仮面転生者ΑGITΩ 〜人類審査のオーヴァーロード〜 作:ただのファンだよ。
「くぅーん、くぅん」
「ワン! ワンワン!」
ゆさゆさ、ガシガシ、ぺろぺろぺろ。
──ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろ、
「やめろ」
二つの頭からさんざん舐められ、ヨダレでネトネトになった顔を拭う。代わりに服の裾が酷い事になったのを無視して周囲を見渡す。
どうやらどっかの公園のベンチの上で寝ていたみたいだ。記憶はある、猫耳の生えた女にトドメを刺そうとしたらやたら滅多にビームかなんかを撃たれて躱しきれず、殺到した。で、耐えたと思ったが無理だった。土壇場でオースラスが助けてくれたから難を逃れた…って訳か。
「ありがとな」
「わぅ」
「ワンワン!」
二つある頭の両方を撫でる。
片方は甘えるように手に頭を擦り付けて、もう片方はもっと撫でろと主張してくる。
「それはそれとして俺の顔を舐める事に夢中になってたろお前ら」
「がぅ!?」
「ククゥ…」
撫でていた手でそのまま鷲掴みにする。
オシオキとして暫く二つの頭を動物虐待にならない程度に小さく揺らしてやった。手を離すとコテンとオースラスが倒れて目を回している。
『翔一』
「翔介です」
というかカミサマの声、久しぶりに聴いた気がする。……まぁ、いいか。
『気分はどうですか』
「全身が痛くてかないません」
『そうですか』
そこで一度会話が止まる。これは別にカミサマが冷たいとかじゃなくて、痛い“ だけ ”で済んでいるから追求する事がないという事。身動きが取れない訳でも四肢が損壊した訳でもない、五体満足で痛みさえ無視すれば十分動けるし、なんなら
『いえ、既にあの者達は既に去っています。今から追っても無駄でしょう』
「………って事は、負けたって事ですか」
『そうなりますね』
勝ち逃げされたか。
「……」
今、俺の胸にある感情は……言葉にするのは少し難しい。
“ 悔しい ”とか、“ 怒り ”とかじゃなく、“ 情けなさ ”だった。
だがそれは父さん達のようなホンモノが懐く正義の意思でもない。俺は
夜の空を見上げる。
雲に覆われているのか星々は見えない。個人的にはそちらの方が安心する。この果てのなさそうな
俺はテオスの
俺はカミサマに見護られている。
『………』
こんな
天界、堕天使、悪魔の三勢力の会談による和平と襲撃、そして当事者以外には誰にも知られない戦闘の夜を超えて、朝を迎える。表面上はいつも通りの日常を過ごす。
兵藤 一誠は今まで通り学業をこなし、仲間達と悪魔稼業を働く。はぐれ悪魔の討伐なんて事はなく、召喚魔法代わりに自転車に乗って現地に赴いて契約を行う。魔法少女物のアニメを干渉したり、共通のマンガについて語り合ったりと「それって悪魔のすることか?」と疑問に感じる契約を終えて戻れば暫し仲間達と談笑し、時間がくればそれぞれの家に帰る。我が家にホームステイ(意味深)しているリアス・グレモリーと共に。ビックリする程以前までもなにも変わらない毎日に和平を結んだ実感の湧かない日々だった。
アーシア・アルジェントは少し寂しさを感じていた。駒王学園に通ううちに友達と呼べる人達が両手の指じゃ足りない程に増え、親切にしてくれる仲間達を得て関係性は充実している。最近では人としての友人や悪魔としての仲間の他に同じ想いを懐く
そんな彼女だが、その肝心な想い人の津上 翔介と関わりが薄れているのを機敏に察知していた。関係が険悪になった訳ではない。朝共に登校し、昼食をライバルも含めて共に過ごし、悪魔としての活動のない日は共に帰る。以前と何も変わらない日常の筈だった。
なのに何故だろう? 彼女にとって今現在最も重要な愛しい人との間に距離を感じるのは? 彼が自身から離れた訳ではない、勿論自分の心が彼から離れた訳でも断じてない。表面上はいつも通りなのに、彼の内面がわからない。彼が何を抱えているのかわからない。
そんな日々にアーシアは一抹の不安を感じていた。
