ホワイトルームに魔があるなら悪もあっていいよね   作:ナチナチ

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次は来週末ぐらいですね


どれだけ天才であっても、無限大の可能性は持ち得ない。神にはなれないのだ。

高度育成高等学校での生活が始まった入学式から、はや一週間。オレたち1年Bクラスは二つに別れようとしていた。南雲率いる生活態度はしっかりする派と、南雲の『支配』に対抗するべく立ち上がった派。

 

前者は、南雲のクラスによって評価が決まり、クラス間闘争が始まるという予測の下に活動する派閥であり、そのカリスマとよく回る口によって少しずつ人員が増えている。また、わざわざ南雲に対抗するために授業態度を悪くするなどという策に出る愚者の集まりと一纏まりにされたくないやつらも続々と逃げ込んできている。

後者は、オレの演説に感銘を受けた芯のないやつらの集まりで、なんの目的も気概もなく、ただ南雲を嫌ったり、リーダーを立てるのが嫌だったりと言った協調性がない者が殆どだ。

 

他クラスを見てもどのクラスもリーダーはいるようであり、異例のものだ。もしクラス間闘争が現実のものとなった場合、後者はクラスでの立場を失ってしまうだろう。

これはさすがに想像していなかったが、これから先役に立たないであろう種すら持たないものたちを一斉に消すことができるチャンスだ。南雲も使えそうなやつだけを引き抜いているようだ。

 

クラスの状況はもっとも団結とは程遠い状態になってしまったが、オレと南雲としては一ヶ月が過ぎれば理想のクラスに変わるだろう。それまでの辛抱だ。

 

 

オレの生活は特筆すべきものはない。授業をまじめに受けているように見せ、南雲と会話し作戦会議をしたり、取るに足らない女を食った、俳句を読んだなどとお互いに絶対に噛み合わない自慢をしてみたり、なんぱ?というものを人生で初めてした。

オレの好みが歳下であることを南雲には見抜かれてしまったが、少し揶揄われる程度で支障ないだろう。反論材料として、傾国の美女とも言うべき先輩に話しかけてガン無視された南雲の顔の写真を見せてやれば良い。

あの顔で一句読んでやれば黙るだろう。

 

南雲と遊ぶ以外には、文学や俳句、短歌に触れることぐらいしかしていない。高校生活が始まったからといって特別なことは何もないということだ。一ヶ月後までは争いもない平和なものになるだろう。

だからといって何もしないというのは面白くない。そこで、Aクラスで早くも変人と呼ばれる女に会いに行こうと思ったのだ。

 

 

ベンチに奥深くまで座り込むその女。自信を感じさせる釣り上がった瞳。腰まで届きそうなのに邪魔にならないストレートで、白雪の銀髪。美しいが棘しかなさそうな女である。南雲よりも面倒臭そうではあるが、退屈しなさそうだ。

 

「お前が、鬼龍院か」

「そうだ。私が最近一年のなかで変人と噂される鬼龍院 楓花であるとも。あと、楓花と呼べBクラスの孔明よ」

「ふん、その恥ずかしい呼び名はやめろ、オレには羽柴 景虎という名がある。」

「ああ失礼、名が分からんかったのでな」

 

オレはBクラスで南雲と並ぶリーダーとして一年生中に知られている。それは情報を持ってきてくれる朝比奈なずなからの情報で知っている。もちろんこいつも知っていて煽っているのだろう。なるほど、それはAクラスの連中から距離を置かれるはずだ。

 

「オレは今、退屈で仕方なくてな。Bクラスのことは南雲から手を出すなと言われていて何もすることがないんだ。それで暇つぶしにならないかと思ってな」

「ほう、だか、当てが外れたな。私は他の女のように股は容易に開かんぞ。乙女だからな」

「オレを南雲と一緒にするな。オレは好き好んで女を食わん。オレは団子より花だ」

 

ベンチに座らせまいと手を延ばす楓花の腕を無視して、ベンチに差を向けて座る。ふむ、中々筋肉はあるようだ。

 

