White and white(PSYCHO-PASS) 作:鈴夢
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穏やかな波の音。心地よい潮風月明かりに照らされる2人の少女。
2人はお揃いのビーチサンダルを履いて浜辺を歩く。夏の静かな浜辺を歩くなんて"なんだか青春っぽいね?"、なんて呟く。
「海の近くに家があるっていいな〜羨ましい。毎日この景色とこの空気が吸えるなんて…」
大きく深呼吸をする咲良。舞白はその背中を見て穏やかな表情を零す。
「咲良だって六本木の高層マンションで景色も最高だし、マンション内に色んなお店もあって楽しいでしょ?それに面白いお父さんとお母さん、可愛い弟もいるじゃない?」
過去に遊びに行った時の記憶を遡り東京の夜景が一望できたのを思い出す
そして何より、家にホロアバター以外の誰かがいるという環境が羨ましかった。暖かい家族の存在、舞白は決して妬んでいる訳では無いが単純に羨ましさを感じていたのだ。
咲良はそんな舞白に向き直り、申し訳なさそうに駆け寄る。
「ごめん舞白…私…」
「あ…なんか言い方が悪かったね?別に変な意味じゃないよ?素直に咲良の家族がみんな暖かくて楽しそうだな〜って…」
勢いよく咲良の肩を掴んで引き寄せる舞白。そして2人は横並びになり、再び浜辺を歩き始めた。
「…なんだかさ〜、シビュラシステムがある癖に不公平に感じない?何もかも」
咲良は口を尖らせ、ムッとした表情で言葉を呟く。彼女らしくない言葉に舞白は無意識に首を傾げた。
「―――安全で人々が健やかに過ごせる世界。全てが数値化されて、色で判断されてその人にあった道をシステムが切り開いてくれる。…なのに、幼馴染は殺されて、なりたい職業も適性がなければ未来はないし結婚相手さえもシステムに選ばれる。」
「まあ確かに。咲良が言ってること分かる気がするな。」
舞白は立ち止まってふと空を見上げた。そしてその場で深呼吸すると咲良から腕を離し、浜辺に打ち寄せる波に近づいて行く。
シビュラシステム。
数値や色相を元に精神の健康状態・個人の能力を最大限生かした職業適性を示し、人々が最適で充実した人生を送れるように支援を行う包括的生涯福祉支援システム―――
進学や結婚、就職。全てにおいてシステムがその人にあった最善策を選んでくれる。
だがそれは本当に幸福と言えるのだろうか。
人は何を指針にし生きていけばいいのだろうか―――
「…でも、私たちには心があるでしょ?」
「心?」
「そう、心。」
トントンと胸元を手のひらで叩き、穏やかな優しい表情を見せる。それは月明かりに照らされてより彼女の美しさを際立たせているようだった。
「人に対する気持ち、想い、優しさ、…まあひっくるめて喜怒哀楽?みたいな?―――それは機械にシステムには奪われないよ。だから大丈夫。咲良のその気持ちがある限り、全部システムになんて奪われない。」
人には思考がある。
勿論システムにも思考は存在するだろうが"そういうものじゃない"。
人々はそれぞれ違う想いを持てるし、考えも何もかも"その人にしか分からない"思考を持つことが出来る。そして機械が持ち合わせていない"心"というものがある。
それは数値でも、色でも測ることはできない。
「それに!私は死んだりしないしずーっと咲良の親友だよ。…咲良がひとりぼっちだった私を助けてくれたのもシステムじゃないでしょ?咲良のその気持ちがあったから。」
「………気持ち。」
「ね?私たちの心はここにあるの」
トンっと咲良の胸を突くと優しく微笑む。そんな舞白を前に、咲良は泣きそうになりつつも必死に堪えて舞白の隣に歩み寄る。
「舞白の色相が"まっしろ"で綺麗な理由、わかった気がする。」
「何それ?ダジャレ?」
「もー違うよ!真面目に言ったの!」
へへへっといつもの様に笑う咲良。そんな舞白は再び咲良の肩に腕を乗せて引き寄せた。
「咲良の優しいライトピンクの色の理由も分かったよ」
「カワイイってこと?」
「うーん。そうかも〜」
「適当なこと言わないでよね〜」
じゃれ合うように互いに突き合う2人。
傍から見れば年頃の少女が夏の夜の浜辺で楽しそうにするその姿は微笑ましく映るだろう。
「―――よーし!早く目的地まで行って花火しよ!」
「ちょっ!暗いんだから気をつけてよ?」
大量の花火の袋を片手に勢いよく走り出す咲良。頼れる明かりは月明かりのみ。見失わないように咲良の後を必死について行く舞白。
そんな2人の近くで怪しい影が蠢いているとも知らずに―――
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