死にたくないから生きてるだけで   作:猿も電柱に登る

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 タイトルの明治文学縛りは難しいので止めときますが引用は多いです……。
 あと今回も短いです……、書き方を忘れた感じがするので、ウマ娘編の投稿が増えるかもしれません……。


初勝利は無音の拍手

 

 「止まっていいぞ」

 

 くいっ くいっ

 

 『ん、終わった?』

 

 一切の歓声もなく、かといって怒号を浴びせられることもなく、始まった時の静寂のまま終わったレース。

 人気のない馬の勝利に馬券を投げると噂の競馬場おじさんがいなかったようで、どうやら順当に人気な馬が勝利したのかと肩を落とす。

 周囲に誰もいないように感じられたのは、周回遅れの先頭であったのかと、落胆と失意に沈む私であったが、友から聞こえるはずの悔しい叫びが漏れていないことからもしかしてと思いじっと見つめる。

 

 「ん、どした?」

 

 『誰が勝ったの?』

 

 「ああ!、勝ったのかってことか、ああそうだぜお前の圧勝だよ、六馬身差だぜ、新馬戦だとしても2000mに勝ったのは控えめに行って奇跡だぞ!」

 

 『ん………、勝ったのか』

 

 「おうよ!」

 

 ならばこの静寂はなんなのだろうか

 

 私が一番人気だった?それだとしたら嬉しいがそれでも歓声の一つは聞こえるものではないか……。

 この時代がいつのことかは知らぬが、勝利を称えることもなく、敗者へ感情をぶつけることもなく、ただ無味乾燥の極みのような静寂に包まれるこの空間は、果たして競馬場と呼べるのだろうか……。

 

 それでも喜びに叫ぶ友がいることが私の唯一の救いだが、それでもこの虚しさはどうすればよいのか。

 

 怒りとも悲しみとも呼べぬ、えたいの知れない不吉の塊が私の心をおさえつけている。

 

 これを抹消しえるのは何なのかという疑問を消し去ることもできずに

 

 『神よ、なぜこの身にこのような半端な心を残したのか!』

 

 ただ誰にも伝わらぬ咆哮に思いを乗せるだけ

 

 

 なぜ私はこのような不吉を背負っているのか?

 

 まさかとは思うが……

 

 

 歓声を浴びたい?

 

 努力を認められたい?

 

 

 そんな理由か……

 

 

 ああ、それだとしっくりくる

 

 

 しっくりきてしまう……

 

 

 なんだ私は……。

 

 まるで子どものようではないか……。

 畜生に転じた身体が人間の心を蝕もうとしているのかと考えるが、そのような思考に至ったこと事態が既に答えを示していることを直感では理解してしまう。

 

 ああ、例え望まぬ形であったとしても、大いなる自然の理に反し、前世の記憶とやらを持ち生まれてしまったことの報いがこのような形で発現するとは、嘆くことを忘れようとしたこの思考すらも忘れてしまう未来が来るのか……。

 

 ならば死を恐れたこの心も馬のいや、生物の本能だったというのか……。

 

 なんということだ!

 

 望んだ生は紛い物で、既に人の心を失っているのではないか……。

 

 いや……、これこそ彼の荘子の語る胡蝶の夢というものではないのだろうか。

 私が人間として生きていたという記憶は、実は胎児の時にこの馬が見ていた夢であり、人間から馬に転じたという奇妙な現象は、ただ夢から目覚めたというだけであり、人の心というものは夢の中の意識だったのではないか。

 

 だとしたら納得だ。

 夢というものが記憶から薄れていきことは決して不思議なことではないし、少し残った人の心は産まれ直しによって、改めて生を始めようとしているということで、思考が子どもに寄っていくことは自然なことだ。

 

 いや、輪廻の輪を廻ったとなれば超自然と呼ばれるものだが、夢というのなら自然なこと……、のはずだ。

 

 そうとわかれば……、とはならないが、すぐに取り乱す必要はないとわかると途端に疲れが出始めて、運ばれるトラックの中、こくりこくりと船を漕ぐことになるのだった。

 

 いつもの部屋に入ると、少し潮の匂いがする初日に世話をしてくれた男がいた。

 潮……、いや涙か、を流す男は、私が勝利したというのに、悲しそうな表情を見せる。

 なぜそんな顔をするのだと尋ねても、言葉が届くことはない。

 

 そういえば……。

 

 彼から香水の香りが消えている。

 

 『あっ……』

 

 私に愚痴を垂れている節がある彼が私の部屋で泣きながらぼやいているとなればこっぴどく振られたに違いない。

 ほれ、私がいるぞと身体を擦り寄せてみるが、余計に涙が流れるようで、こちらも少しイラっとして小突くとようやく泣き止んで強引に口角を上げて笑っている姿は少し痛々しいけれど何とか立ち直る覚悟は決めたようである。

