問答を無視した結果、
姉にセイバーは鎮圧され、
衛宮切嗣は愛を否定されました。
【第2話】間桐雁夜の愛
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俺こと間桐雁夜は、聖杯戦争から脱落した。
市民会館の前で『遠坂時臣の金色のサーヴァント』に俺のバーサーカーは挑む。しかし、俺の魔力切れでバーサーカーは消滅した。サーヴァントを失った、今の俺は負け犬だ。もはや聖杯を手に入れる事はできない。間桐の養子となった桜ちゃんを救う事もできない。
「遠坂桜へ向ける愛、遠坂葵に向ける愛――まさしく愛ね」
蟲に食われてボロボロになった俺の体を、誰かが抱き止める。無条件の愛情を感じ、俺は戸惑った。誰だ? こんな愛情を俺に向ける相手は誰だ? これまでの人生の中で、こんな無限大の愛情を俺に向ける相手なんていなかった。こんな計り知れない愛情は、今まで感じた事がない。暖かくて、熱くて、まるで太陽のようだった。
「愛に飢えているから敏感なのね。とても繊細だわ……大丈夫、安心して。私が貴方を愛してあげるから」
暖かくて、このまま眠りそうになってしまう。だけど、ダメだ。俺は間桐の家に帰らなければならない。桜ちゃんを置いて行けない。せめて桜ちゃんだけでも助けたい。俺に残っているのは、もう桜ちゃんだけなんだ。俺が行かなくちゃ、誰が桜ちゃんを助けてくれるんだ……!
「大丈夫、私が助けるわ。貴方を愛で満たしてあげる」
「そうか……ああ、安心した」
そこに太陽があった。俺の体は、黒く黒く焦がされていく。指の先まで白い灰になって動かなくなり、俺は燃え尽きていった。最後に俺は幸せな夢を見る。凛ちゃんが居て、桜ちゃんが居て、葵さんが居て――ああ、そうか。俺は、温かい『家族』が欲しかったんだ。
そして空を見上げると俺達を照らす、黒い太陽が輝いていた。
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【第1話】言峰綺礼の愛
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私こと言峰綺礼は、ギルガメッシュと共に市民会館を訪れていた。
この市民会館から「達成」と「勝利」を示す魔力の波動が発せられて間もない。最初に立ち塞がったライダーは、英雄王の宝具によって一蹴された。2番目に立ち塞がったバーサーカーは、魔力切れで消滅した。3番目に立ち塞がったのはセイバーだ。しかし、英雄王はセイバーに用があるらしい。
「綺礼よ、心して聞くがいい。すぐに終わっても詰まらぬ故、助言をくれてやろう。あれに貴様は逆立ちしても勝てぬ。
愛によって縛られ、愛以外の何者にも縛られない。
愛によって殺され、愛以外の何者にも殺されない。
貴様の姉は、そういった存在だ」
英雄王の助言を受けて、私は先に進む。要するに『姉と戦ってはいけない』と英雄王は言っているのか。そして市民会館の奥で、姉は私を待っていた。その場に聖杯は見当たらない。どこかに隠してあるのだろうか? そう思った私は一通り周囲を見回し、再び姉へ視線を向けた時に気付いた……そうだ。そうだったのだ。そこに聖杯はあったのだ。
「貴方が私の聖杯だったのですね――」
「――そう、私が綺礼の聖杯よ」
ついに私は『答え』を得た。
「愛しているわ、綺礼。私と一つになりましょう。それは気持ちのいい事なの。綺礼の虚無を私が埋めてあげる」
そう言って姉は、手を差し伸ばす。しかし――、
「姉さんは私を愛している」
「そうよ」
「姉さんは全てを愛している」
「そうよ」
それは万人を愛す【無差別愛】だ。
「いいえ、姉さんは全てを愛してるのではありません」
それは逆説。
「姉さん、貴方は――たった一人の人間すら愛せないのです」
それは万人に対する【人間不信】だった。
「貴方は他人の愛を願っているけれど、心の底では他人の愛を『疑っている』。愛されないと思っている。愛されないと思っているから、『愛されたい』と願っている」
誰よりも他人を愛する貴方が、他人に愛されたいと願っている。
「貴方は『私』と同じくらい人を愛していますか?」
「――そうよ」
「貴方は『人』と同じくらい私を愛していますか?」
「――そうよ」
「貴方は『虫』と同じくらい人を愛していますか?」
「――そうよ」
「貴方は愛していますか?」
「――すべて愛しているわ」
姉にとっては全てが等しい。
なぜならば全てを愛しているからだ。
全てに愛されたいと願っているからだ。
男も女も大人も子供も蟲ケラも、全て等しく貴方は愛す。
愛の渇望の果てに、姉は『究極の愛』へ至った。
「それではダメだ」
それでは満たされない。
「私は姉さんに愛して欲しい」
私だけを愛して欲しい。
全てではなく、『私』を愛して欲しい。
「私は貴方を愛している」
しかし、貴方は私の愛を信じ切れないのだろう。だから――
「――だから私は貴方を殺して、『私だけの物』にする」
そう告白した私は、愛しい姉の下へ駆け出した。
残るサーヴァントは、
セイバー
アーチャー