四人の最強悪役令嬢がイケショタ御曹司を頂きに参りますわ!   作:綾久庵

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あばよ!ですわ!

 

__ああ!もう!ローラ様、また散らかして!

 

__ちらかしてない!これはものをとりやすいばしょにおいてるだけだ!

 

__子供の頃からそんな屁理屈捏ねてると碌な大人になりませんよ!

 

 

 

__やめだ!じてんしゃなんてのれなくたってぼくは“しゃちょう”になれるもん!

 

__ローラ様、自分の足で遠くまで行けるのってとっても楽しいですよ?

__私はローラ様に偉くなってもらうことよりも、そうやってこれから先いろんな楽しいことに出逢えるようになって欲しいんです。

 

 

 

__“ミハル”…なんでいっちゃうの…?おれ、かたづけもする…じてんしゃものれるようになるから……!

 

__“ミハル”…!まって…“ミハル”…!

 

__待って……“ミハル”!!

 

 

 

__ヘアアアァァッ!ストリウム光線!!

 

「う゛わ゛あ゛っ!!?」

 

 

「えっほ、えっほ、えっほ、えっほ。」

 

「……おい!何してんだお前ら!」

 

夢の中にまで出てきた謎の令嬢レスラーの光線と不可解な揺れによりローラは目覚めた。

寝起きのローラの視界に自分の乗るベッドごとどこかに運ぼうとしている令嬢四人の姿が真っ先に映る。

 

「あ、おはようございますわ!ローラ様!」

 

「なかなか起きてらっしゃらないのでこの際だからお部屋のお掃除に参りましたわ。」

 

「勝手に部屋に入るな!俺ごと片付けるな!!」

 

ローラは神輿のように担がれたベットの上でじたばたする。

 

「しかし、よくもまぁ一人暮らしでこんなに散らかせるもんですえ。」

 

「別にいいだろ!客間はちゃんと綺麗にしてるんだから!」

 

「いけませんですわ、ローラ様。

こんなの綺麗にしてるんじゃなくて寝室を物置にしてるだけですわ。

汚部屋男子の習性として、そのうち物が増えていって客間まで侵食されていくのが目に見えてますわ。」

 

モノバロンの言う通り、ローラのだだっ広い寝室には脱ぎ捨てられた服や教材やらが散乱しており、足の踏み場も無かった。

 

「わかったから!自分で片付けるから!とりあえず降ろせ!」

 

「ぐへへ…その反応、さてはどこかにエロ本でも隠しておりますなー?

どこだどこだー?」

 

「ねえよそんなの!

……お前、昨日はそんな喋り方じゃなかっただろ!」

 

「その言い方は令嬢ポイント低いですわよ、源ちゃん。

それに今の子供はこう、インターネッツで探すから紙の本なんて置いてないですわ。」

 

「なっ…!?スマホにもねえよ!!」

 

「ともかく、ローラ様もこちらに『今着る気分じゃないなぁ』って感じの服を入れてください。後で分別しますので。」

 

ローラは大きめのポリ袋を渡される。

 

「なんでこんなこと…。」

 

「アースファルト家次期当主たるもの部屋の片付けもきちんとしていただかないと、家事掃除もそこそこ午後は優雅にティータイムというわたくしの願望が叶いませんわ。」

 

「だから知らねえよ。お前の家族計画なんて。」

 

そう言って嫌な顔はすれども、ローラも渋々片付けに加わった。

 

 

「…あっ。」

 

片付けの最中、古着の奥に埋もれていた写真立てを手に持ったローラは思わず声を漏らす。

令嬢四人の手際が異様に良かったこともあり寝室の片付けはすでに終盤まで差し掛かっていた。

 

「なになに?エロ本?」

__ベシッ!

「あ痛ッ!?」

 

「そちらのお(ひと)、綺麗な方ですわね。一体どちら様で?」

 

写真を覗き込んだモノバロンが問いかける。

そこに映っていたのは五年前のローラとそれを抱える給仕姿の女性だった。

 

