あれからひたすら歩き回り、くまなく探索した。結局あれから
「さて……後はここだけだ」
村の最深部らしき場所にある石造りの建物。パッと見は遺跡にしか見えない。
『あるとしたらここだろうね。慎重にね』
「わかってる……」
レドは建物の中に足を踏み入れた。中には何も物が無い。ただ、奥の方に人が一人入れそうな穴がある。
「ここか……」
『かもね』
穴を覗くと、梯子がかかっているのが分かる。その梯子を伝って、下におりた。
「う……何この匂い」
たどり着いた部屋は異臭で満ちていた。暗視フィルターを付けてみると、壁や地面が何かで汚れているのがわかる。
「……血?」
『だね。かなり古いけど……』
部屋の中にはガラス戸の棚や、大きなライト、そして血で染まった手術台がある。
「なんだ? ここは手術室だったのか?」
『……いや、違うと思う。手術室だけが地下なんて、利便性の面で考えてもありえない』
「じゃあなんで……ん?」
部屋の隅にあった鉄の箱が目に入った。中を開けて見てみると、様々な機械の部品が入っている。
「……もしかして、ここで改造人間を……?」
『ありえるね』
「……こんなとこでやるなんて、やっぱり違法なやり方だったんだね」
レドは今一度部屋の中を見渡した。大きな扉がある以外は、他に何も無さそうだ。レドは迷いなく扉へ向かった。
『行動に迷いがないね』
「早くコア見つけて帰りたいからね……なんか気分悪いし」
『あぁ……そりゃそんな所に居ればね』
扉の向こう側には、ガラスの壁に包まれた綺麗な部屋があった。部屋の奥の方には淡い白色の光が見えた。
「あれは……」
『ここのコアだね』
「じゃあササッと回収しよっか……」
部屋の奥へ歩く。途中、壁がガラス張りな事が気になってしまった。
(地下だし、水も無いのにガラス張りの意味ってあるのかな……?)
チラッと壁の方を見ると、何かと視線が合うのを感じた。
「ひ!?」
壁の向こうには、無数の改造人間が立っていた。微動だにせず、ただレドの方を見ている。
『レド、大丈夫? 心拍数がかなり上がってるけど……』
「はっ……早く帰る!」
レドは走ってコアに近付く。そこにあったのは、四角い物体……間違いなく、ナラル村のコアだ。
『よし、間違いないよ。回収して』
「言われなくてもそうする!」
レドはコアの周りのガラスケースを機械刀で割ると、コアを手に取り、ポケットにしまった。
「ジェネ、早く飛ばして! もうここに居たくないよ!」
『わかってる。でも、地下のさらに地下だから座標を合わせないと……少しその場で待ってて』
レドは指示通り、その場で待機した。不気味な視線は、絶えずレドに向いている。
(まだ……生きてるのかな? いや、そんな訳……)
突然、ドン、という音が部屋に響いた。レドは驚いて音のした方を見ると、壁の向こうの改造人間が動き、ガラスを叩いていた。それも、一体じゃない。全てが。
「……ジェネ!!」
『待って。まだかかる……』
「待てるかぁ!!」
ガラスを叩く音が部屋に鳴り響く。レドは恐怖で足がすくんでしまっていた。
(生きてる……あんな異形のような状態で……?)
『何を焦って…………!? レド、走って!!』
「……!」
ジェネの声で我に返り、レドは走って部屋を後にする、後ろからはガラスが割れる音が聞こえる。レドは急いで梯子を登る。
『とりあえずその建物は抜けるんだ! そしたら、出口に向かって走って!!』
返事をする余裕は無かったが、ジェネの指示には従うつもりだ。自分の足音以外の音が重なる。下から改造人間が梯子を使って登ってきているようだ。
「う……はっ、はぁ……」
何とか梯子を登り切り、建物から出る。外は真っ暗になっていて、フィルター無しでは何も見えない。
『走って!!』
レドは一心不乱に走った。真っ暗な洞窟の中、出口に向かって走る。後ろから聞こえる無数の足音に飲まれないように、全力以上で走る。
『座標は洞窟の出口に用意してある。出たらすぐに転送するよ!』
汗で視界が歪み、胸も痛くなってきた。ようやく、入ってきたトンネルが見えてくる。レドの心に僅かな安心感が芽生えた。
(あと少し……)
しかし、その安心感が良くなかったのか、トンネル内で足がもつれて転んでしまった。
「ぉあ……!?」
運動を止めたせいで、一気に疲労を感じる。脚は言う事を聞かないし、呼吸も上手くいかない。
『レド!』
背後からはまだ足音が聞こえる。レドはこんがらがる頭の中で、抵抗する判断をした。
『ちょ、レド!? 無茶だよ!』
機械刀を構え、剣先を来た道に向ける。そして
「これで……!」
数発、発砲する。一発は当たったが、以降は反動の上手く抑えきれず、壁や天井に当たってしまった。
(……終わった…………)
諦めたそのとき、発砲によって脆くなった天井が崩れ、レドの前を塞いだ。改造人間達は押し潰されたようで、岩の隙間からじわりと赤い液体が漏れ出てきた。
「はぁ……はぁ……」
レドはその場に倒れ込んだ。身体を全く動かせないくらいの強い疲労感に襲われていた。
『お疲れ様……今転送するよ』
レドの身体を浮遊感が襲う。疲れているからか、前とは比べものにならないくらい、不快な感覚に思えた。
13歳の男の子がゾンビ紛いのサイボーグにビビるなって言う方が無理だと思います