仮面転生者ΑGITΩ 〜人類審査のオーヴァーロード〜   作:ただのファンだよ。

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本編中に説明入れたかったけど入れる所がなかったので此処で設定晒します。

『第二者視点 → ΑGITΩ(アギト)
アギト本編時でも噂されジオウでも公開された通り、人によってアギトの容姿の見え方は異なる。
ただし今SSではアギトはアギト、アナザーアギトはアナザーアギトとして認識するものとする。(ギルスも同じ)
見え方の違いは好感度で変わる。
好感度が高い程テレビ版アギトに寄り、逆に好感度が低いとS.I.C版アギトに寄る(中間だとヒーローズ版アギト)
因みにアギトの変身者本人と面識がある場合は変身者に対する好感度に影響される。
例(初対面)
アーシア→完全にテレビ版アギト
一誠→S.I.C寄りヒーローズ版アギト
レイナーレ→S.I.Cアギト



感じろ! その新日常!!

 

 

 

 紅髪の女悪魔が君臨している。

 サキュバスを想わせる身体付きと美貌、だがその佇まいには誇りと気品を感じさせる。彼女こそ上級悪魔グレモリー家の次期当主リアス・グレモリー。

 

「何をしているのか…と聞いているのだけど?」

「……」

 

 怒気が髪色と同じ様に吹き出す魔力として露わになっている彼女は今にも限界を越えそうな怒りを抑え、極めて貴族たるべく態度で務めている。

 けれど目の前の不敬者はリアスの言葉に仮面越しに顔こそ向けているものも応答の一つとして返ってこない。

 

「……返事の一つくらいしたらどうなの…?」

「………」

「っ!! いいわ、そっちがその気ならコチラもこれ以上掛ける礼儀もないわね!!」

 

 一層勢い増す魔力、揺れていただけに留まっていた髪が重力に反して浮かび上がる。怒髪天、抑えられて怒りが解き放たれ彼女の手に紅が、魔力の大塊が灯る。悪魔業界から『紅髪の滅殺姫(ルインプリンセス)』の異名で呼ばれ、文字通り触れる物を消し飛ばす性質を持つ【滅びの魔力】を宿した若き天才悪魔、それがリアス・グレモリーの正体である。

 

「消し飛びなさい…!」

『や、やめてください!!』

「!?」

 

 彼女の【滅びの魔力】が解き放たれる寸前、一人の少女が身を挺してアギトを庇う。

 手先から離れていきそうな魔力をなんとか直前で留めリアスは割り込んだ少女───アーシアに目を向ける。

 

「貴女は…」

『……っ!』

 

 強い眼差しでリアスを見据え、両腕を広げてリアスの魔力を阻もうとしているアーシアに僅かに目を細める。

 

「何のつもりかしら? 貴女は私の下僕、()()()()()()()()()()()()()()()()()。なのにイッセーに危害を加えた者を庇うなんて」

『私を救ってくれたのはこの方です!!』

「……何ですって?」

 

 リアスはアーシアの言葉を真実を問う為イッセーに目を向ける。リアスの視線を察したイッセーも控えめに頷く。暫し沈黙を挟みリアスが嘆息した。吹き荒れていた魔力は鳴りを潜め、自身の非を認めるとアーシアに目に己の目を合わせ。

 

「ごめんなさい。私の勘違いだったわ」

『……あ、はい!』

 

 言葉こそ上級階級の者故の強めの態度であったが表情と瞳からは真摯な謝意が感じ取れた。

 アーシアは嬉しそうに表情を綻ばせてアギトに歩み寄る。リアスは、そしてイッセーはアーシアの浮かべる表情に隠し切れない想慕の念を察する。イッセーは複雑そうな顔で小さく項垂れるが、アーシアが本当に嬉しそうな様子を心から祝福する。