「五年前まで家で雇ってたお手伝いだよ。

俺の母親、どっかの議員の娘らしいんだけど、あんま会ったことないしすぐ別の男と逃げてくしで…それで、その人が実質母代わりってとこ。

もう辞めちゃったけど。

…これ、『いらないもの』でいいや。」

 

「捨ててしまうのですか?」

 

「持ってても仕方ないだろ。

もう、会わないだろうし。」

 

「そうですか…じゃあ、捨てちゃいますわね。

もう『会いたくない』そうですし。」

 

そう言ってモノバロンが写真立てを取り上げる。

 

「…いや待て。別に『会いたくない』なんて言ってないだろ。」

 

「ええっ?そうなんですかぁ?」

 

「…なんだよ、うるさいなぁ。俺だってそこまで恩知らずじゃないよ。

会社継いで時間できたらこっそり恩返しの一つや二つしてやるつもりだよ。

…直接会わないにしても。」

 

「そうですか…?後と言わずに直ぐにお会いになればいいのに。

ローラ様の成長した姿を見せる方がよっぽど恩返しだと思いましてよ。」

 

「いいよ、そんなの。この人…“ミハル”はいい人だったから今ごろ、どこかで家庭を持ってるだろ。

今更、俺が会いに行っても邪魔なだけだ。」

 

「そうですかね?」

 

「そうだよ。…ってか、もういいだろ片付けは。朝起きてからぶっ通しだったから腹減ったよ。」

 

「んー、そうですか。お掃除の方はこれからが本領発揮というところですが…。」

 

__バタン。

 

「ローラ様、朝飯が出来ましたぞえ。」

 

するとそこに、何やら掃除の途中から台所でごそごそしていたサド太夫が戻ってきた。

 

「実は太夫さんに前もって朝食の用意をお願いしておりましたわ。」

 

「え、あぁ…ありがと…。」

 

「今朝のメニューはローストビーフ丼パルメザンチーズトッピングミニラーメンセットですえ。」

 

「重いな!」

 

「ちなみにローストビーフは昨日の夜から仕込んだ物を使っておりますえ。」

 

「……お前、それで昨日あんなとこに。」

 

「どうか、あの夜のことはお忘れなさって…ローラ“さん”。(ぽっ)」

 

「はぁ!?ちょっと太夫さん、馴れ馴れしいですわよ?」

「“さん”じゃなくて“様”でしょ!?……は!あんたまさか!」

 

「ああもう!やっぱお前ら帰れ!!」

 

 

「う…うぇっぷ。」

 

朝食を完食したローラが寝室の様子を窺いに来る。

令嬢たちは既に掃除を終えている様子だった。

 

「あ、ローラ様。こちらは片付きましたわよ。」

 

部屋の前に立つとちょうどモノバロンがひょっこり顔を出し、ローラを迎え入れてくる。

 

「あっ…。」

 

部屋の中は見違えたように綺麗になっていた。

散乱していた衣類は跡形もなくクローゼットにかけられ、一部のジャケットはいつの間にやら搬入されていた金網にインテリアのごとく飾られている。

読破してはその辺に打ち捨てていた書物は今度は衣装だなに収納され、さながら図書館のように分類されていた。

 

「…すごい。」

 

ローラはあまりにも素直に出てきた感嘆の言葉に自分自身でも驚く。

 

「へへっ、こう見えてわたくしたちとある掃除のプロの下で修行をしてきましたので、お片付けには一家言ありますわ。」

「ローラ様もこれに倣ってお片付けしていけば汚部屋男子脱却ですわ。」

 

「……そうだな。ありがとう。」

 

しかし、それはそれとしてローラにとってのある疑問が自分の中で無視できないほど大きくなっていた。

 

「…なぁ、お前たちの目的ってなんだ?」

「はい?」

「目的だよ。なりふり構わず俺を後継者にさせようと勉強ばっかさせてきた親父が、お前らみたいなやつ寄越してくるわけないだろ。

人攫いでも強盗のようでもないし一体なんのつもりなんだ?」

「あら?最初に言ったはずですわ。ローラ様を溢れんばかりの女子力で悩殺し頂いちゃおうと。」

「そういうのいいんだよ!もう。」

 

