実録!ドラゴンスレイヤーが来る!!   作:綾久庵

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ドラゴンスレイヤーは見た!

 

 ここは異世界。

 

 100年ほど前から転生者が定期的に現れては雑に文明をもたらし、なんかすごい発展してきた。そんな感じの世界。

 

 そして現代、帝国都中央に建設された“帝国スカイタワー”とかいう赤いんだか白いんだか、アナログなんだかデジタルなんだか分からない感じの電波塔によってテレビジョンが普及し、民に娯楽を与えていた。

 それと共に、帝国都(※首都みたいなところね)では放送局が次々設立され、日夜視聴率の争奪戦が繰り広げられている。

 

 そしてそして、昨今。都内を中心に相次ぐ“ドラゴン被害”について一つのドキュメンタリー番組が作られることとなったのだ!

その名も__!

 

__え?今日は私、地の文休んでいいんですか!?ヤッター!

 

◆

 

 某日、我々取材班はとある病院に赴いていた。

 病室のベッドに横たわる彼の名前は“ヨサク・アンダーソン”さん(54歳)。

 先日、散歩中に“害獣”に襲われ病院に担ぎ込まれたという。

 

__身体の具合はいかがですか?

 

ヨサク「だめだぁ…もうなんも“やる気”が起きねえよぅ…。」

 

 ヨサクさんはひどく弱々しい声音で語りかけてくる。

 害獣__“ドラゴン”に襲われた者は口を揃えてそう言うのだ。

 

__被害当時の状況を教えていただけますか?

 

ヨサク「うぅ…散歩の途中、ゼリーみたいなもんがいきなりわしの首筋に引っ付いてきよったんよ。

…そしたら、そいつがなんやわしのことチューチュー吸いよんね。…気がついたら、わし倒れてしもうて…そっから立つ気力も何かする気力も無くのうてしまったんよ。」

 

 同様の被害が今月に入ってから30件、警察に寄せられている。

 被害者達には目立った外傷が見られないのだが一様にこうして生気を失ってしまうのだ。

 

 警察では魔界または異世界由来の外来種と見て捜査を進めているが一向にその出どころや生態は掴めていない。

 都民の間では、そのゼリー状の害獣をそれに似た習性を持つと言われる魔界の生物__“ドラゴン”に準えて“害獣ドラゴン”と呼称されている。

 

専門家「ええ、彼らが吸っているのは血液など体液ではございません。実際それは被害者の容態からも明らかですね。

では、何を吸っているかと言うと…“マナ”です。彼らは人間のマナを吸っているのです。」

 

__“マナ”…と言いますと?

 

専門家「マナというのは…そうですね、例えば一人の人間が何か“物を創り出す”行為、言うなれば創造行為を行うことに充てられる“はず”の時間とでもいいますか。

私たちがこうして起きて話をすること、それだけで人はマナを使います。」

 

__では、それが無くなると?

 

専門家「今のところ重篤な被害者は出ていないようですが、最悪の場合死に至る可能性もありますね。

即死することはありませんがマナが枯渇した場合、人は緩やかに眠り、そして二度と目覚めることはないでしょう。」

 

 都心で相次ぐドラゴン被害、人々の生活にどのような影響を与えているのか。

 我々は街行く人たちに話を聞いてみた。

 

__害獣ドラゴンを知っていますか?

 

仮面を付けたデート中の男性「あ、はい!知ってるっス!

家にも出てきてヤバかったけどなんとか追い払えたっス。

…ああ、でも食べると意外と美味しいって聞いたっス!」

 

__害獣ドラゴンについてどう思いますか?

 

自転車練習中の少年「さぁ、俺も実際見たことないからなんとも言えないけど……そういえば、他の公園でそんなの売ってるって人たちがいるよ。」

 

__売っている?

 

自転車練習中の少年「うん。……ちゃんと許可取ってやってるのかなぁ、あれ。」

 

◆

 

ディレクター「ミズミチくぅん、君はまだそんなもの追ってるのかぁい?」

 

 無精髭をさすりながら中年太りした男が尋ねてくる。

 

ディレクター「中年太りとはなんだい、君ぃ。中年太りとは。」

 

 彼は“フジオ”ディレクター。我らが“ほっこりTV”所属のベテラン演出家で、私、“ミズミチ”ADの直属の上司である。

 

ディレクター「え?こんなところまで撮っているのかい?…ま、それはいいとしてだね。

世間ではマッチングアプリの開発者が逮捕されたりゼネコンの社長が逮捕されたりで大賑わいって時に、何たってこんな害獣騒ぎを特集しようっていうんだぁい?」

 

