『はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・くっ、くそ・・・・・・』
『どうした?もうへばったか?試合時間はまだたっぷりとあるぜ?』
『ちょっと〜?俺って、バスケ始めてまだそんなに経ってない初心者っスよ?少しは加減してくれても・・・・・・』
『名門の帝光中でレギュラー務めてる時点で、初心者なんざ言い訳になる筈ないだろうが?それと、オレは試合となればどこであろうと一切手は抜かない』
『マジっスか・・・・・・?これ以上、俺を・・・・・・』
『話は終わりだ。同じポジションである以上、お前は徹底的に叩きのめしてやる。覚悟しとけ?』
『くっ・・・・・・俺だってやられっぱなしじゃ終われないっス!ぜって〜あんたに勝ってみせるっスよ!!』
「はぁ〜・・・・・・見たくもない夢見たっスね」
日が昇り始める明け方。黄瀬は苦い顔を浮かべながらベッドから半身を起こしていた。
「意気込んだはいい物を、結局俺はあの試合で一度も閻橙っちに勝てなかった・・・・・・はは、ダサすぎっスね」
過去の自分に対して情けなさが込み上げてきた黄瀬は、小さく拳を握る。あの試合で黄瀬が累に勝てなかったと言うのは紛れもない事実であり、オフェンス、ディフェンス問わずに全て累に完敗していた。もはや可哀想と思えるくらいには。
「あの時に比べたら、俺は格段に強くなったと思ってるけど、だからと言って閻橙っちに勝てる保証なんて無い。閻橙っちだってあれからさらに成長している可能性だってあるし・・・・・・」
ぶつぶつと独り言を口にしながら学校へ行く準備をし出す黄瀬だったが、明日の誠凛との試合への不安からか、その手つきはかなりゆっくりだった。
「って、何弱気になってるんだろ、俺ったら。せっかく閻橙っちにリベンジできる機会が出来たんだから、有効に活用しないとダメっスよね?・・・・・・うん!さて、今日も練習頑張るとしますか!」
何とか吹っ切れた様子の黄瀬は、準備を整えると気持ちを昂らせながら学校へと移動をするのだった。
「そう言えば・・・・・・何で、閻橙っちは全中に出て来なかったんだろ?」
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「へ〜?流石は海常高校だな。運動部に力を入れてるだけあって、施設もデカいし生徒数も多い」
海常高校との練習試合当日。誠凛高校バスケ部は、会場となる海常高校へと足を踏み入れていた。累が独り言でぼやいた様に、この海常高校は誠凛高校に比べてかなり施設が充実しており、バスケ部の皆はそれぞれ目を丸くしていた。
「火神くん、目が真っ赤ですけど・・・・・・もしかして、寝れなかったんですか?」
「仕方ねーだろ?
「お前なぁ・・・・・・そんな調子で今日の試合大丈夫かよ?生半可なプレイなんかしたら許さねーぞ?」
「・・・・・・るせぇ。ってかお前は、いい加減に俺にも・・・・・・」
火神が目を擦りながら累に詰め寄ろうとする。だが、それよりも前に彼らの前に見慣れた金髪頭が現れた。
「あ、どうも!今日はよろしくっス!案内任されたんで、体育館までご案内します!」
「ああ、黄瀬くん。今日はよろしくね?」
「黄瀬・・・・・・」
黄瀬が現れた事で、笑みを浮かべながら優しく対応するリコとは対照的に、火神は目を鋭く尖らせ彼を睨んでいた。
「閻橙っち、黒子っち。今日は負けないっスよ?」
「それはこちらのセリフです。今日は負けませんよ、黄瀬くん?」
「だな。今のお前がどこまで強くなったか、オレに見せてくれよ?」
だが黄瀬は、そんな火神を置いておき、累と黒子に軽く挨拶していた。彼としては、火神は既に格付けが済んだ弱者。もうそこまで興味を抱いていないのだろう。
「おう?こいつらにはして、俺には挨拶は無しかよ?」
「ん?あぁ、確か火神・・・・・・だったっけ?ごめんごめん、今日はよろしくっス」
黄瀬のその態度に腹が立った様子の火神は、怒りのオーラを纏いながら黄瀬の前に出る。その様子に、誠凛のバスケ部の皆はそれぞれ顔を引き攣らせていたが、黄瀬は特に気にする事は無く二人同様に軽く挨拶をしてから、ゆっくりと踵を返した。
「じゃあ、体育館はこっちなんで俺について来てください」
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体育館に案内された誠凛バスケ部は、体育館の中の様子に目を見開いていた。まず、海常高校の体育館はかなり広く誠凛高校のものとは比べ物にはならない。それ故か、体育館の真ん中にネットを張って二分割しており、片方のコートを使用して練習試合を行うとの事らしいのだが、問題はもう片方のコートについてだ。
「普通に練習してやがる・・・・・・はっ、俺たちとの試合なんざ、見るにも値しないってか?」
そう。もう片方の空いたコートでは、今回の試合に出る予定のない部員たちが、いつも通りに練習をしていたのだ。リコが相手監督である武内源太に話を聞いたところ・・・・・・
『出ない部員にこの試合を見せたところで何も学ぶ事がない』
との事らしい。この発言から察するに、相手側が誠凛を舐めている事は明白であり、累たちは揃って憤りを見せていた。それに加え、黄瀬もベンチに置くという舐めプまでかまされた事もあって、こちらの怒りのボルテージは上がる一方である。
「おい、黄瀬?」
「ん?どうしたんすか、閻橙っち?」
そんな中、累は黄瀬へと声をかけていた。
「アップは済ませとけ?すぐにお前をベンチから引き摺り出してやるからよ?」
「・・・・・・言うっスね?勿論、俺は最初っからそのつもりっスよ?今度ばかりはアンタに勝ちたいから!」
「それともう一つ・・・・・・あの監督に伝えとけ?”あんま舐めた口聞いてると、アンタが手塩にかけて育てた選手全てをぶっ潰してやるっ”・・・・・・てな?当然、その中にはお前も入ってるからな?」
「っ・・・・・・へへ。そうでなくっちゃ!あの時のリベンジ、今日で果たさせてもらうっスよ!!」
誠凛高校VS海常高校。今、ここに戦いの火蓋がきって落とされる・・・・・・。
いよいよ試合が始まります。
どのような展開にしていこうか・・・・・・?