ローラが短いため息をつく。

 

「…じゃあ、昨日の続きだ。

俺が先に自転車乗れるようになったらお前らの正体、教えろよ。」

 

「フッ…やれるものならやってみるがいいですえ。」

「わたくしたちの方が先に悪役チャリを乗りこなして見せますわ!」

 

その時、ローラの部屋のインターホンが鳴らされた。

 

「なんだ?」

「おや、わたくしが出ましょうか?」

「馬鹿、お前らが出たら通報されるだろ。」

 

ローラはそのままドアホンの前まで訪問者の姿を確認しに行く。

 

『ローラ、私だ。開けてくれないか?』

 

「…!親父…!」

 

そこに映し出されたのはロード・アースファルト。ローラの父親だった。

 

 

「どうしたんだよ。珍しい。」

 

「なんだ、父親が息子に会いに来るのに理由が要るか?」

 

ロードが皺の深い顔で笑いかける。

齢81歳にしてそこまでの老いを感じさせないその風貌にはわずかにローラの面影があった。

 

「別にそういうわけじゃねえけど

……あ、そうだ!そんなことより、あの令嬢!」

 

「ああ、お前も会社を継ぐなら早いうちから許嫁を見つけておくのが良いと思ってな。

“同い年”くらいの良家の令嬢を四人、手配させてもらった。

気に入った娘は居たか?」

 

「同い年!?あれが同い年に見えるか!?」

 

「はぁ?」

 

「「「「お父様ぁぁぁ!!」」」」

 

玄関の奥から四人の令嬢が親子の間に乱入してくる。

 

「ちょ、お前ら…!」

 

「うわあああ!なんだこの化け物!?」

 

「やっぱ、親父も知らないのかよ!!?」

 

__でも…よかった、親父の趣味あんなのじゃなくて。

 

ローラは内心、心からほっとしていた。

 

「貴様ら!一体何者だ!?」

 

「いやですわお父義様。わたくしたちお父義様に呼ばれてこちらに参りましたのに。」

 

「“お義父様”と呼ぶな!貴様らなど呼んだ覚えはない!第一、写真と違うだろ!」

 

「およよ…。それはイトコが勝手に送りつけたものなのですわ。」

 

「ともかく!さっさと出て行け!」

 

「…待ってくれ、親父。」

 

令嬢たちをつまみ出そうとするロードをローラが静止した。

 

「こいつら放っておいても害は無いし、決着つけたいこともあるんだ。

もう少し置いといてくれよ。」

「ローラ様ぁ…!」

 

ローラのその反応にロードも少しは態度を軟化させる。

 

「ローラ……ふん、お前がそこまで言うなら仕方あるまい。

だが、どっちにしろ今日は帰しなさい。

これから、お前を連れて行きたいところがあるのだ。」

 

「…なんだ?出かけるのか?」

 

 

身支度を整えたローラは停めてあった車の前に着いた。

令嬢たちも当然のようにお見送りに来る。

 

「お気をつけていってらっしゃいませ。ローラ様。」

「ああ…ってか、お前ら。

勝負はお預けだからな。抜け駆けするなよ?」

「わかってます、わかってますって!」

「…本当かぁ?」

 

「ローラ様、こちらからお乗りください。」

 

何やらローラにとっても見慣れないスーツの男が車の後部座席のドアを開けにきた。

 

「ああ、ありがとう……今日はいつもの車じゃないんだな。」

 

その車は大型の商用車のようで側面には《witch craft art》と社名らしきロゴが描かれていた。

 

「ええ。目的地に着くまでに所用がございましてね。」

 

「さぁローラ。早くお乗り。」

 

車の中からロードが手を伸ばしてくる。

 

「……うん。」

 

ロードのいつもと違う雰囲気に違和感を感じながらもローラはその手を掴もうとする。

 

__バシッ!

 

その時、もう片方の腕をモノバロンに掴まれた。

 

