残り時間が限りなく少なくなっている。現在のスコアは24-28。2年生チームのリードとなっている。火神には相変わらずのトリプルチームであり、火神は当然身動きが取れない。一番の攻撃力を誇るであろう、火神を抑えて仕舞えば最早こちらの勝ちは揺るがない・・・・・・そう判断したが為の作戦なのだろうが・・・・・・
2年生チームには、二つ誤算があった・・・・・・一つは、キセキの世代”幻の
「なっ!?今、どうやってパス通ったっ!?」
「ボールが意図せずに曲がって・・・・・・気がついたらゴール決まってるけどっ!?」
黒子の
そして、2年生チームのもう一つの誤算・・・・・・それは・・・・・・この場にもう一人・・・・・・天才という名の”怪物”がいた事だ。
「閻橙を止めろ!そいつから黒子に出されたら即失点になりかねない!なんとしてでも止めるんだ!」
「へぇ・・・・・・?俺を止める・・・・・・か」
怪物・・・・・・改め、累は黒子が動くと同時に、徐々に自分の力を解放し始めた。抑え気味にしていたパス、ドリブル、シュート、ディフェンス、それらすべてを二段階ほどギアを上げ、2年生チームを翻弄していった。特に、彼から出されるパスは100%通り、しかもどれも即点になり得るパスばかりで、黒子にパスを出した時を除けば、ほぼ確実に点が入っていた。・・・・・・それは何故なのか?
「面白い!」
「くっ・・・・・・(どうなってるっ!?こいつ、俺たちがギリギリ追いつかない速度と角度で的確にパスを出して来やがるっ!まるで俺たちが全て研究し尽くされてるみたいだ・・・・・・。それに、パスだけを警戒するにしても、こいつにはドライブもあるし3Pもある・・・・・・。下手に距離を取れないし、取りすぎると確実に抜かれる・・・・・・)」
彼とマッチアップしている日向は苦い顔を浮かべつつ、目の前の累を鋭く睨む。累がやっている事は、決して特別な事ではなくただ単に的確に相手との距離を保ちながら正確無比なパスを出しているに過ぎない。だが、それだけであるならパスのターゲットをしっかりとマークしてればそのパスも効力を失う。黒子がそれに該当する。しかし、パスだけに特化した黒子とは違い、累はパスだけではなく、シュートもドリブルも一級品の物を持っている。それがある以上、日向も言ったようにパスだけを警戒していたら即座に抜かれて点を決められてしまう。
「隙ありですっ!!」
「ちっ・・・・・・なんて緩急だ。こんなん俺じゃ止められっこねーよ・・・・・・ったく」
シュートを警戒したのか、累へのプレッシャーを強めた日向だったが、累はそれを嘲笑うかのように自慢のスピードで躱していく。インサイドに侵入した累に対しては水戸部がヘルプに入ったが、それによってフリーになった河原にパスが渡り、そのまま冷静にゴールへと沈めた。
「全く・・・・・・火神と言い、黒子と言い、閻橙と言い・・・・・・今年の一年坊はふざけた奴らばかりだ・・・・・・」
「だな。頼もしいが、今後の事を考えると俺たちもうかうかして居られないな」
3人の脅威的な実力を垣間見た2年生は、揃って戦慄すると共に、今後はこの3人とレギュラーの席を争わないといけないという事実に、冷や汗を浮かべるのだった。
結局、最後は黒子がどフリーでのシュートを外し、それを火神がダンクでねじ込んだ所でタイムアップとなった。結果は32ー40で1年生チームの勝利に終わり、5人はほっと胸を撫で下ろした。
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「閻橙、少しいいか?」
紅白戦が終わり、練習が終了となった後、火神は累に声を掛けていた。その表情はどこか不思議そうな顔つきだった。
「・・・・・・何だ?お前にパスを出さない事への不満でも言いに来たか?」
「ちげーよ。・・・・・・まぁ、それについても文句は言いてーが、ちょっと聞きたかった事があっただけだ」
めんどくさそうに頭を掻きながら、火神を見つめる累。彼も言ったように、先の紅白戦では彼から火神にパスは一本たりとも出ていない。理由は試合中に彼が言ったように、火神を信用していない事が原因だろう。
「お前、さっきの試合でほとんどのパスがスティールされずに通ってたよな?・・・・・・あれは何でだ?」
「簡単な話だ。オレは以前、美南が取り寄せてくれた先輩達の試合映像を何度も読み漁った事もあって、先輩達の動きやリズム、得意としている事、苦手としている事も全て頭の中にインプットしているからだ」
「マジかよ・・・・・・。ってか、それならトリプルチーム付いてる俺にもパスは出せたんじゃねーのかよ?」
「出せなくは無かったが、お前に渡したってあれは突破できないって分かってたからな。実際何も出来てなかったし。それに、先輩達は前年のIH予選で決勝リーグまで勝ち上がってるんだぜ?いくら身体能力に長けているお前でも3人もつけば抜くのは至難の業だろうが」
汗で濡れたビブスを脱ぎながら、淡々と説明をする累に対して、火神は苦い顔をする。・・・・・・事実である以上、何も返しようが無いのだろう。
「なぁ?お前は何でチームプレイにこだわってんだよ?お前の実力なら、俺みたいに個人プレイでも余裕で突破できるだろ?・・・・・・俺には理解できねぇ」
「個人プレイだけじゃどうにもならないって分かってるからに決まってるだろ?オレも昔、お前みたいに一人で自分勝手にプレイしてた時期があった。だが・・・・・・あるチームと戦ってボロ負けした時、それは間違いだったってのに気付いたんだよ。それからだな、オレがチームプレイにこだわるようになったのは」
「お前がボロ負け・・・・・・?おい、その相手って・・・・・・」
「お前に話す義理はねーよ。とにかく、今日みたいな自分勝手なプレイばかりするなら、今日同様にお前には一切パスは出さないからな?」
それだけを言い残し、累は体育館を後にした。誰もいない体育館の中で火神は、どこか考え込むように天を見上げていた。
「火神くん」
「っ!?お、お前・・・・・・だから急に現れるなってのっ!」
そんな彼に声を掛けたのは、いつも通り存在を認知されてなかった黒子だ。
「すみません。率直に聞きますが、さっきの試合中での答えを聞かせてください。僕は・・・・・・僕と閻橙くんはキミの信頼における人材でしたか?」
「さぁな。ただ、一つ言えんのは・・・・・・お前らはかなりムカつく。だが、それと同時にバスケにかける思いの強さ、そして実力がどれほどのもんかは大体把握できた」
「・・・・・・?つまり、どういう事でしょう?」
いまいち言っている事が理解できなかった様子の黒子は、首を傾げながら再び問う。それに若干苛ついた火神は頭を掻きながら声を荒げた。
「少しは認めてやるって意味だよ。ファーストフードで例えるなら、お前はハンバーガー1個分。閻橙はポテトLサイズ1個分ってとこだな」
「僕はバニラシェイクの方が好きですよ?」
「いやしらねぇよっ!?・・・・・・まぁ、とにかくそういう事だ。じゃあな」
少し頬を赤らめた火神は早足でその場を後にしていった。残された黒子は、彼のその行動を見て薄く笑みを浮かべるのだった・・・・・・。
累の実力はまだまだ見せてないです。これからバンバン明らかにしていきます!
次回は黄瀬と邂逅しますのでその時の反応を楽しみにしていてください。