 イッセーの内心を悟るリアスは“ やはり彼を眷属にして正解だった ”と高評価し、彼の努力を労う為に後で沢山甘やかしてあげよう決めた。彼女は自身の身体付き(プロポーション)がイッセーに好みである事を知っているし、彼が向ける卑猥な視線や妄想に気付いている。気付いた上で肌を晒す事や触れさせる事を厭わない。寧ろ、欲望を持つ事は悪魔“ らしい ”と肯定している。リアスはイッセーが感謝と感激の念に加えて性的な興奮で鼻の下を伸ばしただらしがない表情を空想して小さく微笑む。

 

『よかったですねショー…じゃなかった、()()()()()!』

「!?」

 

 リアスがアーシアの言葉は驚愕した反応を示す。

 

「ちょ、ちょっと! 今“ アギト ”って言ったの!?」

『え?』

「部長?」

 

 気品のある佇まいが一転して声を荒げるリアスにアーシアが振り返り、見た事のない主人の慌てた様子にイッセーが困惑する。

 二人の反応から我に返ったリアスは冷静さを取り戻してアーシアに話し掛ける。

 

「ごめんなさい。アーシア…だったわよね」

『えっと、はい…』

「貴女の言った“ アギト ”と言うのは彼の事よね。それは単なる彼の名前、それとも伝説の…貴方達が“ 背徳者 ”と呼ぶ存在?」

『…………後者、です』

「そう。……貴方がアギト」

 

 リアスの目がアギトに向けられる。

 

「ぶ、部長? あの〜、アギトって何ですか?」

 

 先とは違う意味でアギトを見る目に力が入るリアスに恐る恐るといった様子でイッセーが問い掛ける。

 

「…そうね、折角本人が目の前に居るのだし説明しましょうか」

 

 リアスはアギトからイッセーに向き直り、胸の下で腕を組んで口を開く。

 

「イッセー、貴方は()()()()()()()()?」

「へ? ああ、はい。ギリシャ神話…とかですよね?」

「ええ、その通りよ。なら聞いた事はない? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「え? ……ああ! そういえば知ってます! お、オリュンポスの神々? に()()()()()()()()! 名前とかは出ないですけどゲームとかでもよく主人公になってますし。…て、まさか?」

「そのまさかよ。彼はその神に逆らった戦士…と、同じ力に目覚めた人間よ。そして、彼の様な人間は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「マジかよ!! あれ、部長? それは神器(セイクリッド・ギア)が目覚めるのとは違うんですか?」

「ええ、違うわ。どういう仕組みかはわからないけど彼ら、“ アギト ”は神器(セイクリッド・ギア)とまったく別種の力に目覚めている。でも、起源は同じなのよ」

 

 ほへ? アギトを見詰めていたイッセーが呆けた面で聞き返す。

 

「アギト、その始まりは神器(セイクリッド・ギア)と同じ教会が信じる“ 聖書の神 ”。その神が最初に創造した七人の()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それが『原初の“ ΑGITΩ(アギト) ”』と言われているわ。アギトには特性が在るの」

「特性…?」

「それは“ 限りなく強くなり続ける ”というもの」

「っ!?」

「際限なく成長…いえ、進化を続け、いずれその力を天に座す神をも上回る人を超越したヒト。ある意味では新人類と言える存在よ」

 

 驚愕に表情を染めてアギトを見る目に様々な感情が入り混じる。

 恐怖、畏怖、憧憬、渇望。

 

「でも、神はアギトの存在を許さなかった」

「え?」

「だってそうでしょう? 神からすれば原初のアギトは自身の分身といえる天使を殺して力を得た人間なのよ。だから教会の人間はアギトを畏れ、聖書にもアギトは私達悪魔や堕天使以上に忌諱される存在として記されているわ」

 

 イッセーがアーシアにそうなのか? と問い掛ける様な視線を送り、アーシアも小さく頷いて肯定する。

 