「うわっ、何!?」

 

「ローラ様、行ってはいけません。」

 

「なんのつもりだ!?」

 

「…こちらからも聞かせてもらいますわ、お義父様。

この《witch craft art》社と言えば魔界からのスパイ企業ということで有名でしてよね。」

「は…?魔界…?」

 

「主な取引内容は“魔女儀式(ウィッチクラフト)”…魔界で見つけられた異世界の技術を使って人体に様々な改造を施すサービスですわ。

…例えば“子種の身体に意識を上書き”したり。」

 

「…えっ。」

「何ですって!?」

 

「何を言っているんだ。そんな噂は…。」

 

「貴様!何故それを知っている!?」

 

「…おいおい。君ぃ。」

 

ロードがやれやれという風に首を振る。

 

「親父…どういうことだ…?」

「上書き、というのは語弊がある。

…私も歳だ。もうじきこの肉体も朽ち果てる。

ローラ、お前の身体を私に借してくれないか?

なに、怖がることはない。私たちの意識は一つに融合するだけだ。」

 

「詭弁ですわね。11年分の記憶と80何年の記憶、同じ肉体に入れればどちらが主導権を握るかなんて火を見るより明らかですわ。」

 

「黙れ……お前に何がわかる…!

この世界に放り出されてから50年!

私がこの世界にどれほど尽くしてきたと思っている!

“次の命”を求めて何が悪い!」

 

「それは困りますわ。わたくし大変困ります。

わたくしたちが求婚しているのは頑張り屋でなんだかんだツンデレなローラ様であって、いくらイケショタ11歳の肉体を持っていても魂が80歳の腐りかけよぼよぼジジイなんざ__。」

 

モノバロンが真っ直ぐロードを見据える。

 

婚約破棄(ノーセンキュー)ですわ!!」

 

「くっ…貴様っ…!まあいい…!」

 

__コポポ

 

「ん?」

 

__ズボン!!

 

「「「「うわっ!!?」」」」

 

ロードが手を振りかざすと四人の令嬢の足場が液状化し、半身を飲み込んだ。

 

「おい!お前らっ!…わっ!?」

 

「馬鹿な奴らだ。

私は私の作った道路の中なら自由に変形させることができる。

さあ、行くぞローラ。」

 

ローラを引き込んだ車が急発進される。

令嬢たちはその場に取り残された。

 

「クソッ!最悪のパターンじゃねえか!」

「ちょっと!?俺だけ沈むの早くない!?」

「不味いぞ…!このままでは車ごと見失う…!!」

「…そこは心配すんな!こんなこともあろうかと発信器を服につけといた!

それよりまずはこのアスファルトから抜け出すぞ!

今まで貯めてきた令嬢ポイントを女子力に変換しろ!!うおおおおお!!」

 

 

「親父…今の話本当なのか…?俺の身体が親父の物になっちまうって…!」

「ローラ、あ奴らの言ったことを間に受けるな。

恐れなくていい、私の記憶をお前に渡すだけだ。」

「何でだよ…!親父は俺に会社を継がせるために今まで勉強させてきたんじゃなかったのかよ…!なんでそのまま俺に任せてくれないんだよ…!!」

「年を取るとな。新しく物を覚えるのが難しくなってしまうんだ。

ローラ、若いお前なら乾いた大地に水を注ぐかのようにあらゆる知識を蓄えることができる。

そしてその知識は私達が一つになった時きっと役に立ってくれるだろう。」

「そんな……じゃあ俺が今まで頑張ってきたのは全部親父が使うためってことなのか…!?」

「意地悪な言い方はよせ、ローラ。

そうだ、お前に見せたい物がある。

そろそろ着くか?」

 

ローラを乗せた車はアースファルトグループ本社の敷地へと入っていった。

 

「それではロード様。“滑走路”の使用許可をいただけますか?」

「ああ、元よりこのために作った物だ。」

 

そこは本社のビルに併設された、縦の曲線を持つ巨大な道路だった。

 

「かしこまりました。では……ポチッとな。」

「うわっ!!?」

 

運転席の男が謎のボタンを押すと共に車体の両脇から巨大な骨組みと透き通った光の翼膜が現れる。

さらに後部からは青白い炎が噴射され続け加速を生む。

 

「ご覧ください!これが最新の魔界式フライングカー“MiMIX”でございます!

