White and white(PSYCHO-PASS) 作:鈴夢
・・・・・・・・・
地図に載っていない秘密の浜辺。
洞窟のようなトンネルを潜った先にその場所は存在した。
美しい海が広がり機械的なものは一切なく自然だけで作られた世界。2人は警戒する様子はなく非現実的なその空間を楽しんでいた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
舞白はバケツに海水を入れ、咲良は手持ち花火をセッティング。そしてライターで付属のろうそくに火を灯すと夏らしい光景が目の前に広がる。
色とりどりの花火セット、バケツにろうそく。月明かりに照らされる浜辺に心地いい波の音―――
「すごいね?この花火セット。昔ながらというか…バーチャルじゃない本物って感じ。」
「お父さんが買ってきてくれたの。こういう花火はできる所が限られてるみたいだけどね?私からのちょっとしたお礼」
色とりどりの手持ち花火。2人はそれぞれ手にして火を灯すと独特な火薬の臭い立ち込め、綺麗な火花が舞い始めた。
「―――けほっけほっ…すごい、本物ってこんな感じなんだ…」
ツンとした臭いにむせる舞白。だが本物の火薬の臭いに感動し、それさえも気づけば気にならなくなっていた。
「うわー!!すごいね!?あっつい!!」
その隣では無邪気にはしゃぐ咲良。
まるで小学生の男の子?なんて例えたくなるような様子にクスクスと笑みを零す。
「咲良、怪我しないでよ?本物の花火で怪我して帰ったらお父さんとお母さんに怒られるの確定だし、ただでさえ心配かけまくってるんだからー」
相変わらず子供のようにはしゃぎ回る咲良。やけに幼く見えると思ったら
ツインテールにしてるせい?ピンクの淡いヒラヒラとしたワンピースを着てるせいか…。
The 女の子という例えがしっくりとくる咲良を羨ましく見つめ、自分の姿にガックリと肩を落とす。
染めた白髪に着古した白いTシャツ。同じく着古したタオル地の部屋着のショートパンツ姿……
こんなに対象的な私たちがここまで仲良くなれるなんて不思議すぎる。舞白は手持ち花火を見ながらそんなことを考えていた。
「ねーねー?手持ち花火が終わったらこれもあるから!」
やけに大きめのもうひとつの袋から取り出したのは筒型の花火。しかもそれなりの大きさだ。火をつけたら爆発するのでは?なんて嫌な想像をしてしまいそうな程な見た目の代物。
「いや、待って。さすがにそれはヤバいでしょ?どう見ても打ち上げ花火でしょそれ?吹き出したり、飛び出したりするやつ」
「さすがに打ち上げは目立っちゃうから、吹き出すタイプのやつだけ!」
ね?楽しいでしょ?とニコニコと微笑む咲良。すると更に興奮する咲良は手持ち花火を複数本持ち、くるくると回り始める。
「見て見て!綺麗でしょ〜?」
「もう咲良。危ないから気をつけてよ?スカートに火が―――」
その瞬間、舞白は異変に気づく。自分たちが抜けてきた方の道から人の気配を感じたのだ。
「舞白?――ほら!まだまだこっちにも…」
「咲良!こっちに来て!」
数メートル先離れている咲良。舞白は持っていた手持ち花火を投げ捨てて咲良の元へと駆け出す。
しかし砂浜に足を取られいつもの様に上手く走れない。舞白は眉を顰め、どこか不安そうな目を向けていた。
そしてその様子が変だと漸く気づいた咲良は顔色を変える。
「舞白!!後ろ!!」
声に反応し、咄嗟に後ろへ振り向くと長い鉄の棒を振りかざす男の姿が目に入る。しかし顔はヘルメットに覆われ確認できない。
「ッ!何ッ…あんた…」
舞白はなんとか脚で蹴り飛ばし、男を突き飛ばす。どうやら見た目の割に大した相手ではないようだ。しかし相手は武器になるような危険なものを手にしている。少女が立ち向かえるような相手では無さそうだ。
「ま…舞白……」
「何なの……この人達―――」
ヘルメット人間は1人じゃない。同じような見た目の男たちが次から次へと現れたのだ。
「…舞白…舞白っ…」
「離れないで。後ろにいて。」
怯える咲良を自分の背後に隠す。異様すぎる状況に流石の舞白も恐怖を覚えた。異様な姿の武器を持った男たち。嫌な事しか頭に浮かばない。
「……咲良…通報。」
「う、うん…」
舞白の指示通り、咲良はデバイスを操作するも画面には"オフライン"の文字。なぜか外部との連絡が取れないようになっており、妨害電波が張られている様子。
