仮面転生者ΑGITΩ 〜人類審査のオーヴァーロード〜   作:ただのファンだよ。

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祝え! その誕生!!

 

 

 

 パタパタ、ぱたぱた、と小さく主張するアーシアの翼。レイナーレ達堕天使の様に黒く、けれど鳥の翼に似たレイナーレ達とは異なりその翼は蝙蝠のソレに近い形状をしていた。

 

「………」

「きゃっ。しょ、ショースケさん…? んっ」

「ふむ」

 

 気付いた時には伸ばした手がアーシアの翼に触れ、ふにふにと弄っている。シーツやビニールなんかとは違う滑らかだが生物感のある表皮に指に少し力を入れると骨の様な芯があるのが伝わり、生き物特有の暖かさも感じられる。触れた感触からは作り物ではない現実味(リアリティー)を翔介に叩き付け───余計に混乱する。

 

(“ 悪魔に成った ”、…え? 人間ってそんな簡単にやめられるの? というかなろうと思って成れるもんなの悪魔? いや、俺も人の事言えたもんじゃないけど。でも俺は産まれが特殊…と言えなくもないし)

「っ…ぁっ、〜〜ッッ、…ぅあ! んっ……はぁ」

(そういえば昨日グレモリーさんも悪魔だって言ってたよな。……は? やっぱりアイツらアーシアに何かしたのか? アーシアが何も知らないのをいい事に仲間にしたのか? …………処すか? オッ? 処すか?)

「んあっ! しょ……しょぉ…すけ…しゃん」

 

 思考に没しながら盛り盛りと殺意を積み上げながらアーシアの翼を弄り回す事はやめない。無意識下の行動だが、されるがままのアーシアからすれば堪ったもんじゃないだろう。……いや、そんな事ないか?

 

『翔一、おやめなさい。彼女が困っています』

(翔介です。……って、え? アッ)

「……っ……ッゥ……ッ!」

「ワー! ごめんアーシアぁ!?」

 

 見兼ねたテオスにより声を掛けられ我に返り、そして──直接描写するのもアレなので簡単に──びくびくアーシアの淫ら(センシティブ)な顔に翔介の眠魔眼魂(みんまあいこん)がダイカイガンッ!、オメガドライブする程の衝撃を受け慌てて翼から手を離す。…余りに衝撃が強過ぎてバッチリミテしまい脳裏に焼き付いていたりする。命燃やして責任取れ。

 

「ふぅ…ふぅ……ぅ、はぁ…」

「本当にごめん」

「……い、…いえ、大丈夫、れす」

 

 明らかに大丈夫ではない。頬を上気させ、激しく鼓動する胸を抑える様に手を当てている。とろん、と蕩けた瞳が扇情的で漏れる吐息が熱く艶めかしい。普段は清廉な少女が魅せる淫らな一面、対面しているのが『兵藤 一誠』だったのなら鼻血を流してダラシない顔をしている事だろう。

 だが、翔介は普段は見れないアーシアの女の貌を見ていない。アーシアの目の前でずっと頭を下げて謝罪の意を表している。

 

「はぁ……ふぅ、…ん、すみません。もう大丈夫です、ですから顔を上げてください。そのままだとお話し、出来ませんよ?」

「……そうだな、わかったよ」

 

 息を整え、心臓も鎮まり、目尻の雫を指で掬ってから翔介へと顔を向ける。申し訳なさそうな表情をしている翔介に気遣いの言葉を送って顔を上げさせ笑顔で迎える。

 

「うん、それじゃ…説明、してくれるか?」

「はい、実は───」

 

 アーシアが語った。

 昨日出会ったリアス・グレモリーはこの町『駒王町』の管理者で悪魔界の上級貴族の御令嬢にして次期当主。悪魔という種の頂点(トップ)に君臨する『魔王』から直々にこの町の管理を任命され、駒王学園に通い悪魔としても深く関わっていく事となる人間界を対して見解を広め、尚且つ主人を裏切って逃げ出し、欲望のままに行動する転生悪魔───『はぐれ悪魔』を討伐する日々を日夜過ごしているという。

 翔介はアーシアの説明を聞き、先日の“ ジャガーロード・モドキ ”の様に自身がテオスに駆り出されて倒しているバケモノの正体はそのはぐれ悪魔とやらだと察する。

 

 アーシアの言葉は続く。

 悪魔───というよりは裏世界にて生きる人外の存在は、表世界に生きる人間の様に言葉の境界が超えて、聞いた事のない異国の言葉であろうと自身がよく知る言語に変換されて伝わるという。逆に、自身にとっては自国の言葉で話したとしても相手に伝わるらしく、アーシアが悪魔になるきっかけもこの翻訳能力だった。アーシアにとって欲しくて堪らない機能だったのだ。

