仮面転生者ΑGITΩ 〜人類審査のオーヴァーロード〜   作:ただのファンだよ。

23 / 40
本日二話目の投稿です。
まだの方は前話からどうぞ。





燃え上がれッ! その火剣!!

 

 

 

「ΑGITΩぉぉお!!!」

 

 光の剣を握って向かってくるコカビエル。翼を広げ、足先が地面から僅かに離れた直後に超低空飛行で距離を潰した堕天使幹部が仕掛ける。

 対してアギトは、()()()()()

 

「───は?」

「え……?」

 

 バイクを操り、ハンドルを捻り、ぐるりとその場で旋回。完全に背中を向ける形となり───瞬間コカビエルの意識が沸騰した。

 

「キサマぁ!? ふざけるな」

 

 コカビエルの声を遮る様にエンジン音が吠える。

 続けてアギトが騎乗するバイク───変形した新型の超越生命体『オースラス・プロケッロースス』の脚が変異した火口(マフラー)から(バーナー)を噴き出し、コカビエルに浴びせる。

 

「ぐぅっ」

「きゃっ」

 

 噴き出した炎はコカビエルへの攻撃に加え、本来の用途である推進力としての効果を存分に発揮し、アーシアを拾い上げて疾走する。

 アーシアを背後に座らせ、風圧から守りながら駒王学園のグラウンド場を駆け抜けて目的の場所にて車体を横向きにする某アキラ方式にて停止する。

 

「アーシア」

「あうあうあう〜」

 

 超速走行による圧力はアギトにより遮られたが自身のキャパシティを超える速度にアーシアが混乱している。

 

「アーシア」

「───ハッ、は、はい!」

 

 もう一度呼び掛ければアーシアが我に返り反応する。

 

「この人を頼む」

「え? あっ! ()()()()!!」

 

 アギトの指した人物にアーシアが駆け寄る。

 そう……姫島 朱乃の元に。

 

「ふざけた真似を……!」

 

 常人なら消し炭と化していただろう爆炎を至近距離で受けだというのに大したダメージになっていない様子のコカビエルが苛立った表情でアギトを見据える。

 

「……」

 

 アギトもバイクから降りてコカビエルと向かい合う。

 互いの間は凡そ10メートル弱、両者共に即座に潰せる距離だ。

 ただし、

 

「……つ」

 

 万全の状態であれば。

 アギトは現在片足を負傷している。移動、防御、攻撃に支障を来す程に。そして何より彼の必殺技であるライダーキックが使用不可となっているのが彼にとっては一番の痛手だ。

 コカビエルも今のアギトの仕草で察したのだろう、先程までとは一転して意地の悪い笑みを浮かべている。

 

「そんな状態で、その怪我で、よくぞ此処に現れたなΑGITΩ。戦えるか? 戦えるのかぁ? このコカビエルを相手に!」

「………」

 

 光の剣を握ってアギトに差し向けるコカビエル。ニたニた、げラげラと悪鬼の様な邪悪な嗤いを浮かべながら。戦闘狂いの人外は、戦士ではなく圧倒的優位に立つ強者としての嗜虐心を湧き上がらせながら勝利を確信して、同時に僅かな落胆を抱えている。猛者との激戦を期待していた、神の天敵と呼ばれる戦士の、無限の進化を孕んだ超人との血湧き肉躍る戦場の歓びを求めていたからだ。

 

()()()()()()()…?」

 

 だからこそ、その余裕が気に入らない。

 勝利を確信しているからこその上位者の視点を向けているのに、その対象は対等と言いたげな目を向けてくる。

 

「……ならば逆に聞くが、この状況でキサマが勝てるとでも?」

勝てる

「   」

 

 コカビエルの貌から表情が消える。

 能面の様な無表情に染まった最上位の堕天使が───アギトの前に現れる。アーシアにはコカビエルが瞬間移動したかの様に見えた。

 

「死ねぃΑGITΩぉぉ!!」

 

 写真のフィルムを一枚捲った瞬間に現れたかの様に、無表情から狂鬼の如き形相で振り上げた光剣がアギトの頭を叩き割るつもりで繰り出される。

 

「……づぅ」

「チィ…!」

 