ゼノヴィアは満足していた。依然として挑戦する事は続けている。目につく、興味を持った事象全てに手を付けて彼女の人生(?)は飾られていく。自身を変えてくれた想い人の存在を日々の生活で身近に感じ、和平によって喧嘩別れする事となった紫藤 イリナとの和解も得られた。元々所属していた教会の由来である天界だけでなく、堕天使とも和平を結んだ事で功績を積む手段が減った事に多少不満はあるが、争いによって関わりのない無辜の命が脅かされる事のない“ これからの世界 ”は素晴らしい事だと感じる気持ちの方が大きかった。寧ろ、代わりに
問題は
「ぐぎぁ!?」
吹っ飛ばされ、地面を転がるのは人間に害ある怪物であった。
顔面は柔らかいトマトみたいに陥没し、僅かに破裂した亀裂から血を吹き出していた。特徴は覚えていない、名前は知る由もない。既に絶命したソレに意識が向けられる事はなく、執行者は次の相手にへと臨んでいた。
津上 翔介、覚醒者
左の堕天使の頬に右の拳を打ちつけ、振り切る。殴られた堕天使は頭部がひしゃげて片目が潰れたのを激痛から思い知らされる。
振り切った拳をそのまま右に薙いで正面の堕天使を弾き飛ばす。碌な防御もできぬまま裏拳を受けた堕天使が宙を舞う。
裏拳の勢いのまま驚愕している右の堕天使を身体の表面に捉えて、ガラ空きの胴体に蹴りを叩き付ける。ドアでも蹴り飛ばすような足の曲げ伸ばしの反動に体重を乗せるだけの簡単な蹴り技、俗に言う『ヤクザキック』或いは『ケンカキック』と呼ばれるそれを受けて堕天使が後方に吹っ飛ぶ。
『『『……!』』』
残る複数の堕天使達は戦慄し、恐れ慄いた。元は小隊と呼べる数居た堕天使達も残すところあと二人。中には女性堕天使も居たが、既に物言わぬ残骸と化している。
彼らは三勢力の和平に不満を持つ者達の集まりであった。堕天使、その大半が天使や悪魔を見下している。個体としては兎も角、組織として総力戦を仕掛けた場合、勝つの我ら堕天使だと確証のない確信があった。コカビエルが抱いていた種としての優勢は、実は堕天使達には当然の思想であった。
何はともあれ、この下っ端堕天使達は堕天使総督アザゼルの意思に従いながらも不満を抱えていた。そしてその不満の憂さ晴らし、その矛先を向けたのが人間だった。堕天使達は手頃な人間を数人捕まえ、ソレで弄ぶつもりであった。捕まえたのが女であれば精を捌け口に、男なら痛めつけてその悲鳴を聞こうと。女堕天使も差異は無く、似たような理由だ。
そんな彼らの前に神秘に対する死神が現れた。その死神は人でありながらヒトに在らず。その血の根源に神火の光を灯し、人を超えた新人類に至った超越存在。
「あ、ぎ……な、んでっ…!」
首を捕まれ、足先が地面から浮いている。人間よりもずっと耐えられはするが、人間と同じく空気を必要とする堕天使は満足に呼吸も出来ず、その顔を青白く染めて首を掴む腕を振り払おうともがいている。
「……『なんで』だと? 本気で言ってるのか?」
無機質な声と共に首に掛かる指に力が込められる。堕天使は混乱していた、実力では遥かに劣っている。ここから力で逆転するのは不可能だと判断し、それでも生存する可能性を模索する。酸素不足で混濁する意識のリソースを全て注ぎ込み命乞いを試みようとする。
その上で混乱している。なにせ、この
困惑する堕天使を
「……今の世界に天使は要らない。死んだ命は天に昇る事も、地獄に落ちる事もない。本気でそんな迷信を信じる人間は既にいやしない」
「な…にぃ……ぉ、お、れ……だぢ……わ」
「だから
堕天使の反応を待つ事もなく、その首がへし折られる。力なく垂れる両腕、マラークと違って死ねば爆発する事はない。大地の紋章を込めたライダーキック等で撃破したのだとしたら別だが。
アギトは静かにフレイムフォームに変化し、フレイムセイバーを抜くと堕天使達に次々と突き立てた。身じろぎ一つないソレに剣の切先が触れ、ずぶりとなんら障害はなく刺し込まれると途端に亡骸が発火する。暫くした後には燃え滓すら残らず、地面に僅かに焼き焦げた跡があるだけだった。
そしてアギトはその場を去る。
振り返った先には赤金の鉄駆マシントルネイダー、その
津上 翔介は知らない。
自身が
草木も眠るウシミツ・アワー。
邪悪にも
アワレ! サンシタダテンシは全て死神の手に掛かり、最後の一人もクサカ=サンめいて首を折られて死亡。インガオホー。