__御言葉ですが、この害獣騒ぎはそれらの終わった事件とは違います。我々はメディアとしてこれからの脅威を伝えていかないと……。

 

「そう熱くなるのもいいけどね、君ぃ。私たちももうあとがないんだよ、わかっているのかい?」

 

 ディレクターの言う通り、我らほっこりTVは万年視聴率最下位の憂き目を見ていた。

 事態を重く見た上層部は大規模な番組改編を行うことを取り決め、その打ち切りの筆頭に上がったのが我々の放送枠だった。

 

ディレクター「うちの内情をそんなペラペラ喋るんじゃぁないよ、君ぃ。」

 

__ですが、害獣騒動の足掛かりは掴めています。

 

 この害獣ドラゴンなる物を売買しているという人物がいるという証言がある。

 もし、それが本当ならばこの被害は人為的に起こされたものであるという可能性が高い。

 これら害獣は、その人物たちによって組織的に養殖、流通させられているのだとしたら。

 

__これは大スクープになりませんか?

 

ディレクター「…はぁ、まったく君というやつは。

その謎の人物とやら、西公園で目撃情報があるらしいよ。」

 

__調べてくれていたんですか?

 

ディレクター「仮にも私は上司だからねぇ。やるだけやってみなさいよ。

ま、そんなに期待しない方がいいと思うけど。」

 

◆

 

 ディレクターの情報をもとに私はとある公園へと向かった。

 平日昼間、冬の公園はがらんどうとしている。こんな場所に本当に例のドラゴン売りは出没するのだろうか。

 

 それにしても、先ほどからほのかに異臭を感じる。何かを焼いたような匂いだ。

 

 匂いの元を辿って行くとある出店を見つけた。

 辺りには店員らしき男が三人ほど、垂れ幕には大きく“焼きドラ”と書いてある。

 

__……焼きドラ?

 

謎の男A「あ、いらっしゃいませぇ〜〜〜↑↑(ビブラート)!いや、今日もお寒いですねぇ。」

 

 出店の中を覗くと、そこには何やら焼き目のついたゼリー状の物が串に刺されて売られている。

 

__こちらは何を売られているんですか?

 

謎の男B「へっへっ、ドラゴンですよ。ドラゴン。

最近、巷を騒がせてるっていうアレね。」

 

謎の男C「見た目は多少グロテスクだが、味はいい。しかも食えば精がつくぞ。

メニューは串焼きに煮込み、そしてローストドラゴンだ。

ちなみに、おすすめは俄然このローストドラゴン。前日から仕込んであるぞ。」

 

 男たちの口から聞かされた言葉は衝撃的なものだった。

 確かにこのゼリー状の物体は害獣ドラゴンの特徴と一致していた。

 何故、調理、販売を?

 何よりドラゴンには“物理的衝撃”が効かないはず。故に警察も苦労しているのだ。

 様々な疑問が頭の中を巡る。そして一つの質問が口から自然に溢れた。

 

__あなた方は一体、何者ですか?

 

 すると、男たちがどよめき出す。

 

謎の男A「え?何者?なんでそんなこと…あ、あんたまさかお役所の偉い人!?

ちょ、たすけて!源ちゃーん!!ケツモチの源ちゃーん!!」

 

ケツモチの源ちゃん「なんじゃいワレぇ…!なんか文句あるんかワレぇ…!」

 

 男に呼ばれてやってきたのは長い金髪をオールバックに固めてサングラスをかけたチンピラ風の……少女だった。

 

謎の男A「話だけは聞いてくださいよぉ、お役人さん!

ボクたち家に出てきた害獣を駆除して調理してからお出ししてるだけなんすよぉ…!

調理の方も徹底した衛生管理に基づいてやってるんで食中毒なんて出ませんよぉ…!」

 

__駆除?

 

 男は確かに駆除と言った。駆除方法など確立されてないはずのドラゴンに対して。

 

__一体どうやって駆除を?

 

謎の男B「ええっと、それはですね…最初にこいつが現れた時、びっくりして俺たちのパンツが入った洗濯機に入れちゃいましてね。

一緒に洗濯したら動かなくなったもんで…これはもしかしてと思って俺たちのパンツから抽出したエキスを培養して奴等に吹きかけたらコロッと逝っちゃいまして……。」

 

謎の男C「おい、馬鹿やめろ!それ話したら売れなくなるだろうが!」

 

謎の男B「ふえぇ…!?だってこんなインタビュー形式で聞かれたら嘘つけねえよぉ…!」

 

ケツモチの源ちゃん「ぶるるぁぁぁ!!今聞いたことは忘れるぉ…!こいつがどうなってもいいのかぁ!?」

 

謎の男A「え!?なんで俺!?」

 

 彼らは勝手にヒートアップしている様子だった。

 話をするためには誤解を解くしかない。

 

__失礼いたしました。私は“ほっこりTV”の者です。

 

謎の男A「え?ほっこりTV…テレビ関係者さんですか?」

 

謎の男B「なぁんだ!口コミを聞きつけてドラゴン料理の取材にいらっしゃったというわけですね!

