荒廃世界の旅人   作:よっしー希少種

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落ち着く場所

「……」

 

 次に認識した空間は、拠点の転送装置の中だった。あの場所からは離れたが、まだ嫌な汗が止まらない。遠くから聞こえる足音も、やけに大きく聞こえる。

 

「レド!」

 

 扉を開けてジェネが入ってくる。ジェネはレドの近くに膝をつくと、目を見て話しかけた。

 

「レド、大丈夫……?」

「大……丈夫……」

「うん、大丈夫じゃないね……。とりあえず、部屋に戻って休も? ね?」

「ん……」

 

 ジェネはレドの手を取ると、ゆっくりと部屋まで向かった。

 

 

「……大丈夫かな」

 

 レドを寝かせ、ジェネは静かに部屋を出た。眠りに落ちるまでレドが不安な表情を崩すことは無かった。

 

(仕方ないけどね。あんなゾンビ紛いの化け物に追われたら誰だってトラウマになるよ……。とりあえず、今日はもう休ませよう)

 

 ジェネはレドから受け取ったコアと、採取してきた作物を持って自室に向かった。

 

「……これ、温室で栽培できるかな。まず温室が動けばの話だけど……」

 

 シェルターを管理する画面を見ながら、ブツブツと呟く。

 

「供給量に余裕はある……。が、成長促進環境にするにはかなりエネルギーを食うな……新しく空き部屋使わなければ問題無いか?」

「……」

 

 突然、背後から扉が開く音がした。

 

「……レド?」

 

 振り向くと、そこには寝間着姿のレドが立っていた。

 

「ジェネ……一人にしないで……」

 

 普段の様子からは想像出来ないくらい小さな声。どうやら相当なトラウマになっているようだ。

 

「……わかった。ごめんね、一人にして」

(仕方ない。コアの解析とかは明日に回そう)

 

 ジェネはレドの手を引いて部屋に向かうと、一緒にベッドに入った。

 

「ジェネ……」

「うんうん、怖かったね。大丈夫だよ……僕がそばに居るから」

 

 そしてレドを優しく抱きしめ、眠りにつくまで背中を摩ったり頭を撫でたりしながら落ち着かせ、レドが寝たのを確認してから、そのまま一緒のベッドで眠りについた。

 

 

「レド、いつまでそうしてるの」

「……だって」

 

 レドはテーブルに突っ伏していた。

 

「一緒に寝よって言ったのはレドじゃん……」

(厳密には一人にしないで、だけど変わらないよね)

「いや……でも……」

「気にすることじゃないでしょ。昔はお泊まりしたら一緒に寝てたし」

「いつの話だよ……」

 

 ジェネは羞恥に悶えるレドに冷たい水を差し出し、向かいに座った。

 

「とにかく、そこまでなるくらい精神が疲弊してるなら、少し休んだ方がいいと思うな。コアは四個中二個集まってる。半分集まってるんだし、今日は少し休も?」

「ん……わかった。そうする」

 

 レドは顔を上げ、コップの中の水を飲んだ。

 

「じゃあ決まりだね。好きなことして気分転換しなよ?」

「うん」

 

 ジェネが席を離れて部屋を出ていった。と思ったら顔だけレドの方に出した。

 

「もう一人で大丈夫?」

「……! 大丈夫だから!!」

「良かった良かった。僕は自分の部屋にいるからね。何かあったらそこに来てね」

「わかった」

 

 ジェネは手を小さく振ると、部屋を離れていった。残ったレドは水を飲みながら窓の外を眺めた。今日は少し天気が悪い。灰色の雲が空を覆っているが、雨が降りそうな色ではない。

 

「……散歩するか」

 

 レドは水を飲み干すと、外に出た。出て向かうのはある廃墟。

 

「……」

 

 記憶にある間取りの廃墟。そこは元々レドの家だった場所だ。レドは落ち着きたい時はここに来るようにしている。

 

「……やっぱり落ち着くな」

 

 レドは廃墟の窓から外を見る。すっかり景色は変わったが、面影だけは残ってる。その景色を黙って眺めた。

 

「…………」

 

 しばらく景色を眺めた後、拠点に戻った。

 

 

 翌日……

 

「もう大丈夫なの?」

「大丈夫」

「本当に?」

「本当」

 

 レドは胸を張って言った。ジェネはまだ少し不安そうな顔をしている。

 

「……レドが言うなら信じるよ。で……次はどこ行く? 北か東か南か……」

「どこが安全なんだっけ?」

「環境的には南。自然の街とも呼ばれた『リファーム』って言う街がある。南の主要都市だね」

「うん、じゃあそこにしよっかな」

「わかった。じゃあ……」

 

 ジェネは横に置いてあったアタッシュケースを開けた。中にはラジコンのようなものとコントローラーがある。

 

「これは?」

「小型偵察機『ミニサーチャー』。狭いところを探索するのに使えるラジコンだよ。カメラを搭載していて、コントローラーの画面から様子を見ることも出来る。さらに、水陸両用になってるから、水中でも使える。きっと探索の役に立つと思うよ」

「……これ、持ち歩けと?」

「必要になったら取りに来ればいいじゃん」

「……ジェネ」

「仕方ないでしょ! これ以上の小型化は遠隔操作の都合上不可能だし……後、こまめに帰ってくる機会作った方がお互い寂しくないし」

「わかったよ……。マメに帰る。てか夜になったら帰ることにするから」

「ありがとう〜。優しいねレドは」

 

 とりあえずラジコンはそのまま拠点に置き、レドは荷物をまとめた。

 

「あっちだよね?」

「あっちだね」

「よし……じゃ、行ってくるね」

「はーい。暗くなったら絶対に帰ってきてねー!」

「わかってるー!」

 

 レドは再び拠点を後にした。目指すは南の主要都市、リファーム。




次回、また新しい都市へ
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