「どうだ、私の二の腕は。女性の胸の感触と同じくらいの柔らかさというからな、さぞ心地よいだろう」

「ふむ、カチカチだな。お前の胸は鉄で出来ているんじゃないか?」

「紳士が淑女に言うことじゃないぞ、景虎。私だって傷つくことはある」

「そう言ってオレの背筋を撫でるな筋肉フェチズム1秒20ppだ。」

「おっと、私の二の腕を触ったのを代金としてくれマスター、良い筋肉だな」

 

南雲との会話と似た雰囲気の皮肉の言い合い。南雲は勝利に気を揉むために言い負かそうとしてくるが、こちらは興味のままに話を紡ぐだけ。これは変人と言われても仕方ないだろう。相手への配慮よりも、自身の好奇心や気持ちを最優先とするその在り方。常人であれば苛立ちしか湧かないだろう。

 

「そうか、お前は自己中心的だから変人か」

「私にだって、相手を優先することはあるぞ?デートなどではな」

「二の腕の話を信じている時点で、マリア確定だ。透けて見えるぞ変人」

「私の胸のサイズはDだ。覚えておけ童」

「ふん、本当かな」

「やめろ、私を助兵衛な目で見るでないわ」

 

周りからすればドン引きされるような会話だが、オレたちにとっては話したいことをつらつらと述べているに過ぎない。どちらも配慮が要らないほどにプライドがなく、相手の意図を読み取れるからこそできる脳死会話。退屈を乗り越えるには丁度いい頭の体操だな。心地よいくらいだ。

 

「お前がBクラスなら良かったのにな」

「なんだ、いきなり告白か?私はロマンチストだからな。ロンドンの崖の上で、夕日を背後に告白されないと受け入れられない」

「そんなことするわけがないだろう」

「そうか?私を結構魅力的に感じているようだが」

「ふん、他よりマシと言うだけのことよ」

「ふふ、存外素直ではないか、良いぞ良いぞほれ、褒美に膝枕をしてやろう」

 

女性にあるまじきパワーによって首を倒される。反抗しようにも春の陽気に当てられて力がでない。あーれー。

 

ポスン。と音を立てて楓花の足の上にオレの左耳が落ちる。タイツとの擦り合わせがゾクゾクする。しかし、押さえつけられているので首が苦しい。

 

「おい、そんなに強く押し付けるな。オレは犬ではないから興奮せんぞ」

「なんと、南雲に飼い慣らされた狂犬かと思ったがそうではなかったのか。これは失敬」

「貴様…」

「どうした?私の胸が恋しくなってきたのか?……はひゃっ!」

 

景虎は仕返しとばかりに、楓花の足をタイツごしに優しく撫でる。さすがの楓花も足を撫でられるのは想定外だったのか、小さく驚きの悲鳴を上げ、それを聞いた景虎は気分を良くする。ニヤッとした表情が見えたのか、楓花は景虎の耳と頭へとその手を伸ばした。

 

「なっ…!?やめろ!」 

「ふっ…くっ!お前こそ足を撫でるのをやめろ!」

 

そこから先は見るものに淫乱な範囲気を感じさせるものであった。景虎は執拗に楓華の足を撫で回し、鬼龍院はそのくすぐったさに耐えるように顔を赤くしながら、景虎の耳と頭を撫でた。

楓花による子供扱いと耳への刺激は、景虎に羞恥心を与えるのに十分であり、膝枕という姿勢も相まって、二人の表情は恥ずかしさとくすぐったさで真っ赤になっていた。

 

数分後、ベンチに疲れたように座る二人の銀髪の男女が多く目撃された。なんでも、二人で膝枕をしながら脚と手を撫であっていたようで、あっという間に噂は学校中に広がり、景虎と楓花はアツアツカップルとして揶揄われ続けることになった。

二人ともそれらの噂に無関心であり、反応が薄かったので周囲も二人が変人であるとは気づいていたが、変人同士惹かれあっているのだろうと、それからも普通に逢瀬を続けたため噂は留まることを知らなかった。