「で、でも、アギトに成ったのはその人だけなんっすよね? だったら何で現代にもアギトが?」

「それわねイッセー。原初のアギトは天使から力を奪った際、その力を地上にいる全ての人間にばら撒いたからよ」

「!?」

「原初のアギトの所業により世界中の総ての人間が、過去から現代、そして未来へ。人間という種族が滅びるまでの全人類がアギトの因子(タネ)を宿す事になったの」

「……って事は俺もアギトになるかも知れないって事ですか!?」

()()()()()()

「え?」

「アギトの因子(タネ)は一度死んだり、悪魔に転生した人間からは失われてしまうの。あと、神器保有者がアギトに変化したっていう事例も今の所ないわ。一説では神器(セイクリッド・ギア)は神がアギトに対抗する為に自身の使者に与えた武具が始まりで、目覚めていないアギトの因子を除去する効果がある…なんて言われているらしいわ」

 

 イッセーは自身の、今は神器(セイクリッド・ギア)が発動していない右腕に目を向け、次にアギトを見る。

 

(俺も、もし神器(セイクリッド・ギア)が無かったらアギトに成っていたのかな…?)

 

 それは有り得ないIF(もしも)の噺。

 論じた所で意味のない只の妄想にしかすぎなかった。

 

 

 

 

 

「……アーシア」

『! はい! どうしましたショー…じゃなかったアギトさん!』

「……」

 

 仮面の下で苦笑を浮かべる翔介がアーシアにだけ届く様に小さな声で話し掛ける。

 

「俺はもう行くよ。アーシアは何処か泊まれる所はあるか? あの教会は嫌だろ?」

『…っ、……すみません』

 

 アーシアの反応から他に行く所なんかないのだろうと察し、翔介は話し合っている二人に目を向けた。

 

「……ふぅ」

『あの、アギトさん…?』

「アーシア、君にも関わる事だし一緒に来てくれるか?」

『…? はい」

 

 アーシアと共にリアスとイッセーの元へ歩む。

 

「おい」

「!? …も、もう驚かせないでもらえるかしら?」

「……悪い」

 

 ゴホン、と咳払いしてから改めてアギトが話し掛ける。

 

「リアス・グレモリー……さん。頼みがある」

「私の名前を知っている…? いえ、それよりも…頼みですって?」

「ああ。アーシアを貴女の所で預かってもらえないか」

「「!?」」

『ショース…ッ、アギトさん!?』

 

 アーシアが驚きの余りまたも誤って翔介の名を呼び掛けたが幸い同じ様に驚いているリアスとイッセーの二人には聞こえていなかった様だ。

 アギトは言葉を続ける。

 

「アーシアには住む場所がないんだ」

「…それなら何処かのホテルとかでもいいんじゃない? 此方でも何軒か準備出来るわよ」

「いや、“ あんな事 ”があったばかりだからな。誰か付いてくれる人がいて欲しい」

『……っ』

「だったら貴方の所でもいいでしょう。…住まいがない、て訳じゃないんでしょう?」

「…貴女の言葉通りなら俺は教会の連中からしたら“ 背徳者 ”とか呼ばれて狙われているんだろ、俺を通してアーシアが巻き込まれる可能性があるのならそれは避けたい」

「……なるほどね」

「それに」

 

 アギトはイッセーに顔を向ける。イッセーも“ え、お、俺? ”と困惑した様子を見せる。

 

「彼はアーシアから信頼されてる様だし、俺を相手にした時も本気でアーシアの事を想っての行動だった。そんな人間が信用する貴女なら俺も信用出来る」

『イッセーさん…』

「あ、あはは…ありがとうございます。って! そ、そのすいません! 勘違いであんな事」

「もういい、わかってる。自慢じゃないが初対面の相手によく思われた試しがないんだ」

 

 それはジョークなのか? 只の自虐では? イッセーは対応に困った。

 

「……それじゃあ頼んでもいいか?」

「ええ、任せてちょうだい。彼女の身は責任を持って預かるわ」

「そうか、安心したよ。…それじゃあアーシア」

『アギトさん……』

「───また会おう」

『!? は、はい! また会いましょう!!』

 

