日本は支配されている━━━━其れが私が生まれ、育った国が置かれている現状だった。
少子化政策や財政危機、他にも様々な幾つもの要因が積み重なった結果として、日本の経済は破綻。
其れに付け入るように北米同盟、大ユーラシア連邦、アジア自由貿易協商、オセアニア連合の4大経済圏が治安維持と経済援助の名目の元に、国へと介入してきた。
経済圏は日本の統治を巡り、水面下で対立を深めて行き━━━━━━そうして戦いは勃発する。
日本列島を舞台に4大経済圏による国境紛争……後の『境界戦』と呼ばれる戦いの後に、日本は4つに分割統治されるに至った。
其れだけなら、まだマシであったろう。
4大経済圏は各々、自軍で開発・建造された人型特殊機動兵器、通称『
日本国民は経済圏の奴隷として、差別され、虐げられる日々を送り続けていた……。
━━━━━それでも、其の支配を良しとせず、立ち上がる者達もいる。
日本の解放を目指し、各経済圏の中で日本人によるレジスタンス組織が設立され、境界戦によって崩壊した地域の復興や、経済圏が使用しているAMAIMを強奪・改修し、戦線で戦う者や組織も在る。
そして今日もまた、日本の何処かで境界は動き、誰かの涙が零れていく………
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九州地方・福岡県。
其処は現在、北九州を支配下に置いたアジア自由貿易協商と、南九州を支配下に置いたオセアニア連合の境界戦が交わり、其の境目が常に動き続けている激戦区である。
『1号機から7号機!攻撃を開始せよ!』
機関砲が轟音を立てて唸り、今日も戦火の火蓋は落とされた。オセアニア連合が所有するAMAIM『バンイップ・ブーメラン』の携帯する武装『30mm機関砲』が火を吹き、特異な脚部で地を跳ねる。
『シュキ隊は敵の迎撃!ヨク隊は河沿いから敵部隊の側面を叩け!』
アジア自由貿易協商の主力AMAIM『ニュウレン』の握るライフルより、使用済みの薬莢が雪崩のように地面に散乱し、分かれた部隊がバンイップ・ブーメランを挟撃するべく、前進していく。
戦場となった地域では彼方此方で、爆炎と共に黒煙が上がり、街は戦いに巻き込まれ、荒れていた。
だが、だからこそ。そんな経済圏のやり方を、支配を、許さない者が居る。
放たれた一躑の弾丸が、挟撃に動いたニュウレンの胸部を貫通し、一撃の元に爆散させた。
『な、何だ今のは!?』
『分かりません!』
ニュウレンを指揮している司令官が驚愕の声を挙げる中、一機、また一機と胸部や頭部を狙撃され、機体は行動不能に陥っていく。
「イッシンさん!『アタシ』の分も残してくれないと困るんだよねェ!此の子もッ!アタシもッ!フラストレーション溜まりに溜まってるんだからさァ!」
黒煙の中から突如、一機の機体が飛び出したかと思えば、バンイップの足を切り飛ばし、地面に叩き落とす。爆発と煙が上がる中、戦場を駆けるMAILeSの緑に光るセンサーが、敵となるバンイップ・ブーメランとニュウレンの正確な数を、パイロットに知らせてくる。
『イッシンさん。ケイ。ニュウレンは10に、バンイップは15。私達で数を減らすので、お願いします!』
『了解した、此方』
「あー!『イチ』がまたイッシンさんとケイちゃんに援護頼んでるー!」
『貴女が心配だからよ『ユミ』!ほら敵来た、バンイップ3とニュウレン5!』
「分かってる……わ!」
地面を蹴り上げ、ユミとイチが乗るMAILeS━━━『リュウテン』は、バンイップ・ブーメランとニュウレンへ襲い掛かる。
駆ける姿は風のように、しかし敵を屠る姿は嵐のように。バンイップの機関砲の連打を掻い潜り、一瞬で懐に飛び込むや、無慈悲に刃を頭部に在る核ユニットへ突き立てる。
「1つ!」
リュウテンの背中にあるウェポンラックのアームが機動し、マチェットされた60mm機関砲が空いた片手に収まり、リュウテンの脚部の局地浮遊移行装甲脚によってホバー移動を行いながら、トリガーは引かれた。
ニュウレンのライフル、バンイップ・ブーメランの機関砲を上回る口径から繰り出される弾丸の嵐が、頭部を正確に撃ち抜き、敵陣営の機体を爆発四散へと追い込む。
「2つ!そして3つ!」
握った戦闘短刀を逆手に変え、其れをナイフ投げの要領でニュウレン1機の頭部に刺し、倒れるニュウレンの背中に懸架された斧を奪い取るや、近くにいたニュウレンの1機の首を切り飛ばし、返す刃で投擲し、逆サイドのバンイップを破壊する。
「4つ!5つ!そしてェ!」
刺した短刀を回収しつつ、敵の足元を撃って目眩しを行い、脚部のスラスターの全開にしつつ、高速化した刃の一閃で、2機のニュウレンの首を斬り飛ばし、バンイップの展開した頭部を真っ二つに裂いたのだった。
「これで終わりッ!」
爆発の連鎖の中、アジア自由貿易協商とオセアニア連合の指揮官が観たのは、壊れた機体の僅かに生きた映像で送られてくる、爆炎に佇みながら此方を睨むリュウテンの姿。
『ま、まるで…『竜巻』…!』
『何という力…ッ、全機撤退せよ!これ以上の損害は避けるぞ!』
モニターに表示された損耗率を鑑み、両陣営は苦虫を噛み潰すような屈辱を味わいながら、残された機体を下げていく。
『イッシンさん、ユミ。敵の撤退を確認しました。念の為に私とケイで警戒を続けます』
「頼んだ。……ユミ、相変わらず敵陣に突っ込み過ぎだ、もう少し慎重になってくれると助かる」
「アタシこれでも、イッシンさんとケイちゃん、それに『ジョウガン』の狙撃を信頼してるの。ちゃんと撃ち抜いてくれるって信じてるから」
「……はぁ、お前って奴は」
静かになった戦場でリュウテンのパイロット、五十鈴 ユミはニシシッ♪と笑い、其れを観たユミのパートナーのAIユニット『イチ』と、イッシンと彼のパートナーのAIユニット『ケイ』は、小さな溜め息を溢した。
これは戦いの物語。境界戦と呼ばれる戦いの中で、己の命を燃やした、1人の女性とパートナーのAIユニットの譚である…………
解放への戦い