 つまり、アーシアは自ら望んで悪魔と成ったのだ。翔介に()()()()()()()()()()()()()()()()、ただそれだけの理由で。

 

「……よかったのか、アーシアはシスター…だろ?」

「……未練はあります」

「だったら」

「でも、いいんです。()()()()()()()()()()()…」

 

 悲しそうな、そして諦めた様な笑み。アーシアが自身の過去を翔介に話す。

 

───アーシア・アルジェントは孤児である。

 親より手放され、幼少より教会の孤児院で育ち、成長して癒しの力が発覚すると教会は彼女を“ 聖女 ”だと奉り上げた。神が賜した奇跡の御仔として。そこからは大人の言葉の通りに現れる人間に癒しの力を振るい続ける日々。神聖で近寄りがたい存在として扱う。教会の人間は彼女の力を神の証明に、信者は彼女を与えてくれた主に感謝を。誰一人としてアーシア本人を見ず、アーシア越しに信じる神の虚像を観る。

 広く浅く、傷さえ癒せば後はさよなら。出会う人達の名前を知るどころか顔を覚える事すら出来ない、そんな日々を過ごしていたが転機が訪れる。けれど、其れは決して良い出来事ではなかった。

 その日は、珍しく癒しの力を求める人の数が少なくアーシアにも暫しの暇が訪れ、気分転換にと敷地内の庭を歩いていた時だった。傷だらけで倒れる人影を発見したのだ。アーシアはその人影に慌てて駆け寄ると、癒しの力を使い治癒を行った。教会に癒しの施しを求めたがあと少しの所で力尽きた信者だと思ったのだ。

 みるみるうちに傷は回復し、人影は起き上がる。倒れていた者は男性だった。男はアーシアに礼を告げるとその手を取って唇を落とす。その時だった、凄まじい怒声と幾つもの足音を響き渡らせた武装する集団が現れたのは。彼らは教会に所属する戦士だった。神を信じ、敬い、己を神の刃と称する者達である。

 男は戦士達を視野に入れると笑みを浮かべ、空に飛び立った。その背には昏い色をした邪悪な魍魎の翼を広げて。男は悪魔だった。

 悪魔は言う。『視ろ、我が身を襲う刃の傷は全て消え去った。その者の癒しの力により回復した。感謝するぞ』…悪魔はそう宣言して去っていく。

 そこからアーシアは転落する事なる。悪魔すら癒す事が出来る力を人々は畏れた、昨日まで神の恩恵と呼び表していた力を穢らわしく邪な魔術だと言い放った。聖職者から異端者、聖女から魔女へ烙印を押され、弁解する余地すら与えられず教会から追放された。殺さないだけ慈悲を与えられたと思えと、実際にそう言い放たれ、外で生きる方法を何一つ持たないまま身一つで追い出される。町では居場所はなかった。魔女、魔女、魔女、何処にいても、何もしなくても魔女だと言われ、つい先日傷を癒した子供に石を投げられる。彼女が町を出たのもしょうがない事だった。

 そしてその後は、町の外を彷徨っている所をレイナーレに拾われ、その先でも利用され、力目的で命を奪われそうになったのをアギト───津上 翔介に救われた。

 もはやアーシアには翔介(アギト)しかいない。産まれた場所より追われ、拾ってくれた人は自身を殺そうする。翔介以外の全員が自身を自身のまま受け入れてくれず、治癒の神器(セイクリッド・ギア)に付属品の様に扱う。

 遂にはアーシアは教会より忌むべき存在と教わり続けたΑGITΩ(アギト)の手を取る事を選んだ。聖職者にあるまじき行為だと、これじゃあ自分は本当に“ 魔女 ”だと、アーシアは疲れた様な顔で翔介に語り掛けた。

 

「ですから、大丈夫です。…私はきっと、もう主に愛しては貰えないでしょうから」

「………」

「……ごめんなさい。こんな話、聞きたくなかったですよね。…あはは、私、ほんとにダメな子ですね。もっと楽しい話がしたかったから悪魔に成ったのに……ごめんなさい。ごめん…っなさい…! ダメな子で、悪い子で、皆さんが望んだ聖女に成れなくて、魔女でごめんなさ」

「アーシア」

「え? きゃうっ」

 

 ペチーン、とアーシアの額に衝撃が襲う。え? え、え? 、と額を押さえて困惑するアーシアの頭に腕を伸ばし、胸に押し付ける。

 

「  」

「アーシア」

「しょぉ、すけ…さん…?」

()()()()()()()

「え?」

 