 

 

 

 

 

当たり前のように授業を終え、ノートに漏れがないか確認する。理解が及ばないことはないため、教材を机の上から片付け部屋へと帰る。

今日は南雲との話し合いなんかも設けていないのでフリーである。図書館に行ってミステリー物でも読むとしよう。

 

「あ、景虎!ちょっといい?」

 

教室にまだ生徒が多くいるといってもよく響く声で、花のヘアピンをつけた少女が声をかけてくる。情報通の朝比奈なずなだ。

 

「どうした、なにかあったのか」

 

「うん、それについて二人で話したいと思ってね」

 

「そうか、今日は別に良いぞ」

 

「じゃあ、カフェで。先に席取っといて!」

 

「分かった」

 

 

南雲の配下か、そうじゃないかという2派閥に別れた1年Bクラスはしかし、オレやなずなのように自由に行動するやつもいる。そういうやつは、南雲から自由に動いたほうがはたらきが良いと判断されたり、手に負えないといった事情がある。前者がなずなで、彼女は束縛されることを拒み、南雲をあまり好意的に思っていない。それを見抜いているからこそ、オレと関わらせているのだろう。南雲に関わる重要なことは言われてないからな。

後者はオレで、派閥闘争のなかで無能でないものを囲むのに忙しいためにわざわざ面倒を見切れないのだ。まあ、そんな必要も無いわけだが。

 

朝比奈なずなとオレの関係は、秘密組織のボスと諜報員といった位で、ごく稀になずなからオレに相談を持ちかけられたりする。

女同士の争いとかそういったものはほぼ全員が南雲に食われているから少ない。

基本的には勉強でわからないところや、南雲の行動の意図、後は南雲の愚痴を言い合ったりするくらいである。今回は恐らく南雲に対する愚痴だろう。なずなは南雲のオレ様的な態度が気に食わないらしい。あとは女を食い漁るところとかか。

オレが気にならないのはアイツと性質が似ているからだろう。善良な市民にとっては好ましく無いに違いない。

 

「でさー、南雲が私の肩を掴んで寄せてきたのよ!ありえなくない!?私いっつもそういう話断ってるのにぃー」

「ふむ、オレはそういうことに関しては経験不足だが、お前がそれだけ魅力的なんだろ」

「えへへー、私魅力的?景虎もそう思う?」

「ああ、思うぞ。いつも助かっているしな」

 

1年女子からすると、オレは硬派すぎて話しかけるのに気負いするらしい。Bクラス連中からしても、南雲に意見できる唯一の存在みたいな扱いだからな。こうやって腹を割れるのは、南雲となずな、あとは楓花くらいなものだ。

オレの今までは暗く汚いものだったが、中々どうして、こんなに穏やかな生活も良いと考える。かの白居易のように友と女子と穏やかに隠居するのもまた一興かな。

 

「でもさー、なんで景虎は南雲と仲良かったり、手伝ったりしてるの?結構息合わなそうにおもうんだけど」

「まあ、ここに来て初の友人というのが大きい。オレも新しい土地で新しい友ができたのは嬉しかったからな」

「えー、なんか嘘くさい」

「そんなわけあるか、オレが嘘をつくのは南雲の前だけだ」

「南雲の前だけではないでしょー、この前も先輩に話しかけられたときに私の彼氏役してくれたじゃーん」

「あれは仕方なかった。お前という大切な存在は守らねばならない」

「へっ!?ま、まあそうだよね。私は大切だもんねー……へへ」

 

稚児のように赤くなった頬が気になるが…、まあ体調管理はお手のものだろう気にする必要はないか。『なぜ南雲に協力するのか』か。これから過ごしていく内に嫌でも気付くだろう。オレと南雲の共通点に。

 

 

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました。
鬼龍院と朝比奈はこの小説におけるキーパーソンかつヒロインです、可愛いですね。もっとデレデレさせた(殴
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