お客様はここから魔界まで快適な旅をお過ごしください!」

 

とうとう地面が完全に離れ車は空を泳ぐように飛び立った。

 

「見たか、ローラ。これが魔界の技術だ。

戦争によって魔族が勝つにしろ帝国が勝つにしろこの車は一気に普及していくだろう。

そして、あの“滑走路”の需要も増える筈だ。

これだけではない、転生者によってもたらされた技術が互いに影響し合い、未知の技術…未来の物が生まれようとしている。時代がその先へ進もうとしているのだ。

私はそれを見たい。そのためにローラ、お前の身体を私にくれ。」

 

「だめだ…親父、こんなこと…やめてくれ!」

 

「ローラ、何故わからん。私は__。」

 

その男はなんの悪意も無く当たり前のようにその言葉を言った。

 

「私は、このためにお前を作ったんだぞ。」

 

「っ……!」

 

「ロード様。着陸後すぐに儀式に入りますため、“素体”のサンプルを取らせていただいてもよろしいでしょうか?必要であれば麻酔の準備もございます。」

 

「…ああ、よろしく頼む。」

 

注射器を持った男二人がローラを取り囲む。

 

「やめてくれ…!!俺にはまだやりたいことがあるんだ…!俺のままじゃなきゃ意味がないんだよ…!」

 

ローラは泣きじゃくりながらそう懇願する。

父親に裏切られた絶望と恐怖でぐちゃぐちゃになった心に最後まで残っていたのは“ミハル”の姿だった。

 

「俺はまだ…俺のままでいたいんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『よくぞ言ってくれましたわ!ローラ様!!えっほっ…えっほっ…!』

 

その時、胸のポケットから聞き覚えのある声がした。

 

「お前…!?」

 

『こういうこともあろうかと仕込ませていただきましたわ!!』

 

声の主はモノバロンだった。何やらペダルを高速で回す音が一緒に混ざり込んでくる。

 

「馬鹿な!?あのアスファルトの中か抜け出してきただと!?」

 

『令嬢の力をなめんなですわぁっ!!』

『わちきらを敵に回したこと、後悔するがいいですえ…!』

『え?これこっちにも繋がってんの??

…うおおお!!この欲深ジジイがぁぁぁ!!今のうちに墓石と仏壇の色を選んでおくがいいですわぁぁぁ!!!』

 

「はっ…あのアスファルトを抜け出そうが地上の貴様らに何ができるというんだ。

構わん、続けろ。」

 

『…確かにわたくしたちにはどうすることもできませんわ。

だからここは、ローラ様にお願いしますわ!』

 

「……!?…俺!!?」

 

『ローラ様、あなたは二世転生者でございます!

本来ならこの世界の運命に存在しない人間。

ならば、転生者のように力を手に入れることができるはずですわ!

そのためには強く願ってください!

ローラ様が今、一番望むことを!!

強く願ってください!!!』

 

「願うって…でも、もう俺には…!」

 

『何弱気なこと言っておられるのです!!

どんなわがままだって叶いますよ!!

何たってあなたには、“最強の悪役令嬢”がついているのですわ!!!』

 

「うっ…俺は…!!」

 

__そうだ、俺は…!

 

既に、ローラの顔から涙は消えていた。

 

「生きたい!!!!」

 

その時、空を飛ぶ車に強い揺れが走った。

 

「な…なんだ!?…これは!?」

 

車から地面に向かって真っ直ぐな虹がかかっていた。

その虹の先から、えらく野太い声が聞こえてくる。

 

「うおおおおお!!行きますわよ!皆さん!!」

 

「「「アラホラサッサー!!!」」」

 

それは虹の上を加速し続ける悪役チャリに乗った令嬢たちの姿だった。

 

