ガシャンガシャンと機械の音が鳴り響く。それはあちこちから聞こえてきた。
『どういう空間だ……生産ラインには見えないし……でも、じゃあこの機械音は何?』
「……百聞は一見にしかず、見てみようか」
レドは音がする方へ歩いていってみた。音はどんどん大きくなる。
(この先だ……)
そして曲がり角を曲がると、そこには音の主が居た。
「……!」
黒い鉄塊、正しくそれだった。分厚い装甲に身を包んだ二足歩行の大型ロボットが歩いていた。体の上部にはカメラがあり、赤い光を放っている。他にも、何かブレードのようなものが左右に一本ずつ付いている。
『防衛ロボ……』
「にしては頑丈そうだな……多分コアはここだね」
『そうだね……。これ、見つかったらヤバいんじゃ……』
「……試そうか」
レドは空の瓶をロボットの方に投げた。瓶が落ちた音に気付き、ロボットのカメラが瓶の方を向く。コロコロと転がる瓶を補足したロボットはブレードを展開、そして一気に近付き、瓶を正確に突き刺した。
「……」
『……』
「い、一旦戻ろう」
レドは来た道を戻り、部屋を出て行った。
*
部屋の外の階段に座り、レドとジェネは作戦を考えた。
「見つかったら即死だね……」
『間違いない。あの速さ、人間じゃ逃げきれないよ』
「それにあの装甲……前に見た事がある。耐熱性に優れている上に、かなり頑丈。機械刀で焼き切れるものじゃないよ……」
『てことは、残されは道は……』
「絶対に見つからないように最深部にたどり着く……!」
『それしかないね。でも、無茶はしないでね……』
「わかってる」
レドは一度深呼吸をすると、再び部屋の中に入った。
*
「……」
息を潜め、慎重に迷路を歩く。緊張のせいか、ロボットが動く際に鳴る金属音がやけに大きく聞こえた。
(迷路は壁を伝っていけば簡単に抜けれるはず……あれ、伝う壁は左だったか右だったか……右……かな?)
右の壁に軽く触れながら歩いていく。見つかったら即死の恐怖で脚が震えてきている。ふと、前の曲がり角から赤い光が見えた。間違いなく、ロボットのそれだった。レドは思わず立ち止まった。
「……」
足音を立てながら、ロボットが歩いてくる。そして、曲がり角まで来るとロボットは動きを止め、レドの方にカメラを向けた。
「ぁ……!!」
赤い光に照らされたレドは思わず尻もちをついてしまった。ガシャン、と地面と機械刀がぶつかる音が響く。それに反応するように、多くの足音が近付いてくる。
『しまった……レド、早く逃げて!』
レドの後ろの方からもブレードを構えたロボットが歩いてくる。
『レド!! あぁ……そんな……!』
「う…………」
レドはその場から動かなかった。いや、動けなかった。恐怖で脚はすくみ、立ち上がる事ができずにただ死を待つしかなかった。
『…………』
「…………ごめん」
二体のロボットはレドに近付き、ブレードを振り上げた。
しかし、そのブレードは振り下ろされることは無かった。やがて、ブレードを畳むと元の巡回経路に戻っていった。
『え……なんで?』
「…………まさか……動きか」
『動き……?』
レドは壁の方へ動き、もたれ掛かると深呼吸をした。
「ここら辺は暑いから、熱源探知の精度が落ちるんだ……。だから音で大まかな位置を把握して、動く物体を探せばいい……多分、そういう事だ」
『なら……見つかっても止まればいいって事?』
「そうだね……見つからないのが一番だけどさ」
落ち着きを取り戻すと、立ち上がり、迷路の攻略を再開した。
(偶然だったけど……攻略法を見つけられたのは大きいな。後は迷路だけだ……)
変わらず慎重に、でもさっきよりは心に余裕を持った状態で迷路を歩いていった。
*
「つ……着いたぁ…………」
最深部であろう扉は、コアがある小部屋に通じていた。周りを探っても、この部屋にセキュリティは無いようだ。完全な安全地帯であり、ゴールにたどり着いたリオは緊張が解けたのか、大きなため息をついた。
『お疲れ様……一時はどうなるかと思ったけど、無事に届いコアまでたどり着けたね』
「うん……良かったぁ……」
『さ、早くコアを回収してしまおうか』
「うん!」
コアを守るガラスを割って、中にある赤い菱形の物体を手に取る。
『で……帰りは?』
「梯子があるし、そこから地上に出られそうだよ」
『わかった。じゃあ、先に座標入力しとくね』
「ありがとう」
レドは梯子を登り、地上に向かった。
梯子の先は小さな洞窟に繋がっており、そこを抜けると、街の外れに出る事が出来た。
『よし、じゃあ転送するよ』
「うん、よろしく」
直後、レドの体を浮遊感が襲う。この浮遊感にも慣れてきたな、なんて思いながらシェルターまで転送されていった。
残す都市はあと一つです。終盤も終盤……