「……」
『レド、行かないの?』
「いや、行くと思う?」
レドの目の前に広がるのは大きな渓谷。底が見えないくらい深く、大きい。向こう側と繋ぐのは、今にも壊れそうな朽ちた吊り橋しかない。
『仕方ないよ。最短ルートなんだから』
「あの世への最短ルートの間違いじゃない? とにかく、絶対行かないからな」
『やっぱり?』
「当たり前だ」
そう言って、崖に沿って歩き始めた。
「滝の音が聞こえるし、近くに河か何かがあると思うんだ。そっちならもっと丈夫な橋があるかもしれない」
『根拠は?』
「勘」
『ん……それもまた良し』
レドの勘の通り、しばらく歩いていると大きな河に当たった。
『河には当たったけど、流れとか幅的に渡るのは無理そうだね』
「橋も見えないし……どうしようか」
『うーん…………あ、もう少し歩いてみてよ』
「なんで」
『なんか洞窟があるみたい。そこを通れば向こう岸に行けるみたいだよ』
「洞窟……わかった。探してみるよ」
ジェネのアドバイス通り、レドは川沿いを歩きながら洞窟を探した。入り口が山にあるのか地面にあるのかもわからなかったから、地面まで組まなく探しながら歩いた。
「……無いぞ」
『えぇー?』
川上に向かいながら歩き、滝の近くまでやってきたが、洞窟の入り口は見つからなかった。
「その情報、本当に合ってる?」
『合ってるよ。 昔隠し通路として洞窟を使ってたってあるもん』
「隠し通路って……。いや、待って」
レドは滝の横から裏を覗いた。どうやら滝の裏にも歩ける場所があるようだ。
(あるとしたらここだよな)
滝の裏に入ると、機械刀を取り出し、壁を叩いて歩いた。
『……何してるの?』
「もしこの壁のどこかに隠し通路があるなら、空洞になってるとこがあるはず。そこなら……少しは手応えかわるでしょ?」
『なるほど……』
そしてついに、空洞と思われる場所を見つけた。
「ここかな。音が違う」
『じゃあ早速……』
「あぁ!」
レドは機械刀を壁に向けると、トリガーを引いて弾を発射した。壁には大きな穴が開き、その先には暗い通路が見える。
『……』
「一発か。流石の威力だね」
『……普通に開けると思ってた』
「この方が確実。だろ?」
『まぁ……そう、だけども……』
レドは穴を潜り、隠し通路の中に入った。暗視フィルター越しに見ると、松明を立てておけそうな燭台や、燃料として使っていたであろう古い薪が見える。
「ここを抜ければいいんだね?」
『うん』
「よし、わかった」
真っ暗な洞窟の中を歩く。洞窟と言っても、分かれ道も無い一本道。トンネルに近いような感じだ。
「ねぇ、これから向かうナラル村ってどんな場所なの?」
『自然豊かな田舎』
「うん。他には?」
『林業や農業が盛んだった』
「うん。今のとこ聞いた情報しか出てないよ。他に無いの?」
『……他の都市との繋がりは、交易のみだったこと。故に、情報が少ないんだ』
「……? どういう事? 主要都市なら少なからず人の往来はあったんじゃないの?」
『そう、そこなんだよ。主要都市に分類されているのに、他所からの観光客を受け入れていない。入り口の洞窟を隠すくらいだから、排他的な地域だったみたいだね。なのに主要都市に分類されている……謎だね』
「……何かありそうだな」
そんな話をしながら歩いていると、出口から差す光が見えた。
「そろそろ出口だ」
暗視フィルターを切り、洞窟から出る。
「……なんだこれ」
目の前に広がっているのは、草木に囲まれた長閑な農村。木製の建物がまだ残っており、田んぼや畑の名残も見られる。
しかし、それらよりも目を引いたのは、この都市の空だ。
『映像の空に……人工太陽……!?』
「おいおい、人工太陽って非常時以外使えないはずじゃないの?」
『そう……。もし万が一日光が届かなくなった時……再び陽の光が差す時までの繋ぎとしてしか使用出来ないはず……』
「……ちょっと待って」
レドは洞窟出口の横にあったフェンスを触った。しかし、触った感じは石だった。
「フェイクか……。この先にも空間が続いているように見せるための映像……」
『どういう事……あ、レド、持たせたビーコンあるよね! あれ適当な場所に刺して!』
「? わかった」
レドはポーチの中からビーコンを取り出し、地面に刺した。
『あ、刺したらスイッチ入れて』
「あぁ、はいはい」
スイッチを入れると、てっぺんのランプが点滅し始めた。
『……オッケー、座標は送られてきたよ』
「……何するの? 一旦帰ればいい?」
『それはレド次第。僕はこの座標からナラル村の大まかな位置を割り出すよ』
「なるほど、そういう使い方も出来るか……」
『特定まで少し時間かかるから、少し探索してていいよ』
「いや、ここで待つよ。歩き疲れたし」
レドはその場に座り込んだ。暖かい人工太陽の光と、柔らかい風が心地良い。
(……これもしかしてどこかに風吹かせる装置があったりするのかな?)
『レド、場所の特定……出来たよ』
「お、どこだった?」
『昔の人工衛星からの写真を元に割り出したんだけど……河のとこだよ、座標』
「……って事はここって」
『間違いないね。ここ……広大な洞窟の中にある都市なんだ……!』
次回から西の村の探索です