やだなぁもう!さっきのとこカットしといてくださいよ〜!」

 

__いえ。料理の方ではなくドラゴンについてお話しを伺いたいのですが。

 

ケツモチの源ちゃん「え、ドラゴン?なんで?」

 

 私はこの害獣ドラゴンが街で大きな被害を出していること、通常の方法では対処できないことを彼らに伝えた。

 

謎の男C「そんなことになっていたのか…。」

 

謎の男B「俺たち最近忙しかったから知らなかったぜ…。」

 

謎の男A「なるほど、“ドキュメンタリー”に“害獣”ね。……ん?待てよ?

あ!!いい事思いついた!!」

 

謎とケツモチの三人「「「は?」」」

 

◆

 

 同日午後、ほっこりTVにあの四人がやってきた。

 

謎の男A「あ!いたいた!ミズミっちさん!ちぃーす!」

 

 やや大柄の謎の男Aがこちらに気づいて手を振ってきた。

 彼の名前は“海野物郎”というらしい。

 

 四人は何やら半透明の衣装ケースや袋のついた掃除機など謎の器材を持ち込んできたようだ。

 

 私は彼らを空いていた会議室へと通した。そこには前もって呼んでおいたフジオDが鎮座している。

 

ディレクター「…えーと、どういうことだい?ミズミチくぅん?誰?この人たち。」

 

謎の男B「いや〜俺たち巷を騒がせてるドラゴンってやつを駆除して販売してる者なんすけどぉ…。」

 

 謎のBが両手を揉みながら話を切り出す。

 彼の名前は“十文小吉”、しゃがれ声が特徴的な男である。

 

ディレクター「えぇ?駆除だってぇ?」

 

謎の男C「今日はそのことで、ある企画を持ち込みに来たのだ。まずはこれを見てくれ。」

 

 そう言って謎の男Cがテーブルに置いたのは、あの衣装ケースだった。

 彼の名前は“佐渡一”、長い髪が印象的な男である。

 

ケツモチの源ちゃん「じゃ、開けるぞ。せ〜の…デケデケデケデケ……!」

海野「そういうのいいから。」

 

 やたらと厳重に固められていた箱の蓋をケツモチの源ちゃんが力ずくで開封する。

 彼女の名前は“根鎌源治”、何故か中年男性的な雰囲気のある少女である。

 

 そこにいたのは生きた害獣ドラゴンだった。

 

ディレクター「え?」

 

__え?

 

害獣ドラゴン「ピキー!!」

 

ディレクター「うわあああ!!???」

 

 そのドラゴンは真っ先にディレクターに飛びかかった。

 

ディレクター「あああ!!…あれ?」

 

 そのまま顔面に張りつこうという瞬間、掃除機の吸引音と共にドラゴンは消失した。

 その真後ろには掃除機を構えた海野が居た。

 

__吸われた…?

 

海野「ええ、この通り。あいつら軽いから掃除機とかで吸えば簡単に捕まえられちゃうんですよ。

…で、この袋を。はい。」

 

根鎌「ジャブ、ジャブ。」

 

 掃除機についていた袋が根鎌に渡され、何やらバケツに入った謎の液体に袋ごと浸し始めた。

 

根鎌「じゃじゃーん!」

 

 根鎌が袋を広げると萎んで動かなくなったドラゴンが現れた。

 

ディレクター「うっそでしょ!?これって…!」

 

十文「ええ、死んでますぜ。」

 

佐渡「なんならこのまま調理もできるぞ。」

 

ディレクター「うわっ…!マジだこれ…。」

 

 ディレクターがドラゴンの死骸を指で突く。

 信じられない光景だったが、それはまさしく公園で聞いたドラゴンの駆除方法と一致していた。

 しかし、同時にある疑問が私の胸に飛来した。

 

__何故これを私たちに?

 

ディレクター「そうだね。まさか、この方法をウチに売り込みに来たというのかい?」

 

