それから約一ヶ月が過ぎ、累は高校生デビューを果たそうとしていた。勿論、双子の妹でもある美南も同様にだ。高校での入学式は既に前日に行われており、今日からは授業が開始されるとの事なので、若干累は気持ちが萎えていた。
「美南、オレの制服変なとこ無いか?」
「うん、大丈夫だよ。強いて言うなら、少しだけ寝癖が付いてるってところかな?」
「マジか!朝直したと思ってたんだがな・・・・・・」
真新しい制服に身を包み、家を出た二人はこれから通う事になる高校、誠凛高校へと歩を進めていた。二人がこの高校を選んだ理由は主に二つあり、一つは家から近かった事。やはり、毎日通う事となる学校は、近いに越した事は無いと言うのが二人が出した答えだった。もう一つは、誠凛高校がそれなりにバスケが強い高校であった事だ。新設されてまだ二年目という歴史の浅い高校なのだが、去年には東京のIT杯予選でベスト4に名を連ねたり、関東大会で優勝をする程には強い強豪校だ。
これほどに良い優良物件は無いと判断した二人は、すぐさまここの高校を受験する事を決めたのだとか。
「お!早速、部活動勧誘を行ってる先輩達がいるな!バスケ部どこだ?」
「本当だ〜。しかもすごい熱心に勧誘してる先輩もいる・・・・・・」
二人が校門の前まで来ると、既にそこには新入生を迎え入れようと、多くの部活動が血眼(?)になって勧誘を行っていた。累はその光景に目を輝かせているのとは対照的に、美南は引いていた。
「とりあえず、バスケ部のブースに行ってみようぜ?美南はマネージャー志望だよな?」
「うん。どうやらこの高校には女バスが無いみたいだし、マネージャーで良いかな」
「そっか。なら早く行こうぜ!」
足早にバスケ部のブースに向かう二人。美南は元々、中学では女子バスケ部に所属していて、バスケ部内でもエースとして活躍するぐらいには実力を持っていたのだが、兄の累の怪我による離脱を知ってからは、何故かそのバスケ部を突然止め、累の介抱に尽力していた。その時ぐらいから、トレーナーになる夢を持ち始めたらしい。だが、累の怪我も完治した事もあって、高校では再び自分もバスケに打ち込もうとしていた美南だったが、生憎この誠凛高校には女子バスケ部が無かったので、仕方なく男子バスケ部のマネージャーになる事に決めたのだ。
「あったあった!あそこがバスケ部の・・・・・・って、なんかすごいでかい奴がいるな・・・・・・あいつも入部希望者か?」
ブースへと足を運んだ二人が目撃したのは、バスケ部!と書かれた看板の前に立つ大柄な男子高校生だった。燃えるような赤い髪が特徴的で身長も190m以上はある、バスケ選手としては理想的な体格の持ち主だ。そんな大男を目撃しながらも、二人は入部希望書を書くために、そこへと近づいた。
「あの、すみません!バスケ部の入部希望の者ですが・・・・・・」
「ん?おお、マジか!嬉しいね〜しかも二人も!その内一人は女子・・・・・・部内には怖いカントクしか居なかったし、これでより華が・・・・・・」
「日向くん?・・・・・・聞こえてるわよ?罰として、日向くんのコレクションしてる戦国武将フィギュア、二体ぐらい折る事に決めたから♡」
「なんでだよっ!?待ってくれ!謝るからさっ!!」
「「・・・・・・」」
何故かその場で即興コントを仕出したバスケ部の担当の男女二人に累も美南も困惑する。
「あの〜、入部希望書・・・・・・書かせてくれません?」
「あ、ああ!ごめんなさいね!はい、じゃあこれに名前と出身校、志望動機を書いてね!」
隣に立っていた大男を尻目におきながら、椅子に座った二人は入部希望書をすらすら書いていく。二人の志望動機は至って単純で、累は『バスケが大好きだから』美南は『マネージャーをやってみたかったから』といった感じだった。
「あれ?苗字同じだな?二人ってもしかして、兄妹か?」
「はい。私が妹でこちらが兄です」
「そうなのね。確かによく見れば似てるわ・・・・・・」
「はは、よく言われますよ。オレ達双子ですし、中学の頃はクラスメイト達からよく・・・・・・」
「おい、書いたんだったらさっさと退けよ。次は俺が書くんだからよ?」
ふと、4人の会話を遮る者が現れる。声を掛けてきたのは、先ほどから二人の隣に立っていた赤髪の大男で、鋭い眼光を二人に向け威嚇をしていた。
「ああ、悪かったな」
「すみません、どうぞ?」
二人が席を立つと、大男は二人同様に入部希望書を書いていく。だが、二人とは違い、志望動機は空欄のまま提出をされた。
「火神大我。出身校はアメリカ。・・・・・・あれ?志望動機はなし?」
「ある訳ねーだろ、んなもん。日本のバスケなんてどこも同じだし、レベルのひきーとこでやってたってなんの面白味もねーからな」