 翔介の言葉がアーシアの胸に、胸の奥に在る魂に触れる。

 

「ダメな子だっていいじゃないか。悪い子でもいいじゃないか。それでもアーシアは優しいんだから」

「ッッ」

「傷付いていたから力を使ったんだろ? 助けたいと思ったから手を伸ばしたんでしょ? ()()()()()()()()()、アーシアはアーシアの心のままに動いたんだ。…俺はその事を正しいなんて言わないし言えない。君も、今更『あの時の行動は正しかった 』なんて言われても受け入れられないでしょ?」

「………」

「でも、アーシアがしたいと思ってしたのなら、()()()()()()()()()()()()()、とは絶対に言えるし、誰にも間違いだなんて言わせない…!」

「!?」

 

 アーシアが顔を上げる。目と鼻の先に翔介の顔が視界いっぱいに広がる、優しい表情に心が揺れ動く。

 

「聴こえる? 俺の鼓動」

 

 今一度胸に押し付ける腕に力が入る。

 アーシアも翔介の力強い鼓動に耳を傾ける。

 

「……はい、聴こえます」

「俺は怪物?」

「ッ、違います…!」

「ありがとう。…俺も、俺は()()()()()()()()

「…?」

「両親はレストランを経営してる何時迄も仲の良い夫婦。姉は大学で見習い教師を務め、夜には俺に愚痴を語ってる。俺だってアギトの力を持っているけど───それ以外は普通の高校生だよ」

「……」

「アーシアも同じだよ。俺みたいに心臓が動いて、俺みたいに自分の足で歩いて、俺みたいに今を生きてる唯の人間だよ。聖女でも、魔女でもない、アーシア・アルジェント。…違う?」

「ちが……い、ませ……ん! 私、もッ…ショースケ、ざんと…同じ、癒しの力を…ッ持ってるだけの…普通の人間、でしゅ…!」

「うん、そうだね。だったらいいじゃない、ダメな所だってあるし、悪い事もする。それが人間…だよ」

「はい。……はい!」

「……おめでとうアーシア。君は今、唯の人に為れたんだ。今日が君の誕生日だよ。記念すべきこの日に、『Happy Birthday、ASIA(アーシア)』」

 

 少女の誕生を、親から貰えなかった祝福を、彼女の故郷の言葉で伝える。悪魔の機能の一つとして理解出来る言語に翻訳されて伝わるアーシアだが、最後の祝福(ことば)だけは特別なんだと心で理解した。

 

「はい、はいっ! ありがとうございます、ショースケさん」

 

 産まれたばかりの少女の頭を優しく撫でる、金糸の様な髪を指で梳く。

 アーシアは今一度想う。

 

(ああ、やっぱり。私を受け入れてくれるのはこの人しかいない。ショースケさん…しょぉすけさん…しょうすけさん。───好きです。大好きです! お慕いしています! 例え、この想いが罪だとしても、いずれ神罰が掛かるとしても私は貴方のお側に居られれば他には何も望みません。……それにきっと翔介さんなら護ってくれます)

 

 信頼───それすら超越した重い感情(ナニカ)。アーシアの胸を渦巻く感謝、恋慕、()()()()

 

(私の心を差し上げます、永遠の愛を誓います、この身体朽ちても貴方を想い続けます───どうか、()()()()()()()()()()()()()()、翔介さん……♡)

 

 翔介の胸で開かれた碧色の瞳には鉛の様に鈍い、(ハイライト)が灯っていたという。

 




津上 翔介
開幕セクハラかます&グレモリー眷属一行に凸りかける系オリ主。アーシアのフォローがなかったら原作キャラ死亡タグが付いた上に主要人物殆どタヒぬので今SS自体終わる可能性があったが既に過ぎ去りし過去なのでモーマンタイ。

アーシア・アルジェント
悪魔転生する事で衣食住、更に後ろ盾も手に入れた某欲望全肯定誕生日御祝いおじさんもニッコリの自称魔女っ娘シスター。……一応、これからも神に祈りは捧げ続けてはいる。それはそれとしてオリ主ΑGITΩラブ勢、望まれれば本当の意味で自分の全てを差し出せる覚悟ガンギマリ系ガール。
あれ? …この子感情激重じゃない?

グレモリー眷属s
知らないうちに危うく全滅仕掛け、知らないうちに危機を脱した悪魔団体。
二巻編からは彼らがメインに成る。アーシアを悪魔化させたのも半分ぐらいはグレモリー眷属に回復役(ヒーラー)が居ないと話の構成が難しいので。悪魔陣営は早くフェニックスの涙(エリクサー)量産してよ〜役目でしょ〜。

作り溜めを使い切ったので次回からは不定期更新です
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