酒宴に出席した姉は、
うっかり英霊席に座って、
聖杯問答に巻き込まれました。
【第7話】地下水路の殺人鬼
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俺こと雨生龍之介が貯水槽へ戻ると、そこは空っぽになっていた。
貯水槽は無惨なものだ。俺の作った芸術作品は綺麗になくなっている。その光景に俺は唖然とした。戻る場所を間違えたのかと思ったくらいだ。俺は壁の隙間にまで目を通し、ここに置いてあったはずの作品を探す。でも、何一つ無かった。その代わりに俺を待っていたのは、一人の女だった。
「貴方の芸術は、愛なのかしら?」
こいつはヤバい。そう俺は直感した。こいつは同類だ。同類であるが故に、隠蔽工作が通用しない。女に背を向けた俺は、出口へ向かって走り出す。でも、走り出して間もなく俺は蹴り飛ばされ、背中を踏まれて床に押し付けられた。瞬間移動でもしたんじゃないかと思うくらい、女は速かった。
「愛しているから殺すのかしら? 愛したいから殺すのかしら?」
終わった。
「いいえ、違うわね。貴方は芸術を愛しているのであって――人を愛していない」
さよなら。
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【第6話】教会の殺人鬼
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私こと言峰璃正は、自らの娘を教会で迎える。
キャスターを討伐したと言い張る娘は、男の死骸を教会に持ってきた。しかし、死骸となった男から令呪は消えている。これがキャスターのマスターであると、娘は証明できなかった。そもそも本当にキャスターが討伐されているのかも分からない。令呪もサーヴァントも持っていない娘がキャスターを倒したと言い張っても、信用に値しなかった。
「マスターを討伐したんだし、その分だけでも頂けないかしら?」
「そもそも、お前は令呪を宿していない以上、正式な聖杯戦争の参加者ではない」
それに娘へ令呪を渡せば、教会の公平性が疑われる。アサシンの死を偽装した不正は、綺礼の独断で済ませると決まっている。だからこそ、さらに疑心を抱かれるような行動は取れない。キャスター討伐の報酬が宙に浮いてしまうものの、他のマスターに令呪を与えるよりは良いだろう。
「仕方ないなー」
娘も理解してくれたようだ。
「じゃあ、お父様の令呪をいただくわ」
不穏な発言を私は聞いた。即座に娘の体へ、迷いのない一撃を叩き込む。しかし、まるで大地を打ったような感触が、私の拳に跳ね返ってきた。感触で分かる。私の拳が効いていない。続けて私は流れるような動きで密着し、娘の体を拘束する。しかし、それは悪手だった。ささやくような娘の声が、私の耳を優しく撫でる。心の底から愛おしそうな声に、私は寒気を覚えた。
――メルトアウト
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【第5話】8騎目のサーヴァント
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私こと言峰綺礼は聖杯によって、再び令呪を与えられた。
その直後に、濃厚な魔力の波を感じ取る。発動地点は近い。この教会の内部だ。それを察した私は、父の下へ走った。すると、いつもと変わらない教会の会堂が目に映る。そこに父が居るはずだった。しかし、父の代わりに立っていたのは、腕に大量の令呪を刻んだ姉だった。
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
サーヴァント召還の呪文を、姉は詠唱している。まさか、8騎目のサーヴァントが召還されると言うのか。さきほど聖杯によって、私に令呪が再配布されたのだ。令呪を手に入れた姉によって、8騎目のサーヴァントが召還されても不思議ではない。姉から立ち昇る魔力は、滝のごとき凄まじい勢いで吹き上がっていた。
「……やっぱりダメね」
と思っていたら、サーヴァントの召還は失敗したらしい。しかし驚くべきは聖杯の補助なしに、あれほどの大魔力を発揮していた事だ。魔術師に弟子入りした私ならば兎も角、いったい如何やって姉は、あれほどの魔力を作り出しているのか……いいや、待て。姉の両腕にある令呪は、父の腕に在ったものではなかったか?
「ほぅ、自らの欲を満たすためならば、実の親も殺すか。
貴様ら姉弟は、よくよく我を愉しませてくれるようだな」
英雄王は私に告げる。
「やっほー、綺礼! お姉ちゃんが帰ってきたよー! 綺礼の愛しのお姉ちゃんだよー!」
姉が父を殺した。
――それを見て私が覚えたのは、『私が殺したかった』という後悔の念だった。
「ハハッ、ハハハッ! なんだ、これは! こんな歪みが、こんな汚物が! よりにもよって言峰璃正の種から産まれたと? 我が父は狗でも孕ませたというのか!」
「そんなに言わなくても良いじゃない、綺礼。だってキャスターを討伐したのに、お父様が令呪をくれないのよ? でも、大丈夫。お父様は私と一つになって、すぐに綺礼も私と一つになれるから!」
そうではない。姉の事ではない。私の事なのだ……いいや、姉の事でもあった。言峰璃正の種から産まれた我ら姉弟は、こんな有り様だ。2人そろって、この様だ。醜悪の一言に尽きる。だからこそ姉が、『姉だけ』が私を理解していた。同類だからこそ姉は、私を理解できていた。
そうして私が笑い終えると、いつの間にか姉は居ない。その足で私は、師の下へ向かった。『何者か』によって父が殺害された事を、私は師に伝える。その後、師はアイリスフィールと手を組んだ。その代償として私は、この地から排除される事となる。最後に私は師より、見習いの課程を終えた事を証明するアゾット剣を授与され、
その剣で私は、師の命を奪った。