 気軽な約束。

 彼女を縛るしがらみは消え、只のアーシアとして結ぶ再会の約。翔介(アギト)が差し出す手をアーシアは両手でぎゅ、と握って喜色に染まった顔で笑う。

 寂しそうに、けれど確かな約束に頬を綻ばせながら両手を胸に抱きアギトから離れる。

 アギトも満足した様にアーシアから離れ、乗ってきたマシントルネイダーに向かい、跨り、ハンドルを捻る。ぶぉんぶぉん! と重いエンジン音を吹かし、首だけをリアスに向ける。

 

「……一応聞いておくが、後を追ったりとかはしないよな?」

「……ええ、約束するわ」

「それはよかった」

 

 それは通告だった。正体を特定しようとしたら許さない、と言外に語っていた。本人からすればほんの悪戯(わるふざけ)のつもりだろうが、やられっぱなしは面白くない、リアスも年相応の茶目っ気を出して言い放つ。

 

「…でも、本当にいいの? 私達は悪魔よ?」

 

 ふふ、どうかしら? と皮肉気味に言う。元教会所属の修道女(シスター)を悪魔に預けるなんて前代未聞だと。

 

「……………あくま?」

「………………え?」

「………」

「………………」

「「………………………」」

 

 返ってきた反応は予想外だった。

 え、もしかして知らないの悪魔? いや、悪魔自体は知っているわよね。それなら私達の正体わかっていなかった? え? …え?

 

「……あー、よくわかんないが宜しく頼む」

「……え、ええ。わかったわ」

 

 何とも言えない雰囲気の中、アギトがマシントルネイダーを走らせ去って行く。その後ろ姿を少しばかり呆けた様子でリアスは眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 リアスの言葉通り追跡してくる気配がない事、周りに人が居ない事を確認すると変身を解き、翔介につられてマシントルネイダーも元のバイクに戻りそのまま帰路を走る。

 やがて家の前に着き暫し沈黙。溜息を吐いて観念する様にバイクから降りて仕舞い鍵を掛ける。そしてドアノブを握り扉を開ける。

 

「おかえり…翔介…!」

「………ただいま、姉さん」

 

 玄関では仁王立ちした翔介の姉、津上 雪菜が待ち構えていた。

 

「色々聞きたい事はあるけど……兎に角ヘルメットを脱ぎなさい」

「ああ、うん。……やっぱり取らないとダメ?」

「ダメ。私は怒っているの、ちゃんと私の目を見て話を聞きなさい。それとも何、自分じゃ取れないの? だったら…」

「いや違う! 取れない訳じゃない! …わかった、取るよ」

 

 留め具を外してヘルメットに手を掛ける翔介に雪菜は「最初から言う事を聞きなさい」と少しばかり怒りを強める。

 

「……ん」

「もう、さっさとヘルメットを片付…け……」

 

 雪菜が言葉を失う。怒りの感情がさっと冷めて代わりに恐ろしいものを見たかの様に表情を青くする。両手で口元を隠して震える身体で翔介に駆け寄りその顔に手を添える。

 

「なんで、何が…! ど、どうしたのその顔!」

「………っ」

 

 ヘルメットを取った翔介の姿は、傷だらけだった。

 何度も殴られたのだろう顔の左側に痛々しい打撲痕と青痣。口元の右端には時間が経って固まった血が張り付いている。

 

「ぃっち」

「っっ」

 

 つい、思わず痣に触れ、それに翔介が顔を歪める。咄嗟に痣に触れた手を引っ込めて翔介の両肩を掴む。

 

「……誰に、やられたの…?」

「………姉さん」

「何が、あったの……?」

「………」

「何で翔介がこんな目に…っ」

 

 段々と俯き、翔介の肩を掴む指に力が入る。弟が傷付いた悲しみ、弟を傷付けた相手への怒り、弟に電話した時に詳細を尋ねなかった後悔。

 このままじゃ雪菜(あね)は暴走しかねない。そう思った翔介が雪菜の頬に両手を伸ばし、顔を上げさせ自分の目と向かい合わせる。

 