「何で…何で何で!?さっきまで使えてたのに!―――これじゃ……私たち」
刹那、ヘルメットの集団が一斉に2人に襲いかかる。舞白は奪った棒で交戦するも咲良を背に隠し、守りながらには限界があった。
「舞白!!嫌っ!!助けて!」
気がつけば、背後から別の男2人に連れていかれる咲良。必死に手を伸ばす咲良の顔は強い恐怖心に包まれていた。
「咲良!!」
舞白の行く手を阻む複数人の男たち。何とか得意の体術でねじ伏せるもキリがない。そして隙を見て舞白も何度かデバイスに触れるも電波は変わらずオフラインのまま。
防犯カメラや警備ドローンも居ないこの場所。完全に詰みの状況だった。
「いやぁあああああ!!やめてええぇぇぇぇ!!!嫌だ!助けて!ッ…助けてぇ!!舞白!ましろっ!!」
咲良の凄まじい悲鳴混じりの叫び声。咲良の方に視線を向けると男たちに押し倒され服に手をかけられている状態。それを目にした舞白は無我夢中で咲良の方へと駆け出す。
「やめろおおおおおぉぉぉぉ!咲良を離せ!!」
男たちを一心不乱に殴り、蹴り飛ばしていく。咲良の周りにいた男たちは大した力はなく、意外にもあっさりと倒れていった。
どうやらヘルメットの重さもあるせいかやけに動きは鈍い。辺りに倒れた男を背に、舞白は咲良に強く言葉を言い放つ。
「咲良、あんたは逃げて」
「だめだよ!だって舞白は…」
「いい?よく聞いて!ここから逃げるの!デバイスが使えるところまで。そうしたらすぐに通報。咲良はすぐ近くの民家に助けを求めて。いい?分かったら早く!!」
コクコクと放心した状態で頷く咲良。そんな彼女は乱れた服を気にすることなく言われるがままに走り出す。
なんとか掻い潜りこの場所から逃げ切る咲良。それを見送った舞白は小さく息を吐いた。
「―――お願い。上手く逃げて………。ッ…がはっ!!」
その瞬間、倒したはずの男に足を捕まれ力任せに地面に引きずられてしまう。そして別の男に顔を思いっきり殴られると、激しく目眩を起こしそのまま地面に仰向けに倒れ込んでしまった。
咲良を逃がすことに必死になっていた舞白。そんな彼女は気がつけばキズだらけになっていた。それほどに痛みも忘れるほどに必死だったのだ。
「…このクソ女…よくも……」
鉄の棒を拾った男。
勢いよくそれを振り降ろせば舞白の腹部に打ち付ける。
「がはっ……うっ……痛ッ…」
とんでもない痛みが腹部を襲う。
なんとか地面にうつ伏せに向き直れば、何度も何度も
デバイスに触れる。
((…お願い…お願いお願いお願い!オンラインに…))
その様子に気づいた別の男が舞白の手首を掴みにかかる。
「おい!こいつのデバイスを奪え!通報される!」
何人もの男に掴みかかられるも、必死に上半身を捩らせ
何度もデバイスに触れる。
「この女…ブッ殺す!!」
警棒のような物を頭目掛けて振りかざす男。
舞白は避けようと体をずらすが
右肩に命中し鈍い音が響く。
「…痛ッ……」
それでもデバイスから手を離さない。
「クソッ!!コイツ……」
「おいやめろ!殺すなって"あの人"に言われただろ!」
「既にもう1人逃がしちまっただろうが!時間の問題だろ!」
ヘルメット集団の男たちは数名が、なにやらもめ始める。
今だと、隙を見つけた舞白は体の痛みに耐えながらデバイスに触れる。
その瞬間、一瞬だけオンラインに
警察を呼ぶより、通話履歴の1番上に触れる方が早いと考えていた舞白は
"お兄ちゃん"という文字を連打する。
一瞬だけ通話状態になるも、再びオフラインに。
((…お願い…お兄ちゃん気づいて…))
そして逆に隙を突かれれば、手首に巻いていたデバイスを奪われ
そのまま目の前で破壊された。
「…あんた達……何なの……何が目的なの……」
不気味なヘルメット集団。
中の男たちは気味悪く笑い出すと一斉に舞白に襲いかかった。
ぎりぎり残る体力で足を掴んでいた男を蹴り飛ばし
何とか立ち上がる。
しかし、中にガタイのいい男もいた為、
体力を失った舞白はその男の拳を避けきれず、再び腹部に命中。
胃液が口から吹き出せばもうそれ以上動けなかった。
「なあ、この女…よく見たら綺麗な顔してるじゃねぇかよ…」
「さっきの女とはまた違うタイプだな…
胸もデケェよ…ホンモノだ…」
はあはあと、気色悪い呼吸が耳につき気分が悪い。
((…咲良……無事でいて…))
乱されていく服、身体中が痛み感覚が遠のく。
舞白は戦意喪失していた。
・・・・・・・・・・・・・・・