まあ冗談はさておき荒野から走って数時間も経たずに森へ到達した。
男は荒野を走り慣れているようだったが子供達は少し大変そうだった。
「荒野を抜けた。悪くないペースだ。ここから四日の到達を目指す。目的はA08-63"ゴールディ・ポンド"。ゆっくりのんびり迂回して安心安全チンタラ3週間かけて向かう道もあるが、俺が嫌だ却下する」
こいつ見た目大人だけど中身クソガキじゃねえか
それにA08-63?座標か?彼ら共通の地図でもあるのか?
それにゴールディ・ポンド…か。
名前からして池っぽいがそもそも固有名称を共有しあってる時点で地図はあると考えるべきか。
「水飲んどけ。まずはこの森、野良の「人喰い」の群生地だ。見つかれば死ぬ。さあ日暮れまでに抜けるぞ」
それからしばらく走って森を抜けていた。
数時間だったころ、彼らが話し始めた。
見つかったか?圏境を使ってはいるが万能ではないし痕跡だって多少は残る。
「後どれぐらい?」
「日暮れまでには多分後二時間くらい」
「そっか頑張る」
どれくらい進んだかを確認したのか。
この周辺は俺もあまり来たことがなかったから割と疲れている。
「ああ、道のりも上々、ここまではまず順調だ」
最初森を歩き始めた時は枝は踏むわ足音立てるわで結構ヤバかった。
ただこの数時間歩いているだけで足音一つ
見て覚える、学ぶ。観察力と学習能力が優れている。
流石は同郷と言ったところか。
「右だ」
「本当に右か?」
「いや左だ」
コイツッッ…!
「ありがとうレイ、気づかなかった」
そこへ上から鬼が襲い掛かった。
少女は油断していて
「エマ!!」
ヤッベ助けるべきだったか?
避けることはできたけど衝撃で転がってしまった。
「うっ……」
「レイ!!」
銃を取ったか。ただ…
少女は銃を構えこそしたもののその引き金を引くことはできず、このままでは死ぬだろう。
そんな状況撃たない…いや撃てないか。
助けに出ようと思い、踏み出そうとしたが、その前に
パァン!と言う銃声が響いたと同時に鬼の体が倒れた。
男が鬼に少女を喰われる寸前で顔の側面に銃を撃ったのだ。
しかもわざわざ死なないよう丁寧に。
性格悪すぎだろこいつ…
「エマ…エマ…エマ!!」
「あれっ?私…生きてる…!?」
「は!?」
死にかけて走馬灯でも見えていたんだろうか。
少女は自分が生きていることを信じられないという様に狼狽えている。
「死んだと思ったろ。実際死んでた、お前は引き金を引くことすらできなかった。いやぁウケルウケル、上から襲ってくる「人喰い」は初めてだろ?この辺にゃいるんだよ。まぁ俺は知ってたけどね」
「でもありがとう、オジサン…助けてくれて」
「そうだ、早く逃げるぞ。
「誰が助けたって?」
「え」
「助けてなんかいない、あんな簡単に「人喰い」は死なねえ」
「は?」
「すぐに「再生」して、仲間を呼ぶよ」
その瞬間、甲高い声が森中に響いた。
キィィィィィ!!!
と言う猿の断末魔のような金切り声は仲間を呼ぶのには充分な音量だったのだろう。
大量の鬼の足跡がこちらへ向かってきているのがわかる。
「クソッッ死んでないなら早く言え!」
「わざとだよ」
「は」
「わざと殺さず黙ってた。嫌がらせだ」
「なっ…」
「ダイジョーブダイジョーブ
「!!」
「でもお前らはやばいね。
「クッソジジィ!!」
「地獄の旅路の幕開けだ。お前らの命は俺の手中、さぁガキ共生きてみろよ」
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結局あの後変な網を射出する銃を使ったり他の鬼の縄張りに入り込んで同士討ちさせる作戦で逃げることはできた。
が走って三日がたった今では疲労困憊、隈も出てるし足取りも少し重い。
それも二日連続で夜中に鬼に襲われていたからだ。
そのせいで眠ることもできず回復ができていない。
男は上手く身を隠して対処することができていたがやはり子らは襲われた後の対処も遅かったし結局逃げて体力を消耗していた。
男は
「群れを逸れた迷子じゃね?単独なだけよかったな」
と嘲笑っていた。
うーん、この。
夜になって野宿の準備をしている。
結構果物も見つけたみたいだ。
やはり慣れも早い、才人だな。
「みんな無事元気でいるよね?」「は?」
「今ここに一緒にはいないけれどシェルターのギルダ達も、ハウスのフィル達も」
シェルター…か。
作ったのだろうか。それともやはり支援者がいるのだろうか。
それにハウスか。そういえば俺は置いてきたんだった。
兄弟も、家も
「旅に出る前にオジサンに言われたの。その判断は正しいかって。
言われなくてもわかってる、ふとした瞬間に怖くなるの。
これで正しいか、間違ってなかったかって。
ゴールディ・ポンドは私たちだけで旅に出て正しかったのか、一旦でもフィル達を置いて来て正しかったのか。
ノーマンを行かせてしまったーーあれは?
