ヴィクトリアの元軍人兼傭兵   作:Mrミステル

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はい、どうも皆様ミステルでございます。

暑いですね、皆様も体調には気をつけてくださいね。作者は熱中症で死にかけた経験があるのですが、本当にちょっとおかしいと思ったら休むことをオススメします。

さて、前回は盛大なフラグをたてて終わったわけですが、果たして今回はどうなるのでしょうか。

では、どうぞ



たかが1人、されど

南方170mにある廃墟、恐らくそこにローザの友人である「ドロシー」という女の子がいるのだろう。さっさとロドスに来るように説得してもらいたいが油断はできない。こいつらも結局はレユニオン、敵だ。いざとなれば流血沙汰も辞さない。

そんなことを考えていると先行しているローザから、

 

「アンタのあれ、すごい精度なのね。アーツロッドは原石に直接作用する系統かしら?」

 

という声がかかってきた。

 

「...まぁ広い意味で言うのならそうだな」

 

「なによ、広い意味って」

 

言えるわけが無いのである。確かに原石もアーツロッドだが、カゲロウはアーツを伝導さえできるならばどんなものでもアーツロッドとするのだ。

自身から生えている原石クラスターだってアーツロッドであるし、彼女(ローザ)から生えている原石クラスターだっていざとなれば彼女の身体を内側から食い破るようにすることも出来る。爆破することも出来る。カゲロウの知り合いであるテキサスの原石剣だって媒介できるし、たとえ原石よりもアーツの伝道性が低い鉱物や人工物であっても全て彼の手にかかれば、あっという間にアーツロッドに早変わりするのである。

こんな事を敵に言えるわけがないのである。

 

そして、このアーツの才能が故に彼は市街地戦では無類の強さを誇るのだが、それはまた別のお話。

 

「広い意味ってのはそのまんまだ。誰だってアーツロッドには原石が仕組まれてるだろ?」

 

「...さすがにまだ信用してくれない?」

 

「当たり前だ」

 

「...そっか。...でも、友達を探してくれて...ありがとう」

 

「...」

 

なんだコイツ。偽物か(失礼)?素直にお礼とか言うタイプじゃなかったろ。ますます罠なんじゃねぇかな、これ。怪しすぎるもん。そもそもこいつに友達とかいたんか(超失礼)?顔がいいから許すけど(ゲス)。

 

「なんだお前、お礼とか言えたんだな」

 

「なっ!?アタシだってお礼くらい言えるわよ!バカにしないでくれる!?」

 

さて、あと40mか。「無視すんな!」...どうしたもんかねぇ…どうにもアイツ(クシュマフ)の匂いがすんだよなぁ...。いや、死臭って訳じゃないんだけどねぇ。アイツがまだ生きているっていう感覚がある。ラップランドも言ってたしな。

 

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.....

 

「...おい」

 

「なによ?」

 

......コ

 

「...なにか聞こえねぇか?」

 

「え?なにが?」

 

......ボコ

 

「...いや、聞こえる。なんだ?」

 

「....え〜?」

 

....ボコボコ....コポ

 

「...!アタシも聞こえた!なんか沸騰してるような音!」

 

「なるほど、沸騰ねぇ...お前の仲間にそういった系統のアーツが使える奴がいるのか?」

 

「え?...いなかった気がする…」

 

....ブクブク........

 

「....?音が止まったか?」

 

「...うん、止まった。スープでも飲んでるのかな」

 

「なら早く音がする方に行こう。お前が先に行ってくれ」

 

「うん!」

 

あと...20m

 

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一方その頃、in通信基地

バグパイプはオーキッドの補助の元ドクターと通信をしていた。

 

『...という訳で増援は予定より早く着きそうだよ。まぁ、元々遅れてるわけだから早くも何もないけどね。本当に申し訳ない、そして耐えてくれてありがとう』

 

「いいえ、ドクター。気にしないでください。オリジムシも意外といけたので...『そうか!いやいや!ようやく同士ができたよ!』...どちらかと言えばの話ですし、普段から食べるのは御免こうむりたいですけど」

 

『...残念だなぁ。あ、ところでカゲロウはどこにいるのかな、一応今後の作戦で前衛として働いてもらうことを言っておきたいんだけど』

 

「カゲロウは今捕虜の女とレユニオンの説得に出ています。上手く行けば戦闘は回避しつつ、ロドスに患者を運ぶことが出来そうです」

 

『え?レユニオン説得しに行ったの?マジで?結構な数の戦闘員送っちゃったんだけど?』

 

「...まぁ、その時はその時ですよ。前に報告したウルサス人のこともありますし」

 

『あっ、そうだった忘れてた。君たちが言ってるウルサスの術士なんだけどね...できれば彼とは関わらないで欲しいな』

 

「それはまたどうしてですか?」

 

『彼が我々が敵対したくないウルサスの人だってこともあるんだけど...何よりも彼のアーツが厄介すぎる』

「そう!そうなんだよ!ドクt...ゲホッゴホッ」

「ラップランドさん!?無理しちゃダメだよ!」

 

『...いいかい、今から話すは(クシュマフ)のアーツの内容についてだ。かなり胸糞悪いからポプカルは外して貰えるかな』

 

「了解。ごめんね、ポプカルちゃん」

 

ポプカルはミッドナイトに連れられて部屋を出た。オーキッドの方を名残惜しそうに見つめていたが、事情を察して出ていった。

 

そしてバグパイプとオーキッドは気を引き締めた。彼女達の後ろで横になっていたラップランドも頭だけをあげて通信を聞いている。

 

『...いいかな、じゃあ話すよ。彼、クシュマフ・ヴァルシュオのアーツの能力は....