「自転車だと!!?なぜこのスピードで走れる!?ローラ…!お前、その目は…!」

 

ローラの目元には青白い光の筋が現れていた。

__《レインボー・道路》任意の対象まで一本の虹の道を生成し、その上を走る者に加速を与え続ける。ローラの能力である!

 

「お客様!当フライングカーはこれより戦闘モードに移行します!どうぞお楽しみください!」

 

「はぁっ!?」

 

ローラたちの車が急に車体を垂直に起こし、上昇を始める。

それと同時に、変形し、最終的に翼のついた人型となった。

 

「完成!自動超人ミミックス!!」

 

「うわっ!?今週のビックリドッキリメカですわ!!」

「…わたくしもちょっと欲しいですわ!!」

 

「バーニングナックル!」

 

運転手の男がそう叫ぶと両手首の部分が外れて中から火炎放射器とプロペラが展開される。

 

__ボボボボ

 

プロペラから生じる強風により巨大化した炎により四人の姿が見えなくなった。

 

「どうでしょう!魔界の技術はあ世界一!!」

 

「おい!こんなことして燃料足りるのか!?」

 

「ご安心ください!もう、邪魔者は消し炭になりました!ここからは省エネモードで__。」

 

「…まだだ!!」

 

ローラの声が車内に響く。

その時、ミミックスの頭部が高速の自転車轢かれて潰れた。

 

「ひっ!?損傷が!?」

「馬鹿な!?道が曲がった…!?」

 

ミミックの周囲はいつのまにか曲がりくねった虹の道で囲まれていた。

 

「流石、ローラ様!アドリブで能力を使いこなしておられますわ!」

 

「うごご…!修理費が…!!貴様ら許さんぞ!!」

 

「おい…一旦落ち着けって…!!」

 

「いいえ!私は至って冷静です!それでは御笑覧ください!これがミミックスの最大火力!

ミミックスファイナルフルバースト!!」

 

「おい!燃料!!」

 

ミミックスの胸のボンネットが開かれ複数の銃口が光り輝く。

 

「ロックオン…!ファイア…!!」

 

「お願いしますわ!ローラ様!」

「ああ、わかってる!」

 

ミミックスから発射された拡散する謎ビームが令嬢たちを射抜かんとする。

その瞬間、令嬢たちの姿が消えた。

 

「やったか!?うわぁっ!!」

 

ミミックスの背後から衝撃が走る。

ループ状の虹の道からミミックスの腰部に向けて令嬢たちが突進してきた。

 

「これがレインボーロード名物!“縦に一回回って戻ってくるやつ!”ですわ!!」

 

「何故だ!?何故、このミミックスが自転車ごときに押し負ける!?」

 

「知らなかったのかえ?加速中の令嬢は無敵ですえ。」

 

「おい!お前ら!ここからどこに繋げばいい!?」

「実はここからはわたくしたちもノープランで……は、お金の匂い!」

「…えっ?」

「ローラ様!“17階”ですわ!あそこに見える本社ビルの“17階”!!」

 

「17階だと!?おい馬鹿やめろ!!」

 

「17階だな…!わかった…!」

 

虹の道は一直線に本社ビル17階にかけられた。

ミミックスを押しやる悪役チャリがその道を爆走する。

 

「よせ!!やめろ!!」

 

「いっけえええええ!!」

 

「うおおおおおおおお!!!」

「うおおおおおおおお!!!」

「うおおおおおおおお!!!」

「うおおおおおおおお!!!」

 

「「「「お仕置きですわ!!」」」」

 

__本社ビル17階、大破。

 

令嬢たちが開けた穴から瓦礫と共に大量の札束の吹雪が舞い上がった。

 

「ぐわああああ!!私の裏金がああああ!!!」

 

「はぁ…ははっ…やった…ぜ……!」

 

能力を使い切ったローラはその場に倒れた。

 

 

「えっほ、えっほ、えっほ、えっほ。」

 

「ん……あ。」

 

「お目覚めになりましたか、ローラ様。」

 

ローラが目を覚ますとそこは悪役チャリの上でモノバロンと胴を縛られ、2ケツしていた。

 

「何してんだ…これ?