 バックステップでコカビエルから離れるアギト、その胸部装甲(ゴールドチェスト)には一筋の傷痕が刻まれている。

 アギトの装甲は生体鎧、下腹部の変身器官(オルタリング)の【賢者の石】から供給される光の力(オルタフォース)により肉体が変異して生成された強化外骨格(パワーシェルアーマー)。表面層を浅く切り裂いた程度の傷だが、其処は痛覚の通った肉体だ。僅かながら苦悶の声が漏れる。

 初撃から終わらせるつもりだったコカビエルは大きな舌打ちを発し、そこから更に追撃を与える。片足が負傷したアギトじゃ全ての攻撃を躱し切る事が出来ずに傷を増やしていく。生体鎧に強化皮膚、ΑGITΩの肉体で最も硬度の高い頭部にも目立つ傷はないがそれでも擦り傷程度の傷が多々出来ている。

 

「……はぁ……はぁ…」

「ぬぅォォォ!!」

「ぐっ」

 

 光の剣による大振りの斬撃をアギトは両腕の装甲で受ける。刃ば腕に当たる寸前で後方に跳んで威力を散らし、且つ剣を振るうコカビエルの膂力に乗ってコカビエルより離れる。

 

「ふーっ……ふーっ……ッ」

 

 息が乱れる。

 片足の負傷は変わらずズキズキと痛みを発し、新しく出来た裂傷も小さく痛みを訴えているが耐えて複眼越しにコカビエルとは別の方向に目を向ける。視線の先ではアーシアがオカルト研究部+αに治癒を施しつつも心配そうにアギト(翔介)を見つめている。

 コカビエルは手に持つ光の剣を手放すと剣の形が崩れて光が霧散する。落胆と失望の昏い光を灯した堕天使の幹部が口を開く。

 

「……ふん。やはりハッタリだったか、もういい。もう十分だ。これ以上キサマに付き合う気はない」

「……」

「これ以上、キサマの無様な姿は見てられん。一思いに殺してやろう」

 

 コカビエルは翼を広げて飛翔する。片足を負傷したアギトでは全力で跳躍しても届きはしない結界内天井ギリギリの高度。其処からコカビエルが光の巨槍を錬成する。

 

「こいつがキサマの立つ地に当たった時、俺が封じた術式が強制的に起動して此の町は崩壊し、破滅の光によって焼却される。キサマも、そこの悪魔共も、この町の人間も全て消えて無くなる。そして、焦土となったこの地より始まるのだ、千年前の戦争の続きがな!!」

「………」

 

 学園に仕掛けられた術式も、術式が発動すれば駒王町が崩壊する事も、コカビエルの言う千年前の戦争もアギトには───津上 翔介には知り得ない話だ。だが、聞き捨てならない話でもある。

 駒王町の崩壊と崩壊による大災害。コカビエルの言葉を信じるなら当事者を除いて生き残りは居ない、それは困る。この町には血の繋がった姉が居て、漸く人並みの幸せを手に入れ始めたアーシアが居て、共に居て居心地が良いと思える程度には友好的な人達が多数居る。場合によっては雪菜とアーシアの二人を連れて逃げる事も選択肢に入るだろうが現状その手段を選んだところで間に合いはしないだろう。

 

「ますます、負けられないな」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 頭上に浮かぶコカビエルを見上げる、()()()()()()()()()。学園を覆う結界の向こう側、月を背景に()()()()()()()()()()のが気に入らないがそろそろ此方から仕掛ける事としようと決断する。

 

「終わりだ。死ねェェΑGITΩよぉぉ!!!」

 

 コカビエルが光の巨槍を大きく振りかぶる。投げ出されたら最後この町は終焉を迎え、魔王の妹の死により引き起こされるだろう聖書陣営の三勢力による戦乱の時代。裏世界だけでなくオモテの世界にも影響を及ぼし現代の地で起きる神話大戦。

 

「───御免蒙る」

 

 ()()()()()()()()()()

 

 アギトの命令に呼応する様に一陣の風が疾走する。

 結界壁を駆け上がり、炎の様な金の軌跡を残しながら翔け抜ける。レーザービームじみた亜光速でコカビエルの後方、背面を取り、コカビエルは幻視する。自身の背後から襲いくる巨大な二つの頭を持った獣が顎を広げている姿を。

