White and white(PSYCHO-PASS) 作:鈴夢
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再び施設内を駆け抜ける2人
すると物流倉庫のような空間にたどり着く
「……ッ…」
止まることなく走り続け
若干の疲労も溜まってきている舞白
先程から頭痛がひどくなってくれば目眩を起こす
「おや、もう限界かい?」
立ち止まるとその場にしゃがみこむ
「…あなた、私を最終的に
殺すつもりでしょう?」
共に、なんて嘘だ
だったらはなから爆発物を埋め込む必要はないはず
「……さあ、どうだろうか」
その瞬間、槙島と舞白の間に銃弾が弾ける
銃弾は明らかに槙島を狙っており2発、3発と続いて発砲される
「ハハハハッ!」
槙島は嬉しそうに笑いながら銃弾を交わす
そしてしゃがみこむ舞白の背後から現れたのは
「舞白、無事か?」
兄の狡噛慎也だった
「何もされていないな?」
しゃがみこむ舞白の背中に触れる
しかし、苦しそうな表情を浮かべている舞白に
異変を感じていた
「ここで待ってろ、すぐに常守達が…」
「ごめん、お兄ちゃん
私…公安局から逃げないと…」
ふらふらと立ち上がると兄の手から逃れるように体を離す
しかし、舞白は兄の異変に気づく
公安局が携帯するはずのドミネーターを持っていなければ、手には拳銃、手首にはデバイスさえ付けていない
「もう俺は公安局の人間じゃない、
…訳は分からないが、お前は俺から逃げる必要は無さそうだ」
どうやら本当の話のようだった
その言葉を信じ、兄を見据えていると
倉庫内に槙島の声が響き渡る
「ついに、まがい物の正義を捨てて
本物の殺意を手に取ったか
…やはり君は、僕が期待したとおりの男だった」
狡噛は調子の悪そうな舞白を肩で抱えながら
ゆっくりと歩みを進める
「そうかい!
だが俺は貴様に何の期待もしちゃいない」
「ここまで来て、つれないことを言ってくれるなよ」
狡噛は片手で銃を握り締め辺りを警戒する
槙島の姿は見えない
「いい気になるな!
貴様は特別な人間なんかじゃない、
ただ世の中から無視されただけのゴミくずだ
たった1人で人の輪を外れて爪はじきにされていたのを恨めしいんだろう」
槙島と狡噛の会話、舞白は静かに耳を傾けていた
「…貴様は孤独に耐えられなかっただけだ、
仲間はずれは嫌だって泣きわめいているガキと変わらない」
槙島は物陰に身を隠す
「面白いことを言うな
孤独だと?それは僕に限った話か?
この社会に孤独でない人間など誰がいる?」
狡噛は立ち止まると舞白から手を離し両手で拳銃を構える
…構える先に槙島の姿が?
舞白はコンテナに寄りかかり様子を伺っていた
「他者との繋がりが自我の基盤だった時代など、とうの昔に終わっている
誰もがシステムに見守られシステムの規範に沿って生きる世界には、人の輪なんて必要ない
…みんな小さな独房の中で自分だけかいらの安らぎに飼い慣らされているだけだ」
槙島の言葉が止まった瞬間、狡噛が発砲する
そして背後からの足音、
舞白の体は槙島に引かれ
気づけば頭に銃口を向けられていた
「チッ……」
酷くなる頭痛、そして槙島の力
本来であればなんとか回崩れそうな状況だが
今の舞白にその力はない
「ようやく、兄妹揃って会うことが出来て嬉しいよ
狡噛慎也、狡噛舞白…」
「……舞白を離すんだ、槙島」
狡噛はしっかりと槙島を捉える
「離してどうする?公安に引き渡すか?
…それはやめた方がいいね、妹を想うのならば…」
「何が言いたい?」
槙島はいつもの様に妖しい笑みを浮かべると
舞白の脳天に銃口を向ける
「僕達はね、シビュラから同じ人間の類だと判断されている」
「お前と舞白が同じなわけが無い」
トントンと銃口で舞白の頭を叩く
「僕は君たちにとても興味がある
だから最初から狙っていた
…対象的な兄妹、2人の行先は?」
舞白は更にぐったりとしてしまう
なんとか意識をハッキリさせようと歯を食いしばる
「ッ…舞白!」
「僕は君たち兄妹をとても好いているよ、
信じられないかもしれないがね
…昔からよく言うだろう?愛の反対は憎悪ではなく無関心
興味が無いのならわざわざ殺したり、痛めつけたりはしないんだ」
少し力が緩むのを感じる
((今しかない…!))
舞白は遠のく意識の中
全身に血を巡らせ、槙島の手元を肘で強打し
銃を離させる
「…君とは分かり合いたかったんだが…」
槙島は咄嗟に舞白の体を引き離し
何かスイッチを起動させた
その瞬間を見逃さなかった舞白
恐らく首の爆弾
突如、キイイイイインと耳元に嫌な金属音らしきものが響く
「槙島!!!」
狡噛は舞白が生み出した隙をついて発砲する
なんとか左肩辺りに命中するも致命傷には至らない
((なんとか首の爆発物を止めないと…))
金属音の後、ピッピッピッピッという音が頭に響く
段々とその音は間隔が狭まっていく
「楽しませてもらったよ、狡噛舞白
…さあ、君たち兄妹の希望通り
僕を殺せるかな?」
そう言い捨てると倉庫から立ち去る槙島
狡噛は放っておけず、何か必死そうに考え込む舞白に近寄る
もちろん、機械音は狡噛には聞こえていない
「…考えろ…考えろ!」
機械音のせいで狡噛の声は聞こえない、
何か必死に言葉を発している様子はわかるが
頭に響く機械音が声を遮る
「お兄ちゃん!何かナイフでも…
もしくは電気の通る…」
必死に訴えると狡噛は何か察したのか
予め用意しておいたスタンガンを取り出す
すぐにスタンガンを奪えば
深く深呼吸をする
「…待て、何するつもりだ!?」
その瞬間、舞白は思いっきり
しこりを目掛けてスタンガンをあてる
バチバチバチと鋭い音と共に舞白の体が激しく揺れる
((…一か八か…電撃をあててショートさせれば…
…ナイフでえぐり出した方がよかったのかな…))
その場に倒れ込み、半分気を失いかけていた
「おい!舞白!」
狡噛は舞白がしきりに触れていた首元に触れる
何か埋め込まれているような、しこりを見つける
槙島は何かを埋め込んで、それを止めようと、取り出そうとしたのか
そんなことを考えていると、背後から人の気配を感じていた
「…狡噛さん、動かないでください」
ドミネーターを構える常守
狡噛は舞白を抱き上げると深くため息を吐いた
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