振り返っちゃいけない、前だけを見なくちゃ、私は迷っちゃいけないわかってる。
ーーーでも怖い。
もし、選んだこの道が間違っていたら」
ーーっっ…
そうだな、、本当に見捨てて良かったのか。
俺なら救えたんじゃないか。そう考える時は俺にもある。
「レイ、私やっぱりオジサンと話したい。レイのいうこともわかるけど、うん!駆け引きなんてやめよう!」
「えっちょっおい!」
タタタっと男の方へエマ後輩がかけて行った。
「オジサン、明日の前に肚割って話そう。
私がオジサンを助けてあげる」
「は?助けてあげる……だと?」
「うん」
そういう男の声には凄みが宿っていた。
そりゃそうだ。こんな傷口に塩を塗るような発言腹が立たない訳がない。
「うぜぇ。「助けてあげる」?ガキが何様だ。なんだと思いきや…巫山戯るなよクソ触覚!俺はお前が嫌いだ、お前が嫌いだ、肚を割る気も話をするかもねぇ、失せろ!!」
「いやだ!!」
強すぎだろこの子。
「嫌われようが殺されようがほっとかないもんね!
もうやめようよ。隠したって無駄、逃げたってなんの解決にもならないよ」「は?」
「辛かったんでしょう?」
ハッと男が息を呑んだ。それが図星で、言い返せなかったから。
「「いい家族」だったんでしょう?オジサンの仲間達も。オジサンもそんな仲間のことが大好きだったんでしょう?失って悲しくて悔しくて憎くって、いっぱいいっぱい苦しんで、何年も何年もたった1人で、
ちぎれそうな思いで毎日を繰り返して来たんでしょう?」
「……………お前に何がわかる………お前なんかに……」
「わかんない、想像するしかない。仲間全員を失ったオジサンの苦しみを軽々しく「わかる」なんて言えない、言えないんだけど
解るよ
そっくりだったんでしょう?今の私と昔のオジサン。私たち家族とオジサンの仲間。だからオジサン私たちを見るのが辛いんでしょう?
辛くて苦しくて銃を向けたんでしょう?でもオジサンが本当に消したかったのは私達じゃないらかつての自分自身なんじゃない?」
止めろ
「私達を消しても憂さ晴らしにくらいにならなるかもしれない。けど結局は何も変わらないよ!オジサンが苦しいのは変わらない、それじゃダメだ!だから変えよう!」
「何を変える、どうやって」
やめろ
「どうにもならないんだよ。どんなに悔いても過去は変えられねぇし死んだ仲間は戻らない。憂さ晴らしでいいんだよ。お前らが消えてくれるなら。その面ーー吐き気がする。
ああそうさお前は昔の俺そっくりだ。お前も俺と同じだ、救えない。この現実の地獄は変えられない。「助けてあげる」?ちゃんちゃらおかしい。お前に何ができるんだ」
「共に生きられる」
「は……」
まるで彼の声は失笑するようであった。
「一緒に生きようオジサン。
私は2年以内に
オジサンも行こう一緒に、人間の世界へ。仲間が見たかった世界を見よう!」
やめてくれ。
そんな希望を見せられたら。
全部見捨ててここにいる俺はなんなんだ。
誰を助けたわけでもない。他を糧にして生きてる俺は。
「私もレイも失った。変わりなんていない……ずっと一緒に過ごして来た一番の親友。誰よりこの場にいたかったと思う。でもできない、、私が行かせてしまった。「
オジサンも進もう、仲間の分まで過去は変えられないし死者の代わりなんていない…それでも
仲間の思いを継ぐことはできるよ…!」
黙れよ、もう。
俺は逃げて来た。
全てを捨てて生き残った。
何れ残して来た家族は死ぬ。
そう考えても無視して来て今俺はここにいる。
だからもう……
「今すぐ引き返せ、GPには入るな。あそこはダメだ。あの場所は……今すぐだ。明日にでも奴らがーーー」
「エマ!伏せろ!!」
まるで狩人の罠にかかったように糸に少女は攫われていった。
俺も男も助けなかった。
助けられなかった。
俺はまた…………
酸っぱい味が口の中を満たした。
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「一日がかりでようやく撒けたか」
「油断するな、密猟者はそう簡単には諦めない」
「油断じゃねぇ、一刻も早くエマを連れださねぇと。いまどこだ!俺は1人でもゴールディ・ポンドに「ここだよ」
「え?」
「もうすでに
「ここが既にゴールディ・ポンド?」
そこには確かに水や池らしきものを確認することはできたが特段目立った建造物や特徴があるものではなかった。
「
「まさか」
「シェルターと同じだ。猟庭は土の中にある」
「……地中…?」
「捕まれば入れる、だがそれじゃダメだ。
「ちょっと待ってくれ」
「!?誰だ!」
木陰からレイと同じくらいの体格の少年が現れた。
その顔には鬼の面を貼り、ゆっくりとこちらへ近づいて来る。
男が銃を構えた瞬間、あの面を外しその顔を見せた。
特にいうべきこともない顔だったがその首筋に
「お前…
その質問に少年は首を振って答えた。
そしてたった一言。
「俺も、連れてけ」
そう言って彼らに返した。
全部捨てて来たオリ主君にはエマちゃんの純粋な言葉が刺さりますねぇ!オジサンと違って全部見捨ててそれでも楽しく生きてた、生きようと頑張ってたことに今更罪悪感覚えてますなぁ。