荒廃世界の旅人   作:よっしー希少種

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地下都市 ナラル村探索記録

「なるほど、洞窟の中なら場所もわからないわな」

『でも……なんでもない洞窟の中に村を作ったんだろう』

「さぁ? 場所が無かったからか……何かを隠すためか、じゃない?」

『僕もそう思う』

「……よし、コア探しがてら、この村の謎を探ろうか!」

 

 そして、ナラル村の探索が始まった。豊かな自然に囲まれたこの集落は、まるで洞窟の中にあるとは思えないような環境だ。

 

「ねぇ、人の気配が無いんだけど」

『当たり前でしょ。とっくに滅んでるんだから』

「……いや、居る可能性はあるでしょ」

『……?』

「僕達がコールドスリープに入る前の事覚えてる? 異常な暑さ、次の日には極寒。豪雨も大雪も降った。間違いなく、異常気象で人類は滅んだ」

『……って事は、洞窟内にあるこの都市なら、他より被害は格段に少ない……か』

「そう。それに……」

 

 レドは近くにあったりんごの木からりんごを一つもいだ。

 

「ここなら食糧は自給自足できる。水分も、最悪果物から補える。餓死の可能性はかなり低い」

『うん……。確かに、この世界を生き抜く設備は整ってるよね。コアもあるから、エネルギーは供給されてるはず』

「ならどうして人が居ないのか……」

 

 レドはりんごをポーチにしまうと、住宅街に入っていった。木製の家が立ち並んでおり、ザ・田舎という雰囲気だ。そのうちの一軒に入り、中を調べてみる。

 

「食器に埃がかぶってる……長いこと使われてないね」

『やっぱり人が住んでる痕跡は無いね』

「うん……」

 

 縁側に座り、目の前に広がる稲穂を眺めた。どこからか吹いてくる風に撫でられ、さわさわと揺れている。

 

「……」

『……どうしたの?』

「ジェネは……不思議に思わない?」

『何が?』

「……綺麗すぎる」

『……景色が?』

「違う。草木の状態が……」

 

 縁側から降り、稲穂の方へ歩く。

 

「セントルではさ……植物が建物を覆うくらい育っていたのに、ここはそんな事は無い……」

『……!』

「それに……この稲穂だって。綺麗に生えてる」

『……やっぱり何かいる?』

「居ると思う。……人間以外のナニカ、が」

 

 風に吹かれ、稲穂がサァッと鳴く。人間以外の何か。それが何なのかレドにもわからない。もし高度な知能を備えた存在なら、相手にした時に勝てる自信もない。レドは緊張から、無意識に拳を握っていた。

 ふと、遠くから聞こえる足音が耳に入った。人間が滅んだこの世界に似つかわしくない足音。レドは咄嗟に、稲穂の中に身を隠した。

 

「……」

 

 稲穂の隙間から辺りを伺う。見えたのは、人間と同じシルエットの何か。右手には農作業で使うような小さな鎌、背中には籠が見える。そして何より、身体の所々に付いている金属が、その存在の異質さを強調する。だが、レドもジェネも、その存在を知っていた。

 

改造人間(サイボーグ)……!?』

「らしいね……」

 

 レドは小声で答えた。

 

『でも、改造人間は法律で禁止されていたはず……』

「そう……。難病の治療や、失った身体の機能を補う為……つまり医療の現場の特別な場面でしか認められてない……」

『じゃあ、何で……』

 

 改造人間は鎌を使って辺りの雑草を刈り始めた。

 

「……なるほど。植物の管理はあいつがしてるんだな。でも、農業用の改造人間なんて違法だよ……」

『もしかしたら、延命処置を受けた人間の可能性もあるよ。試しに声をかけてみたら?』

「…………それもそうか」

 

 レドは稲穂の中から出ると、改造人間に近付いた。足音で気付いたのか、改造人間はレドの方を振り向く。

 

「……こんにちは」

 

 なるべく友好的に接しようと試みた。だが、相手がいつ襲ってきてもいいように、マントに隠した左手は機械刀に添えている。

 

「……」

「……」

「……人間カ?」

「見ての通り、だよ」

「……ナラバ、死ネ」

 

 改造人間は左手の鎌を振り上げてレドに襲いかかってきた。レドは左手で機械刀のロックを外すと、マントを払い、右手で機械刀を握り抜刀、鎌を防いだ。

 

「何でだ? どうしてAIのはずの改造人間が自我を……」

『人間ハ、皆殺シダ』

「……やってみなよ」

 

 レドは鎌を押し返すと、改造人間の腹を蹴った。怯んだ改造人間はレドを睨むと、再び鎌を振り上げて迫ってくる。

 

「……はっ!!」

 

 接近に合わせて刃を熱し、胴体を横に斬る。機械とは全く違う手応え、舞い散る腐った血液。改造人間は上半身と下半身を切り離され、動かなくなった。

 

「……やな手応えだな…………」

 

 機械刀の血を払うと、鞘に戻した。断面を晒しながら真っ二つになった改造人間を軽く脚で小突いても、全く反応は無い。

 

『よく見れるね……』

「誰かさんに散々スプラッター映画見せられたからね……!」

『……根に持ってる……』

「それは今良いんだ。見た? 明確な敵意を持って襲ってきたよ?」

『うん……多分、AIがシンギュラリティに達してるんだと思う……』

「それは……なんか、人間の技術よりはるか先を行った、って事だな?」

『そう。だから自我もあるんだよ……。多分、ここの人間はシンギュラリティに達した改造人間達に……』

「それしかないだろ。はぁ……意外と闇が深そうだな」

『……探索、続けるの?』

「あぁ。コア、見つけてないからね」

『無理はしないでよ? 精神的にも……』

「わかってる。ありがとう」

 

 レドはその場を後にした。ナラル村の探索はまだ続く……。




イカとかタコが縄張り争いするゲームが面白すぎる……でも月一は絶対更新しますので。
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