「姉さん。落ち着いて」

「翔介…、でも、だって…翔介、その傷」

「大丈夫。やらなきゃいけない事をやってたんだ」

「やらなきゃ……いけない…事……?」

「うん」

「…………それって?」

「言ったろ、『友達を助けに』って」

「じゃあ、その傷は…?」

「喧嘩したんだ。友達が困ってたから、厄介な奴らから守ってやる為に」

 

 雪菜の表情に驚愕が加わる。

 大人しい弟だと思っていた。いつも眠た気でぼんやりしてイマイチ情熱に欠けている、そんな子だと決め付けていた。そんな事はなかった、この子は友達の為にこんな傷だらけに成ってまで立ち向かえる強い子だ。

 常日頃から陽気で晴れてる空を見ただけで一日の活力が漲る父親と、しょっちゅう皿を割りそうになっている不器用だけど優しい母親。自分は父に似て感情で動く事が多く、母は一見理性的に見えるが実は向上心の塊で新しい事に一切の恐れや躊躇いを抱く事なく挑戦する面がある。

 翔介は何か没中する事がなく、何でも程々出来る程度で満足してやめてしまう所があった。唯一両親から教わった料理だけは真摯に取り組み高校生とは思えない腕前に達しているはいるが、それ以外で彼が何かに熱中したりする様子を雪菜は見た事なかった。

 

「それに、ちゃんと勝ったよ」

「………」

 

 今も、姉である雪菜に心配を掛けない様に笑みを浮かべている。痛い筈の傷など気にもしてない様子だ。

 

「見せてやりたかったな、俺のアイツらの攻撃を巧みに躱して反撃に顔面をぶん殴って次々とKOしてやる様を! まぁ、姉さんなら絶対止めるだろうからどの道見せられないか」

「……ふふ、当たり前でしょ」

 

 シュシュッ、なんて口で言いながら虚空に拳を放つ。()()()()()()()()()()()()()()()()()し、その顔を見れば嘘だと判る。

 

「でも……流石に疲れたや」

「もう、夜中までドンパチしてたのなら当然でしょ。……どうする、ご飯食べる? それとももう寝る?」

「食べるよ、折角用意してくれたんだし」

「そう、じゃあ温めるよ」

「お願いします。…あ、いや先にシャワー浴びるよ。身体中の汗を流したいし」

「オッケー」

 

 翔介が「アアー、沁みるだろうなー」なんて言いながら風呂場の方に向かって行くのを眺める。取り敢えずは翔介の望み通りに今は流そう、けれど()()()()()()()()()

 翔介がアーシアを強い意志で救おうとした様に、雪菜も弟の翔介を守る為に強い意志を瞳に宿す。

 雪菜が翔介が助けた友達を家に呼べと言い、否を許さない笑みに頷く事に成るのは次の日の朝の事であった。

 

 

 

 

 

「おはよー」

「お、おはよ翔介、相変わらず眠たそうな声……ってどうしたんだその顔!?」

「ん?」

 

 次の日、駒王学園にて。

 当然ガーゼを張り、それでも隠し切れない怪我の痕にクラスメイト達が駆け寄り声を掛ける。

 

「んぁ。……喧嘩した」

「け、喧嘩? 翔介が?」

「誰と…?」

「…………」

 

 翔介がクラスメイトの問いに天井を眺めて言葉を探る。

 

「あー、ま、簡単に言うと」

「「「……」」」

「怪しい宗教団体」

「「「…は?」」」

 

 翔介の答えにクラスメイト達は困惑した声を漏らした。だが、翔介からすればそうとしか言えない。というのも翔介は天使や堕天使、悪魔がこの世界に存在しているだなんて知らなかったのだ。

 いや、天使はいたの()()()、とは思っていた。存在していたとしても既に全滅しているんだろうなぁ…なんて思っていた。

 クラスメイトに事のあらましを説明する。勿論、アーシアを特定する様な情報やアギトや悪魔、堕天使なんかの常識からかけ離れた裏世界の情報は隠して。

 