 

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ようやく170mを歩き終わり、目の前に広がった景色に俺はなんとも言えない感情を抱いていた。

 

「...まぁ、なるほど。と言えるだろうな」

 

「な、んで...どう...して...」

 

目の前に広がるのは人が一面に横たわっている景色。その中におそらくドロシーと言う女の子も見られた。そして...

 

ボコボコボコォ!!

ブクブクブク!!

 

謎の音の発生源もここであった。死体の誘致場と言えばいいだろうか、部屋には感染者の死体が山積みにされている。とはいえ、この音はなんだ?

.......あ、そっちは

 

「おい」

 

「え.....いやぁぁぁあ!!ドロシー!!ドロシィィィイ!!」

 

どうやら見つけてしまったようだ、事切れた友人を。こっちの声は聞こえちゃいねぇ。今は彼女はパニックになっているから、俺がちょっと調べるか...

 

「....これは...やはり...」

 

「嘘...嘘!起きてよ!おかしいわよ!こんなの!!」

 

ここら一帯の死体には全て『カウントダウン』が刻まれている、と仮定していいだろう。数は20ちょっとだが、粉塵となってしまった死体もあると考えるともう少し多いか。

 

「...刻まれている模様も同じ...本当にカウントダウンなのか...?」

 

「おかしい!一体全体どうなってるのよ!」

 

「おぉ、もう立ち直ったか」

 

「えぇ、よく見たらそもそもあの死体ドロシーじゃなかったわ」

 

「...なんだって?」

 

「え?いや、あの死体はドロシーじゃなかったのよ。ドロシーって金髪ロングだけど、肌は真っ白なの。あんなに焼けてなかったし、ごつくもないわ」

 

「...その死体、どこだ?」

 

「こっちよ」

 

...確かに、ローザの言葉を信じるのならコイツはドロシーではないだろう。金髪ロングで、メガネまではあっているが、かなり日に焼けているのか、肌は小麦色だ。

 

「なるほどな。じゃあもっかい『粉塵探知』やるかぁ」

 

 

「その必要はありませんよォ!」

 

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in通信基地

 

「....ごめんなさいドクター。もう一度説明してくれるかしら?」

 

「...俺ももう一度ききたい」

 

『うん、何度でも言うよ。彼のアーツは文字通りの「一騎当千」、一騎で千人に当たるんだ。具体的に言うと彼のアーツは『憑依』だ。彼が紋様を刻んだ対象を彼自身(・・・)に変化させ、意識の共有及び記憶も引き継がれ、最後には完全に彼となる(・・・・)。Gみたいだね。彼が1人でも存在している限り紋様を刻む相手さえいれば無限に彼は増え続けることができる。...それがたとえ死体だとしてもね。彼一人で軍隊を組むことも可能だろうね。』

 

「....」

 

通信を聞いていた一同は言葉を失った。ただ1人、彼と剣を交えたラップランドを除いて、

 

「それじゃあ、ボクが戦った時はなんだったんだい!?その話を聞いていると...まるでボクが...ボクは...!」

 

画面の先にいるドクターは数秒逡巡した後、口を重そうに開き(口はフェイスマスクで見えないが)

 

『手加減...だろうね。もしくは能力を悟られたくなかったか。どちらにせよ、ラップランドを数で圧殺することもできたはずなんだ』

 

「...!!...ギリィッ!!」

 

『今はカゲロウが外に出ているんだよね。彼にも伝えてもらえるかな。クシュマフとの戦闘は避けて、紋様が刻まれているレユニオンにも注意してねって。ウルサス軍に彼が所属していたなら厄介だったけど、ウルサスの記録では死んだことになっていたから、後に到着する増援と一緒に叩いてしまおう。幸い対多数ならこっちにはモスティマがいる。Gは根絶やしにしないとね』

 

「...最近Gになんかされたのかい?」

 

『口の中で沸かしてたカップ麺の中に入ってた』

 

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「...今の声、お前か?」

 

「そんなわけないでしょ」

 

実際には俺も分かっている。今の声がクシュマフの声であることくらい。

しかし、どこにいるのか全く把握出来ない。この今にも崩れてきそうな柱の影にも見受けられない。俺たちがこの少し開けた死体の山の場所に来た時には人が通れる道は1つしかなかったはずなのだが、そこにも見当たらない。となると...

 

「さっさと出てこい。コイツら全員燃やすぞ?」

 

「おやァ!怖いですねェェ...ほっ..と」

 

「え...なんで...さっきまで..」

 

やはりというかなんというか、死体の山の中から奴は這い出てきた。先程まで死んでいたと思われていた体が起き上がって話しかけてくるのだからかなりホラーな絵面だな。ローザめっちゃ震えてるし。

 

話すことはなく、俺と奴はお互いに得物を構え、ローザは撤退させた。

 

「おいゴキブリ。いつまで生きてる気だ。さっさと死ね」

 

「製薬会社の人間が言っていいことじゃないですねェ!死ぬのはそっちだ!」

 

 

そうして俺と奴は激突した。

 




という訳でいかがでしたでしょうか。

クシュマフのアーツは紋様を刻んだ対象をクシュマフ自身にするというものでした。要はコスパの悪い分身ですね。

次回は戦闘の描写がメインになるかと思います。

ではまた次回。

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