荒廃世界の旅人   作:よっしー希少種

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この話は最終話「旅の終わり」でのジェネ中心の話になります。補完とかが含まれますので、先に最終話を読んでから読んでください


旅の終わり ジェネサイド

 レドの説得もあり、ジェネは生命復興装置に入らないまま、平凡な日々を過ごしていた。ジェネですら、生命復興装置のことなど忘れかけてしまうくらいには、今の生活は楽しく、幸せだった。

 そんなある日の事……。

 

「ジェネ」

「ん……?」

 

 声をかけられ、振り返ってみると、そこに立っていたのは、ジェネがよく知る顔の大人だ。

 

「お……お父さん……?」

「ジェネ、なぜ装置に入らない」

「え……」

 

 父の言葉に耳を疑った。

 

「お前が入れば、みんな報われるんだ。装置を作った仲間も、お前をコールドスリープさせた俺も」

「な……」

「ジェネ……」

 

 震えるジェネの肩を、父は両手で掴んだ。

 

「復興装置に……入れ」

 

 

「はっ……!」

 

 見慣れた天井が見える。どうやら、自室のベッドの上にいるようだ。

 

「夢……」

 

 思わず、安堵のため息が出た。呼吸を整えながら、額の汗を拭う。

 

(……怖い夢だったな。お父さん、あんな事言う人じゃないから夢なのは気付けたはずなのに)

 

 二度寝して忘れよう、そう思いベッドに横になるが、全く寝付けない。それどころか、悪いことばかり考えてしまう。

 

(……夢って確かその人の願望とかを映すんだよね。今回の夢は……まだ捨てきれてない迷い……のせい? だったらやっぱり……)

 

 そうは考えたものの、装置に入るという選択はすぐには出来なかった。何せ、今の生活が、レドと過ごすこの日常を手放したくなかったからだ。

 

(………………)

 

 その日、ジェネは一睡も出来なかった。

 

 

 レドの前では平静を装っていたが、一人になると思い詰める日が続いた。レドの見ていないところで泣いたり、吐いた日もあった。迷う中で次第にジェネの精神は傷付いていく。生命の再構築を託されたと思い込んでしまった(・・・・・・・・・)為に、その重責に押しつぶされ、しかしレドに頼る事もせずに抱え込み、少しづつ壊れていく。

 

(…………レド、ごめん)

 

 そして遂に、装置に入る選択をとった。しかし、そうなるとレドは必ず引き留める。今度言い合いになれば、お互いの関係は簡単に崩れる、そんな気がしていた。それを恐れたジェネは、レドに抵抗されないような手段を考えた。

 

 

 数日後、ジェネはレドの食事に睡眠薬を混ぜ込んだ。マドロミスズランのエキスから作られた物で、普通のものよりも濃度が濃く、強力だ。その食事を食べたレドは、少しもしないうちに眠気に襲われていた。

 

「レド、眠いの?」

「ぁ……ねてないよ?」

「うん、眠いんだね」

 

 レドをおぶって運び、部屋のベッドに寝かせる。

 

(数日寝てはずだから、今のうちに……)

 

 ジェネは部屋を出てある物の調整を始めた。時限式の転送装置だ。範囲内の物体を、指定した時間に指定した座標に飛ばすというもの。座標をレドの部屋に設定し、机に置いた。そしてバイタルの安定の為に、早めに眠りにつく。

 次の日、レドはまだ起きてこなかった。その日は、レドに邪魔されないようにと、機械刀を分解した。レドの手で組み立てることが出来ないくらいに、細かく分解する。次に、シェルター内のエネルギー供給量を調整した。レドが使わないであろう部屋への供給を止め、無駄な消費を行わないように設定する。最後に、レドの為にと、端末の会話データをカセットに移し、探索記録として残した。

 

「これでよし……」

 

 今出来ることは全て終えた。後は装置に入るだけ……。

 

 

 装置に五つのコアを入れ、電源を入れる。全ての機能が立ち上がるまでに少し時間がかかるようだ。ジェネはその間、最後の下準備をした。まず、入り口の扉に内側からロックがかかるように設定した。時限式のそれが起動すれば、外からは開けられない。そして、部屋に携帯式の転送装置を仕掛ける。これも時限式のタイプで、範囲内に居る物体を指定された座標に飛ばすものだ。座標をレドの部屋に設定し、扉のロックと同じ時間に設定する。

 

「よし……」

 

 生命復興装置に目をやると、既に起動は済んでいる様子だった。ジェネは装置の中に入り、扉を閉めた。後は自分の分析が終わるのを待つだけ。

 

(……レド、起きなかったな。いや、これでいいんだ。顔を合わせない方が……良いんだよ)

 

 そう心の中で言い聞かせながら、解析が終わるのを待つ。その時、後ろの方から扉を叩く音が聞こえた。

 

(え……)

 

 振り向くと、そこには叫びながら扉を叩くレドの姿があった。

 

「……レド」

 

 ジェネの声が聞こえたのか、レドは動きを止めてジェネを見た。その不安に満ちた目を見た途端、ジェネの中の罪悪感が、後悔が一気に増幅した。

 

「ご……ごめんね……」

 

 自然と目から涙がこぼれる。泣きたいのはレドの方なのはわかってる。だが、ジェネも後悔の念と罪悪感に押しつぶされ、だが何もする事ができず、ただ泣く事しか出来なかった。

 

「なんで……ジェネ……一緒に居る約束だったじゃん……」

「ごめんね……。でも、こうしないと……僕が生き延びた意味が無くなっちゃうから……」

「そんなの……そんなの……!」

「……ちゃんと役目を、果たさないと……」

「ジェネ……ぁ……あぁぁぁ!!」

 

 レドも声を上げて泣きだしてしまった。

 

「ぁ……レド……泣かないでよ……。叱ってよ、怒ってよ……こんな身勝手な僕を……怒ってよ……」

 

 ジェネの声はレドには届かない。二人を隔てる壁はそれほど厚いものだった。だが、最期にこれだけは伝えようと、ジェネは扉を叩いてレドを呼んだ。

 

「レド……僕は幸せだったよ。レドと過ごせて……毎日が幸せだった。この幸せは……捨てたくなかった……本当だよ」

「ぁ……」

「……僕は居なくなるけど、今までの旅の記録は……残してる。それを聴いて、僕の事、忘れないでいて欲しい」

 

 解析が終わったのか、装置は次の段階に移行しようとしていた。

 

「でも……もし、孤独に耐えられない時は……その時は…………無理しないで。生きるのから逃げても、良いから……」

 

 全て伝え切る前に、時限式の転送装置が起動し、レドの姿は消えてしまった。

 

(……レド、僕達、あッチでまた会えるかな? 会えたら……その時は……)

 

 ジェネの身体を強い光が包む。新しい生命の為の、素材となる為、ジェネの身体は分解されていく。一瞬のうちに、肉体も、意識も、分解されて見えなくなってしまった。




これで本当にこの作品はお終いです。最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。この作品については後書きで語ることが無いって言うか、下手に語るとつまんなくなりそうなのでやめておきますね……。
では、また他の作品でお会いしましょう。
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