仮面転生者ΑGITΩ 〜人類審査のオーヴァーロード〜   作:ただのファンだよ。

19 / 40
本日二話目の投稿です。
あと、今回は幕間になるので短めです。





癒しの聖女、光の魔女

 

 

 

 

 ………ぅ、ぁ、ぁあ。

 これ…は、ひかり?

 ……温かい。

 

「ーーー!」

 

 声? 誰のだ? 声質から女……か?

 ゆっくりと、重い瞼を上げる。視界がボヤけてよくわからないが、金色の……髪? が見える。

 

「ーー丈ーーすか! ゼーーィーーん!」

 

 心配そうに呼び掛けるような声。僅かに鮮明になった視界の端に淡い緑の光が見える。その光が、光の色彩が、私に呼び掛ける彼女の碧眼と繋がり意識が鮮明になった。

 

「!!」

「きゃっ。だ、大丈夫…ですか、ゼノヴィアさん?」

「………キミ、は」

 

 慌てて起き上がる私を見つめる彼女。

 いや、

 

()()()()……()()()()()()

「はい。……お身体は痛みますか?」

「身体……? 一体何を──っっ」

 

 私は……イリナと共にあのΑGITΩと戦い、そして敗れて、その後は……、そうだ! コカビエルの光槍とΑGITΩの蹴りがぶつかり合って、その爆発で吹き飛ばされ、気を失ったイリナを背負いながらその場を離れて……その、後…は……再び気を失って倒れたのか。

 

「無理はしないでください。私の神器(セイクリッド・ギア)で治療しましたが傷は癒せても体力までは戻せません」

「……イリナは?」

「隣の部屋のベットで眠っておられます。部長さん達が応急処置を施してはくれていますので命に別状はありません」

 

 彼女の言葉に安堵する。ブチョウサンというのはよくわからないが恐らくだがリアス・グレモリーかその関係者の事だろう。私が治療されている事から害意がある訳でもなさそうだからな。

 イリナの無事を確認して安心すると次に気になる事は、

 

「……」

「……? ……っ」

 

 私の視線に彼女は、アーシア・アルジェントは困った様な仕草を見せる。年相応の少女の反応に私は余計に疑問が募る。

 

「キミは……」

「え?」

「キミは、私を前にして何故そうも平然としていられる?」

「………」

「私は……あの会談で」

「いいんです」

 

 私の言葉を遮ってアーシア・アルジェントは小さく微笑む。その瞳からは、私のよく知る姉……の様な人が向ける慈愛に満ちた目ととても良く似ていた。

 

「確かにあの時、あの人を馬鹿にした事は許せませんが」

「……っ」

「でも、だからって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「!?」

 

 私はアーシア・アルジェントの言葉に驚愕する。

 そんな私を他所に彼女は続ける。

 

「私は、(アーシア・アルジェント)にしか成れません」

「……何を?」

「教会に居た時に多くの人々を癒したのも、あの時悪魔だったあの人を癒したのも、そして今ゼノヴィアさんの傷を癒したのも───全て私の意思です」

「……」

「私が癒したいと、皆さんを苛む痛みから助けたいと思ったから私は神器(セイクリッド・ギア)を使いました。……その所為で私は教会から追放されました。私を忌避する人達もいました。神器(セイクリッド・ギア)を狙って、殺されそうになった事もあります」

「……っ」

「でも、私はこの神器(チカラ)を手放そうと思った事はありません。この治癒の力が誰かの助けになるのなら、誰かの命を、“ 心 ”を救う事が出来るのなら───それはきっと佳い事の筈です。ですから、私はこの力を使い続けます。これが私です。あの人が……アギト(シ■■ス■)さんが『そのままでいい』って言ってくれた私なんです」

 

 私は──普段ならありえない話だが──心の中で自身を恥じた。この町に来る以前の私なら彼女の言葉を聞いた上で「何をバカな」と言って剣を振るっていただろう。

 だが、今の私はとある言葉を思い出していた。

 

───アーシアなら許していただろうから。

 

 私達に狙われ、交戦し、勝利したあのΑGITΩを。動けない私達の生殺与奪の権理を持ちながら見逃して……尚且つ私達をコカビエルの攻撃から守ったあのΑGITΩの言葉を。

 アーシア・アルジェントの善性は本物だ。人々だけにならず悪魔さえ癒す行いを受け入れる事は出来ないが、それも彼女の優しさ故だとわかれば……まぁ、納得は出来る。

 

「謝罪、させてほしい。アーシア・アルジェント」

「ゼノヴィア、さん?」

「君を魔女と罵った事。君の大切な人を蔑んだ事を謝らせてほしい」

 

 私は彼女に頭を下げる。行動でしか私の意思を示す事は出来ないが、今はこの行動で少しでも私の意思が伝わる様に深く。

 

「ゼノヴィアさん。……はい、私は貴女の謝罪を受け入れます」

「君の慈悲に感謝する。───だが、私は教会の戦士である事に変わりはない」

「……」

 

 こればかりは私の在り方に関わる、曲げられない事もある。だからアーシア・アルジェントには正々堂々と告げる。

 

「今回はコカビエルの、聖剣奪還の件が解決するまでΑGITΩを狙う事はしない。だが事件が解決した後は、私はΑGITΩと戦う」

「……」

 

 責められるだろうか? 罵られるだろうか? 怪我を治癒した事を後悔されるだろうか? ………願わくば、彼女の慈悲の心が損なわれる事がない事を祈る。

───だが、結果は私の想定の範囲外のものだった。

 

()()()()()

「……え?」

 

 思わず頭を上げて彼女の顔を見てしまった。

 彼女はアーシア・アルジェントは先の慈悲深き聖母の如き表情をしていた同一人物とは信じられない程に蠱惑的な笑みを浮かべている。絶対的な信頼と仄かにバカにする様な彩が融けたオンナの貌。

 

「あのヒトは、絶対に負けませんから…♪」

 

 妖しい光を宿す瞳、小さく吊り上がる口端。

 目付きが、表情が、声音が、仕草が、全てが彼女の言葉を肯定している。疑う余地すらないと100パーセントの信頼、否、もはや信仰のレベルにまで達している。

 

「は、はは」

 

 引き攣った笑いが溢れる。

 嗚呼、前言撤回だ。私はこの短時間で二度、自身の考えを改めさせられた。

 

「やはり、魔女だなキミは」

「……?」

 

 キョトンとした表情を一瞬だけ浮かべ、くすりと再び笑う。

 

「そうですよ、私」

「………」

「ΑGITΩの魅力に堕ちた。主の意思に背くわる〜い魔女(おんな)なんです」

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。