荒廃世界の旅人   作:よっしー希少種

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まずは拠点周辺から


中央都市 ショッピングモール探索記録

「静か……だな」

『だね。ここが栄えていたのなんて、もうとっくの昔の話なんだね』

 

 高速道路を歩きながら、レドはジェネと通話している。道路はヒビが入っている所もあり、かなり荒れている。

 

『中央都市セントル……この世界に存在する五つの都市の中で一番大きく、さらに各都市間の交易の要にもなっていた都市。それが今は人は一人も居ない静かな廃墟に成り果ててしまった……』

「この雰囲気も悪くは無いけどね。高速道路を歩くなんて、普通できないし」

『まぁ……うん。そこは楽しめるかもね』

 

 レドはガードレールにもたれかかって足を休めた。

 

「ジェネ、僕達がコールドスリープから覚めるまでに何年かかったのかな……」

『うーん……廃墟の荒れ方からして、かなり経ってると思う。僕達以外に誰か生きてる可能性は皆無に近いね』

「だよね……」

『でも僕達が居たシェルターはほとんど無事だったし、壊れていたのも直せる範囲だった。お父さん……どれだけ頑丈で長持ちするものを作ったんだろ』

「おかげで生活は不自由無かったからね。ジェネのお父さんには感謝しなきゃ」

 

 レドは再び歩き始めた。今日は快晴だが、暑すぎるほどではない。風も心地よく、過ごしやすい気候だ。

 

「ん?」

『何かあった?』

「なんか……デパートみたいなのが」

 

 レドの視界に、一際目を引く大きな建造物が現れた。文字がかすれて読めないが、看板らしきものが付いている。ガラス張りの自動ドアや、広い駐車場も見える。

 

『あ、そこってこの都市で一番おっきいショッピングモールじゃない?』

「へぇ……面白そうじゃん」

『ね、行ってみてよ! お菓子とかあるかな?』

「あっても食べれないと思うけど……うん、行こう!」

 

 レドは高速道路を下り、ショッピングモールに向かって走った。

 

 

「大きいな……」

『セントルにはこれ以上大きい建物は無いからね。さ、入ってみよー!』

「あぁ!」

 

 自動ドアを開け、中を覗く。電気がついていないため、かなり暗い。昼間だというのに、少し不気味だ。

 

『かなり頑丈な造りだったみたいだからかな? 中は綺麗だね』

「でも、そのせいで明かりが……」

『大丈夫。これ暗視フィルター入ってるから。暗いとこに入ると自動でつくよ』

「本当、すごいの作ったね……」

 

 建物の中に入ると、目の前に電子のフィルターが現れる。そして暗闇の中だというのに視界が鮮明になった。

 

「おぉ、これが……」

 

 早速、傍にあった案内を見てみる。どうやら十階建ての建物のようで、地下駐車場まである造りらしい。今居る一階は主に食材を売っていたエリアのようだ。

 

(とりあえず見て回るか)

 

 レドは一階の探索を始めた。真っ暗で静かなショッピングモールの中にはレドの足音だけが響いていた。

 

「缶詰め……」

『あ、食べれる物!?』

「いや、流石の缶詰めでもなぁ……」

 

 商品棚に綺麗に並んでいた缶詰めを一つ手に取る。鯖の缶詰めのようだ。

 

『ねぇ、とりあえずそれ開けて食べてみてよ』

「……異臭がしたら即捨てるからね」

 

 レドは恐る恐る缶詰めを開けた。

 

「異臭は……しないな」

『じゃあ食べてみて』

「それはちょっと……」

『あはは、冗談だよ。何か適当なの一個持って帰ってきてよ。それ分析して食べれる状態か見るからさ』

「じゃあこれ開け損じゃん……」

 

 レドは開けた缶詰めを床に置くと、別の缶詰めを手に取りポーチにしまった。そして一階の探索を続ける。

 

