死にたくないから生きてるだけで   作:猿も電柱に登る

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 あんまり改善できてないですが、それでも良ければ……。


















 1987年 阪神競馬場 新馬戦 2000m


 未来を約束された名馬の子供たち


 その華が集うこの場所で、水に溶かした墨汁のような灰色とシンプルな青いが1つ


 その背中に期待はない


 彼らに賭けるものは、大穴狙いの勝負師か


 「気を付けるんだよ、ジャポーネ」


 あるいは純粋な希望か


 背負うものは少ない


 けれど温かい


 ならば


 その温もりに応えるだけだ


 ゲートが閉まり、各選手が出揃った


 さあ

 
 新馬戦の始まりだ


新馬戦

 

 「そんじゃ相棒、二回でダッシュだ」

 

 『ポンポンね、おっけー』

 

 初めて競馬場のコースを走るレース、いわゆる新馬戦というものであろうこの戦いはおそらく決して負けてはいけない。

 

 『ねえ』

 

 「なんだ?」

 

 『ん、本当に()()()()()()いいの?』

 

 「ああ、そのスタミナと加速が相棒の持ち味であって戦える唯一の武器なんだよ」

 

 『良くわかんないけど、わかった』

 

 

 シン

 

 

 虫の羽音一つもしない静寂

 

 

 新馬戦って言うくらいだから、みんなうるさい奴ばっかりかと思ってた。

 大人しい馬は人気らしいから、私の人気は高いものかと思ったけど、この感じだと大したことないのかも……。

 

 

 でも

 

 

 『この方が集中できるね!』

 

 

 最高の環境で合図を待つ。

 

 

 今の私はたぶん最強だ!

 

 

 

 ありえない喧騒……

 

 いやまあ、新馬戦なんてこんなもだけどな。

 

 観客の叫びにゲートを拒む馬の嘶き

 

 「それに引き換え、お前は良いやつだな」

 

 落ち着き払ったその姿のまま、自分の合図を待つ姿には、たいして良い血統でもないのに八頭中5番に推されたのも納得だ。

 

 

 でも……

 

 

 「ちょっと物足りねえよな」

 

 血統主義は絶対の理に違いないし、時代遅れな血統の馬が走るなんて思われないだろう。

 実際、今から共に走るのは天皇賞(春)を制した『タイテエム』の血を引くもの、三強時代を作り上げ、ミスターシービーが記憶に新しい『トウショウボーイ』の子どもまでいる。

 

 総じて長距離のG1を勝利してきた実績のある馬たちの血を引くものたち。

 

 たいしてこっちは辛うじて『トキノミノル』の名が挙がるものの、それ以降の産馬で日本で活躍した馬がいない血統、おまけに長距離は未知数ときてる。

 

 

 だから

 

 

 「ひっくり返してやるぞ」

 

 

 幸い外枠にいることもあって確実に邪魔されずに加速することはできる。

 

 

 ここを俺たちの色に染めちまおうぜ……

 

 

 さあ……

 

 

 とん

 

 

 一瞬の静寂

 

 

 バン!

 

 

 ゲートが開いた!

 

 

 トン!

 

 

 

 音を失くしたこの世界

 

 

 

 全てを賭けて突き進もう!

 

 

 

 『三番カリスタベット、先頭を進みます』

 

 

 まだ前は意識するな……

 

 

 『続いて五番ディクターブレイブ、さらに続いて……』

 

 

 『おっと、六番ラ·ジャポーネ出遅れています、あれは厳しいかもしれませんね』

 

 

 

 はは!勝手に言ってな

 

 

 

 俺はそんなことよりも

 

 

 「やっぱりお前に乗ってる時が今までで一番楽しいぜ!」

 

 

 遅いスタート

 

 しかし、確実に加速し続けるその姿は今までで俺が乗ってきた馬とは明らかに違う。

 今まではどれだけ終盤までスタミナを残せるかを、どれだけ馬群に呑まれないかを考えていた。

 

 だが、こいつは違う。

 

 ただ不安を感じさせないように好きに加速させて、俺はその手綱を握って他の馬を避ける。

 

 言ってしまえばそれだけだが、全てを無視して歩み続けるこの馬を操るのは至難の技。

 

 だから、こいつは楽しいんだよ!