 

「か゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!?」

 

 ぶちり、鴉の様な暗い黒翼が根本からコカビエルの背より離れる。

 

「な、何者だキサ」

『ガルァァ!』

 

 コカビエルの翼を奪った者───ΑGITΩとほぼほぼ同質のオーラを放ちながら強い獣性を宿した仮面の女戦士、ヒトガタに変身した双頭犬型超越生命体(ツインヘッドドッグ・マラーク)オースラスが両手に掴んだ翼を投げ捨て、大気を揺るがす剛蹴でコカビエルを地に落とす。

 

『がぅ、わふぅ』

 

 墜落したコカビエルを飛び越えてアギトの側に移動したオースラスは口元を()()()()()()()()()()()()()()可憐な少女の声をくぐもらせながら、主人であるアギトに褒めて欲しそうな仕草を見せる。

 

「……、………」

『っ!? ……』

 

 物欲しそうな顔(仮面で見えない)を一瞥するもコカビエルに視線を戻すアギトにオースラスの背景にカミナリが落ちる。見るからにシュン…と気落ちしたオースラス。

 決戦として張り詰めていた場の雰囲気が三割増しで緩くなったのを感じる。

 

「く そ が ぁ ぁ あ あ !!」

 

 黄塵を吹き飛ばしてコカビエルが吼える。

 

「何なのだキサマは……ーーッ!? 」

 

 不意打ちにて猛者としての証明である翼を奪われたコカビエルが激昂して下手人を睨み付け……目を見開いた。

 

『……ガルルゥ…!』

 

 姿勢を低くして威嚇する獣の如く唸り声を上げるオースラス。

 その御身体を視界に入れ、認識した瞬間より未知の感覚にコカビエルは身体の芯から支配された。

 嫌な、粘度の高い汗が流れ、四肢が僅かに硬直する。脳内から戦闘欲求を押し除けて発せられる警鐘。生物が繁栄の為に、種の存続の為に生殖行為にて誕生したのではなく。ヒトガタの(カタチ)を設計されて、型に(ヒカリ)を満たして神造された“ 天使 ”だからこそ感じ取れる、設計時点での階級の差を。神に造られた人間の上位者が天使なら、天使(エンジェル)の上位者は人類を除く生命の原型、始祖(ロード)たる使徒(マラーク)だ。そしてオースラスは闇の力の介入によりΑGITΩの光を分けて改造された新造形の超越生命体。性能、実績とは関係無く“ 天に使われる者 ”としてコカビエルは下位の存在であった。

 

「ふ、ふふ、ふざ……」

 

 だからこそ赦せないのだッ、認められないのだ!!

 神の手元より離れ、自由を得た翼持つ者、其れこそが堕天使。絶対存在の唯一神に叛いて手に入れた何者にも染める事は出来ない黒の翼こそが真に自由を得た者の証だとコカビエルは自負している。

 堕天使こそが至高の……自由を求める気概もない天使や地の底より湧いて出た悪魔より遥かに心身共に優れた存在、だという矜持が崩れ去ろうとしているのだ。断じて許容出来る存在ではない。

 今すぐにでも抹消しなくてはならない。何者なのか? どれほどの実力者なのか? コカビエルには一切の記録はないが、全霊を掛けて滅ぼさなければならない。

 

「うおおおおお───」

 

 断末魔の様な咆哮を上げて翼を失った堕天使が地面を駆ける。

 

『グルルゥァ…ッ!』

「待て」

『……クゥーン』

 

 向かってくるコカビエルを迎撃しようとするオースラスをアギトが制止する。アギトの指示に大人しく従ったオースラスが後方に下がる。

 オースラスを下がらせアギトが一歩前に出る。コカビエルを見据えて右手を変身器官(オルタリング)の右側腰部位(サイドバックル)に触れる。

 

「───邪魔をするなァァ!!」

「……俺は既に眼中に無しか? お熱い事だ」

 

 ()()()、とスイッチの様に押し込む。

 ナニカが、変わろうとしている…! じり、じり、駒王学園に満ちる大気の温度が上昇する。真夜中でありながら太陽の陽射しに強く焼かれているかの様に。

 コカビエルは場の変化を意に留めず、道を遮るアギトに拳を突き出す。

 