「う……」

『どうしたの?』

「なんか……腐った匂いがする」

『あぁ……多分そっちには果物とか刺身とか、そういうのが置いてあったのかもね。放置されてたから腐ったんだと思う』

「……ごめん、こっちは行けないわ。匂いがキツすぎる」

『あぁ、うん』

 

 その後もレドはショッピングモールの中をくまなく探索した。

 

 

 屋上にある展望エリアに着く頃には、もう日が落ち始めていた。西側の空が綺麗な橙に染まっている。

 

「特にめぼしいものは無かったな」

『缶詰めくらい?』

「あぁ、そっか。持ち帰れるのはそれくらいだな」

『わかった。どうする? 一旦戻る?』

「いや、ここで休んでから戻るよ」

『休めるの?』

「家具を売ってた場所があったからさ。そこのベッドを使わせてもらうよ」

『あーズルい! こっちは布団なんだよ!』

「こういうのも旅の醍醐味、だよ」

 

 レドはジェネと会話をしながら階段を下りた。家具を売っているエリアは三階にあった。

 

『ねぇレド。もしレドが良ければさ、地下駐車場も調べてきてくれないかな?』

「地下駐車場? なんで?」

 

 レドはベッドに横になりながら通話を続けた。

 

『まだ調べてないでしょ? それに、気になる事もあるから……』

「……わかった。じゃあ、地下駐車場を調べてからそっちに戻るよ」

『ありがとう』

「じゃ、僕はもう寝るよ。おやすみ」

『おやすみ、レド』

 

 通話を切ると、レドは目を瞑った。ベッドは柔らかく、とても寝心地が良かった。そのせいか、いつもよりも早く眠りに落ちてしまった。

 

 

 翌日

 

「ここか」

 

 階段を下り、鉄製の扉を開けた先には、コンクリート張りの広大な空間があった。このショッピングモールの地下駐車場だ。

 

「……調べる必要あるか?」

 

 暗視フィルター越しに見ても、何か特別な物があるようには見えない。ただ鉄柱と、駐車位置を示す白線と、点かなくなった電灯が見えるだけだ。

 

『大いにあるよ』

「……わかったよ。調べるよ」

 

 真っ暗で無機質な駐車場を歩く。視界は良好なはずなのに、何か出てくるんじゃないかと思うくらい不気味だ。

 

「ん……?」

 

 ふと、隅の方に扉のようなものを見つけた。近付いて見てみると、「関係者以外立ち入り禁止」の札が貼ってある。ドアノブの近くにはカードキーを通す機械が付いている。

 

「これ……カードキーが無いと開かないのかな」

『前まではそうだったろうね』

「前までは?」

 

 ドアノブを回して押したり引いたりしてみたが、扉はビクともしない。

 

「いや、今も開かないが……」

『ロックしたまま機能を停止したんだろうね。今はカードキーがあったとしても開かないと思う』

「そういう事か……じゃあどうする」

『焼き切ればいいじゃん』

「……なるほど」

 

 レドは機械刀を抜刀すると、柄に付いているボタンを押した。刃が熱されて橙に染まった。

 

「いける?」

『鉄扉くらいなら余裕』

「よし……」

 

 レドは扉に機械刀を刺した。思ったよりもすんなりと、刃は扉を貫通した。そのまま下に向かって焼き切っていく。次は右に、今度は上に、最後に左に。扉に大きな四角い穴を開けた。切った部分を蹴り倒すと、向こう側に更に地下に続く階段があるのが見えた。

 

「この先に何かあるの?」

『多分ね。行ってみて』

「わかった」

『あと……機械刀の電源、ちゃんと切ってね。使いたい時に加熱出来なくなるよ』

「あ、ごめん」

 

 機械刀の電源を切り、鞘に戻す。そして焼き切った扉をくぐって階段を下りた。




荒廃した世界で通信出来たりするのも、ジェネが整備した機械のおかげだったりします。二人の拠点については、今後描写する時に改めて説明します。
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