SG1:無差別愛
SG2:人間不信
SG3:
私の腕は何の抵抗もなく、姉の胸を貫いた。
その手に姉のハートを摑み、ブチブチと血肉を引き千切る。心臓を抜き取られた姉の体は、鮮血を撒き散らしつつ倒れそうになっていた。片手に心臓を掴んだまま、その力の抜けた姉の体を、私は優しく受け止める。すでに姉の意識はなく、焦点の定まらない目が私を映していた。
それは【無条件の愛】だった。
姉は愛を渇望しているが故に、愛に期待し、いかなる愛も拒絶できない。
姉にとって愛は、自分の命よりも重く、大切なものだった。
だから私の『姉を殺して私だけの物にしたい』という愛を、
姉は受け入れてくれたのだ。
片手に持った姉の心臓が燃え上がる。
一瞬で焼け落ちた後、そこに在ったのは黄金の杯だった。
これが聖杯だ。私の聖杯だ。私だけの聖杯だった。
――すでに私の祈りは決まっている。
『私を愛して欲しい』
『私だけを愛して欲しい』
『だから私と姉以外の生物は――いらない』
聖杯に蓄えられていたサーヴァントの魂を、『座』へ帰還させる。そうして『座』へ通じた経路から、私の祈りを叶えるために膨大なエネルギーを引き出した。聖杯は少し汚れていたものの、正しく私の祈りを聞き届ける。そうして聖杯から溢れ出た力は世界へ広がった。『座』より引き出された力に、抑止力は機能しない。聖杯は正しく私の祈りを叶え、私と姉以外の生物は殺し尽くされた。
そして気付くと私は、生まれたままの姿で砂浜に寝転んでいた。目の前には、赤い死の海が広がっている。空を見上げると、私達を祝福しているかのように黒い太陽が輝いていた。私の隣には、生まれたままの姿で姉が眠っている。私が死の海から押し寄せる波音に耳を傾けていると、視界の隅に全裸の英雄王が見えた……ような気がしたものの、きっと気のせいだろう。
それにしても、なかなか姉は目覚めない。私は姉の上に股がり、その細首に手を伸ばした。両手で軽く締めると、姉の呼吸が変化する。もっと強く締めると、姉は苦しそうに呻いた。さすがに姉も起きたらしく、閉ざされていた目を開く。そして寝惚けた声で、私に言うのだ。
「……苦しい」
そんな妻の声を聞いて、私は心からの笑みを浮かべた。
END
Special Thanks
▼午後1時に投稿した【第13話】の感想を書いた人だよ!
『ガンバスター』 最速の人 (ガンバスターの名は伊達じゃない)
『ヴァカ』 2番手の人
『Sierpinski』 3番手の人
▼午後2時に投稿した【第12話】の感想を書いた人だよ!
『ゴレム』 璃正パパの人
▼午後3時に投稿した【第11話】と【第10話】の感想を書いた人だよ!
『高校生のおっさん』 愉悦部の人
『メッサー』 天草四郎の人
『紅き翼』 採掘基地の防衛中に強制送還されたアークス隊員
▼午後6時に投稿した 【第4話】と【第3話】の感想を書いた人だよ!
『エクシェ』 夢を砕かれた切嗣を見たい人
▼午後7時に投稿した【第2話】と【第1話】の感想を書いた人だよ!
『黒狼@紅蓮団』 姉怖い人
【補足】
『妻は自分の性根を理解していた』
という事を記憶障害で思い出せない綺礼は、
『自分の性根を理解している妻』に対する愛情を、
『自分の性根を理解している姉』に対する愛情と錯覚しています。
でも、綺礼が幸せなら、それで良いよね!