「……ジェネ、それは?」
「リンゴだよ。前にナラル村でレドが一個採ってきたやつ……から栽培したやつ」
「ん……栽培したやつ?」
今日も大して美味しくもない疑似食材で作られた夕食を摂りながら、二人は話していた。食事中、レドがテーブルにあったリンゴに気付いた為、話題はそっちに向いている。
「そう、栽培。今まで使ってなかったけど、このシェルター内には温室があってね。そこで育てた」
「いや、育てたって……そんな数日で育ち切るものじゃないでしょ」
「うん。だから成長促進剤を大量に……」
「……大丈夫なの、これ」
「大丈夫。食べても体に害はないから」
「そう……ならいいんだ」
「食べる?」
「うん」
「わかった」
ジェネは立ち上がると、包丁と小皿を持って戻ってきた。そしてリンゴを手に取り、皮を剥き始めた。
「……で、次はどうするの?」
「ん……北か東か、でしょ」
「そうそう。まぁ、急いで決める必要もないんだけどさ……いや、ごめん。正直に言うとできれば早く集めたいな」
「どうして?」
「好奇心だよ。壁の穴にコアを全部入れた時、何が起こるのかが知りたくてさ」
「なるほど……確かにそれは僕も気になるな」
ジェネは切ったリンゴをレドに差し出した。レドはそれを受け取ると、口に運ぶ。
「……懐かしい味だ」
「ね。でも……まさか果物食べて『懐かしい味』って言うことになるとはね」
「確かに。普通手料理とかだよね……」
ちゃんと味がついたものは久しぶりに食べた。二人は話をしながら、黙々とリンゴを食べた。
「で、次行くとこだよね?」
「うん。レドはどっちから行きたいとかある?」
「どうせどっちも行くんだし……。んー……東から、にしよっかな」
「いいんじゃない? 理由は?」
「なんとなく」
「だよねー」
二人はリンゴを食べ終えた。
「じゃあ、明日までに東の主要都市について調べておくよ」
「ありがとう」
「どういたしまして〜」
それから二人はそれぞれの部屋に戻り、ジェネは情報収集を始め、レドは休息をとった。
*
「……で、東の主要都市について……ちょっと、聞いてる?」
「聞いてる」
「本当に?」
「本当だって」
レドはみかんを頬張りながら答えた。
「……なら続けるよ。東の主要都市はボルカノって街。製鉄業が盛んな街だったみたい。鉱山も近くに沢山あったとか……」
「へぇ……製鉄業か」
「で……問題はコアの場所なんだよね。あの街で一番目立つ建物は、巨大な製鉄所。巨大な精錬炉や加工場もある、とにかく大きな製鉄所なんだ」
「……問題は、って事は、そこに無い可能性があるの?」
「ある。製鉄所は今まで行った主要都市の建物の中で一番事故のリスクが高い。そんな場所にコアを置いておけば、事故の衝撃で砕けてもおかしくないからね」
「む……確かに」
「だから……検討がつかないんだよ。これはうん……行って確かめてもらうしかないなぁ」
「分かった。……しかし、コアの場所の検討がつくようになってきたタイミングでこれかぁ……」
「まぁ……まだ製鉄所にコアがある可能性も無くはないから……」
レドはみかんが入ったカゴに手を伸ばした。すると、ジェネはその手を掴んで止めた。
「何個目?」
「……三?」
「残念、五つ目だよ」
「そう……」
「食べ過ぎ。もうダメ」
そう言うと、ジェネはカゴを自分の方に寄せた。
「あぇ……そんなぁ……」
「食べ過ぎも良くないからね。……帰ってきたらまた食べていいから」
「わかった……」
レドは少し残念そうな様子で手を引いた。
「さて……で、だ。東に行くなら丁度よく役に立つやつが出来たんだ」
「また何か作ったんだ」
「うん。端末に入れるから、ちょっと貸して」
レドは左耳につけていた端末を外し、ジェネに渡した。ジェネは端末を受け取ると、小さなパーツを端末に付けた。動作確認を行い、問題が無いことを確認した上でレドに渡した。
「何したの?」
「大気汚染とか、毒素を探知出来るようにした。今いる場所に致死的な毒素があれば、アラームで知らせてくれるよ」
「へぇ……すごいじゃん。でも、なんで?」
「鉱山は毒ガスが発生する事があるからね。万が一に備えてだよ」
「なるほど……ありがとう」
「どういたしまして。あ、後……水分多めに持っていきなよ? 多分ここより暑いだろうし」
「耐熱システムみたいなのは付けれなかったの?」
「付けたかったけど……その、端末に付けるスペースが無くて」
「あぁ……サイズの関係での容量不足か。なら仕方ないね」
それからレドは身支度を始めた。
「体調不良を感じたらすぐに戻ってきてね。熱中症でも、毒ガスでも。用意はしておくからさ」
「わかった。じゃ、行ってくるね」
「うん。行ってらっしゃい!」