【蜘蛛ですが、なにか?】短編集 作:ジェノヴェーズェ
この作品では、作者が思いついたネタを執筆して投稿していく予定です。
あらすじにて注意事項をご確認いただいてから、本作をお楽しみください。
今回は、原作でも在り得たかもしれない可能性をネタとして思いついたので、執筆して投稿しました。
前編と後編に分けているので、まずは前編のほうをご覧ください。
IF1:蜘蛛子がマザー攻略に、もっと慎重に動いていたら 前編
上層に戻ってきて、数日。
強い魔物がうようよいた下層や環境が最悪だった中層では出来なかった、ゴロゴロくつろぐ生活を満喫しているわけだけど、そんな生活を送っていても不満に思っていることが一つある。
おそらくマザーが発信元と思われる、私の魂に繋がるラインから送られてくる指令。
私の場合、外道無効のスキルがあるから指令を無視することができるけど、それでも指令の存在自体が鬱陶しくて我慢できない。
なにより、私の意思を完全に無視して強制支配しようとしてくる存在は、例えマザーが相手だろうが許すわけにはいかない。
なので、これからマザーに反撃していくことにした。
マザーが私を支配するために繋いでいる魂のラインに並列意思3人を送り込み、そのラインからマザーの魂……精神?に侵入させて攻撃する。
生まれた時からマザーに送られてきた指令は、私の魂に少なからず影響を与えてきた。
なら、こっちがマザーの魂に乗りこむことでお返しすることにしよう。
まあ、真正面から戦ったりなんかしたら、絶対と言っていいほど私が負ける可能性が高いという理由もあるけど。
ともかく、マザーへの反撃は、私が一方的に攻撃できるだろう魂というフィールドで、というのは決定事項だ。
そんなふうに考えていた私だけど、ふと思った。
「あれ?ぶっつけ本番でマザーに攻撃仕掛けるのは、流石に無謀じゃね」、と。
今まで多くの戦いをくぐり抜けてきた私だけど、これからやる予定の魂同士の戦いなんてものは初めての分野だ。
外道無効のスキルで私の魂へのダメージはゼロになるとは予想しているけど、それはまだ立証できたわけじゃない。
なにより、いざ戦いを始めてみたら、想像を絶するようなとんでもない事態が起こったなんてことも、十分に考えられる。
それが私にとって有利な形で起こってくれればラッキーだけど、マザーの利になる場合だったら最悪だ。
そんなことにならないように、マザー相手に仕掛ける前に、一度並列意思による魂への攻撃がどんな感じになるのか実験しておいた方がいいはず。
というわけで、さらに魂のパスを経由することでマザーの眷属に入り込んで、魂への攻撃について実験してみようと思います。
並列意思の諸君、そういうわけだから実験にちょうどいい個体を探してきてくれたまえ。
[本当に人使いが荒い……]
{でも確かに、魂への攻撃がなにをもたらすのかは確かめておいたほうがいいだろうね}
〈さっそく行ってくるばいー!〉
並列意思たちに、マザーから繋がる魂のパスを通して実験対象になりそうな個体を探してもらった結果、1体のポイズンタラテクトで実験を行なうことに決まった。
もっと強いのなら、グレータータラテクトや、さらに上のアークタラテクトという魔物もいるわけなんだけど、こいつらマザーの便利な手駒っぽいんだよね……。
生まれたばかりの我が子をムシャムシャする無慈悲なマザーだけど、手下として優秀な奴らに手を出されたら、その時点で私を敵と見なして襲ってくることも十分に考えられる。
それより実力が劣る魔物なら、大した戦力じゃないから手を出してもマザーは気にしないはず……と思う。
だけど、龍相手にも大ダメージを与えることができる圧倒的な強さのマザー相手が本番なので、貧弱な強さの個体だと実験にはならなそう。
グレーターよりも弱くて、かつそれなりの強さは持っている魔物で実験したい。
そんな感じで私に選ばれたのが、このポイズンタラテクトでした。
おめでとー!