 

 「うう……、そうだよな一番悲しいのも、一番辛いのもお前だよな……

 

 ふむ、おそらく『ありがとう』言っているのであろう。

 そんなに誉めなくても良いとのんびりと頭を擦り付けるとやっとわしゃわしゃと頭を撫でられた。

 

 「それじゃあ、あんまり長くはいられないが、いつでも帰ってきてくれよな……

 

 そのまま何かを呟いて帰っていった

 

 

 翌日

 

 『走りたい……』

 

 「ん、身体が鈍っちまったか?、走りたいなら付き合うぜ」

 

 『お願い』

 

 完全には消えない不安を解消するために走ろうと思いバカみたいに足を動かすが、そのこともガキ臭いように思われて、その足は止まる。

 ほんの少しの絶望の繰り返しで人は成長すると、どこかの漫画に記してあったが、成長はこの紛い物の人の心を失うことを意味していると思うと生きるということに意味を感じられなくなる……。

 

 

 いや

 

 

 それは私が、偽物であった、平凡にすらなれなかった夢のない人間であった時と変わらない

 

 

 なら

 

 

 私はこれだけを

 

 

 生きる意味を

 

 

 死ぬことが怖いんじゃない

 

 

 ただ

 

 

 死にたくないから生きていると

 

 

 それを忘れずに生きてみよう

 

 

 そしたら

 

 

 胡蝶の夢に終わった彼の慰めになると

 

 

 夢として終わった人間と人を捨てた馬と

 

 

 入れ替わるのは何気のない日

 

 

 今日はこれでおしまい………。

 

 その終幕が醜いバッドエンドだとしても

 

 それでも、必ず明日は来ますよ

 

 絶望の未来が待っていたと知っていても

 

 だって、彼らは生きることを決めたのですから




 温度差で風邪を引いてくださいな

 まあ、スマホ時空はこのくらい明るい世界線だとは思ってます。




 『我ら葦毛三銃士』


 「それはおかしいやろ……」

 「うむ……」

 「声をかける相手を間違えてないの?」

 現役時代も終わり暇を持て余す相部屋組。

 基本的に別々に外出していることが多い三人が同じ場所にいるのは……。

 「お願いします!」

 「私たちはアイドルと言うより、お笑い芸人の方が適任じゃないかな……」

 一人前のウマドルを目指すアイドル系ウマ娘『スマートファルコン』の頼みを受けたからなのです。

 その内容とは……
 
 「どうか私たちの『逃げ切りシスターズ』と対ウマドルをしてくれないでしょうか!」

 イベントにアイドルとして出て欲しいというものでした。
 最近は暇になった三人でしたが、かなり人気のあったウマ娘たち、ステージでセンターに立つことも多かった三人は、なるほどアイドルも向いているかもと思わせる何かがあります。
 とはいえレースの高揚感のままに踊っていたあの時と違って、素面のまま歌うことを望まれるアイドルでは比較的常識人なタマモクロスとラ·ジャポーネが本気で引き受けてくれるとは思えません。
 さて、彼女は何の勝算があってこの三人に声を掛けたのでしょうか?

 「実は……、優勝した陣営に焼き肉食べ放題の一年分チケットが貰えるんですよ!!!」

 「ん!」

 「む!」

 「え?」

 なんと!

 これは多くのレースを勝利しても、家族が多く食費がバカにならないタマモクロスと圧倒的な大食で基本的に食料があっという間に消えるオグリキャップ、この二人には刺さるものです。

 しかし

 「私にはメリットがないけど……」

 お金持ちと言わずとも、散財するような趣味を持っていないジャポーネが、基本的にメリットとデメリットを思考する彼女がこの提案を受け入れるとも思えません。

 やはり声を掛ける相手を間違えているようです。
 
 さあ、こうなるとどうするべきでしょうか?、『マヤノトップガン』と『ニシノフラワー』の二人で『心はレディ』というユニットでもお願いすべきでしょうか……。

 かなり無理のある要求だったようにも思われるので、素直に諦めようとしたスマートファルコンでしたが……

 「ん、そういえば逃げ切りシスターズにはラジの妹分もおるんやなかったかいな?」

 「ナンキョクちゃんですね!」

 「妹分にええとこ見せるってのはどうやろか?」

 「………」

 おっと身内をエサに釣り出す作戦のようです。
 昔から付き合いのある『ナンキョクコウテイ』の名前を挙げて、心を動かそうとしているようです。

 実際、ジャポーネも絶対に勝てないと嗤われている凱旋門挑戦を控えた彼女のために何かをしてあげたいと考えていたところ。
 渡りに船と呼べるほど都合の良い手段ではありませんが、こうして直接応援する機会が手に入ること事態は悪くありません。