海野「いやいや。技術だけだったらテレビ局になんて持ち込みませんよ。

へっへっ…聞いたところによると、お宅の局、視聴率が伸び悩んで困ってるんでがしょう?」

 

ディレクター「まぁ…それはそうだけど。」

 

海野「あっしらにいい企画があるんですよ…。」

 

__企画…ですか?

 

◆

 

 明朝、一つの電話がとある廃雀荘に響き渡った。

 

海野「はい!こちら“ドラゴンスレイヤーズ”でございます!__かしこまりました!すぐに向かいます!」

 

 受話器を置き、素早く身支度を整える作業着姿の男の名は海野物郎(35)。

 

__出動ですか?

 

海野「ええ!ドラゴン被害はね!もたもたしていると依頼者さんの命が危ないんでね!もうスピード勝負ですよ!」

 

 勢いよく階段を駆け降りた先には特殊な器材の乗ったミニバンが停められておりエンジンは既にかかっていた。

 

十文「早く乗りな。…チッ、風が湿ってやがる。こりゃ一雨来そうだぜ。」

 

 運転席に居た男は十文小吉(35)。いつでも出動できるように車でスタンバイしていたらしい。

 

 そこにポリタンクを持った男が合流してきた。

 

佐渡「フッ…こちらも培養液の補充を終えたところだ。いつでも行けるぞ。」

 

 その男は佐渡一(35)。対ドラゴン専用培養液“パンデモニウム”管理のスペシャリストである。

 

根鎌「ソルジャァ…ソレジャアイマカラシュッポ…シュッパツスルワヨ!!……イクワヨ!!」

 

 そして、その指揮を執る少女は根鎌源治(35)__

 

海野「待って待って、カメラ止めて。」

 

__はい。

 

海野「どした?源ちゃん。」

 

根鎌「ス…ハー…スーハー…!やっべえ…スー…カメラ回ってるとなんか…思ったより緊張する…ハー……!!」

 

十文「何でだよ。いつもあんな図々しくしてるくせに。」

 

根鎌「だってカメラは違うじゃん…!勝手が…!」

 

海野「もうちょっと頑張れよ。ほらミズミっちも気い使って小さいカメラ持ってきてくれたわけじゃん。」

 

__いや、これは予算が降りなかっただけです。

 

海野「え、そうなの?」

 

根鎌「うう畜生…俺こんなカメラだめだったのかよぅ……!」

 

佐渡「……良い案がある。カメラの前で緊張したくないのなら、自分が既に芸能人だと思い込めば良いのだ。

要は、モノマネだ。イメージしやすい芸能人のモノマネをすればいい。」

 

根鎌「ええ…モノマネする芸能人つってもピンとこないんだけど…。」

 

海野「じゃ藤◯弘、でどう?◯岡弘、。」

 

根鎌「俺のイメージで真っ先に出てくんの藤岡◯、なの?」

 

海野「でもやれるでしょ?藤岡弘◯。」

 

根鎌「えぇ…わあったよ、ちょっと待ってろ?今、降臨(おろ)すから。」

 

__トントントン

 

根鎌源治、「みなさん、こんにちは。根鎌源治、です。

本日は、市井の人々の平和を脅かす害獣を成敗しに参ります。それでは。

行くぞ!お前たち!」

 

十文「おお、憑依(はい)った。」 

 

◆

 

 朝焼けに向かって四人を乗せた車が発進する。

 

__混沌とした時代、謎の怪物の出現により私たちの日常は奪われようとしていた。

 

__怪物の名は害獣ドラゴン。人々から生気を吸い取り何処かへ去っていく。まさに死神のような獣である。

 

__そしてここに、怪物に立ち向かうべく熱き四人の男たちが立ち上がった!

 

根鎌源治、「待っていろよぉ…!ナトゥー!!」

海野「ナトゥーじゃなくてドラゴンね。」

 

__そう、彼らは“ドラゴンスレイヤーズ”!

 

密着ドキュメンタリー

『実録!ドラゴンスレイヤーが来る!!』

 

 ご期待ください。

 

◆

 

根鎌「……あれ?ていうか、この車どこ向かってんの?本当は電話なんて入ってないよね?」

 

海野「しーっ!そういう“体(てい)”でしょ!

あの画が欲しかっただけだから。」

 

十文「え、じゃこのまま帰る?」

 

佐渡「帰る……か?」

 

十文「ま、うん。することねえし。」

 

海野「…帰ろっか。」

 

根鎌「ああ、帰ろ帰ろ。」

 

海野「じゃがりこ買って帰ろう。」

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