「───ふざけているのはお前だ」

 

 コカビエルの拳は、巨巌すら打ち砕く剛拳はアギトの右の掌に収まっている。衝撃も打撃音も無い、静寂と熱気だけが彼らを渦巻いている。

 じゅう、拳が焼ける。ここにきて漸くコカビエルは異常を察した、アギトの右腕が赤熱した鉄の様に()()()()()()

 腕だけではない。指先から肩口、そして金色だった胸部装甲(チェスト・プレート)までもが赤く染まっていた。

 

「お前の相手は───」

「ぐぁぁ…!? は、放せ」

「───俺だ……!」

 

 赤く変化した腕でコカビエルの拳を強く握り、変化していない左腕で力一杯殴り飛ばした。コカビエルの身体が転がる。乱回転するかの様に縦に横に数度横転し、最後には倒れ伏す。

 ぎぎぎ、と油の切れた絡繰人形の様に伏せたままアギトを見上げる。頬を腫らして鼻血を垂らし土で汚れた無様な姿だ。

 そんなコカビエルを見下ろすアギトが次に取った行動は、頭上に掲げた左腕、自身が“ 神の天敵 ”で在る事を誇示するかの如く開かれた五指を握り締める。

 

「……!」

 

 天に掲げた左腕を、赤く染まった右腕を左右に広げ、上半身を僅かに捻りながら右手をオルタリングの【賢者の石】前に運ぶ。アギトの身体の変化と同時に金から赤に変わった【賢者の石】から焔が噴き出す。

 不定形の烈火の芳流が大地を、大気を、夜の闇を斬り裂く光と成る。

 

「はあああ!」

 

 アギトの右腕、炎と同様の紅蓮の赤腕か吹き荒れる焔を()()()

 炎が弾けて鮮明に形ある存在が露わになる。【賢者の石】により生成されるオルタフォースによって具現化した其れは“ 柄 ”だ。

 一振りの剣、その握り柄。

 

「…ぉ……ぉぉ、ぉォオオ雄雄雄!!

 

 噴き出す炎が一層火力を上げながらも集束されて柄に連なる刀身が伸びる。周囲を焼き尽くす炎が完全に鳴りを潜めると同時に剣が一気に引き抜かれる。

 

火 剣 抜 刀 !!

 

 

 

 

 

 

 

 

 其れなるは、聖剣、魔剣、神剣、妖刀のどれにも該当しない火のエルロードの力とヒトの可能性が混ざり合って産まれた刃。最強の幻想種『ドラゴン』の劫火(ブレス)に比類する熱量を内包しておきながら剣の形を保たれる奇跡の業物。

 破壊力、切れ味、強度。どれにおいてもこの刃を上回る剣は在るだろう。されども、膨大な火力を宿し、唯其処に在るだけで冷たい夜の空間に蜃気楼を起こすのは火の力を灯した赤のΑGITΩの火剣のみ。

 大地を宿し、解放された己の力に耐えられる金のΑGITΩ(グランドフォーム)の時の“ 超越肉体 ”は失われた。代わりに得たのは視覚や聴覚といった五感───否、超直感と呼ばれる第六巻までもが極限まで研ぎ澄まされた刹那に燃える火の化身。

 

   超  変  身 !

 超 越 感 覚 の 赤(フレイムフォーム)

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、それは…?」

 

 茫然と、僅かな困惑に声を震わせてコカビエルが言い放った。

 

「知らん。知らんぞ……」

 

 目の前の存在は何だ? 人間じゃないのか? ΑGITΩじゃないのか?

 

「姿が変わるΑGITΩなぞ、お、俺は知らん!?」

 

 数千年の時を生きた最古の堕天使であっても知り得なかった未知の存在。未知とはなんだ…? 「未だ知らぬ」と書いてミチと呼ぶ其れは?