というわけで、残念だけど死んでもらう。
既に並列意思の魔法担当1号が、ポイズンタラテクトに入り込んで魂への侵食を進めている。
あくまで実験だから、1人分の並列意思で魂への攻撃という実験をやってもらってる。
最初はマザー相手に3人分の並列意思で攻撃するつもりだったけどね。
実験の経過は、順調ってところかな。
いつものようにHPを0にして倒すのとは勝手が違うから、多分だけどね。
時間はそれなりにかかるみたいだけど、こっちは当初の想定通りダメージを受けることなく一方的に攻撃できている。
外道無効のスキルのおかげで、私は無敵なのだ。
逆に言えば、外道無効とまではいかなくても、外道耐性のスキルが相手にあると、魂を侵食する効率も悪くなると思う。
今の段階でマザー相手にこれをやったら、攻略完了までえらく時間がかかることになっただろうなー。
やっぱり、ぶっつけ本番は良くないよね、うん。
ともあれ、まだ実験は始まったばかり。
実験の様子も気になるけど、今は自分を強くしていく方を優先しようか。
あとレベルが一つ上がりさえすれば、次の進化ができるわけだし。
この前の地竜とか倒して、どんどん経験値を稼ぐことにしよう。
レベル20になって、ゾア・エレからエデ・サイネに進化した。
それ自体は何も問題ないんだけど、この進化によって、禁忌のスキルがついにカンストしてしまった。
カンストした禁忌の効果で、私の頭のなかに膨大な情報が詰め込まれている。
その全部を把握できたわけじゃないけど、断片的な情報から、この世界が今、滅ぶ寸前といっていい状態にあることを知ってしまった。
このまま何もしないでいると、この世界と心中してしまう可能性があるってことだ。
そんなのは、大変御免被る!
だけど今のままじゃ、何もできずに滅びるしかない。
世界のこととか知ったこっちゃないけど、とりあえず私自身が生き延びる道を作るには、今よりもっともっと強くなるしか思いつかない。
なので、今までと同じやり方で強くなっていくけど、そのペースを大幅に上げる必要があると私は結論を出した。
だから、ある程度のリスクは覚悟のうえで、手強いけど多くの経験値を持っている魔物がたくさんいる下層で狩りまくっていた。
この時の私は、魔法担当1号がやっていた魂への侵食実験のことをまるで気にしていなかった。
むしろ、禁忌のスキルがもたらしてくる不快感が影響していたのか、実験なんて悠長なことやってないで、さっさとマザーに攻撃仕掛けようかなとか、そういうことを考えていた。
今までとは内容が全然違う天の声(仮)が唐突に聞こえてきたのは、そんな時だった。
《個体、エデ・サイネに個体、ポイズンタラテクトが統合されました》
はい?
統合って何?
そんなことを思っている私を置いて、天の声(仮)が続けて聞こえてくる。
《ステータスが統合されました》
《スキルが統合されました》
《スキルポイントが統合されました》
《称号が統合されました》
で、そんな感じの通知が聞こえているなか、私は気づいた。
これってもしかして、魔法担当1号がやっていた実験のせいじゃね?と。
ポイズンタラテクトが統合されたとか言ってたし、多分そうだと思った。
で、ステータスとかスキルとかが統合されたとか言ってるから、自分のステータスを確認してみたわけ。
結果、むっちゃ強くなってしました。
いやあ、驚いたわ。
持ってるスキルのレベルが幾つか一気に上がってたし、ステータスもグンと増えてたんだもん。
それ以上にスキルポイントなんて、今までからじゃ信じられないくらいのポイント数が入ってた。
数回レベルアップしても、ここまで強くなるなんて考えられないってぐらいの成長ぶりだったよ。
結論から言うと、この現象は魔法担当1号がやっていた、ポイズンタラテクトへの魂の侵食が原因で間違いなかった。
私の並列意思がポイズンタラテクトの魂を完全に侵食したことで、ポイズンタラテクトのステータスが私のものとして統合されたらしい。
単純に数値を加算するなら、そりゃレベルアップとは比べ物にならないくらいの強化になるだろうなぁ……。
なお、侵食されていたポイズンタラテクトの方はどうなったかというと、魔法担当1号が完全に自分の物として体を掌握していた。
しかも、このポイズンタラテクトのステータスは、なんと統合された後の私のステータスと同じだった。
要するに、私のステータスとポイズンタラテクトのステータスが加算されて、私と魔法担当1号とで半分こどころか×2された、ということだった。
ナニそれ、ぶっ壊れすぎる。
まあ、その代償と言っちゃなんだけど、ポイズンタラテクトの肉体を自分の物とした魔法担当1号は、以前のように魂のパスを通した肉体間の移動ができなくなっていた。
自分専用の体を手に入れたことで、意思が肉体に固定されちゃった、てことかな。
ポイズンタラテクトとしての体をなくせば魂のパスを移動できるようになるかもしれないけど、流石にそこまでやろうとは思わなかった。
とはいえ、私がエデ・サイネに進化する前からやっていた実験は、思わぬ収穫をもたらしてくれた。
より強さを求めるようになった私にとって、他の魔物の魂を侵食したことによる恩恵を知ることができたのは幸運だった。
この手を利用しない理由があるだろうか――!
ククク、待ってろよマザー。
あなたを超える日は、そう遠くないぞ――!
後編の更新は、明日の12時を予定しています。