 「いいでしょう………」

 渋々ですが了承したジャポーネ、嬉しそうに目を輝かせる三人をジト目で見つめてはいますが、その心は決意に染まっているのでした。


 「動きが甘い……、やる気あんの?」

 「落ち着いてーなラジ!」


 普段は妥協と諦めを許容して肯定する友人の鬼教師っぷりに驚く二人でしたが、すぐに、現役時代もやる気のある事象においてはこんな感じだったなと昔を懐かしむ余裕が生まれたようです。

 簡単に後輩に負けてやるわけにはいかないという気持ちもあるようで、三人の連携は徐々に完成へと近づいて行きます。

 まあ、逃げシスにはマルゼンスキーという圧倒的な年上がいるわけですが……。

 裁縫上手のタマモクロスに衣装を作って貰ったり、料理の時間すら勿体ないと出前を頼んだりかなりガチになっているようです。
 一番やる気のなかった人間が最も熱中するというのは良くあることですが、全員がここまで燃え盛っているのは依頼をしたスマートファルコンも想像していなかったでしょう。


 さて、本番当日


 そこそこのイベント会場で行われる予定だったそれは、驚くべきことに数万人単位の人間を呼び込む大イベントへと発展していました。

 これはお祭りの事前告知ラジオにてゲストのアイドルグループの名前を発表したからです。

 その名は


 『葦毛三銃士』


 同世代を競いあった伝説のウマ娘たちが集う葦毛のアイドルグループです。

 伝説を生み出した有馬記念からCMで引っ張りだこの怪物『オグリキャップ』

 初めて両方の天皇賞を勝利し宝塚でも勝利した白い稲妻『タマモクロス』

 数多の勝利の末、いくつものレコードを塗り替えてきた絶望『ラジャポーネ』


 根強いファンの多い三人の集まったグループ


 皆それぞれをテレビで見ることは多くても、ステージに上がることの少ない三人のグループ。

 詰めかけたお客さんは普段の数倍。

 とてつもない『熱さ』に驚く彼女たちでしたが、そこはウマドル!、その完成を力にしてさらに熱く炎の如く燃えています。

 準備は万端!

 まずは逃げ切りシスターズ!!

 さあ、ライブの始まりです!!!


 「みんな!、今日も来てくれてありがとー!」

 初めの曲はメンバーの一人、『サイレンススズカ』の後輩たち、黄金世代の曲。


 明るい曲調は場を盛り上げるのにぴったりです。


 周囲を取り巻く熱を力に変えて!

 ウマドルは力を増すのです!!

 その息の合った振り付けで!


 全てを使って!


 会場を盛り上げます!!


 「最後まで聞いてくれて!、ありがとー!!」


 おおおおおお!!!!!!!


 会場のボルテージはMAX


 そしてそこには三人の勇者たち


 センターにいるのはタマモクロス!


 「さあ、いくで!」


 彼女たちが歌う曲

 
 それはクラシック三冠の歌


 一人は出走を許されず

 一人は遅すぎて

 一人は諦めてしまった


 そんな歌


 しかし


 その歌声には間違いなく魂が籠っている


 そして、その歌声は愛らしく魅せるものじゃない


 ファンと共に歌うものでもない


 思わず言葉を失わせる
 

 勝利への執念と覚悟を籠めた引き寄せる歌声


 「すごい……」

 「流石はジャポーネさんたちです……」

 
 会場は先ほどと、うってかわって歌声以外が聞こえないような静寂


 しかし


 「激熱ね」


 全ての観客が噴火寸前の火山の如き感情を秘めている


 それに応えるように


 歌にも熱が籠められて


 さらに熱は加速する


 さあ


 世界を燃やし尽くすほどに


 「           」


 うおおおおおおおおお!!!!!!!


 そして今、噴火する。


 飛び交うアンコールの声


 すると


 「忘れていないか?」


 「今回は私たちだけのステージじゃないよ!」


 「さあ!、うちらとやろか!」


 もちろん最後はあの曲!!!


 「はーい!」


 「みんな揃って!!」


















 楽曲が何も使えなくて悲しくなりました……。

 なのでみんなの脳みそで補填してね……。

 さて、本編の方は雑なタイトル回収なんてしてる暇があればお話を進めた方がいいんですけどね……。
 正直、原作人気でここまでたくさんの方に見てもらっている感じなので、これからどれだけの人に見てもらえるのかと思うと不安でございます。
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