 

 ───未知とは“ 闇 ”だ。

 

 ヒトは、知性ある存在(ニンゲン)は自身が思い至らない埒外の現象に対して知性があるが故に理解出来る言葉で収めようとする。

 ヒトが、闇と相対した時に訪れる感情は常に決まっている、恐怖だ。

 

「このバケモノがァァァア!!」

 

 コカビエルには赤のアギトが闇の申し子にでも見えるのだろう。これほど熱く、これほど明るく、“ 火 ”というこれ程までにない程に光の象徴であるというのに。

 

 ギャリィ…!

 

 コカビエルの光の剣と、フレイムフォームのアギトの剣『フレイムセイバー』が鎬を削り、火花を散らす。

 

「死ね! 死んで無くなれバケモノがァァ!!!」

「お断りだ」

 

 アギトの火剣とコカビエルの光剣が何度も交わり剣戟を為す。弾ける光子が、爆ぜる火の粉が刃の軌跡を彩る。

 

「ぬぅおォォオ!?!」

「……! はぁっ!」

 

 コカビエルの大振りの一撃を剣の腹で受ける。剣撃の重みを歯を食いしばって耐え切り、逆に打ち上げる。

 

 ───好機ッ!!

 

 冷静さを損ない、結果として隙を晒したコカビエルの胸に一閃、返す刃にて二撃目が刻み込まれる。

 剣の熱威が強靭な肉の鎧を斬り裂き、身体を内側から焼き尽くす。斬り口が焼かれて血の一滴も出ない傷を押さえてコカビエルが後退する。

 アギトは握るフレイムセイバーを振るって虚空を裂き、刃に付着した焼き滓を払い落とす。

 

「……ぐ、ぐぎぎィ」

「どうした? 随分と口数が減ったじゃないか」

 

 切先をコカビエルに向けてアギトが軽口を発する。

 

「それに、」

「おのれぇ、キサマなんぞに」

「俺にばかり()()()()()()()()()?」

「な、に…? どういう意味だ…」

 

 言葉の真意を問い糺すよりも早く、コカビエルの背に強襲される。突然の意識外からの攻撃にコカビエルは確かなダメージを負う。

 痛みに耐えて、慌てて振り返れば仇敵を連想する紅と赤。魔王の妹『リアス・グレモリー』と赤龍帝『兵藤 一誠』の二人か腕/拳を突き出していた。ダメージの正体はリアスの滅びの魔力とイッセーのドラゴンショットだ。

 

「何故貴様らが……」

「イッセー君だけじゃ」「リアス・グレモリーだけでは」

「!? っっ!」

「ないよ!」「ないぞ!」

 

 次にコカビエルを襲うのは悪魔と教会、本来敵対している筈の二つの組織に属する剣士『木場 裕斗』と『ゼノヴィア』による連携斬撃。

 

「「ハアァァ!!」」

「じぃ……ッ!?」

「「主の為に、斬り伏せる!!」」

「ガッ!? ば、ばか、な…!」

 

 二度目の強襲には寸前で対処する事に成功。聖魔剣と聖大剣を二本の光の剣で受け止める、も蓄積されたダメージに精神的に不安定な状態で咄嗟に作り出した光の武具では光の結束力も低く、剣の強度を超えて二つの刃が剣ごとコカビエルの身体を切り裂いた。

 致命傷に至らなかったが血をぼたぼたと垂らし、コカビエルが狼狽える。信じれなかった、雑魚だと断じた者達に追い込まれているのだから。

 

「貴様ら風情にこの俺が………ーーっ!?」

 

 光の槍を練成し、身構えるコカビエルの頭上で魔力が集中するのを感じる。魔法、それも雷。───バラキエルの娘か!?

 

「雷よ!」

「そうはさせるか!!」

 

 魔力の流れから魔法の術者の居場所を一瞬で割出し、光槍を投擲する。コカビエルの手より放たれた光の槍は先の光の剣と同じく完成度の低い粗品だったが、術者の阻害を目的とし、且つ相手が悪魔であるのなら十分な効果が発揮されると判断しての投擲であったのだが、落雷の魔法は発動し、尚コカビエルの予想に反して光の槍に放たれた。光の槍と落雷の魔法は対消滅を起こし術者の『姫島 朱乃』は無事だ。

 コカビエルは一連の行動にどの様な意図があったのか理解出来ず困惑する。そんな様子のコカビエルを月光を遮る影が覆い隠す。

 