「うぼぉぉぉお! (おで)感動(がんどう)じだぞぉぉぉ!! 翔介(しょうずげ)ぇ゛! お(ばえ)にそんな面があっだなんべぇ」

「なんて?」

「うおおおお!」

「はは、蔵一(ぞういち)はいつだって全力全開だからな。因みに今のは“ 俺は感動したぞ、翔介。お前にそんな面があったなんて ”…だな」

「お、おう。通訳ありがとう秀和(しゅうわ)

「お安い御用さ」

「いつも声デカくて迷惑だけど。……それよりホントに怪我、大丈夫なのか?」

「ああ、ちょっと痛いけどすぐ治るよ」

「……そう」

 

 頬や腕、脚なんかに絆創膏を多く貼った少年『池家(いけいえ) 蔵一(ぞういち)』に長身で眼鏡を掛けた天然物のパーマの少年『早火(はやか) 秀和(しゅうわ)』がフォローと通訳を入れる。その隣の席でスマホゲーを弄りながらちらりと翔介に横目で見て心配してくれる小柄な少年『大神(おおかみ) 成太(せいた)』が仏頂面で呟く。*1

 

「なんか困った事があったら言えよ?」

「サンキュ。うっし、っと?」

 

 クラスメイトから声を掛けられながら先に座り机の側面に鞄を掛ける。朝のホームルームまでまだ10分以上ある中、翔介のポケットのケータイが震えた。

 

(……知らない番号だな)

「…はい、もしもし?」

 

 ケータイの画面には相手からの電話番号が映っている。電話番号を知ってる友人や知人は名前で登録してある、登録していない相手で尚且つ個人のものと思われる番号に少しばかり警戒しながらも応えた。

 

『……あ、あの、おはようございますショースケさん』

「!…『アーシア』」

「ん? 翔介?」

「む、『ごめん、ちょっと待ってくれるか?』」

『え? あ、はい』

 

 電話で突然英語を話し出す翔介にクラスメイトが疑念を持ち、翔介は電話相手のアーシアに了承を取ってからケータイを離してクラスメイトに電話相手が先の件で助けた相手だという事を教える。

 クラスメイトは納得した様に頷くと教室の外を指差す。翔介も言葉じゃなく仕草で礼を告げて教室を出る。

 

「『お待たせ、それでどうかしたかアーシア?』」

『い、いえ! ただその、朝の挨拶をしたいなって。昨日はそのアレ以降何も話せませんでしたし…』

「『そうだね。…俺も帰ったらすぐ寝たからもし電話をくれても出られなかったかもしれないな』」

『そうですよね。……そ、それでですねショースケさん』

「……? 『うん』」

 

 電話の向こうで改まって言葉を紡ごうとするアーシア。翔介はアーシアが自分から言葉にするのを待つ。

 

『ほ、本日の夕方、そのお会いできませんか?』

「『いいよ』」

『!! ありがとうございます!』

「はは、『それで何時に何処に行けばいいんだ?』」

『! そ、それなんですが……っ、わ、私の方から、ショースケさんの元に伺おうと思いますので学校…じゃなくて学園、の方でお待ちください!』

「……『オッケー、なら放課後に会おう。俺の教室は○ー○、わかるか?』」

『えっと、はい。頑張ります…!』

 

 ふんすっ、と電話越しに意気込む声が聞こえた。翔介は苦笑いを浮かべるが画面の向こう側のアーシアには伝わらない。

 

「『頑張れアーシア。それじゃあ、放課後で』」

『はい、ショースケさん。ほーかご? に会いましょう』

 

 翔介は向こうから電話を切るのを待ってから教室に戻る。

 

「……ん?」

「「「にやにや…」」」

 

 戻った翔介を出迎えたのは好奇の笑みを浮かべるクラスメイト全員だった。

 

