White and white(PSYCHO-PASS) 作:鈴夢
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穀物が生い茂る地帯に人が通ったであろう道
そして血痕
その後を追いかける
夕日が沈んでいく
その前に2人に何とか追いつかなければ…
暫く進んでいくと2つの人影が見える
1つは跪き、もう1つはその相手に何かを向けていた
「……待って!」
舞白の声に反応する2つの影
跪いていた槙島はかすかに笑みを浮かべる
「君なら生きてここまでたどり着くと思っていたよ
よく土壇場で爆発を防いだね」
槙島は自分の首にトントンと触れ
さすがだ、と呟く
「嬉しいよ、これで揃った
…君たち狡噛兄妹に殺されるなんて本望だ」
槙島は既に戦意消失していた
抵抗する様子は全くない
「……舞白」
狡噛の隣に立ち、同じように拳銃を構える
兄はその姿を目にするも止めるような様子はなく
2人は同じように感情が読めない表情で槙島を見下ろす
「ずっと前から、私はあなたを探してた
…兄を…苦しめた張本人、マキシマ…」
全ての始まりだった、兄を潜在犯に陥れ
何年も苦しみ続けた
「でもね、憎くて憎くて仕方ないはずなのに、何でだろう
親友を殺した張本人なのに、憎みきれない」
片手で持っていた銃を両手で握りしめる
そして槙島は2人に向けて言葉を発す
「憎みや怒りは、愚か者の心の中にだけ存在するものだ」
銃を構える2人は清々しい程、気分がよかった
そして不思議と負の感情が湧き出ない
だんだんと夕日が遠くの山へ隠れていく
槙島はゆっくり目を閉じる
「そういえば、施設から爆発音が聞こえないね」
槙島は跪いたまま懐に触れると、入っていたはずの
爆発物の起動スイッチがない事に気づく
「爆発物はもう解除されたはず
あなたが隙を生んでくれたおかげで」
「最後の最後にしてやられたね」
「…詰めが甘いなんて、もう言わせない」
ハハハッと嬉しそうに声を漏らし、笑いを浮かべる槙島
「狡噛慎也、妹をこの世界から守れ
…それに値する人物だ」
「当たり前だ」
今までの行動で訳は聞いていないが何かを悟った狡噛
シビュラは元々ろくでもないものだと、そしてこの2人は
最終的にシステムに苦しめられ、今に至る
「君たち2人は、この世界には惜しい」
その瞬間、勢いよく風が吹き荒れる
槙島は両手を広げ顔を再び天へと向ける
そして2人は同時にトリガーを引く
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日が沈み、当たりは薄暗く
デバイスからの点灯を頼りに
狡噛達が駆け抜けた穀倉地帯を
常守を先頭に一係のメンバーも追いかける
「……狡噛さん…っ…舞白さん…」
常守は痛む傷を押さえつつ、宜野座に支えられながら
必死に、無我夢中に駆けていた
穀倉地帯を抜けた先に、倒れている亡骸
頭に2発、撃たれた跡
槙島聖護の亡骸だった
「…間違いない、狡噛と舞白の仕業だ」
宜野座はゆっくりと亡骸の近くにしゃがみ込み
眉を顰める
「……もう、手遅れか…」
征陸は2人が逃げたであろう道の先を眺めれば
悲しそうな表情を浮かべる
「足になりそうなものはすべて放棄されてます
追うことはかなり難しいかと」
地面には狡噛が使っていた無線機器など
追跡するために必要な物はすべて放棄されていた
六合塚はなんとか手がかりを探すも一切見つからない
「…常守…?」
ただ一点を、遠くを見つめる常守
ふるふると拳を震わせている様子を宜野座は心配そうに見据える
彼らは初めて出会うより以前から
ああなる運命だったんだろう
すれ違っていたわけでも、分かり合えなかったわけでもない
彼らは誰よりも自分たちを理解し
相手のことだけを見つめていた
「…狡噛さん…
……舞白さん…」
「お嬢ちゃん!」
常守は膝をつき、その場で泣き崩れた
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