「えい…!」

 

 影の正体はグレモリー眷属の戦車(ルーク)『塔城 小猫』が駒王学園の校庭にから引き抜いた一本の樹木だ。小猫は抱えた樹木を自身の怪力に任せて大きく薙ぎ払う。コカビエルに直撃し、衝撃で木の幹を粉砕しつつもコカビエルを樹木で殴り飛ばして校舎にぶち込む。其処に本命となる朱乃の落雷の魔法が次々とコカビエルが消えた校舎の穴へと殺到する。轟音と閃光を撒き散らしながら雷電が炸裂する光景は見物である。

 

「うふふ、借りは返しましたわよ」

「……やりました」

 

 抉られた腹部の深傷が完全に癒えた訳じゃないのか片腕で傷を押さえながら小猫に支えられている朱乃。だが、その顔は普段の余裕を持った仕草でなくイタズラの成功した年頃の子供の様な微笑み浮かべており、朱乃を支えている小猫も珍しく小さくだが口元を綻ばせている。

 

「………」

 

 片刃のフレイムセイバーの峰でトントンと肩を叩くアギトがチラリと視線を向け、視線の先にはオースラスに護られているアーシアの姿が。

 アギトが初めから赤の姿(フレイムフォーム)で戦わず金の姿(グランドフォーム)で戦っていたのはアーシアが傷を負ったイッセーやリアス達を回復させる時間を稼ぐ為。早々にフレイムフォームで戦っていればコカビエルは余裕を持った状態のまま強力な光の武具を扱い、流れ弾や余波が彼らに及ぶ可能性があったからだ。

 それにアギトの形態変化は再変身。ヒトからアギトに変異した様に、金のアギトから赤のアギトへ身体を再誕させる人智を超越した御業なら、傷付いた肉体を傷の無い状態に作り替える事が出来るのだ。*1腕や脚を失うレベルの損傷だとどうなるかはわからないが、そこまでに至らないのであれば痛みに耐えさえさえすれば十分戦う事が出来る。

 なら後はアーシアが回復するのを待って、回復し終われば全員で戦う事が可能となる。アギトは初めから、コカビエルを相手に一人で戦うつもりなど毛頭なかった。ヒトは人らしく、数で囲んで一斉に殴ればいい。

 

 奴も戦争を望んでいる様な発言をしていたのだから本望だろう。

 卑怯とは言うまい。

 

「……ん。まだ動けるのか」

 

 超越感覚がコカビエルの気配を捉える。朱乃の魔法で黒煙を立ち昇らせる穴からフラフラと覚束ない足取りでコカビエルが出てくる。

 真っ先に察知したアギトを除いた全員が警戒心を抱いて身構える。

 

「……あり、え、ない……こ、の…おれ、が? このコカビエル、が、負ける、の……か?」

 

 囲まれたコカビエルは戦闘態勢に移るどころか膝をついて崩れ落ちる。満身創痍、決着はついた。リアス達は勝利した事を理解、受け入れるのに暫しの時間をかけ、ゆっくりと状況を呑み込んでいく。

 

「………ぶ、部長……俺、達…!」

「ええ、イッセー。……勝ったのね、私達は」

 

 リアスがイッセーの手を握る。一度全滅にまで追いやられた状態からの奇跡の逆転だ。死ぬかもしれなかった、この町を守り切る事が出来なかったかもしれなかった。

 

「(……違う)」

 

 いや、アギトが来てくれなければその通りになっていた。僅かに震えている女主人の手に赤い龍を宿す下僕悪魔は空いている方の掌を見つめている。

 

「(いつまでもアギトに助けられてちゃダメだ! 俺も強くならないと……このヒトと、仲間達を守れるぐらいに……!!)」

 

 一人決意を新たにするイッセー。

 その後方ではゼノヴィアと裕斗の二人が出会った頃とは逆に互いの剣の技を賞賛し、認め合っている。悪魔と神の刃という本来なら……いや、今回の事件が終えて、一段楽ついた後になら再び敵同士と成るだろう二人の間に敵味方の概念を超えて剣を並べた剣士としての絆が紡がれていた。

 其処から更に少し離れた所では大方治癒してあるとはいえ重傷を負った朱乃が限界を迎えて崩れ落ちる支えてくれる小猫に感謝の言葉を述べる。二人の元にアーシアも歩み寄り、朱乃に神器による回復を行う。

 戦いは終わった、誰もがそう思った。

 ()()()()()()()

 

「……」

 

 さぁ、どうくる?