「「「確保ー!」」」

「「「わーーー!!」」」

「ぬわー!?」

 

 その後クラスメイトに押し寄せられ、ホームルームが始まり担任が声を掛けるまで質問攻めは終わらなかった。

 

 

 

「それじゃあ頑張りなさいよ男の子!」

「うぉっ」

 

 委員長気質の女生徒(クラスメイト)に背を強く叩かれ激励される。

 背中を摩りながら物言いだげな視線に「にしし…ッ」と笑みで返し、教室を出ていく。教室のすぐ外から「アンタらこんな所で何やってんのー! アタシらはさっさと帰って二人だけにするって決めたでしょうがー!」「いや、やっぱりちょっとだけ気になって…」「こらー! 邪魔者は帰った帰ったー!」「ちょっ、おま、うわー!」、なんてやりとりとバタバタと慌しく走る複数の足音が遠ざかり、やがて聞こえなくなる。クラスメイトの気配を離れていくのが感じ取れる。

 

「…あはは。…うん、じゃあ待つかな」

 

 近くにアーシアの気配を感じない為、多少待たされる事になるだろうと正確な感知するのはやめてぼんやりと待つ。

 それから30分以上経つがアーシアは未だ現れない。

 

「遅いな。…もしかして迷ってる?」

 

 こちらから探した方がいいだろうかと教室を出て気配を探ろうと歩き出し、コンコンと扉が叩かれた。

 

「! …『アーシア?』」

「!! 失礼します!」

「…ん?」

 

 ノックに対して返事を返せば可愛らしい声が聞こえる。間違いなくアーシアの声だが少しばかり違和感を覚える翔介だが扉が開かれ、そこにはアーシアが立っていた。

 

「! 『アーシア、その服』」

 

 アーシアの服装は今までとは違う格好だった。

 いつものシスターの修道服や、儀式の夜の薄着ではなく、翔介にとっては見慣れた、けれど新鮮な“ 駒王学園の制服姿 ”だった。

 笑顔が綻ぶアーシアに翔介が歩み寄る。

 

「『その服は……じゃないな、うん。…似合ってるよアーシア』」

「!! 〜〜〜」

 

 母と姉から女性が新しい服を着ていた場合、まずは感想を告げる。そして似合っているなら素直に伝える様に強く念を押されて育てられてきた翔介は二人の教え通りにアーシアに賞賛の言葉を述べる。

 アーシアも翔介の言葉に嬉しそうに赤くなった頬に両手を添える。

 

「『でも、どうしたんだその服?』」

「大丈夫ですよ」

「…え?」

「私、もう()()()()()()()()()()()!」

「!?」

 

 驚愕!! そして先ほど感じた違和感の正体に気付く。アーシアは教室の扉を開ける際に翔介にも英語で話さなくても伝わる言葉を話したのだ。

 日本語、つい昨日までロクに聞き取る事も出来なかった言葉をアーシアはごく自然、且つ円滑に話している。

 けれど何処か違和感を感じる。何か違う? ───決してアーシアの日本語が下手な訳ではない。ないのだが少し可笑しい。何か、別の言語が日本語として伝わってくる様な、そんな感覚だ。

 

(ん、ん〜? ……まぁ、いいか)

 

 翔介が抱えた疑念はこのタイミングで父譲りの能天気さに押し流され思考の中から失われた。

 

「アーシア。…わかるか?」

「はいっ、わかります…!」

「…凄いなアーシア。一晩で日本語が話せるぐらいに勉強したのか!」

「え?…ち、違います違います! これには理由がありまして」

「…? 理由?」

「その事に関して説明したいのですけど。周りに人の姿はありませんでしたよね?」

「あ、ああ。クラスの皆には帰ってもらったけど」

「よ、よかった。ちゃんと人払い、出来てるみたいですね」

「……あ、もしかしてその為に時間が掛かったのか…!」

「…………いえ、その、それは私が道に迷ってしまって」

「………」

「………」

「………………ごめん」

「…いえ」

 