 

 

 『一番ルビークラウンも上がってきました』

 

 

 もっとも今はそんなことを考えるよりも差が開きすぎてることが問題だけどな!

 

 

 

 『さあ、六番ラ·ジャポーネやはり大きく出遅れています』

 

 「ジャポーネ………」

 

 自らの愛馬の名を口にする。

 

 そのスタートはあまりにも遅く既に前方の馬からは5馬身ほど差をつけられているようだ。

 

 このままでは勝負は見えている。

 

 だが

 

 「やっぱり諦めてないんだな……」

 

 その走りは全力

 

 諦めることはない

 

 ゆえに

 

 「がんばれ…‥」

 

 いい年をしたおっさんが恥ずかしいと嗤われるかもしれない。

 

 なぜ勝てる見込みのない馬に賭けるなどただのバカではないと嗤われるかもしれない。

 

 しかし

 

 「がんばれ!」

 

 この衝動は鳴り止まない

 

 恥? 嘲り?

 

 そんなものはどうでも良い

 

 

 「がんばれ!」

 

 

 加速して 加速して 加速して

 

 

 『六番ジャポーネ最後尾を捕えた!』

 

 

 「いけー!!!」

 

 

 この衝動のままに!

 

 

 

 『六番ジャポーネとてつもない勢いで加速していく!、ここでついに!』

 

 

 「あはは!、お前の馬主さんの応援が聞こえたか!!、こっからが正念場だぞ相棒!!!」

 

 

 馬群の最後尾を追い越したとはいえ、広がったこれを抜けていくのは困難。

 

 

 けれどそれを成さなければ勝利はない。

 

 

 「なら俺が足掻くしかないよな相棒!、そんまんま全開で頼むぜ!」

 

 

 まずは一つ!

 

 隙間を縫うようなレースは難しい

 

 

 次に二つ!

 

 なら大外に広がればいい

 

 

 三つ!

 

 

 『六番ジャポーネ!、大外を上がっていく!、そして今!ディクターブレイブを抜き去った!!!』

 

 

 新馬戦で大外に広がるバカのカバーなんて考えやしねーだろ!

 

 

 こいつで五つ!

 

 

 それまでのペース配分も!

 

 

 相手との距離を測るのも!!

 

 

 内側を狙う努力も!!!

 

 

 全て水泡に帰せ!!!!!

 

 

 最後に先頭を抜き去るその場所は

 

 

 『第四コーナーを曲がって、先頭にいるのは!!』

 

 

 『ジャポーネだ!!!』

 

 

 最終直線の前!

 

 

 「チェックメイトだー!!!」

 

 

 

 『六番 ラ·ジャポーネが上がってきました』

 

 2000m

 

 榛原くんがギリギリだと睨んでいたその距離

 

 

 その差が

 

 その不利が

 

 できるだけ内側を狙うその努力を

 

 

 大外から嘲笑うかのように加速は続く

 

 

 『六番 見事なごぼう抜きを見せる!』

 

 

 興奮で口調が乱れる実況

 

 

 何もかも呑み込んで全てを抜き去る。

 

 

 『第四コーナーを曲がって先頭にいるのは!!』

 

 

 『ジャポーネだ!!!』

 

 

 余力を残していたと言わんばかりにその力強い走りは止まらない。

 

 そして

 

 

 『その加速は衰えない!、直線に入ってからむしろ速くなっていく!』

 

 

 『これが2歳馬の走りなのか!!』

 

 

 『後続に六馬身差をつけて!』

 

 

 『一着は六番 ラ·ジャポーネ!!!、最後尾から全てを抜き去っていった!!!』

 

 

 先頭に走り続けるのは『ジャポーネ』だった。




 他の馬の名前はウイポの馬を文字ったりしてますね。
 あと、実際のジョッキーさんはこんなに叫んだりしないので、勘違いしたらだめだぞ!

 追記

 私の勝手な都合で一度消してしまって申し訳ない……、今後はこのようなことがないように何度か推敲をしてから投稿させていただくので、此度のことは許していただけないでしょうか……。
 推敲してもたいして変わらないので、再度同じことが起こるかもしれませんが温かい目で見守っていただけると嬉しいです……。
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