姉が父を殺害し、
その有り様を見た綺礼は
自身の『答え』を垣間見ました。
【第4話】ケイネスの愛
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私ことケイネス・エルメロイ・アーチボルトは、令呪を譲る。
婚約者の脅しに屈し、私は令呪を譲った。これは私の避けたかった事態だ。魔力供給を婚約者であるソラウが行っているため、私の婚約者は正式にランサーのマスターとなってしまった。ソラウは、ランサーに思慕を寄せているように見える。ランサーと2人きりになる状況など、作り出したくはなかった。
「ふふ、それは、まさしく愛ね!」
「誰だ!?」
寝台に横たわる私を笑う者がいる。ソラウは無事か? ランサーは何をやっている!? 衛宮切嗣に魔術回路を破壊され、魔力の暴走で壊れた体は動かない。しかし首から上を動かして見ると、見覚えのある女がいた。令呪もサーヴァントも無しに聖杯を穫ると大言を吐いた、身の程を知らぬ女だ。
「うん、止めた。そこに愛があるのなら、私が貴方を手伝ってあげる!」
女は訳の分からない事を言う。狂人の類いか。そう思っていた私の目は、信じられない物の存在を捉えた。その狂人の腕に、大量の令呪が貼り付いている。それに私は手を延ばす。そう思ったものの、私の手は動かなかった。当然、足も動かない。しかし、それでも必死で、全身を使って、それを掴もうと私は試みた。それさえあれば……!
「欲しいの? うん、あげる!」
これさえあれば……!
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【第3話】衛宮切嗣の愛
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僕こと衛宮切嗣は、女の正体を知る。
僕の道具が揃えた資料によると、奴は言峰綺礼の実姉だ。10年ほど前に言峰綺礼と別居したらしい。それを知った瞬間、女の危険度は跳ね上がった。言峰綺礼の姉だ。嫌な予感しか覚えない。この姉を人質として使うなんて下策だ。次に見かけたら、最優先で殺害するべきだろう。
「しかし、どうして事前の調査で、その存在を確認できなかった?」
「どうやら彼女は自身の経歴に、極めて高度な隠蔽を行っているようです。彼女の名前すら、ついに判明に至りませんでした」
「どういう事だ? この女の存在を証明する物が、何一つ残っていないという事はないだろう?」
「いいえ切嗣、まるで『歴史から存在を抹消された』かのように、彼女の記録は何一つ残っていません。10年前と言うのも、言峰璃正の行動から推測したものです……そう、切嗣。たとえば貴方は、彼女の顔を思い出せますか?」
舞弥の問いに、僕は絶句する。指摘されて初めて気付いた。僕は女の顔を思い出せない。それどころか、女の姿形すら思い出せなかった。あの女は、どんな服を着ていた? そもそも服を着ていたのか? いいや、僕は何を言っている? 服を着ていない訳がない。そんな事はない……はずだ。
「切嗣。ランサーと其のマスターが、マダムの下へ向かっています」
女の件は後回しだ——そう思考した不自然さに、僕自身は気付けない。僕はランサーのマスターの様子を探った。ランサーのマスターは僕の起源弾を受けてボロボロになっているはずだ。そこで僕は信じ難い光景を目に映す。車椅子に乗ったランサーのマスター、その腕に大量の令呪が貼り付いていた。その令呪を惜しむ事なく使い、片手に呪いを受けているセイバーを追い詰めている。
「ランサーのマスターめ、監督役の令呪を奪ったか」
このままではセイバーは押し切られる。しかし、そこで僕は勝利の鍵を見つけた。ランサーと其のマスター、その後を追って来ているランサーのマスターの婚約者を発見した。僕は婚約者を捕らえ、ランサーのマスターを脅し、ランサーを自害させ、最後に僕の道具がランサーと婚約者を殺害した。
「婚約者の命を守るために、自分のサーヴァントを自害させる――まさしく愛ね」
僕は発砲した。しかし、その弾丸は『姉』の肌に弾かれる。弾丸は『姉』の肌で跳ね、どこかへ飛んで行った。その様は神秘を宿していない攻撃を、サーヴァントが無効化しているかのようだ。相手はサーヴァントもなければ『令呪も持っていない』。それでも油断のできない相手だった。
「貴方は世界を平和にするために戦っている――それは愛かしら?」
『姉』の声に耳を傾けてはいけない。
それは悪魔の声だ。聞いてはならない。聞く必要もない。
「衛宮切嗣、そもそも貴方は、人を愛しているの?」
セイバーが『姉』に聖剣で斬り掛かる。しかし『姉』は、片手でセイバーの剣を受け止めた。その衝撃で揺れる事もなく、まるで世界から切り離されているかのように、『姉』は不気味なほど静止している。剣の英霊であるセイバーを、ただの人間が片手で応対していた。こいつは、とんだ化け物だ。
「ねえ、衛宮切嗣。貴方は人を愛しているの?」
「舞弥、アイリを連れて逃げてくれ」
聖杯としてランサーの魂を取り込んだアイリは、もはや限界のはずだ。僕は『姉』の問いに答えず、道具に命令を与えた。こいつの質問から察するに、狙いは僕だ。ちょうどいい。ランサーによってセイバーに付けられていた呪いも解除されている。セイバーの宝具を使ってでも、この不確定要素は今の内に取り除く。
「いいえ、貴方が愛しているのは、妻のアイリスフィールと、娘のイリヤスフィールだけ――貴方は人を愛していない」
止めろ。
「むしろ貴方は、人の業を憎んでいる」
それ以上、喋るな。
「それは愛じゃない」
『姉』がセイバーの頭を掴み、地面に叩き付けた。星の鍛えた聖剣が無惨に砕かれる。何て事はない。究極の幻想が、より強い神秘に砕かれた。ただ、それだけの事だ。究極の幻想も、レベルの違う神秘には通じなかった。こいつは人じゃない。人であるはずがない。こいつは何者だ? 神か、悪魔か。
――さよならアルブレヒト
そして踊るような蹴撃が、僕の夢を打ち砕いた。
残るサーヴァントは、
セイバー
アーチャー
ライダー
バーサーカー
▼『小鳥遊 虹』さんから誤字報告を貰って、
「ランサーの婚約者」→「ランサーのマスターの婚約者」を修正しました。
1年と半年以上の間、ソラウさんは「ランサーの婚約者」だった事になる。やったね!
ちなみにハーメルンの「自動誤字報告機能」を初めて使いました。
ハーメルン、パないの。