 気まずい雰囲気が流れる。

 

「ああ、立ち話もなんだし座ろっか」

「は、はい!」

 

 教室の窓寄りの机と位置と椅子の向きを変え、向かい合う形で二人共座る。

 

「んん。それじゃ説明、してくれるか」

「はい。えっと、何から話したら」

「ゆっくりでいいよ。ちゃんと待つから」

「ありがとう、ございます。………!」

 

 翔介の言葉を聞き、アーシアは一度目を瞑って言いたい言葉を整える。

 そしてゆっくりの目を開くと口を開く。

 

「私、思ったんです。ショースケさんとお話しがしたい、と。ショースケさんはいつもこの国の言葉がわからない私の事を思って私でも判る言葉で話してくださいました」

「……」

「でも私はショースケさんと、ショースケさんの普通とお話ししたいって……思ってしまったんです」

「俺の…普通…」

「はい。ショースケさんが私にとって普通の言葉で話し掛けてくださった様に、私もショースケさんの普通の言葉で話が出来る様に。そう思っているのをリアスさんに伝えた所」

「……グレモリーさんと? それってアーシアから無理矢理聞き出したりしたとか?」

「!? ち、違います! リアスさんは私の様子から悩みを聞いてくれたんです」

「本当に? 何か弱みにつけ込まれたりしてないか? 心配しなくていい、その気になればアイツら全員を倒す事は出来る」

「本当に、本当に大丈夫ですから!」

「………そうか」

「ほっ」

 

 翔介から圧が消えた事に安堵した様子のアーシア。

 昨日は信用するとは言ったが、アーシアの身に何かあったりすれば即座に討ち滅ぼしに掛かれる程度には警戒している。

 

「…で、グレモリーさんはなんて?」

「は、はい。 リアスさんは私に提案をしてくださったんです」

「提案…?」

 

 少しだけリアス・グレモリーに対する警戒が再び高まる。

 

「その提案を私は受けました」

「……提案の、内容は…?」

「……直接見てもらった方が理解してもらえるかもしれません。……むむむ〜」

 

 アーシアが背筋を伸ばして力む。本人は至って真面目なのだろうが可愛らしい声を発していると、その姿に変化が訪れる。

 

「えい!」

「っ!」

 

 愛らしい掛け声と一緒に彼女の背中に一対の翼が出現する。漆黒の人間に合わせたサイズの翼は大きく、けれどアーシアの性格により控えめな主張で小さくぱたぱたと動く。

 驚く翔介にアーシアは僅かに複雑な心境を顔に出して言う。

 

「私、()()()()()()()()

「………?????」

 

 アーシアの言葉を聞いた翔介の顔は、仮に翔介が猫だった場合背景に宇宙が広がっていそうな表情だったとテオスは語るだろう。

 

 

*1
声と感情のデカい蔵一にフォローを入れる秀和、そしてなんだかんだ言いながら一緒に遊びに出かける事の多い成太の仲良し三人組。




津上 翔介
信じて送り出した魔女っ娘シスターが悪魔になって帰ってきたオリ主。NTR? もしかしてNTRですか?……違う? そっかー(安堵)

アーシア・アルジェント
教会から見放されたし、堕天使に殺されかけるし、神様助けてくれないし、と人間不信に陥っても可笑しくない境遇でオマケに初めての友達が教会の不倶戴天の──文字通り──天敵の【ΑGITΩ】だった少女。神様、この娘に試練課しすぎじゃない? もしかして可哀想なのが抜けるタイプ?(不敬罪)
想い人と信仰なら想い人を選ぶタイプの至って普通の女の子。
真面目な話、アーシアって原作でも悪魔に転生してもあっさり受け入れてたし、信仰の性質が他の信者キャラとは違う気する。なんだろう? アーシアの信仰って【理想の親】っていう概念を神に押し付けているだけというか、自分を受け入れてくれる存在に憧れて、神をその役割に当て嵌めてるだけというのが作者の解釈。

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