 空を見上げてアギトが観戦者に問う。赤の姿、『超越感覚』は張り巡らされた結界外に居る存在を明確に感知している。

 強い…ッ、下手すればコカビエルよりもよっぽど。気迫、魔力、───強大な()()()()()()()。イッセーの左腕から……潜在する力は同等の、其れをイッセーと違って表に露わにしている。

 

「………」

 

 警戒を解かずに火剣を握る。

 

「あ、ありえん……そんな、バカな、…こん、な…デタラメな…」

 

 ぶつぶつ、と現実を受け入れられずに虚空に意味のない言葉を吐き捨てているコカビエル。

 戦いが終わっても干渉してこない観戦者よりも、アギトはコカビエルにトドメを刺す事を選択する。もしかすればコカビエルに手を出す事で介入してくるかもしれないと警戒心は観戦者に向けたまま。

 両手でフレイムセイバーの柄を握る。刀身が熱を発し、剣の鍔が変形する。アギトの角、クロスホーンが展開されるのと似た、剣気を解き放つ機構。豪ッ! と剣身が紅蓮の焔に呑まれ、集束される。焔は形を与えられ、赤く染まった刃と成る。

 

「そうだ、……これも…これも…全部ヤツの所為だ!!」

「……?」

 

 歩み寄るアギトの足が止まった。コカビエルの叫びにリアスやゼノヴィア達もコカビエルに視線を向ける。とても戦闘続行出来る様子には見えない。

 

「キサマの様なΑGITΩが産まれたのも───イヤ、そもそもΑGITΩが産まれたのだって聖書の神の怠慢が生んだ! あろう事かその癖、」

 

 事実無根、現実逃避、責任転嫁。

 コカビエルは自身に降り掛かる不条理を神の所為にする。

 だが、次にコカビエルの口より吐き出された言葉はこの場の多くの者に大き過ぎる衝撃を与える事となる。

 

「───自身の不始末を正す事なく死んでゆくなぞッ!?」

『『『!?』』』

 

 

 

 

 

 

*1
独自設定。仮面ライダークウガが形態変化すると傷がなくなっていたので同じく肉体変化型のアギトにも採用した




津上 翔介
光の力に授けられた発現した進化の可能性の一側面、火のエルロードの力が具現化した『超越感覚の赤(フレイムフォーム)』に変身した系ΑGITΩ。実はグランドフォームよりもフレイムフォームの方がΑGITΩのあるべき姿ではないかと言われているとかいないとか。
翔介アギトがフレイムフォームで実際に戦うのは初だったりする。理由としては剣の扱いに不慣れの為。まぁ、実際に超越感覚のお陰で剣技として成り立っているだけで超越感覚なかったら剣ブンブン振り回しているだけだったりする。その所為で剣の達人程「腕前はド素人なのに凄腕の剣士を相手にしている気分になる」というアヌビス神装備したチャカと戦うポルナレフの様な性質(たち)の悪い現象を引き起こしている。


グレモリー眷属一行+ゼノヴィア
コカビエルにボコボコにされたけどアギトが時間を稼いでくれたお陰で復活、その後は逆にリンチでボコボコにした。戦いは数だよアニキ!
悲しいけど、これがアンタの望んだ戦争なのよねw


コカビエル
なんて言うか、その、なんだ。
お前なんでそんな小物なん?
原作でも続けてたら勝てた(当社比)からって千年前の戦争を再開させようとして自身が所属する勢力のボスから刺客を差し向けられ、その刺客に凡そ万全の状態で一方的にボコられり、戦闘型の堕天使幹部の中でも下位の存在とか言われていたり(した気がする)と、本当に、なんというか、なんとも言えない可哀想な奴。
三巻後からも一切出番がないので数多のメイン敵の中でもダントツで影が薄い。様々なハーメルンのSS(二次創作)を読んでもライザーの方が苦戦されてるイメージ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。