いや、それよりあの後どうなったんだ?」

 

「…ああ、義父様でしたらすぐさま税務署にしょっ引かれましたわ。この世界の税務署は怖いですわね。」

「ま、ローラ様も大人になったら納税だけはしっかりしろと言う、体をはった義父様のメッセージですえ。」

 

「ローラ様は能力を使った反動で寝てしまっていたみたいですわ。そういう強力な力は使いすぎると起きれなくなってしまうから気をつけてくださいね。」

 

「そうか…あれ、お前たち…なんか光ってね?」

 

「あっ…まずい!時間切れですわ!!」

 

謎の光が令嬢たちを包み込んだと思えば光はすぐさま弾けて中から四人の本当の姿が現れた。

 

「しまったぁ!令嬢でないことがバレてしまうぅ!!」

 

「…うるさいな。最初から知ってたよ、そんなこと。」

 

「あーあー、結構楽しかったんだけどなぁ悪役令嬢。こっからはただの悪役だぜ。」

 

「なぁ…教えてくれよ。お前たちは本当に何者なんだ?」

 

モノバロン__海野物郎が観念したように口を開く。

 

「引っ張ってても仕方ないからネタバレするけど、俺たちは人攫いだ。」

 

続けてキチドーラ__十文小吉が口を挟む。

 

「ああ、ボスから指令を受けて二、三日様子を見た後、こうしてローラ様を頂いちゃおうって手筈だったんだぜ。」

 

「そいで、この悪役チャリはいまそのボスのところに向かってるってわけ。」

「フッ…ボスは怒ると恐ろしいからな。ローラ様の中身がヨボヨボの爺になってしまえばどんな大目玉が飛んでくるかわからん。だからこうして必死に救出したのだ。」

 

後方にいたゲンダーク__根鎌源治とサド太夫__佐渡一も話に割り込んできた。

 

「そっか…人攫いか。でも、それでいいや。

“自転車”、先に乗れたらなんでもいうこと聞くって約束だったもんな。

でも、俺もう何もないぞ?今更攫ったて何も…。」

 

__ああ、そっか。もう何も無くなっちゃったんだ。

 

俯くローラに向けて海野が語りかけてくる。

 

「…そうだ、俺たちのボスの話をしよう。

俺たち前に、少しだけ清掃業者のバイトしてたんだ。

ボスはその時の俺たちの上司だ。

そのボスの元夫ってやつが酷いやつでさ、内縁の関係であることをいいことに生まれてきた息子をどこかの権力者の娘との間にできた子ってことにしたかったらしい。

それでも、どうしても我が子と離れたくなかったボスは使用人としてそばに居ることを選んだ。…結局、それも長く続かず引き離されてしまったけどね。

ボスは今でも誕生日がクリスマスの息子のために毎年プレゼントを用意しているらしい。」

 

「それって…。」

 

悪役チャリがとあるアパートの前で止まった。

 

「ボスはローラ様が幸せにしていたらそのままそっとしてほしいって言ったんだ。

でも、ま。こんなことになっちゃったら恨みっこなしでしょ。」

 

「なんで…お前らは何でこんなことしてくれるんだ?」

 

「実はぶっちゃけた話、俺たちも転生者でさ。」

「多かれ少なかれ…親不孝のままこの世界に来てしまったというわけだ。」

「ま、そんなわけだからローラ様はしっかり甘えてちゃんと親孝行してやれよ、ってこと。」

 

その時、アパートの正面の部屋から一人の女性が驚いた顔で出てきた。

それは五年前と少しも変わらない“ミハル”の姿だった。

 

「さ、お迎えが来たようだ。行ってやれ。」

 

「ああ…。」

 

ローラが四人に対して背を向ける。

 

「ありがとう……みんな。」

 

泣き合いながら駆け寄る母と子を遠目で見つめてから悪役チャリはその場を去っていった。

 

「あばよ!ですわ!」

 

その言葉を一つ残して。

 

-終-

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