入れると
満足気に笑みを浮かべる
「世界の崩壊といこうじゃないか、シビュラシステム」
再びバイクに乗り込み、舞白が待つ隠れ家へと戻る
目指すは巨大穀倉生産基地である北陸の研究所
そして2人を追っていた狡噛も
槙島の狙いを知ると同じルートを辿っていく
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