どこか不貞腐れたようにそう吐き捨てた火神は、そのままどこかへと行ってしまう。・・・・・・残された4人は、なんとも言えない空気となり、顔を歪ませていた。
「随分な新入生が来たもんだな・・・・・・。体格とか、アメリカ育ちってとこもあって、即戦力にはなってくれそうだがな・・・・・・っ!?」
「あの態度はちょっとね・・・・・・。幾ら何でも礼儀ってもんが・・・・・・っ!」
「お、お兄ちゃん!」
その時、”この場の空気がふと変わる事”を、累を除いた3人は瞬時に察した。先ほどまで春特有の少し暖かかった空気が、一瞬にして冬のように寒く、冷たくなった事に・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・ふぅ、悪かった。少しあいつに怒りが湧いてな。・・・・・・先輩達もすみませんでした」
「い、いえ・・・・・・大丈夫よ(日向くん・・・・・・この子・・・・・・)」
「(ああ。ぶっちゃけ、さっきの火神って奴よりもやばい匂いがする・・・・・・)」
この空気にした張本人は、紛れもなく累だったのだが、それはほんの一瞬で、直ぐにその妙な寒気はなくなりいつもの様な空気へと変わった。これを機に、累はこの先輩達から要注意人物として認知されてしまう事となってしまうのだが、それを彼自身が知るはずもなかった・・・・・・。
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それから数時間後の放課後、バスケ部に仮入部という形で累や美南を始めとした新入生が体育館に集められていた。その中には、先程の火神の姿もあった。
「ねー?キミってマネージャー志望の子?よかったら連作先教えてよ?今後の事も考えて繋がりは持っとくべきだからさー?」
「・・・・・・あのー、今はそう言った場では無いのでは?先輩方からも待つ様に言われてますし、大人しく待つべきだと思いますよ?」
その間、一人の新入生が美南にこう言ったように絡んで来て、あまつさえ初対面の人に連絡先まで聞いてこようとしてくる無礼な姿勢に、美南はもとより、累は酷く憤っていた。
「そんなの問題ないっしょ!良いから教えてよ〜。なんなら、これ終わった後にでもどっか遊びに・・・・・・」
「・・・・・・おい。真面目にバスケする気がねーんだったらさっさとこの場から失せろ。それと、人の妹に勝手にちょっかいかけてんじゃねーよ?」
「・・・・・・は?いきなり出てきてお前なんだ・・・・・・っ」
妹を守る為、即座にその場で止めに入った累。当然、いきなり割って入ってきて良いところを邪魔されたその新入生は怒りながら、累に詰め寄ろうとしたが・・・・・・累が放つ”異様な覇気”と”威圧感”でそれが叶う事はなかった。
「聞こえなかったのか?ここはナンパをする場所じゃない。バスケをする場所だ。その神聖な場所をてめーみたいなチンケな奴に汚されちゃオレたちだけじゃなく、先輩達にまで迷惑をかけるってのが分かんねーのかよ?」
累のその一言に、周りにいた10人程の新入生達は静かに同調していた。火神も、同調こそ無かったものの、彼のその新入生を見る目は怒気に満ち溢れていた。彼もやはり、こう言った生徒は好まないのだろう。
「ちっ・・・・・・やってられるかっ!」
自分に味方がいないと悟り、居心地が悪くなったその新入生は逃げる様にして体育館を出ていった。累は、つい最近までバスケをしたくても出来ない体であった事もあって、やっと思う存分バスケが出来る環境に身を置ける・・・・・・と思ってた矢先に、先程の様なふざけた新入生に邪魔されそうになった事と、妹の美南にちょっかいをかけた事が怒りのボルテージを上げてしまったのだろう。
「なぁ!お前・・・・・・ええと・・・・・・?」
「閻橙累だ」
「閻橙!ビシッと言ってくれてありがとうな。俺たち、みんなさっきの奴のこと迷惑だって思ってて・・・・・・礼儀も知らないし、俺たちの悪口だって平気で言ってくるし・・・・・・お前がさっき言ってくれた事でスッキリしたよ。もう一度言わせてくれ!ありがとう!」
「サンキュ。お前、名前は?」
「降旗光樹。よろしくな!」
感謝された事に、若干照れくさくなった累だった。その後、新入生全員で自己紹介を軽くし、先輩達を待つ事にするのだった・・・・・・。
ちなみに、黒子はこの段階でこの場にいますが、全く気付かれていないので(累はわからんが)自己紹介には加わっていません。
累の初めての挨拶が降旗だったのは、単に自分が降旗が好きだったからです。ですので、今後もこのコンビの絡みも多くなるかもしれません。
場合によってはフリが・・・・・・・・・・・・何でもないです。