荒廃世界の旅人   作:よっしー希少種

8 / 19
ナラル村 深部探索記録

 あれからひたすら歩き回り、くまなく探索した。結局あれから改造人間(サイボーグ)は現れず、何事も無く探索は続いた。

 

「さて……後はここだけだ」

 

 村の最深部らしき場所にある石造りの建物。パッと見は遺跡にしか見えない。

 

『あるとしたらここだろうね。慎重にね』

「わかってる……」

 

 レドは建物の中に足を踏み入れた。中には何も物が無い。ただ、奥の方に人が一人入れそうな穴がある。

 

「ここか……」

『かもね』

 

 穴を覗くと、梯子がかかっているのが分かる。その梯子を伝って、下におりた。

 

「う……何この匂い」

 

 たどり着いた部屋は異臭で満ちていた。暗視フィルターを付けてみると、壁や地面が何かで汚れているのがわかる。

 

「……血?」

『だね。かなり古いけど……』

 

 部屋の中にはガラス戸の棚や、大きなライト、そして血で染まった手術台がある。

 

「なんだ? ここは手術室だったのか?」

『……いや、違うと思う。手術室だけが地下なんて、利便性の面で考えてもありえない』

「じゃあなんで……ん?」

 

 部屋の隅にあった鉄の箱が目に入った。中を開けて見てみると、様々な機械の部品が入っている。

 

「……もしかして、ここで改造人間を……?」

『ありえるね』

「……こんなとこでやるなんて、やっぱり違法なやり方だったんだね」

 

 レドは今一度部屋の中を見渡した。大きな扉がある以外は、他に何も無さそうだ。レドは迷いなく扉へ向かった。

 

『行動に迷いがないね』

「早くコア見つけて帰りたいからね……なんか気分悪いし」

『あぁ……そりゃそんな所に居ればね』

 

 扉の向こう側には、ガラスの壁に包まれた綺麗な部屋があった。部屋の奥の方には淡い白色の光が見えた。

 

「あれは……」

『ここのコアだね』

「じゃあササッと回収しよっか……」

 

 部屋の奥へ歩く。途中、壁がガラス張りな事が気になってしまった。

 

(地下だし、水も無いのにガラス張りの意味ってあるのかな……?)

 

 チラッと壁の方を見ると、何かと視線が合うのを感じた。

 

「ひ!?」

 

 壁の向こうには、無数の改造人間が立っていた。微動だにせず、ただレドの方を見ている。

 

『レド、大丈夫? 心拍数がかなり上がってるけど……』

「はっ……早く帰る!」

 

 レドは走ってコアに近付く。そこにあったのは、四角い物体……間違いなく、ナラル村のコアだ。

 

『よし、間違いないよ。回収して』

「言われなくてもそうする!」

 

 レドはコアの周りのガラスケースを機械刀で割ると、コアを手に取り、ポケットにしまった。

 

「ジェネ、早く飛ばして! もうここに居たくないよ!」

『わかってる。でも、地下のさらに地下だから座標を合わせないと……少しその場で待ってて』

 

 レドは指示通り、その場で待機した。不気味な視線は、絶えずレドに向いている。

 

(まだ……生きてるのかな? いや、そんな訳……)

 

 突然、ドン、という音が部屋に響いた。レドは驚いて音のした方を見ると、壁の向こうの改造人間が動き、ガラスを叩いていた。それも、一体じゃない。全てが。

 

「……ジェネ!!」

『待って。まだかかる……』

「待てるかぁ!!」

 

 ガラスを叩く音が部屋に鳴り響く。レドは恐怖で足がすくんでしまっていた。

 

(生きてる……あんな異形のような状態で……?)

『何を焦って…………!? レド、走って!!』

「……!」

 

 ジェネの声で我に返り、レドは走って部屋を後にする、後ろからはガラスが割れる音が聞こえる。レドは急いで梯子を登る。

 

『とりあえずその建物は抜けるんだ! そしたら、出口に向かって走って!!』

 

 返事をする余裕は無かったが、ジェネの指示には従うつもりだ。自分の足音以外の音が重なる。下から改造人間が梯子を使って登ってきているようだ。

 

「う……はっ、はぁ……」

 

 何とか梯子を登り切り、建物から出る。外は真っ暗になっていて、フィルター無しでは何も見えない。

 

『走って!!』

 

 レドは一心不乱に走った。真っ暗な洞窟の中、出口に向かって走る。後ろから聞こえる無数の足音に飲まれないように、全力以上で走る。

 

『座標は洞窟の出口に用意してある。出たらすぐに転送するよ!』

 

 汗で視界が歪み、胸も痛くなってきた。ようやく、入ってきたトンネルが見えてくる。レドの心に僅かな安心感が芽生えた。

 

(あと少し……)

 

 しかし、その安心感が良くなかったのか、トンネル内で足がもつれて転んでしまった。

 

「ぉあ……!?」

 

 運動を止めたせいで、一気に疲労を感じる。脚は言う事を聞かないし、呼吸も上手くいかない。

 

『レド!』

 

 背後からはまだ足音が聞こえる。レドはこんがらがる頭の中で、抵抗する判断をした。

 

『ちょ、レド!? 無茶だよ!』

 

 機械刀を構え、剣先を来た道に向ける。そして

 

「これで……!」

 

 数発、発砲する。一発は当たったが、以降は反動の上手く抑えきれず、壁や天井に当たってしまった。

 

(……終わった…………)

 

 諦めたそのとき、発砲によって脆くなった天井が崩れ、レドの前を塞いだ。改造人間達は押し潰されたようで、岩の隙間からじわりと赤い液体が漏れ出てきた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 レドはその場に倒れ込んだ。身体を全く動かせないくらいの強い疲労感に襲われていた。

 

『お疲れ様……今転送するよ』

 

 レドの身体を浮遊感が襲う。疲れているからか、前とは比べものにならないくらい、不快な感覚に思えた。




13歳の男の子がゾンビ紛いのサイボーグにビビるなって言う方が無理だと思います
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。